最近あらゆる吉事が巡ってきてます。
ああ来年が怖い。
ゆっくりご覧ください。
夜だ。
万人が来ることに何も感じず、数名が来ぬことを願っていた夜だ。
だが、俺と侵二は間違いなく望んでいた夜だ。
先日竹林に館を設立し、以後ここに隠れられるようにした。
その為月からの迎えと称した程のいい研究サンプルの捕獲は今回で最初で最後という訳だ。
俺はゆっくりとライフルを構え、スコープを覗き、降りてくるはずのロケットのアンテナに狙いを定め、造作もなく引き金を引いた。
もう勝ったも同然だ。
「・・・はい、終わり。あとは降りてきたら消すだけ。簡単だな」
「お疲れ様です」
既に戦勝ムードなのに違和感を覚える奴もいるだろうが、どう見ても勝ちだ。
俺はかつて月で開発仲間の永琳とあらゆるものを作ってきた。
・・・つまり、俺は大半の月の兵器の欠点を知っている。いや、あえて作っていた。非国民待った無しだ。
例えば今降りてこんとするロケットは四つエンジンがあるのだが、上から見て右上のエンジンは起爆しやすい。後はアンテナが外部付けなのでロケット内は広いがアンテナが破損すると通信機能が断絶する。
永琳は薄々気がついていたようだが、今のロケットを見て確信した。わざと作り直していない。
「・・・こりゃ悪友確定だな」
初めての異性の悪友に若干心が踊りつつ、俺は永琳が元気であることを願う。
出会いはトーストを咥えて角を曲がって激突するようなありえない展開だったが、技術関連を含めば仲良くなるのは当然で、永琳は最初で最良の友人だ。元気であれば挨拶の一つや二つは送ってやりたい。
・・・さて話を戻して、他にも月の兵士の欠点はある。
所持しているライフルは二発撃つたびに一秒のクールタイムを要し、装備している電磁ナイフは水に濡れると放電する。双方バカ火力なのだが、このようにちゃーんと欠点がある。
変人部隊のアホ共には俺特注の欠点のない武器しか寄越していないので、ある意味俺の残した爆弾は持っていない。
やり方が卑怯なのは承知しているし、とても人間とは思えない行為なのは分かっている。
だが俺はそうしないと勝てないし、そもそも龍神だ。何をしようが、
「俺の勝手だ」
通信機能を失ったロケットを眺めながら、俺は着陸するのを待った。
「龍一!聞こえる!?」
待っていると、突然脳内に声が響いた。
「うっせーぞクソ女、んな騒がずとも聞こえてらい。・・・着いたか?」
「一々うるさいわね・・・着いたわよ、そっちは?」
「もうちょい。後永琳が元気なのは間違いないって輝夜に伝えといてくれ」
「分かった。・・・実力、見せてもらうけど無理しないでね」
「ありがとよ、お前もな。・・・明日は吹雪だな」
何ですって!?との叫び声を無視しながら紫が掛けてきた脳への通信を切る。これ以上は罵声の応酬になるのでやめだ。
やがて不細工にも頂点が破損して焦げたロケットが降り立ってくる。
ドアが開いたかと思うと、十数名が現れた。目を引くのは二人。
片方は言わずもがな永琳だ。都と同じ衣服に同じ弓を担いでいる。
もう片方は他十名と衣服は違っていない。しかし空気が一人違う。そいつは出てきた十数名の最後尾に並び、静かに俺を品定めするように眺めている。顔はフルフェイスのヘルメットで見えない。
「輝夜姫を差し出せ」
「拒否する。うちは蕎麦屋だ」
一人の男が口を開く。が予想していた発言だったので即回答する。
男は顔を歪めた。
「私は冗談は嫌いだ。差し出せ」
「俺も冗談は嫌いだ。うちは蕎麦屋だ。輝夜姫なんかいねえよ」
刹那の発砲。全て俺に命中し、レーザーが俺を貫通する。痛いのでとりあえず倒れておく。どれくらい痛いかは・・・そうだな、道で転んだ程度だろうか。
「貴方何を・・・!?」
慌てて永琳が制止しようとするが、男は返事もしない。
「隣の男に聞く。輝夜姫はどこだ」
「うちは蕎麦屋です」
侵二がどこから持ってきたのか看板を掲げて微笑む。どっから持ってきやがった。
やがて三連続蕎麦屋の回答はマズかったのか、男が地団駄を踏んだ。
「いい加減にしろ!さっきから貴様らはずっと蕎麦屋だ蕎麦屋だと!我々はわざわざ穢れた地にまで漫才を見にきたのではない!正直に言え!さもなくば貴様も殺す!」
俺死んだ事になってるよ。
侵二は寝そべった俺を見ると、合点した表情を一瞬見せて微笑んだ。
「すみませんでした。中華蕎麦屋ですね」
その通りだ。俺は一時期時系列滅茶苦茶の元のラーメン店を開いていた。ラーメンは中華蕎麦だ。と言うかよく見ると侵二の持っている看板は俺の店のだ。違うそうじゃない。
「・・・っ!やれ!」
理不尽にも光線が侵二を刺し貫かんとした時、永琳が直接止めた。
「やめなさい!」
「ええい黙っていろ!貴様も撃つぞ!」
しかし激昂状態の男は永琳に銃口を向けた。
瞬間俺の体が動き、俺は男の銃を奪った。
・・・念の為行っておくと、俺はこの時銃を奪っただけだ。手を下してはいない。
「あ・・・?」
ところが、男は倒れ伏した。と言うか死んでる。
俺はキレすぎによる心筋梗塞を疑ったが、どうやら違うらしい。
刺し傷があった。それも心臓を正確にブチ抜いた小さな穴が。
「ど、どうなって・・・!?」
「まさか、この男が・・・?」
俺に警戒の視線が向けられるが、生憎そんなこんにちは死ね!みたいな事はしない。隣で看板担いでるやつはこんにちは頂きますをやりかねんがな。
「いやいや、俺してないからな?そもそも撃たれて動いてることに先驚けば?後こいつの背中に刺し傷あるぞ刺し傷」
兵達がどよめく。
「このやり方・・・武田上級大尉じゃないのか・・・?」
「まさか、病死したはずだろ・・・?」
「いや、今も月読命様の下で働いてるって聞いた事が・・・」
色々と飛び交うが、一人の男が手を挙げた。
「と、ともかく、我々は蓬莱山の回収を・・・」
「いやまあさせないんだけどさ」
俺は侵二から看板を取り上げ、動こうとした男に投げつけて武器を弾く。俺の身体能力に違和感を感じているようだが、この時代にライフル担いでる違和感を先に察しろ。
「貴方・・・」
永琳は何かに気がついたのか、頭を抱えた。多分考えてる事合ってるんだよなあ・・・
「あ、バレた?隠す必要もないな。・・・御機嫌よう、いつぶりかね。変人部隊の元ボスの矢川だ」
「・・・ん」
最後尾の男が反応した。もう察した。薄々分かってたが確信した。
武田だ。
「鏡一・・・ふふっ、元気だったのね」
俺だと分かって永琳は笑った。
「ああ。文字通り倒し過ぎて生きてたぞ」
「皆喜ぶわね」
「行かねえけどな」
「・・・まさか、矢川准将が生きて・・・!?」
待てや、准将とか聞いてねえぞ、前は大尉だったのに何階級上がった。と言うかやはり、俺が死んだと言う話が表面的にあるらしい。
困惑していた兵士たちが俺の指差した先を見る。
その先には空気のおかしい奴が立っていた。
「お前がやった。間違いないな武田」
「・・・はい」
久々に聞いた部下の声は硬い金属のような声だった。
昔とまるで違う。やはり薬を飲んだのは間違いないようだ。黒百合にでも乗ってろ。
「飲んだな」
「すいません」
「アホ」
「はい」
「良いよ。困るのはお前だ」
俺は兵士達を見ると、武田と俺が生きていたことがどうしても信じられないようで、まだ騒いでいた。
やがて落ち着いたのか、俺達に向かって手を上げた。
「我々は降伏、このまま撤退します」
「およ、良いのか?」
若い男・・・さっき看板を投げつけた奴が口を開いた。
「はっ。私は月読命様から蓬莱山の安否確認のみを命じられておりました。・・・更に私情ではありますが、私は御三方に憧れておりました。こうして会っておられるのを妨害する事こそ違反と判断しました。全体撤・・・!?」
男がそう叫ぼうとした時、2台目のロケットが降り立った。
「なっ・・・!?」
出てきた集団は瞬く間に俺たちを囲み、そのうちの一人が笑った。
「そこまでだ。蓬莱山は我々化学班が回収する。軍は下がってもらおうか」
「なっ・・・!そんな事が許可されると思っているのか!?」
「思ってないからこうして強硬手段に出ているのであろう?・・・拘束しろ!」
何やら様子がおかしい。軍の奴らも知らなかったらしく、拘束され始めている。
「しゃーねーな」
俺はこちらを見つめている武田に笑う。
「慌ただしいがやるぞ」
次回へ続く
ありがとうございました。
来年腕とかボッキリいきそうです。
次回もお楽しみに。