ありがとう。と言う五文字の返信だけだったのに、何故か泣いてしまいました。
ゆっくりご覧下さい
「・・・さっきは、ごめん。確かに無理してた、かもな」
「いえ・・・私こそ、いきなりごめんなさい」
そう言って微笑むれいちゃんにつられて笑いそうになったが、俺はぐっとこらえ、れいちゃんの目を真正面から見た。
「・・・俺は、れいちゃんに言われて嬉しかった。・・・あのさ」
「・・・はい」
「・・・その、友達に、なって、くれる、か?」
れいちゃんはぽかんとした表情で俺を見つめ、やがて何がおかしかったのか吹き出した。
「な、何で笑うんだよ・・・」
「フフフッ。だって幽夜さん、話し方と違って控えめなんだなって・・・」
「う、うっせーやい。・・・女の子の友達なんて初めてなんだからよ」
「私だって男の人のお友達は初めてです。上司や先輩はいましたけど、友達はいなかったですから。・・・よろしくね。ゆ・・・ゆう、ちゃん?」
刹那俺は自分の頭を床に叩きつけ、吹き飛びかけた理性を呼び戻した。危うくクリティカルで社会的抹殺待った無しで押し倒すかと思った。
「ちょっ・・・!?血?みたいなの出てる!?何それ!?水!?」
「体液「体液!?」・・・はは。反則だぜいきなりその呼び方は・・・」
「あ、ご、ごめんね?嫌、だった「いえそのままで」あ、うん。良いよ」
人外で良かったと初めて思った俺だが、それ以上に今、言い表せない喜びに包まれている。
・・・そう言えば、夢に出ようが俺に干渉して来ねえよな。殺した奴らは。寝ようと思えば寝れるんじゃねえか?
・・・なんだ、優しすぎただけか。肉焼いて食うのに一々牛可哀想なんて思わねえもんな。
・・・あ、そうか。どうでも良いんだ元から。文句言う奴は叩き潰せばいないのと等しいもんな。なんだ簡単じゃねえか。しかもよく考えれば覚えのない奴の死体が横になってる記憶もある。 どっかで人間の複雑な感情を写したのか?・・・まさか龍一か?まあ良いや、どーでも良い。だって俺は餌を殺しただけなんだから。恥じる必要も自らを悔いる必要も、
無い。
「・・・なんだ。簡単だ」
こういう時なんて言うんだったか。
「・・・どうしたの?」
そうだ。
「いや?
何故悩んでたのか分からなくなってきた。いや、なんだこの記憶。俺のか?誰のだ?
妹が死んだ、なんでだ
なんで一々誰かを助けなきゃならねえんだ
疲れた、休ませてくれ
誰もが俺を見て化け物という。そんな事言われなくても分かっているのに
もう独りぼっちはやだよ、独りにしないで・・・
アイツだけは許さない、絶対に殺してやる
人生に飽きた、何もやる気が出ない
名前、なんだったっけ?
○○、元気かな・・・
誰か・・・助けて
・・・ああ、なんだ。全部
そうか、俺じゃないんだ。
俺は何も知らない。壊れた記憶は、全部、人のモノなんだ。
「・・・なあ、れいちゃん」
「・・・何?」
「俺、君の事が好きかもしれない」
今俺はここで過去に決着をつけた。誰がなんと言おうがつけた。
だから俺は後悔する前に、れいちゃんに伝えた。
「・・・それは、お友達として?」
「・・・いや、女の子として」
「そっか・・・」
ごめんね、とれいちゃんに謝られた。
「・・・だよな」
人の記憶だっただの偽っても、俺は人を殺したのには違いない。
やっぱり、釣り合わないよな。
「私は、ゆうちゃん・・・ううん、幽君の事、もっと知りたい」
「・・・ん?」
「私は幽君と話してまだ一週間も経ってない。お互いの事知らないのに、付き合うのは、嫌かな・・・」
もっと知ってから、ね?と照れくさそうに笑うれいちゃんの顔は真っ赤だった。
「・・・うん、そう思うなら、そうなんだと思う。・・・聞かせてほしい、れいちゃんの事」
「私も聞きたい、幽君の事」
「話そう、沢山の事」
「うん、お互いの知らない事がないくらい」
「・・・それちょっと怖くね?」
「あ、それもそっか・・・」
俺も顔が熱いのに、頬が緩んでくすっと笑ってしまった。
・・・あれ、俺こうやって笑うの初めてかもしれないな。
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「・・・幸せそうですね」
「ああ」
「・・・お話も聞かずにここまで来ちゃいました。ごめんなさい」
ぺこりと伊織が頭を下げる。
私は伊織の頭を撫で、ニヤッと笑う。
「別に構わん。説明不足の私も悪かった」
そのまましばらく撫でていると、ふと伊織がボソリと呟いた。
「なんで、風魔は私を選んだんですか?」
「・・・む」
「私は沢山風魔とお話ししました。結婚してからでしたけど、私は風魔の事を沢山知ってます。・・・でも、選んだ理由は知らないです。なんで私なんですか?」
難しく話すのは嫌ですよ。と伊織に答え方を絞られ、正面から見つめられて退路を塞がれた。
「・・・全部俺の勝手だ」
「良いです。・・・私が聞きたくないことでも良いんです。・・・知らないままは嫌です」
私は胸の中でドス黒い何かが蠢くのを感じた。
これは・・・二百と五十くらい前か。
「分かった」
私がとある仕事で山へ登る一人の青年だった時。まだ人間だった時、まだ転生に疲れていなかった頃。
「私は、未来のお前に惚れた」
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一目惚れだった。長い黒髪、優しそうな口元、幼さを残すのにどこか大人びた雰囲気を見せる彼女に。
私はその時の人生は行商人だった。神妖怪人問わずモノを売りに行く変な行商人だった。理由は何度も何度もそのような境遇に立たされたから。単なる慣れだった。
その日はとある天狗の婚式に参加し、花嫁に見合うモノを着せる。というのが仕事だった。
何度も似たような事をしていたし、基本綺麗な女性ばかりだったから、特に嫌でもなく、緊張するという事も無かった。
筈だった。
その時花嫁の化粧室にいたのが、伊織だった。
私が人の嫁であるのに一目惚れしたのはその時だ。惜しむらくは、
目が死んでいた事。
私は震える手で伊織の姿にあったモノを見繕い、着せ始めた。
喋らないのもアレだったので、何度か話をした。
次第に打ち解け、やれこれが良いだの良くないだの二人で騒いで決めた。
そんな事もあり、私がいうのもなんだが完璧な姿になった伊織は、言い表せない程美しかった。
ありがとう。そう彼女は言うと、不思議な事を言った。
「私、結婚したくない」
聞けば全て血筋の為だという。
私は何度も見聞きした事だったのに、その時は呆然と聞いていた。
もっと自分が素敵だと思う人が良かった、もっと外を見たかったと。
私は答えに詰まって、本当に馬鹿な事を聞いた。
「もし自分があなたの旦那になる予定だったら、受け入れてくれますか?」
嫁入り前の人に聞く事じゃ無かった。
だが彼女はこう答えた。
「貴方なら良かった」
その時、私は胸の中が真っ黒になるのが分かった。
私は更に恥ずかしい事を続けた。
「もし私が過去に生まれ変わったら、有無を言わせず貴方を攫います」
彼女は笑った。
「待っています」
そう答えてくれた。
もう、心が割れそうだった。
今彼女と結婚する相手が憎くてたまらなかった。彼女を結婚させようとする奴を切り刻みたかった。私なら彼女の瞳を輝かせられるのにと思った。
だが、私は人間、ここでそう叫ぼうが彼女の前で血の花を咲かせるだけだ。
だから私は彼女に聞いた。
「・・・昔の貴方がいるであろう場所はどこですか?」
・・・彼女は、とある場所を指した。
そうだ。
お前と私が出会ったあの山だ。
全部知っていた。お前がもうすぐ結婚する事も、もし私が向かわなければ結婚させられる事も。
・・・犬走、鞍馬が反乱を起こし、無事な奴がいない程荒れる事も。
だから、次会う時は必ず幸せにすると誓った。
後の九千七百五十の生、全てにおいて妄執に囚われたまま捧げた。
全ては次の機会、お前に会うために、攫うために。何%か分からない賭けを繰り返した。
そして、一万一回目、つまり今。
お前を見つけた。
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「・・・とまあ、お前は知らないが、私は八割お前に会う為に、全てあの時の目的を果たす為に捧げた」
全ては自分が伊織を笑わせられるという謎の自信から。
ただそんな妄執に近い話をした後。予想通り伊織は顔を俯けていた。
「・・・風魔は、やっぱり私に一目惚れしたって事ですか」
「・・・ああ」
「そんな事のために、人生を無駄にしたんですか?」
ふと私の何かが切れた。
「黙れッ!何がそんな事だッ!」
「だってそうじゃないですか!何時逢えるか判らない、ただ少し話した女の子の為だけにそんな事して!他にもいたんじゃないですか!?」
「いいや!他にいないッ!私にとって、空虚だった私にとって、お前は・・・ッ!私の目的で、間違いなく一本の光だったんだ・・・ッ!」
声を大にして叫んだ。
異端者だと言われても、変質者だと言われても構わない。
ただ、お前に幸せに生きて欲しいだけだから。
「お前が、笑ってくれるなら・・・ッ!!私は・・・ッ何度だって死んでやる!!」
「・・・バカですよ、風魔は。ホントに、バカです・・・」
私を転生させる何かをクソ野郎だと割り切った七千二百回目の生以来だ。
こんなにこの力が苦しいと思ったのは。
次回へ続く
さあ軽くなってまた重くなって参りました(安定の東方要素ゼロ)
背負うべき物を背負っていかなくても成長はすると思うんです。クソ野郎になりますけど。
まあ駄作の中では死ぬ程重いのはオリキャラで良いんです。原作キャラには笑ってもらわないと。
次回もお楽しみに。