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「今回はお前と組む」
侵二さんにも叩きのめされた次の日、私は再度龍一に頼んで弾幕勝負の場を整えてもらっていると、そんな事を言われた。
「え?どうして?」
「・・・俺もやりたくなったが、お前は既にのめしたからってのと、今日来る奴が変わったからだな」
そう言いながら龍一が空間を開くと、侵二さんと風魔さんが現れた。
「壊夢がちょっと無理って事でこの二人が来た。・・・しかもコイツらが組みたいだと。んで1対2も嫌だろうから俺が味方。・・・ま、邪魔にならんようにする」
何故か龍一の声に覇気が無かったが、何故かと聞くと急に暴れそうだったので頷くだけにした。
「・・・あー、クッソ、おら、てめえらさっさと来やがれ!」
「夫婦漫才中に構わんのか?」
「んだと殺すぞァァ!?」
「餓鬼か」
「よし決めた殺す。ぜってえ地面に這いつくばらせてやる」
「やってみるといい」
「お望み通りにしてやらァァ!・・・さてと、んじゃやるか」
先程まで風魔さんに第三者の私でも凍るような殺意を向けていた龍一だったが、首を曲げた瞬間いつも通りに戻った。
「チッ、煽りは無効か」
舌打ちをする風魔さんに龍一は中指を立てた。
「見え見えなんだよ、バーカ。おい紫、さっさとしろ」
それでもやっぱりいつもと何か違う龍一に急かされ、私は弾幕を構えた。
「んじゃ行くぞ」
刹那龍一と風魔さんの姿が消え、侵二さんの翼十一枚が上空を駆け巡る。
一瞬困惑する私だが、すぐにその原因が分かる。
上空で龍一と風魔さんの腕が激突し、その背後で数百の弾幕が相殺し合い、再度二人の姿が消え、別の場所で弾幕と共に再度激突する。そして一瞬前激突していた場所を侵二さんの翼が襲いかかる。
「くたばれや鳥がァ!」
「誰が鳥だ!」
「うーん、速いですねぇ」
見えない。その事に衝撃を覚え、相手されていない事に怒りが沸き立ち、一瞬隙を晒した侵二さんに弾幕をぶつける。咄嗟に避けた侵二さんに何発か当たったが、以前には感じられなかった、どろりとした沼に沈められているような殺意の目を向けられた。
「おや失礼。相手してあげましょう」
刹那目の前を黒い何かが襲いかかり、私は首元に何かを引っ掛けられて引っ張られる。引っ張られる先を見ると龍一が風魔さんとぶつかりながら私を掴んでいた。そしてさっきまで私のいたところは翼で地面ごと無残に貪られていた。ゾッとした。
「馬鹿野郎!・・・って言っても俺が悪かったな!弾幕掃射準備!」
「え?」
「いいから撃つ準備してろよ!三秒前!」
龍一が風魔さんと離れ、私を放り投げる。私は飛ばされながらも命令通り弾幕の準備をする。
「撃てッ!」
龍一の叫んだ瞬間、私は龍一の空間で瞬間移動させられ、龍一と激突している風魔さんの背後に移動する。
私は龍一の意図が分かり、そのまま掃射する。
「何ッ!?」
直撃。当てた感覚と龍一の指示が分かった事に少し嬉しさを感じていると、目の前に翼が現れた。
「馬鹿め、読めてんだよ!次四秒前!」
再び龍一に掴まれ、龍一の背後に戻される。しかし今度は持たれているわけではなく、自由に動けと言う事らしい。
「死にそうになったらまた掴んでやる!好き勝手に突撃してこい!」
風魔さんに膝蹴りを叩き込みながら、龍一が笑顔を見せた。
・・・ほんの少し胸騒ぎがした。
「セアッ!」
「馬鹿め!拡散眼光!」
「何の光ぃ!?」
気のせいだと思いたい。目から光線を出して風魔さんを怯ませる奴なんかにドキッとしたくない。
そして四秒経過。再度私は瞬間移動し、今度は侵二さんの目の前に現れる。
目が合った。
「うぷっ・・・!?」
吐きそうになった。侵二さんの顔は半分黒い靄に侵食され、この世のものとは思えない威圧を放っていた。
ところが私の顔を見ると、ハッとしたかのように靄が消えた。
私はともかく弾幕を放ったが、全て紙一重の無駄のない動きで躱されてしまった。
「おや失敬。変なものを見せてしまいましたね。・・・どうも本気を出すとああなってしまう。どうにかならないですかね」
「知るか」
翼を振り回すのに飽きたのか、極太レーザーをあらゆる方向から乱射してくる侵二さんの攻撃を躱しながら、やはり風魔さんと激突する龍一が侵二に吐き捨てる。
ふと龍一の後ろに風魔さんの式神が迫っているのに気がつく。
「龍一!背後に一秒!」
「何ぃ?」
しかし龍一は瞬間移動で私を動かしてくれる。そこで私は空間内で自分の空間を開き、龍一の背後に回り、奇襲をしようとしていた式神を弾幕ではたき落とす。
「うへえ、ここに来て式神か。敵さん何体いますかぁ?・・・ちくしょ、泣けてきた」
龍一が嘘泣きの表情をしながら風魔さんの式神を掴み、逆に風魔さんに投げつけた。
「やるな」
「なんてな!紫!二秒から続いて三秒!俺とぶつかるんじゃねえぞ!?」
再度慣れた手つきで龍一に射出され、私は弾幕を再度準備する。
目の前に空間が現れ、そこに突入する。すると目の前を龍一が掠め、空間を出ると私のいた場所から現れた龍一が風魔さんを花瓶で殴っていた。
「ゴッ・・・!?貴様何処からそんな物を・・・!?」
そこに私の弾幕が迫り、風魔さんは墜落した。
「ざまあみやがれってんだ!後花瓶は俺の部屋の奴な!」
後は侵二さんが降参し、私達の勝ちとなった。
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「おい、クソ女・・・じゃなかった、紫」
「え、え?私?」
「お前自分の名前も忘れたのか?中々やるじゃねえか。初見で俺の秒式移動術に気づいたのお前だけだぞ」
終わって一息ついていると、龍一にそう言って褒められた。
ちょっとだけ嬉しい。
「・・・別に。偶々分かっただけ」
「そうか。ま、その勘があるのはいい事じゃねえかな」
続いてボソリと呟いた龍一の言葉に私は食いついた。
「・・・案外、お前なら理想郷作れるかもな」
「本当!?」
「いきなり食いつくな!びっくりしたじゃねえか!」
それで理想郷作れんのかよ・・・と龍一に言われ、少しむっとした。
「何よ。珍しいのに褒められて嬉しいから喜んでるのよ」
「・・・それもそうか。確かに褒めたのは珍しいな。問題行動ばっかだからな」
まあその方が可愛気があるからいいんじゃねえの?と龍一が笑った。
もうなんかダメだった。
見たことない顔で笑われた。いつもは顔の半分に影が覆うような笑顔しか見たことのなかった龍一が、眩しい微笑みを浮かべていた。
これでいつも馬鹿にされる事と理想を否定された事を除き、目から光線を出しているところを見ていなかったら惚れたかもしれない。
そしてタイミング悪く昨日膝枕をされていた事を思い出し、頭が熱くなった。
「どうした?侵二の殺意で体壊してたか?」
「・・・いや、違う、大丈夫・・・」
「あ?絶対大丈夫じゃねえだろ?頭借りるぞ?」
龍一に額を当てられた。
もうダメだった。爆発した。
「ほら見ろ熱出てるじゃねえか!ったく、さっさと永琳のとこ行くぞ!」
追い討ちのように龍一に背負われ、半分気絶した状態で永琳の所まで運ばれた。
初めは慌てて診断していた永琳だったが、気がつかれてしまったのか、途中から温かい目で見られてしまい、今も龍一と診断室に座っている。
「龍一、これはさっきから熱が?」
「多分。さっきまで元気に風魔と侵二とぶっ飛ばし合ってたからな」
「そう。一応薬は出しておくけれど・・・龍一、紫が貴方に恋愛感情を抱いていて、貴方にされた一連の行為が恥ずかしかったと推測出来ないかしら?」
吹きそうになった。
「は?お前頭やったか?頭借りるぞ」
龍一は私と同じように永琳に額を当てたが、龍一は顔を顰めながら離れた。
「・・・正常だな。そんな事ねえだろ」
「あくまでも仮定よ。恋愛感情を抱いてなくてもその程度ならなるわ。後あんまり異性にそうして熱を測ることはないと思うわ。私は貴方をそんな目では見ないから大丈夫だけど。・・・少し自重したらどうかしら?」
「・・・そんなもんだったか?「貴方完全に龍華様と月読命様に毒されてるわよ。普通しないわよ」・・・そうか」
龍一は私に向き、ごめんなと頭を下げられた。
「い、良い、大丈夫・・・」
「すまんな。これから自重する」
「そうして頂戴。・・・龍一、武田が呼んでたから向かってくれるかしら?」
「ん、了解。あと紫頼むわ」
龍一が姿を消すと、嬉しそうに永琳が私に微笑んだ。
「で、実際のところどうなの?」
「へ?」
「龍一の事。好きなの?」
再度爆発しそうになったが、落ち着いてよく考える。
別に顔は悪くない、むしろ好みではある。
運動神経は文句なし。
性格は拒絶していたけれど、近くにいると唯の口が悪いだけの悪人を装った良い人な気がする。というか多分根本的には優しいのだろう。
理想を馬鹿にはしたが、正論しか言わなかった上に協力してくれている。
・・・好きかどうかはよく分からない。
「・・・嫌い、じゃない」
「そう。・・・今はそれで良いと思うけれど、多少焦った方が良いわよ。本人が一人を愛するとか責任重大過ぎて無理って嫌がってるけど、何人も龍一に心臓を心理的に撃ち抜かれているから、本気で近づくなら急ぎなさいよ。・・・まあ、龍一も見た様子固まってはいそうだけど。しばらくその為にまた鍛えてるんじゃないかしら」
物理的に撃ち抜いたのには劣るけど、撃ち抜いたのは相当じゃないかしら、八百万の女神全員に一度は言われたらしいから。と永琳は笑った。笑い事じゃない。
「もしそうなるなら応援してるわ。じゃあこの薬、龍一に渡して頂戴」
永琳に笑われながら、私は龍一を探す為に部屋から出た。
次回へ続く
壊夢は弾幕が単発でしか出せません。
近接オンリーキャラですね、岩投げますけど。
次回もお楽しみに。