ここいらから紫さん視点が出始めます。
ゆっくりご覧下さい。
「か、彼氏っ・・・!?」
「・・・そうよ、何か不満?」
昨日の気に入らない龍神の愚痴を言ってやろうと、親友・・・風見幽香に会いに行くと、何故か幽香の隣に前会った侵二さん並みのイケメンがいた。
幽香は私を歓迎してくれて、愚痴も聞いてくれると言ってくれたのだ。
そこで私は幽香の隣にいる人が気になりはしたが、とりあえず今までの侵二さんを捕まえようとして逆に捕まり、今日も捕まったと言う軽い愚痴から始めたところ、まだ隣の人が残っていたため、なんとなしに聞くと、そんな答えが帰ってきた。
「・・・幽香だけ、ずるい。こんな綺麗な人・・・」
滅茶苦茶友人に負けた気がする。幽香はそうかしら?とか言っているけれど、そんな隣で微笑ましくニコニコしているイケメンを羨ましく思わないはずがない。
「そんな事を言ってくれるなんて、嬉しいねえ」
イケメンさん・・・幻夜さんと言うらしい。幻夜さんは私にありがとうと言いながら、お茶を出してくれた。
「どうぞ。元になったお茶っ葉は幽香のだから美味しいんだけど、淹れたのが僕だから美味しくないかもしれないけど、どうぞ」
何と言うか、眩しい。それに対して私は、食べられそうになり、理想を否定され、クソ女と呼ばれ・・・散々だ。
「貴女が愚痴を言いに来るなんて珍しいわね?相当嫌な事があったの?」
「そうなのよ!あの龍神!私の夢の理想郷をいきなり現れて否定したのよ!「ごめん」・・・なんで幻夜さんが謝るのよ」
「それ僕の主人」
冷や汗が首筋を伝うのを感じながら、私は幻夜さんに尋ねる。
「あの、もしかして・・・」
「そだよ、混沌だよ」
侵二さんに続いてとんでもない人に会ってしまった。しかも滅茶苦茶軽い。混沌は姿形のない化け物だと思っていた。
「え?・・・え?」
「なんか主人がごめんね?何か粗相やらかした感じ?」
「・・・多分、紫は人と妖怪が共存できる世界を作るって言ってるんだけど、それを全否定されたのよ」
「あー・・・マスターならするかも」
「そ、そうなのよ!理想郷なんて無理に決まってるだろって・・・!」
幻夜さんは私を見ると、首を傾けた。
「無理じゃないの?」
「なっ・・・」
「例えば、理想郷を作るとする。でも完成したのを壊そうとするのは必ずでてくるし、作る途中で邪魔するのもいる。そいつらを薙ぎ払ったとして、その殺したやつら、どうなっちゃうの?」.
「それは・・・」
「数多の死骸の上で出来上がった理想郷を果たして理想郷と呼べるのか。そうマスターは言いたかったんじゃないの?まあ憶測であるし、理想見過ぎだけど」
あの口の悪い龍神にそんな意図があったのだろうか・・・
「後、多分だけど、侵二何も言わなかったよね?遊ばれてるよ?」
「遊ばれてる・・・?」
「うん、普通龍一が無茶苦茶言えば侵二が止める。止めなかったってことは、龍一がそこまで本気じゃなかったってこと。後話聞いてたら侵二が会わせた感じだよね?喧嘩するのわかってたんじゃない?」
「そ、そう・・・なの?」
「多分、試したんだと思う。ヘラヘラそんな事言ってるのか、糞真面目に考えてるのか。龍一、最後になんて呼んだ?」
「えっと・・・ファックユーと、クソ女と、年増・・・」
幽香が噴き出した。
「ブッ!年増・・・!!」
「煩いわね!」
「気に入られてるよ」
「え?」
驚いて幻夜さんに目線を合わせると、幻夜さんはにっこりと笑った。
「龍一が酷いあだ名つけたり、邪険に扱うのはそこそこ気に入った奴だと思うよ」
「そう・・・なの?」
うん、と幻夜さんは頷く。
「罵声暴言は当然。わざとしてるからね。変な奴だよ」
幻夜さんが突然ぴったりと幽香にくっつく。
「普通にこうやって愛情表現すればいいのにねー」
「あれ・・・どっちが先に惚れたの?」
「僕」
「そうなの!?」
「うん。一目惚れ、かな。・・・いやもう見た瞬間可愛くてさ、ギュってしたくなった」
長い付き合いではあるが、久しぶりに幽香の顔が赤くなったのを見た。隣で幽香が爆発している。と言うか私も恥ずかしい。
「あれ、また赤いけど、熱?大丈夫?結婚する?」
「・・・だからこれは、違うのよ・・・」
幻夜さんと言うとんでもないイケメンが隣にいる幽香を羨ましいと思っていたけれど、これだけは要らないかな・・・と思ってしまった。
聞いている私も恥ずかしいと感じてしまう。(ごく一般的な常人の思考です)
幻夜さんはニコニコと笑いながら、私の方を向いた。
「で、ゆかりんは「ゆかりん!?」いいでしょ?ゆかりんは結局理想郷を作りたいんでしょ?」
「それは・・・勿論!」
「なら良いの。理想郷がもし出来たら僕も誘ってよ。幽香と行くから。・・・あ、後ここから東に飛んだ先の天狗が多い山にも知り合いがいるから、住人が欲しけりゃ行けばいいよ」
でも、と幻夜さんが続ける。
「風魔って奴には真正面から語り合わないと全部見透かされるよ。回りくどい事言ってると風魔は手伝ってくれないと思うよ。ま、そのかわりちゃんと頭下げて、意思を伝えたら何かと助けてくれると思うよ。同じ山に壊夢ってのがいるけど、それは多分何言っても乗ると思うよ。・・・よ。ばっかりだな僕」
「ありがとうございます・・・」
「良いの良いの。正直面白そうだし、僕も乗るよ。・・・龍神も何かとブツブツ言いながら手伝ってくれると思うよ。優しいから」
「そうよね。紫、あんた何か龍一さんに失礼な事したんじゃないの?」
「何もしてないわよ!そもそも侵二さんに突然捕まって龍神に投げられたの!」
「・・・巡り合わせだね」
「え?」
幻夜さんがお茶を啜り、目を細める。
「君が捕まえようとした妖怪は侵二で、侵二は僕らと出会って見境なく食べる事をやめていて、僕らは龍神と出会って、面白そうだからこっちに来た。それは言えば君と龍一が出会うのはこの巡り合わせがあったからこそ。そして僕達はたまたま鬼や天狗と言った妖怪達と知り合い。偶然にしては、よく出来てる」
天の配剤って知ってる?と、幻夜さんが笑う。
「天は程よく巡り合わせの機会をくれる。そしてゆかりんはその良い巡り合わせを引いている。・・・出来ない人にはこんな巡り合わせはないさ。・・・出来るよ、頑張れ」
涙が溢れた。
「・・・あれ!?何か泣かせるような事しちゃった!?」
「ううん・・・その、初めて応援されたから・・・」
「・・・ん?それは違うよ。初めては龍一だ。嫌味に混ぜてると思うけど、「信じられないなら俺を見ろ」みたいなこと言わなかった?」
私は涙を拭きながら、あの龍神の言葉を心の中で反芻する。
「確かに言ってたけど・・・」
「困ったら役に立たんかもしれんが参考にしろ。って意味だよ。口悪いからよくわかんないだろうけど、万が一の時、頭下げて頼んでごらん?多分嫌味言った後にどうして欲しいか聞いてくるから」
不器用なんだよ。と幻夜さんは笑った。
「龍一は同じ立場の生き物がいないからさ、常に畏れられて、信仰される。・・・それが嫌だから、わざと冷たかったり、嫌味吐いたりするんだよ。多分」
まあ、理想郷を作るなら手を組まないと難しいよ?と幻夜さんは真面目な顔をして言った。
「ま、いきなり名乗ってそれは怒るよね。侵二も分かってるなら止めて欲しいんだけどね・・・」
幻夜さんは溜息をつき、突然立ち上がった。
「じゃ、あとは積もる話もあるだろうから、二人でゆっくりしててね。僕はちょっと買い物に行くから。このキャラ疲れたし」
そう言うと幻夜さんは手を振って歩き去ってしまった。
「・・・いい人でしょ?」
幻夜さんが去った後、幽香が先ほどと同じように少しイライラさせる笑顔を見せた。
「ええ、初めて会った時にいきなり殴ってくるような暴力的な貴女には勿体無いわね」
「・・・そうよね」
殴ってくるかと構えたが、幽香はそのまま頷いた。
初めて彼女に会った時、問答無用でぶっ飛ばされかけた。しかしなんとか勝負を引き分けに持ち込み、なんやかんやあってそのまま仲良くなった。少し暴力的な筈の彼女が殴ってこないのは珍しい。
「・・・ねえ、紫」
「・・・何?」
「す、好きな人とのキスって、な、何年付き合ってからすれば良いのかしら・・・」
「・・・勝手にしてなさいよ」
私から見ても美人で、それでいて優雅で力強い筈の彼女。それがどうだ、目の前で見たこともない程焦った表情で、いきなり恋愛話を持ち込んで来た。明日は吹雪だろうか。
「そもそも向こうが好きになったから、貴女は受け身で付き合ったんでしょ?なら貴女からキスするくらい良いじゃないのよ。そもそもどれくらい好きなの?」
「べ、別にそんな、すごく好きじゃないわよ!?・・・ただ、私より強くて、朝起きると朝ご飯作ってくれてて、笑いながらおはようって言ってくれて、水やりしてる時も、日差しが強い時にそっと日傘添えてくれたり、私がありがとうって言うと、凄く綺麗な笑顔を見せてくれたり、眠い時に頭撫でて寝かせてくれたり、逆に時々私の膝の上で、私の名前を呼びながら眠ったり、子供みたいに甘えてくるのが良いなって思うくらいで、私から求めてるんじゃないのよ?別にそこまで・・・」
「ベタ惚れじゃないのよ」
一体幽香に何があったんだろうか。少し前までは想像も出来なかったと言うのに。
幻夜さんが混沌なのも納得が行く気がしてきた。
あの人は幽香をも落とす、根っからの魔性の人だ。
「・・・なんか、最近変な事ばっかりね」
まるで別人のような友人を見ながら、私は深い溜息をついた。
次回へ続く
年下の異性に対しては比較的優しい幻夜君。
尚同年代や年上の同性にはボロクソに言いまくる様子。
・・・ダメだ相当のクズだ。
次回もお楽しみに。