新年一発目からこれ、頭沸いてるんじゃないですかね。
さーて、おみくじは・・・
大吉でした。
凶が良かったんですけどね・・・
ゆっくりご覧下さい。
回復したものの失血が多く、まだ体調の悪そうな侵二さんを玉藻が奥の部屋に連れて行ったのを確認したかのように、龍一は私に悲しそうな笑顔を向けた。
「・・・アレを見ても、万人を理想郷に受け入れるか?」
無理だろ?とでも言わんばかりの龍一の目を私は睨んだ。
何度も染み入るように分からせられる。あの侵二さんですらこんな暗部を抱えていたのだ。どれだけ理想とする道のりが長いのか、遠いのか、手に取れるかわからないものなのか。
それでもやはり作りたいと思い、龍一の目を正面に捉える。
「・・・出来なくてもやってやるわ」
「なら良いんだ」
龍一はニヤリと笑うと、上を見上げた。
「正直な・・・俺もよく分かっていなかった。侵二にどんなトラウマがあるか、何に恐怖しているのか、どうして九尾を嫌うのか・・・嫌、嫌ってなかったな、あれは嫌われたかったんだ」
「分かんねえ事ばっかだったよ」
けどな、と龍一さんは手を握りしめた。
「俺はアイツら抱えて暴れるって決めたから、あのクソどもは俺が管理する。・・・だが今回は助かった。ありがとうな」
龍一さんはそう言うと、お前と玉藻の分の飯作ってくるわと立ち上がった。
その時、ふと気になって私は龍一を呼び止めた。
「待って・・・」
「あ?飯済ましてきたか?」
「・・・玉藻の旦那さんはどうしたの?全然その話が出ないけど・・・」
私がそう聞くと、龍一はわずかに目を見開き、目のハイライトがわずかに消えた。
「・・・お前みたいな勘良すぎる奴は嫌いだよ。俺は侵二みたいに優しくねえんだ」
「まさか、殺したの・・・?」
私の絞り出すような問いにまさか、と龍一は笑う。
龍一は両手を広げ、口元を歪ませた。
「全ては神が決めた事だ。神の気まぐれ、神のダイス、神にとって造作もない事。ふと面白くなったから人を消す。それは誰のせいでもなく、神に見初められたから消えたのである。また逆も然り、気に入られたからこそ生き延び、幸福を掴んだのである。そこに差はない。あるのは神に見初められた、見られた、気に入られたと言う事象のみ。気に入ったから殺し、気に入らなかったから消し、気に入ったから重罪を背負わせ、気に入らないから幸福にさせて目につかないようにする。この世界で大きな幸や不幸に巡り会わせたものは等しく神の慈悲を与えられたのだ。やれ身勝手だ悪魔だとなんとでも言え。全ては神の気まぐれである。そして関わった者たちの記憶からも消え去る。是即ち神隠しなりや。なんてな。何言ってるかわかんねえな。つまり神様はとある人間一人くらい、ぱっといきなり消すんだよ。気に入ったからとかの理由でな」
だが、と龍一は更に笑った。
「関心が湧いた故そいつの運命を捻じ曲げたのを殺したと言うならば・・・」
殺したな。消してやった。と龍一は顔を歪ませた。
「だがそれを知りえて何とする?俺を殺すか?見ぬふりをするか?感謝するか?否。そんな塵芥の存在共から言われる筋合いはねえ。龍神が直接手を下してるんだ、他は知らなくていい」
忘れろと龍一は私に近づき、トンと人差し指で私の額を突いた。
「俺が消すために殺した奴は無かったことになるんだ。これからずっと、な。・・・喋りすぎた。消させてもらおう」
・・・あれ、何を考えていたのだったか。
ふと龍一を見上げると、何か薄気味悪く笑っている。何かされたのだろうか?いや、しかしさっきまで話していた気がするので違うのだろう。
・・・ああそうだ、龍一は食事を作ると言って立ったんだ。
「・・・じゃ、お前と玉藻の分の飯作ってくるからな」
去っていく龍一の背中に違和感を覚えながらも、私は姿勢を崩し、仰向けに寝転がった。
疲労が一気に襲ってきて瞼が重い。
そのまま私は目を閉じた。
____________________
紫が眠ったのを確認し、俺は長い息を吐いた。
「はぁー・・・ったく、なんでそこに気がつくかねえ」
先程、まあ忘れてはいるが紫に説明した通り、
俺は世界から玉藻の旦那を存在ごと消し去った。
何、造作もないことだ。向こうは死ぬだけ、こっちは忘れるだけ。覚えているのは消した本人、そう、俺だけ。はい解決。
ま、俺が、俺だけの意思で直接殺した生物の事とその生物に関連のある事しか消せないのだがな。だから武田と潰した月の兵やらは消せない。それにこれからも消す気は無い。これは今回が特例だったためだ。侵二と玉藻の恋路の邪魔になったから消した。
よくあるだろう?唐突に誰かが不慮の事故で死ぬ事。ありゃ神様の気まぐれだ。
・・・クソだの外道だの何を今更。神様ならきっと誰だってする事だ。まさか神様に転生してヘラヘラしてこの先をエンジョイ出来ると思っているのだろうか?
まさか。悪く言えば前世よりハードだ。スペランカー並だ。
俺だって前世にラノべくらい読んだし、俺はそこで異世界転生をこう感じた。
ああ主人公はさも造作もなく別世界とは言え他人を倒すのかと。その倒した相手にいたはずの友、妻子、親はほったらかしかと。盗賊を倒してヒロインにチヤホヤされても盗賊の事を知っている友や親からすれば主人公こそ盗賊だ。倒すべき悪魔だ。
主人公という存在は味方からすれば謎の力で活躍する英雄ではあるが、蹂躙された敵軍から見た主人公は突然現れた化け物だ。絶望する。
とは言え血生臭い異世界なら不殺は無理だ。そこまで来ても不殺思考なら素晴らしい人間だ。是非その秘訣をご教授願いたい。俺より間違いなく強いだろうよ。龍神代われ。譲ってやるよ。
・・・だから俺はそんな恨みから逃れたいというクソみたいな願いと自己満足の為、世界の記録のページを破る事を覚え、習得した。
それらの生きてきた記録を破り、捨てる。無かったことにする。
向こうが抵抗し、なかなか死なないなら本心で殺してやろう。だが向こうが造作もなく死ぬなら・・・
俺は最後にそいつの歩いてきた人生丸々一ページを破り捨てる。
それが龍神様の出来る事。俺というイレギュラー個人の意思に殺された弱い奴を助ける方法。
エゴでもおかしくてもなんでもいい。俺はこうすると決めたから。
だから今日も俺はこの本のページを破った。
この世界のあらゆる生き物の歩いた道を記す、創星録を。
「今、最高に悪い顔だろうな」
さも当然のように、俺の思ったページしか出ない創星録は何も動かない。
ちっとは動いて助けてくれるとかの奇跡はないのかね。俺が作っといて言うのもなんだが、そろそろキツイぜ?
今度こそちゃんと、俺は飯を作りに向かった。
寝室がやけにうるさかった。
____________________
「はいお待ちどおさん。今日の晩飯な」
私が目を覚ますと、龍一は既に料理を出していた。
龍一は私を見ると、軽く笑った。
「お前も寝てねえで食えよ」
私は横になっていた体を起こし、置かれていた箸を使って龍一の作った食事を口に入れる。美味しい。さっきの疲労もあってか食欲が増し、龍一に笑われながら食事を口にかき込む。
ところが私が食事をかき込んでいるというのに、玉藻は手をつけていない。
「・・・どうした?俺からまだ血の匂いがするか?」
少し・・・いや相当スッキリした顔の侵二さんがそう聞く。玉藻は首を横に振る。そうじゃなくてだな・・・と玉藻は何かを言おうとするが、言えないようだ。
龍一がなぜか顔を顰めている。
「・・・わりー、火の元見てくる」
龍一が立ち上がり、食卓から去っても、しばらく玉藻は食事に手をつけなかった。
ふと台所で紙を破るような音がすると、玉藻は首を傾げ、食事に手をつけ始めた。
「いやー・・・火の元は良かったが水零したままだったぜ。また拭き取り用の紙買わんとな」
「珍しいですね水をこぼすなんて。明日は霰ですか?」
「うるせーぞ。・・・後玉藻の周りに何個かある俺の料理が塵に見えるほど出来の違うのは侵二の作った奴の作り置きだからな」
「ブホッ!?ちょっ、主上!?」
「いいじゃねえか互いに独身なんだからよ。あ、お前はバツイチだっけ?」
「赤いバツで殺一じゃないですかね」
「違いねえや」
サツイチなどと笑う話ではない。事実玉藻が引きつって笑っている。
「・・・そういや、結局玉藻は紫の式にならんのか?」
「む?・・・ああ、確かに断る理由は無かったはずだな、不思議だな・・・」
「じゃあ、私の式になって貰えるかしら・・・?」
「お前に拒否権はないぞ」
「わ、分かっている!・・・紫様、私を式に、どうかよろしくお願い致します」
「分かったわ・・・籃(らん)」
「籃?」
侵二さんが不思議そうに首を傾げたので、説明しておいた。
「あの、私の名前が紫って言う色だから、式も同じ色関係が良いかなーって・・・」
「それで藍か。・・・いいんじゃないですかね」
侵二さんが玉藻よりマシですと笑った。
ふと龍一は何か閃いたのか、ニヤリと笑った。
「で、お前ら向こうで何してたんだ?」
「ナニをしてたんですよ。文句ありますか?」
玉藻が突っ伏し、私も吹き出した。
「・・・ああそうか」
龍一は羞恥で真っ赤な藍と澄まし顔の侵二を見比べ、やれやれと首を振った。
「ちゃんと片付けとけよ。後あんまり騒がしくすんなよ」
「ッ〜!?」
「了解です」
藍が羞恥のあまり顔を俯け、頭から煙が出そうなほど熱くなっていた。
侵二さんは面白そうにしながらそんな藍の隣に座り、箸を持った。
「んじゃ私も頂きますね」
そのまま何も言わずに食事を始める侵二さんを見て、この人もやっぱり大概だな・・・と思った。
次回へ続く
・・・主人公はそれはそれはとても自分勝手です。
でも彼だって仕方ないのです。中身は神様みたいに些細ごとを気にしないわけじゃない、矮小で臆病で心優しい人間のままなんですから。
でもそれを知らない人達は、彼を崇め、愛し、中には恨み、妬み、殺意を持ちます。
彼はそれが実はとても怖く、そして誰にも同じ事を背負わせたくなくて、誰にも話せないでいます。
だから今日も、決して見破られる事のない空元気を振りまくのです。
何百年も、何千年も。これから先ずーっと。日に日に壊れていく彼の心を差し置いて。
本当に彼の叫びを聞いてあげられる人が現れるか
世界が壊れた彼の手で終わるまで。
次回もお楽しみに。