真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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右腕がこう、バキョッって音出して治りました。
これ無事なんですかね。


ゆっくりご覧ください。


第四十六話 悪夢

別に、人生に飽きたとかそんなんじゃない。普通に楽しい事も面倒な事もあるし、退屈していない。

別に辛いわけでもない。話せる親友や友達は多い、家族はいる。いじめられたりとかそんなのもない。あっても逆にからかってる。

別に死にたい訳じゃない。死んだら読みかけの本はそこで終わり、友達や家族とも話せない。書きかけの小説と言えないものも書けない。ゲームもまだ発売前のがある。楽しみにしている。

別に病気でもない。至って健康で馬鹿は風邪ひかないを体現したようなものだ。怪我すらない。

 

きっかけは分からない。そもそも何故この思考に行き着いたかも覚えていない。

単に深夜、ぼーっとしていると、死ぬ時どんな感じなのだろうかと思っただけだった。

その時はそんなくだらない事がどうしても知りたくなった。

死ぬ前はどうなのか、苦しいのか、楽なのか、何も感じないのか、眠いのか。

死んでからどうなるのか、本当に意識は無くなるのか、それとも地獄に行くのか、天国に行くのか。はたまた別世界か。転生とは本当にあるのか。

 

本当に何となく、自分が何なのか知りたくなった。

今自室から空を見上げているとして、空を見上げている私は誰なのか、と考える私は誰なのか?と考えるのは誰で、何故そんな事を考えるのか。

そしてふと周りを見渡すと、自室がある。そこに無造作に置いてある本があるとして、それは本当に自分のものか?

いや、今、何を考えている?その考えている主は本当に自分か?

 

 

自分でも何を考えているか分からなくなってきたので、軽く座っていた椅子から立ち上がる。

向かうのは洗濯物を部屋干しする為に吊るしてある紐。

それをロフトにかける梯子に結びつけ、取れない事を確認する。

キャスター付きの椅子を梯子に密着させ、足場にする。

紐を自分の首にかけて、外れない事をチェック。遺書は無し。

椅子の上に立って、紐を首にかけたまま椅子を蹴って離した。

ぐっと首に紐がかかる。頭がくらっとする。

 

 

プツリと首を吊ろうとした紐が切れた。

 

 

_____________________

 

 

・・・久し振りに前世の夢を見た。何せ火事で死んだ俺は、その前日に自殺しようとしていた。

と言っても特に嫌な事はなく、自殺するとどんな感じかが取り憑かれたように気になって実行した。

今考えると滅茶苦茶おかしい。

結果は失敗。うまく死にかけたが、紐が元々洗濯物を干すためのものだったので千切れた。細い上に脆かった。

おかげで落ちた後も特に何もなく、ああ失敗したという感情だけだった。もう一度やる気は馬鹿らしくなったのか、無かった。

深夜二時。親にも誰にも気付かれず、俺の自殺は失敗した。終わってから少し、笑ってしまった。

その日の違和感を払拭するために次の日にデパートに行ったのだが・・・まあそこで死んだ。結構火傷が痛かったような気がする。あまり記憶にない。あるのは焦げ臭さが残るだけの記憶。やはり死ぬ瞬間と死後すぐはよく分からなかった。

・・・だから物を殺すのに抵抗がないのかもしれない。誰も死ぬ瞬間が分からないから。殺したタイミングが分からないから。

 

 

・・・寝覚め最悪の夢から覚めた俺は、相も変わらず酒のせいで死屍累々となって、朝日で不気味に照らされている天狗や鬼を片っ端から起こし、風跡がないので今回はおそらく単独犯の壊夢を起こす。

 

「・・・おお?主ぜよか?」

 

 

「ぜよか?じゃねえんだよこのクソ野郎。人のこと言えんが宴会後に100人ぐらい潰すのやめろや」

 

 

壊夢を再度蹴ろうとするが・・・隣で茜が寝ているのを見て諦める。

まさかと思い周りを見渡すと、寄り添って寝ている風魔夫妻、眠りながら座っている幽香に膝枕されながら寝ている幻夜、立ちながら大人しく眠っている侵二がいた。

・・・全員無事かよ。

 

 

「くぁ・・・おはようございます。今回は何もしてませんよ?」

 

 

侵二が欠伸をしながら起床。顔色も悪くなく、どこかのんびりとしていた。

 

 

「らしいな。・・・まあここでやらかすとそこで寝てる夫婦と壊夢にぶっ殺されるわな」

 

 

苦笑していると、風魔が起きた。

 

 

「ん・・・?」

 

 

「よう、動くと嫁さんが起きるぞ?・・・今回はめでたく皆無事だ」

 

 

「らしいね。おはよー」

 

 

いつもの野郎達は全員起きた。幻夜も幽香を起こさないようにそっと起きると、プラプラと手を振った。

 

 

「およ、今回はみんな二日酔いじゃないんだね?」

 

 

「らしいな」

 

 

「・・・すまんが、片付けるなら頼んでもいいか?・・・嫁が、な」

 

 

「仕方ねえな。じゃあ新婚も休んでろ。侵二、お前頭大丈夫か?」

 

 

「至って正常で・・・ああ、壊夢の衝撃ですか。大丈夫ですよ。そもそも大丈夫じゃなかったら審判なんてしませんって」

 

 

「それもそうか。・・・さてと、片付けるか」

 

 

俺は能力を使い、酒樽の残骸や食べカスを浮かせ、炎の義眼で一気に焼く。

 

 

「・・・あれ、なんか、マスター顔色悪くない?」

 

 

「そうか?気のせいだろ」

 

 

「そう?・・・なんか変な夢でも見た」

 

 

何でもない幻夜の心配に、ピタリと手が止まってしまう。

 

「あ、やっぱそうなんだね。・・・どしたの?」

 

 

「いや・・・別に怖い夢でもないし、トラウマでもないんだが、懐かしい夢を見てな」

 

 

「懐かしい夢でそうなる?・・・まさか、自殺しようとしたとか「っ!?」当たりかぁ、まああるよねー」

 

 

俺が幻夜を睨むと、幻夜はぺたりと地面に座った。

 

 

「僕も死のうとしたからねー。まあ止められたんだけどさ」

 

 

「・・・俺は吊り損ねて紐が切れた」

 

 

「あー、まあありそうだよね。・・・世の中結構同じのと会うよ?」

 

 

「・・・らしいな」

 

 

「まあ自殺しようとした奴なんて珍しくないよ」

 

 

そうかもしれない。前世では自殺しようと言って集まる時代だった。

集まる理由が分からないが、まあ死にたくなることはあるだろう。俺は興味本意で死のうとしたが。

 

 

「でも、死ねば終わりなんだよね。死んだら何しようが、仲良く死のうが肉と油の塊。周囲から悼まれても、慰められても、慰められるのは肉の塊。生きていた僕じゃない。・・・肉の塊になって死ぬより、無様に生きて、慰めてもらえ。・・・って言われたんだよね。僕は」

 

 

そう言って幻夜は左半分の顔を指差す。

 

 

「ま、そんなわけで、変な夢とか、悪夢って考えなくてもいいんじゃない?多分そこで立って寝てたのはもっと変な夢見てるだろうし」

 

 

「・・・だな。すまんな、変な話して・・・ん?お前か、話振ってきたの」

 

 

「そだね。まあ解決したなら万事解決だね」

 

 

「そこー、サボってないでさっさと燃やして下さーい」

 

 

「はいよー」

 

 

あらゆるゴミを焼却し、山の抉れた地形を戻し、終わりかと思った途端、力が完全に抜け、動かなくなった。

 

 

「・・・何寝てるんですか、体でも悪いんですか?」

 

 

「・・・かもしれん。壊夢、お前俺に何本飲ませたー?」

 

 

壊夢は不思議そうに首を傾げた。

 

 

「俺は飲ませておらん。主は一本も飲んどらんと思うぜよが?」

 

 

「マジ?」

 

 

なら何処か悪いのかと思って体を動かすと、一箇所だけボキリと鳴った。

 

 

「・・・やべ、首の骨折れてら」

 

 

「はあ?」

 

 

どうやら脳に繋がる全神経を骨が圧迫していたらしく、再生させると力が入り始めた。

 

 

「おー、治った治った。すまんな」

 

 

「・・・とんでも無いことやらかしたのの分かってます?」

 

 

「神経が圧迫されてる状態で動いてるってことだろ?そりゃ痺れてた上に視界もグラグラだったけどな、まああの時よりは痛くな・・・あれ、あの時っていつだったか」

 

 

最近分かったことだが・・・生前の記憶が曖昧なところが多い。

何故か、と言ったのは分からない。どんどんと生前の記憶が薄れ、親の顔や親友の事が分かっていても顔が出ない。

転生してしまうとこうなるのだろうか・・・

 

 

「痴呆?早すぎない?」

 

 

「もう爺ですか?やめて下さいよ?」

 

 

「痴呆なのかねえ・・・」

 

 

ふと視線を感じて振り返ると、風魔が俺を見ていた。

まるで久しぶりに知り合いを見たような顔で、その割には顔を顰めていた。

 

 

「お前も・・・か」

 

 

「何?風魔も痴呆?やだねえ爺ばっかで」

 

 

「ほざけ叩き斬るぞ」

 

 

「わーこわーい」

 

 

「良いから早く最後まで片付けろよォ?」

 

 

「悪かったから羽開くな」

 

 

結局この日、俺はなんとなく別の場所に行きたくなったので侵二を連れて山を離れた。

正直、風魔に話くらい聞けばよかったと思う。

 

 

 

次回へ続く




辛い事がないのに自殺しようとする現代人って、やっぱりいないもんですかね・・・?


ありがとうございました。
次回もお楽しみに。


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