二年で投稿速度だけが売りだった駄作のくせしやがって凍結させてんじゃねえよ。って感じですけどね。
ゆっくりご覧下さい。
幻夜さんに風魔さんと壊夢さんを紹介されて一週間後、私は風魔さんの下へ向かった。
私は妖怪の山を登るが、すぐに違和感に気がついた。
「よう、お嬢ちゃん、天魔様のとこまで行くんだよな?この先川だから気をつけろよ」
「この先は入り組んでいる。あの鞍馬のアホはそこまで気が回らんかったようだから、私が案内する。足元に気をつけろ」
前までは多種族を受け入れず、ピリピリとしていたはずだったのに、異種族どころか部外者の私を迎え入れてくれた。
「・・・あの、天狗は多種族を受け付けないのではないんでしたの?」
「ああ、そんな時期もあったな。・・・今の天魔様が「阿呆が」と一喝され、廃止された。正直今の方が正しいと我々は思っている。・・・天狗でも無いのに、あの人は凄い方だ」
白い狼のような天狗の犬走と名乗った人はそう言うと、しみじみと上を見上げて笑った。
「後、この先の沢には河童がいる。今はまだ引っ越して間もなく、風魔様が湖を作ったばかりなので、会うことはできんがな」
犬走さんはそう言うと、洞穴を指差した。
「そこには鬼達がいる。・・・身分上彼等が上だが、鬼の頂点に座する人も変人でな。我々に簡単に頭を下げるような人だ。・・・何故か此処は、鬼、河童、そして我々天狗がまあ仲良く過ごしている、不思議な場所だ」
犬走さんは誇らしげに笑うと、目の前の館を指差した。
「風魔様に用件だったな。少し待ってくれ」
そう言うと犬走さんは跳躍し、二階の窓を割って飛び込んだ。
・・・いやいやいや!?窓割ったの!?
しばらく何かを話す声が空気の通りが良くなった窓から聞こえ、やがて声が聞こえなくなり、再度窓から犬走さんが降りてきた。
「上がって来て構わない。迎えの一つも出せずにすまない。だそうだ。・・・すまんが、今日は特別風魔様がおかしい日でな。まあ気にしないでくれ」
私は混乱しながら犬走さんに案内されると、既におかしかった。
散乱する書類の山・・・ではなく、検と判子の押されたきっちり重ねられた書類の山、小気味良い判子の押される音、隣で叫ぶ女の人の声。
戦慄しているうちに、犬走さんが戸を開くと化け物がいた。
「二万と三千四百八、二万と三千四百九、二万と・・・」
「そろそろ寝てくださいー!私が一週間休みましょうって言ったのは謝りますからぁ・・・!」
「風魔様、お客様です」
「待て。二万と三千四百十・・・終わった」
風魔と呼ばれた人は、首筋に二本ほど何かを刺し、目の下に真っ黒なクマを見せながら血走った目を気味悪くギラつかせていた。
「風魔様、よろしいですか?」
「・・・あ、ああすまん寝た」
目の前に寝たと言いながら書類を纏め上げ、横に乗せた目の前にいる人、いや亡者。
この人が風魔・・・?と思っていると、ニヤリと笑われた。
「今、この人が風魔・・・?と思ったな。残念だが私が風魔だ。此処一ヶ月の仕事を全て終わらせようとしていただけだ。あと首のは点滴だ。まあ体に注射する飯と考えればよかろう」
点滴と呼ばれた袋を握り締めながら風魔さんが笑い、まあ座れと促した。
「主上から話は聞いている。壊夢は二つ返事で「応、理想郷の完成、楽しみにしとるぜよ」との事だ。・・・さて、私からだ。無茶だと思うが、何故作ろうと思った」
「・・・今の人と妖怪の関係に、違和感を感じたからです」
「それは?」
「人は妖怪を恐れ、妖怪は人を食べます。それは不変ですが、その間に起きる友情などを、無下にはしたくないのです」
「ふーむ・・・まあ悪くはなかろう」
チラリと風魔さんは隣の女性に視線を移し、下がってくれと言った。
「・・・さて、これはとあるお伽話だ。まあ、参考にならんかもしれんが、聞くといい」
風魔さんは眠そうな目を擦りながら、小さく笑った。
「・・・ある所に男がいた。その男は若くから兵士として働き、何度も戦場を掻い潜り、戦場で死んだ。・・・ところが男は目を覚まし、次に目を開けると、子供になっていた。しかも周りを調べると、自身がいたところよりも未来に、だ。男のいた時代は過去として歴史に刻まれていた。成人したのち、此処でも男は戦場に直面した。休みなしの仕事、朝から晩まで低い賃金での労働。次第に心と体はボロボロになり、自ら命を絶った。その後も何度も男は死んでは別の時代へ飛び、様々な方法で死んだ。・・・面白い事に、男は常に人間であり、人が争いをやめない事を熟知した。・・・奇跡か、転生を百ほど繰り返した男は人間以外に転じた。今までの記憶から、人間の事はとても知っているそうな」
語り終えた風魔さんはふうと息を吐くと、厳しい顔になった。
「このように、人生を百ほど繰り返した中でも、人間の争いが無い時代はなかった。・・・地獄だぞ?利があれば簡単に裏切る、殺す。自分さえ良ければと簡単に人を売る。・・・美しい面もある。だがクソ程汚い事もある。それを受け入れてこその理想郷だが、それでもするのか?・・・ついでに言うと妖怪の方もクソさは似たようなものだぞ?」
私は頷いた。
その程度の苦行は分かっているし、その覚悟もできている。
「なら良い。・・・さぞこの話に出た男も見てみたいだろうよ。適当な援助はしよう。後、暇を持て余して何処かに行っただろうが、隣にいたのは嫁だ。伊織と言う。まあ仲良くしてやってくれ」
風魔さんはそう言うと、椅子にもたれ、息を吐いた。
「好きに見回るといい。多分もうすぐ伊織が帰る・・・案内を頼めば受けてくれるだろう・・・すまん、寝る」
そう言い残すと風魔さんはぐらりと揺れ、机に突っ伏して動かなくなった。僅かに寝息が聞こえ、風魔さんが寝たのだと分かる。
「・・・もー!ほんとに寝てどうするんですか!・・・あ、紫さんですね!私は伊織です、そこで寝てる風魔の奥さんです!」
「はい、紫と言います。・・・あの、風魔さんが伊織さんに案内してもらえと・・・」
「聞いてますよ!じゃあ行きましょう!」
そう言うと伊織さんは私の手を掴んで強く引っ張ってきた。
「とりあえず上から見て行きましょう!」
私が伊織さんに引っ張られていくときに、後ろで書類を持ち上げる風魔さんが見えたのは気のせいだろうか。
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「あとは此処ですね!此処は鬼が住んでます!」
伊織さん・・・いや、伊織に連れられ、山の中腹辺りに来た時に、巨大な穴があった。
「ここは壊夢さんが拳骨一発で開けたんですよ。・・・茜ー!いますかー!?」
伊織の叫びは洞窟に反響し、何度も木霊する。
しばらくすると巨大な人影が奥から見え始め、洞窟の前に現れた。
「何さね、伊織?」
「お客さんです!壊夢さんはいますか!?」
「いるよ。・・・壊夢!客だよ!」
茜と呼ばれた人は伊織と比べ物にならない声量で叫ぶと、洞窟の奥で巨大な闘気が動いた。
・・・と言うか、今まで分からなかったが、奥になにかとんでもないのがいる。
「おーう。・・・お、前に幻夜の言うとった妖怪ぜよか!俺が壊夢、こっちが嫁の」
「茜。一応鬼子母神だよ」
とんでもなかった。てか目の前の女の人もとんでもなかった。
「・・・で、幻夜の言ってた妖怪ってのはなんだい?私ゃ初耳だよ?」
「おお、そうだったぜな。・・・こいつは紫。妖怪と人間が共存できる理想郷を作りたいっちゅう妖怪ぜよ!」
「面白いね。・・・私も見れるなら見てみたいねぇ」
「おお、やっぱそう言うぜよか!って事でもう手伝うって言っとるぜよ!」
「お、ならいいね!・・・私も一度とんでもないのと喧嘩したからね!もう一度、今度は本物と会いたいね!」
「とんでもないのってなんですか?」
「ありゃ?伊織には言ってなかったかな?一回大昔に、私をぶっ飛ばした人間がいたんだよね!」
「どんな人ですか!?」
私は咄嗟に口を開いてしまった。そんな人がもし本当にいたなら、理想郷設立に大きく近づける。
茜さんは驚いたようだったが、すぐに壊夢さんを指差した。
「こいつの主人だよ。あの時、わざわざ人間に体を置き換えて喧嘩しに来たんだよね。・・・まあ、純粋な人間ではないよ」
またあの龍神かと、そう思ってしまった。
「そう、ですか・・・」
「あの時は・・・そうそう!人間と一旦手を組んでほしい!みたいな事を頼まれて受けたんだった」
「の割に、俺らが向こうで人間殺しとったのを見せてもなんも言わんかったぜよから、何がしたいか正直分からんぜよ」
「風魔がいるって知ってるのに攻めてきたりもしてましたしね」
「まあ、聞きたけりゃ侵二か起きとる風魔に聞けばええぜよ」
尚更あの龍神の事が分からなくなった。
一体・・・何なのだろうか、あの人は・・・
次回に続く
ありがとうございました。
良ければ産業廃棄物と駄作をこれからも宜しくお願いします。
次回もお楽しみに。