真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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転生ってどんな気分なんですかね。
別に異世界には行きたくないんですけど。
死後の世界には行ってみたいですね。


ゆっくりご覧下さい。


第五十二話 詠

私達がぼんやりとしたまま待っていると、小走りでこちらに来ている足音が聞こえた。

即座に侵二さんは輝夜を簾の奥に、私は龍一の着ている服の中に隠される事になった。

元が嫌いな奴なのに、やけに良い匂いと気分の良くなる暖かさに包まれているのが腹立たしい。

 

 

「妹紅?・・・いかん此処はダメだ!」

 

 

貴族のイメージでは小太りの人を考えていたが、そのイメージとはかけ離れた痩身の男性が部屋を覗き込み、奥に輝夜がいると悟ったのか引っ込んでしまった。

龍一は面白そうに開いてますよと言うと、おずおずと痩身の男性が現れた。

 

 

「いやはや、申し訳・・・妹紅!?」

 

 

「あ、お父さん!」

 

 

妹紅と言うらしい女の子は痩身男性にしがみついた。

父親であろう痩身の男性は安心したようにその場に膝をつき、息を吐いた。

 

 

「やめておくれ妹紅、心臓に悪いよ・・・」

 

 

男の人はしばらく膝をついていたが、どう言った場所なのか思い出したのか、慌てて立ち上がった。

 

 

「すいませんでし・・・んんっ、此度は本当に申し訳ありません。無礼をお許しください」

 

 

許す、と簾の奥で輝夜が言うと、龍一が吹き出しそうになっていた。

 

 

「いやはや失礼致した。・・・ところで、奥におられるのは輝夜姫か?私は藤原不比等(ふじわらのふひと)と申す。野次馬根性で・・・おっと失敬、是非一度見てみたいと思って尋ねようとしておりました。ではこれで」

 

 

龍一さんがずっこけた。え?いやおま、求婚は?と何か言っている。

 

 

「・・・お付きの人、如何されました?」

 

「いや、求婚は?しないとかバンブーテイクストーリー崩壊必至なんだけど?」

 

 

「バンブー・・・ん?」

 

 

私や輝夜、妹紅、それに侵二さんも何を言っているか分かっていないようだったが、不比等さんは龍一を信じられない目で見ていた。

 

 

「何故英語を?」

 

 

「ふむ?・・・今は昔、竹取の翁といふものありけり」

 

 

「の、野山にまじりて竹を取りつつ、よろずのことにつかひけり」

 

 

「貴様、さては二度目だなとなんいひける」

 

 

「その同類の人に、マジ同じ人いると思わなんだりける」

 

 

龍一と不比等さんはしばらく睨み合っていたが、やがて服の下に隠していた私を出して硬く手を繋いだ。

 

 

「オメーもか。まさか俺以外に普通の奴がいるなんてな」

 

 

「驚きましたぞ。・・・ああ、この口調は何せ長年貴族として過ごしたせいで染み着きましてな・・・直らないのです」

 

 

「まあ大して気にしないぞ?・・・ってかなして輝夜に求婚しないんだ?」

 

 

「いやいや、流石に偽物を作って送って給料をよこせと迫り来る職人のせいで失敗するのは真っ平御免でしてな。そもそも私に今妻がいることが奇跡です。・・・何故藤原家の重役に生まれたのかは分かりませんが、全うするつもりではあります」

 

 

「やっぱ普通に人間に生まれ変わることもあるよなあ。聞いて驚くなよ?二回目が龍神だぜ?俺は一般人矢川さんだったんだぞ?」

 

 

「龍神・・・とはまた驚きましたな。すると貴方は龍一殿ですかな?」

 

 

「ん、まあせやな」

 

 

「お疲れ様ですな」

 

 

「まあ面倒だが、好き勝手出来るからなぁ。・・・まあ世界征服とか怖くて出来んけどさ」

 

 

「でしょうな」

 

 

あんな凄い事無理無理、と龍一は笑うと、不比等さんもつられて笑った。

 

 

「あ、そうだ。・・・輝夜、別に出たいなら出て良いぞ。このおっさん・・・?「前と合わせると40は超えてますな」おっさんは結婚する気微塵もねえぞ」

 

 

龍一はそう言い切ると、まさかねえ・・・と楽しそうではないけれど、笑った。

しばらく輝夜は迷っていたようだが、やがて簾を上げた。

 

 

「ほぉ・・・綺麗ですな」

 

 

「そんだけ?」

 

 

「そんだけ」

 

 

「ほら見てみいや。この野郎既に今の人生で満足してやがる。はい、求婚者リスト一人減らすぞ」

 

 

そう言って龍一はいつ作ったのか一枚の紙にバツ印を付けた。

後は頭下げて断るのが一人、市場崩壊させて壊すのが一人、幻夜に沈めてもらうのが一人、と次に行くたび物騒になっていく方法を呟く龍神様に私は頭を抱える。この人頭おかしい。

 

 

「・・・あ、で、不比等さん、この世界が東方プロジェクトって言うの知ってるか?」

 

 

「東、方・・・知人が知っていましたな。ゲームだったと思いますぞ」

 

 

「ほー、そう言う世界なのか。何せ前世じゃ死ぬ前は銀英伝しか見てなくてな。原作読んでさあアニメ・・・ぐらいでこんがり焼けて死んだ」

 

 

「残念ですなぁ・・・私は老衰でしたからなぁ」

 

 

「うーわ羨ましい」

 

 

ふと横を見ると、侵二さんがとても嬉しそうに笑っていた。

侵二さんは私が侵二さんを見ているのに気がついたのか、にこりと私に笑った。

 

 

「どうしました?」

 

 

「いや、その・・・嬉しそうだなって」

 

 

「そうですねえ。主上が珍しく話が合う人と会って話してますからねぇ。そりゃ主人が嬉しけりゃ部下も嬉しいですよ」

 

 

その後もしばらく龍一は不比等さんと話し、いつのまにか日が暮れていた。

 

「やべ、もうこんな時間かよ。・・・なんかすまんな、変に話し込んで」

 

 

「いやいや、こちらこそ楽しかったですぞ。まさか同じ境遇の方と会えるとは・・・さ、妹紅、帰るぞ」

 

 

「また来ても良い?」

 

 

「うーむ・・・「好きに来ていいと思うぜ。輝夜も姉になったみたいで面白がってるしな」・・・ではお言葉に甘えます」

 

 

「おう。んじゃ侵二、俺送ってくるからクソ・・・んんっ、紫と輝夜頼むわ」

 

 

「畏まりました」

 

 

龍一はそう言うと不比等さん達と去って行った。

私はそれを見届けた後、侵二さんに聞いた。

 

 

「どうして侵二さんはアレに仕えてるの?」

 

 

あ、私も気になるーと輝夜も賛同してくれた。

侵二さんはあー、と呟きながら私の方を向き、侵二さんは自分の顔を指差した。

 

 

「では、私のここをよく見ておいて下さいね」

 

 

侵二さんがそう言ったのち、私は吐きそうになった。

動いている。それも侵二さんの顔ではなく、皮膚の下に何かが這っているようで、モゾモゾと蠢いている。

更にそれに留まらず、侵二さんの口が横に割れ、人一人の頭を飲み込めそうなほど開いた。

輝夜も同じ感想なのか、顔を青くしていた。

やがて侵二さんだったものは地面から響くような声を出した。

 

「このように、ご存知の通り私は化け物です。そりゃもう神々がその場でゲロ吐く程の醜悪さです。・・・これ見て主上、なんて言ったと思います?」

 

 

侵二さんは元に戻ると、ニヤリと龍一っぽく笑った。

 

 

「ほお、見世物小屋に出れば長蛇の列で、飯食う時もばっくり行けるな。ですよ?笑いましたよ」

 

 

「あの人は私を私として見ている。異形の饕餮ではなく、一人の部下の侵二として。・・・後は単純に私をすっ飛ばしたぐらいですかね」

 

 

侵二さんはそう言うと、さらに続けた。

 

「他のも同じですよ。・・・指先一つで生物の人生を左右できる幻夜、欠伸しながら国を一つ滅ぼせる風魔、笑いながら拳骨で地面を割る壊夢。・・・本来ならあんなに世界に馴染めないはずだったんです。正義を称した殺戮者に倒されるべき存在だったんです。・・・ところがあの主人は我存ぜぬと言わんばかりに全てを薙ぎ払ったのち、配下に我々を置いた」

 

 

「我々を初めて生き物として見てくれた人。それが主上なんです。だから、と一様には言えませんが、まあ原因としては大きいでしょう」

 

 

侵二さんはそう言って微笑み、答えになりましたか?と聞いてきた。

私は頷いた。

 

 

「なら良かったです。・・・主上は日の当たるところにいる者たちからすれば、厄介者であり、理不尽の象徴でしょう。しかし、我々のような日陰で生きる様な者にとっては・・・間違いなく唯一無二の神様です。それはもう日を求める我々にとって唯一の光なんです」

 

 

そう言って笑う侵二さんはどこか悲しそう、と言うか、なんとも言えない、それでも暗い表情をしていた。

 

 

次回へ続く

 

 




ありがとうございました。

野郎の目が殆ど死んでるんですけど、過去作もこうしたかったんでしょうね(諦め)
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