打ち切りシリーズ続投です。
ついでに単細胞の異常性が露呈するやも・・・
ゆっくりご覧下さい。
「・・・だから伊織さんもいるのな。お久しぶりです」
「久しぶりですねー幽夜君。この前のお菓子美味しかったですよ!」
「そりゃどうも。・・・で?なんで来てんの?」
「・・・不倫容疑をかけられた」
「草」
昨日ぶりに風魔と落ち合っていると、嫁を連れてやって来たと思いきや不倫疑惑かけられたは笑うしかない。
「え?なんで?なんでお前不倫疑惑かかってんの?」
「・・・鈴仙の匂いがしたらしい」
「把握」
隣で伊織さんがぷりぷりと怒っているのはそういった理由なのか。
てか鞍馬の兄貴と犬走の兄貴は訂正しなかったのか。ぜってーわざと訂正してねーじゃん。
「まあ・・・私は貴様の身の上話を聞く気はない。二人きりで話せ」
「・・・ん?鈴仙ちゃんは、幽夜君と仲良しなんですか?」
「そうだぜ?風魔はその中継ぎをしてくれてるだけだが?」
「そうなんですか!?」
「だからそう言ったろうに」
やれやれと首を振る風魔に、行けと促され、俺はれいちゃんの部屋へと入った。
真ん中には座布団が三枚置いてあった。
れいちゃんは俺が入ってきた瞬間びくんと肩を震わせたが、俺であるのを確認したのか、硬い動作で座布団に座った。
「・・・今日は風魔は来れねえよ。嫌なら出るが?」
「いえ、その・・・幽夜さんなら、大丈夫、です・・・」
「サンキュ。・・・じゃあ昨日約束した身の上話をしようか」
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まず、俺はフリーランサー・・・つまるところ金を貰って働く何でも屋だな。それをやってる。本業は傘屋なんだが、まあ色々あってな。
で、まあ風魔の言うれいちゃんに似た境遇ってのは・・・多分まあ生まれた後の事だろうな。
俺は親の顔も親族の顔も同族の顔も見たことが無い。
俺は生まれた時、一つの細胞だった。
ところが、なんだったかな・・・γ線?を体に多量に浴びて体が突然変異。生物が持てば完璧な、自己再生、自己増幅、自己進化の性質が発現し、そのまま俺は進化。
ただ、この頃は体を維持できなくてな。なにかを食べなければならなかった。
土、草、水、木、森、土地、次第に要求が強くなり、やがて・・・
俺は他の生き物を食べ始めた。
すると他の生物を食べる度に体のバランスが安定し、その生物の情報が俺に入り込んでくる。
そうしていくうちにな、俺はとある事をしでかした。
昔の文献見れば分かるだろうが、何個か村が消えていたり、集落が壊滅しているんだ。
ありゃ多分全部俺。全ての生き物の力を得ようとして体が暴れた末路。
そしてな、全て食い終えてから俺は流れて行く記憶で見たんだ。
残骸と化した人の住んでいた集落、誰かのつけていたであろう装飾品、逃げ回っていた事を思わせる数多の足跡。
・・・もう、なんとも思えなかった。
食わなきゃ生きていけねえ。だが食おうとすれば集落が一つ、また一つと滅びる。
次第に殺すと言うことがなんなのか分からないようになった。だからもう怖くはない。
でもな、目を閉じると思い出すんだ。
子供を守ろうとして庇うように抱え、その顔は恐怖に歪んでいた母親。親を先に食われ、泣き叫びながら親を探す子供。子を失い、狂乱して俺の体に襲いかかる憤怒の形相の親。
・・・今でも夢に出るんだ。
なあ?俺、後何回殺せば夢から出れると思う?
それとも、殺さない方が良いんかね?
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「・・・って事で、俺はそれを探すために傭兵稼業に携わってんの。このまま百年間夢から出れなければ傭兵をやめる。出れれば傭兵を続けて慣らす。・・・ま、正直ろくな奴じゃねえわな」
夢の話は慣れているつもりだったのだが、無様に手が震えている。
「・・・辛くないんですか?」
「いや、まあ辛いけど。何もやらないままだと何も始まらねえし」
何に関しても仕方ない、やらないよりマシで割り切って生きてきた。
それは仕方ない事だろうと思っていると、手を握られた。
「・・・それじゃ、壊れちゃうじゃないですか・・・!?」
そう言って必死に俺の手を握るれいちゃんを見て、いままで感じたことのない不思議な気分にさせられた。
俺はこのままこの手を握り返して良いのだろうか?
「・・・ごめん、時間もらっていいか?」
俺はその部屋から逃げ出した。
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「くそ・・・いきなりなんなんだよ」
目の前に殺した人達の顔が浮かぶ。忘れたくて恐怖も忘れたはずなのに、体が震える。
「割り切ったつもりなのになぁ・・・」
やっぱり、人を苦しめた奴が幸せになっちゃならねえんだろうか。
「・・・はい、はい、こっちは特に何も・・・ゆうちゃん?」
「・・・あ、あー。たっちゃんか」
俺が昔の事を思い出していると、たっちゃん・・・月野、今は蓬莱山に声をかけられた。
「・・・どうした?こんな所で落ち込んで」
「・・・過去って、どうすりゃ拭えるのかね」
「過去は無理だろう。膨大な過去は膨大な未来によって拭われる筈」
「・・・月野」
「俺はゆうちゃんがどんな悪事を働いたか知らない。でも、だから止まったら申し訳ない。俺も何人も殺した、潰した、苦しめた。挙句死ねなくなった」
たっちゃんは微笑んで、空を仰いだ。
「だから悩むことはないと思う。・・・鈴仙も、みんな何か抱えてるさ」
「お前微笑とか出来たんだな」
「出来る」
「・・・なーんだ、毒抜かれちまった。・・・よっしゃ!れいちゃんとこ行ってくる!」
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幽夜が立ち去り、その後奥の部屋でれいちゃーんっ!という叫び声を聞きながら、月野は固まっている表情筋を僅かに緩ませた。
「・・・頑張れ、ゆうちゃん」
「・・・守〜!どこー?」
「ん、輝夜」
「ん、じゃないわよ!さっきのあの叫び声何?」
「奥の部屋で友達が告白しそう」
「今!?」
「今」
「・・・若いって良いわねー」
「お前はまだ若いだろう?」
「何?・・・褒めても何も出ないわよ?」
「お前がいればそれで良い」
「・・・ずるい」
「・・・?」
「っ〜!もう!」
輝夜が一人でわたわたと動き、月野は不思議そうに首を傾げていた。
「・・・ところで、何持ってるの?手紙?」
「・・・ゆうちゃん宛の手紙」
「勝手に開けたの!?」
「・・・事が一大事なんだ」
「・・・何?どうしたの?」
「ゆうちゃん宛に依頼が来た。内容が今渡すと良くない」
月野の手には、【月侵略支援依頼】と書かれた紙が握り締められていた。
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はあ。とさも面倒そうに若葉色の髪を揺らしながら青年が仰向けに寝転がり、溜息を吐く。
「ねえー。僕は今すぐ幽香と幸夜(こうや)のとこに行きたいんだけどー。つまんない用事だったら帰るよー?」
「まあまあそう言わずに。報酬は言い値で主上の財から引きますから。・・・それに、このままだと紫殿が思い詰めて何するか判りませんので。多少なりとも戦果報告が出来るように、というのがまあ、本心ですかね」
「・・・まあ、そーゆー事なら仕方ないか。でも僕だけで良いの?二人じゃ足りなくない?正直僕前線だとクソカスだよ?」
「そこで貴方は変人部隊の足止めに回ってもらいます。正確に言えば上官やラスボス級のメンバーの足止めです。勿論単独行動になりますけど、大丈夫ですか?」
「・・・ちなみに時間は?」
「二時間。行けます」
「・・・報酬は幽香との生活を邪魔しないこと。いい?」
「了解です。ちなみに風魔にはすでに話を通してますし、例のあそこで集めてるんでまあ、大丈夫でしょう」
「あそこって・・・掃き溜めでしょ?犯罪者とか極悪人蔓延るあの臭い場所だよね?」
「そうですが?ちなみに幽夜もあそこに登録してますよ?」
「そうなの?・・・何というか、あそこは苦手かな。お酒飲む時は良いんだけど、日常はうんとはいえないかな。人の事言えないけど」
「ま、荒れてますからね」
侵二がクスリと微笑み、お願いしますと幻夜に頭を下げ、幻夜も頷いて立ち上がった。
「ところでさ、予定いつ?」
「来年あたりです」
「了解」
次回へ続く
まあリベンジマッチしますよねえ?(全員侵略側とは言ってない)
次回もお楽しみに。