真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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第二次月侵略戦争開幕。


ゆっくりご覧下さい。


第七十八話 金

「・・・えー、この度は集まった金に卑しい皆様方、一年前からの準備、そして今お集まり頂いてありがとうございます。敵地に突っ込んで死んでください」

 

 

前から一年後。侵二さんが山の麓、集まった目付きの悪い人や妖怪達にそう言いながら親指を下に立てる。

妖怪や人間達からはそりゃねえぜと卑しい笑い声混じりの叫びが聞こえる。

 

 

「やかましい。貴方達はいわばクソです。第一次月侵略の時に金が出ないからと早々に立ち去ったクズ、易々と裏切って逃げ延びたゴミ、かろうじて逃げ帰った死に損ない、そもそも参加していないのに参加しにきたアホ、どいつもコイツも死んで構わないのしかいないじゃないですか。文句があるなら帰ってください。今ここで求めるのは金の亡者だけです」

 

 

文句に近い叫び声が多かった割には、誰も帰ろうとしなかった。

それどころか、辺り一帯が怪しい笑みで包まれている。

 

 

「うーわ、これぜーんぶ金の亡者ですか、汚ねえですね。・・・はあ、仕方ない。今から第二次月侵略戦争を行います。総指揮官は風魔、参謀は私です。勿論私は最初から捨て駒感覚で扱うのでよろしく」

 

 

またふざけんなやら文句があちらこちらで叫ばれる、侵二さんはそれを嬉しそうに聞き流しながら、中指を立てた。

 

「モノが勝手に喋るんじゃありません。指揮官からのお言葉です。ちゃんと聞くように。聞かなければ独房入りです」

 

 

侵二さんはそう言って一歩下がり、代わりに風魔さんが前へ出た。

途端に妖しい笑みを浮かべていた者達は顔が引き締まり、何かを求めるギラついた目で風魔さんを見る。

風魔さんは大太刀を地面に突き刺しながら、ニヤリと笑って喋り始めた。

 

 

「さて・・・侵二はどうこう言っているが、貴様らの腕、は。頼りにしている。あまりにも強すぎて人間界から追放された人間、常独りを好む好戦的な輩、戦闘場所が限定されすぎてあまり争わない危険な輩、・・・武器、戦力として、は、不足なしだ。侵二、編成を言え」

 

 

「了解です。まず拠点ですが、向こうになんかあった海とします。よって赤えい氏を幻夜が脅し・・・んんっ、勧誘しておりますので、すぐに拠点は作れます。勿論護衛に磯撫殿も、そして第一次月侵略で暴れまくった犬走殿と鞍馬殿もおりますので、安心して死にに行ってください」

 

 

「初めましてだな。風魔様からボロ布みたいに使ってもくたばらない奴らって聞いてるから精々頑張ってくれよな」

 

 

「今一つ貴公らの扱いがよく分からんが・・・よろしくな」

 

 

次に戦闘員ですが、と侵二さんが何かの紙を読み上げ始めた。

 

 

「オメガ11の鎌鼬殿含め、足の速いと自負しているものは風魔に、泥田坊殿のように力があると自負しているものは壊夢に、ぬりかべ殿のようにこの能力は誰にも真似できまいと言うものも壊夢の元へ。・・・で、報酬を言い値で貰いたい欲深な奴は突っ込んでください。戦闘に自信のないものは報酬は減りますが赤えい氏の背中へ、そこではボロ布のようになった奴らをひたすら治療しまくる仕事をしてもらいます。もちろんそこで働けば報酬は増やします。では行きますよクソ共、良い報告しか待っていません。終わったら酒でも飲みましょう」

 

 

侵二さんがそう締めくくると、怪しい人たちは歓声に包まれ、侵二さんの開いた空間の門に順に入り始めた。

 

 

「紫殿はこっちです。なんなら傭・・・んんっ、あの道具達の使い方を教えますんで」

 

 

私は侵二さんに連れられ、その人達とは別の場所に移された。

 

 

____________________

 

 

「さてと。では紫殿、お茶でも飲みながらとっても軽く前の反省会をしましょう。実力を除いて何がいけなかったと思いますか?」

 

 

侵二さんにそう言われ、私は頭をひねった。

 

 

「・・・目的が、曖昧だったこと?」

 

「うーん、それを言えば今回の私たちの群れも目的はありません。一つ答えを出しましょう。一つ目は情報を封鎖しなかった事。適当に嘘やらを流して混乱させても良かったんです。情報が勝負を制しますから。他には?」

 

 

「指示が届かなかった事?」

 

 

「・・・では、何故指示が届かなかったのですか?」

 

 

それは、何人かが指示に従わなかったり、無視して動き始めたから、なのだろうか。

 

 

「人のせい、なの?「そう思うならそうなんでしょう。合ってますよ」・・・指示に逆らう人がいたから?」

 

「ええその通りです。要は雇うのを間違えたんですよ。ああいった勝算不明の戦闘に普通の出しても逃げるか死ぬだけですから。それは指揮官のミスですけど、まあ今働いてる奴等は紫殿は主上が隠していたせいで知りませんでしたもんね。許しましょう

 

 

「龍一が・・・?」

 

 

「・・・あんな掃き溜めと紫殿を会わせたくなかったんですよ。・・・あそこにいた、今回我々が雇ったのは私達と同じ、皆脛に傷持つ奴等ばかり。国を滅ぼすべきだと思考して追いやられた政治犯から賭け事バカの危ないやつもいますし、詐欺で捕まった奴もいますし、常戦うことしか考えてないのもいます。中には冤罪の者もいますけど。表世界で生きれなかった裏社会の住人達。表から爪弾きにされた奴等。それを今私は雇ったんです。合言葉は「報酬は言い値」。表世界の一流なら受けるはずのない怪しい仕事のイメージを表しています。何しろ、言い値だとバカ高く請求すれば明日死ぬかもしれませんから。低ければ儲けない。そしてこの手は危険な仕事が多いんですよ」

 

 

「・・・それは、その人達は幸せなの?」

 

 

「そんなもんテメエが物差し出して決めんじゃねえよ。・・・と言うのが彼等の言葉です。食事は臭かったり、寝床は固かったり、確かに見れば幸せじゃないかもしれませんが。時折こうして儲け話が出て、終われば酒を奢ってもらい、騒ぎながら飲む。案外危ない奴ばっかりですが、仲間は多い。奢ってもらう、騒ぐ。その幸せのために生きてるんです。ある意味人妖関係なく皆平等ですよ、あそこの中では。・・・フリーランサーの幽夜もここで仕事をしてますよ。金儲けのために」

 

 

「・・・幽夜さんが?」

 

 

「ええ。ついでにあそこのオーナーは私です。だから今回は本当に極秘裏に危ない仕事しかしない奴等ばかり。例えば風と共に掠った際に小さな切り傷を着けるだけで良いのに、真っ二つに斬るせいで爪弾きにされた鎌鼬。他より抜きん出て詐欺に長けた為に危険視されたぬらりひょん。お、今丁度第一ポイント制圧完了予定時刻ですね。ちょっと失礼」

 

 

侵二さんは咳払いを一つすると、上を向いて話し始めた。

 

 

「えー、第一拠点制圧完了予定時刻です。ちゃんと落としてますね、ご苦労。とりあえず最低限働いてくれましたね。さっさと補給して残り二拠点制圧して帰りましょう」

 

 

今丁度攻め終えたと言う。なのに、ここには誰一人叫ぶものはいない。この先は戦争だと言うのに、こんなに静かなのだろうか。

前の私が仕切っていた時はとは大違いだ。

 

 

「聞こえておるか、饕餮」

 

 

「なんです詐欺師のぬらりひょん。今お茶飲んでるんですけど」

 

 

侵二さんが机を叩くと、いつも龍一が使っているような画面が現れた。龍一・・・

 

 

「奇襲成功、第二拠点も終わった。報酬は弾んでくれるか?」

 

 

「嘘じゃないですよね?「殺した記録は誤魔化すが、流石に集団は誤魔化さんよ」・・・ワインボトル開けましょうか。「心得た。・・・そこの隙間妖怪」呼んでますよ紫殿」

 

 

「は、はいっ!?」

 

 

「主の兵法は面白かった。龍神も褒めておったぞ、誇れ」

 

 

「・・・え?」

 

 

「おお、これは禁句だったな。・・・何、龍神は」

 

 

突然ぬらりひょんからの連絡画面が消えた。

 

 

「・・・ロスト。死にましたかね?」

 

 

「え?死・・・!?」

 

 

「こちらオメガ11の鎌鼬!侵二の兄貴に繋いでくれ!」

 

 

「こちら侵二。ぬらりひょんがロストしましたけど、なんですか?」

 

 

「目の前、第三拠点前本陣に化け物がいやがる!ぬらりひょんの野郎は生きてるがぶっ飛ばされた!右手が蟹の鋏で左手が巨大になってる最中に蜘蛛の脚と鳥の翼生やした訳わかんねえ奴のせいで今もなお前線崩壊中!まずい!こっちに来」

 

 

「・・・鎌鼬ロスト。こりゃいけませんね。・・・あー、あー。こちら侵二。聞こえてますか。全員一度退避。壊夢突撃。確認求めます「応!」・・・さてと、マズイですね」

 

 

侵二さんがガリガリと頭を掻いた。

藍と何処かに出かけることが多くなり、露骨に口が悪くなり、叫ぶことの多くなった侵二さんにしては珍しい行動だ。

 

 

「おう!こちら壊夢ぜな!」

 

 

「はい、こちら侵二。何がいました?」

 

 

「幽夜ぜよ!」

 

 

「なんで!?」

 

 

なんで幽夜さんがいるのか。しかも敵側に。

私が困惑のあまり叫ぶと、壊夢さんが高らかに笑った。

 

 

「クッ、ハハハハハ!仕方ねえぜよ紫!幽夜は今回参加しとらんかった!どこにつこうがアイツの勝手ぜよ!」

 

 

「ま、目的なく彷徨う我々につきまとう事例ですね。壊夢、対応してください。後気をつけてくださいね。彼は我々の遺伝子を取り込んでます」

 

 

「そういやそうだったぜな!・・・侵二、マイクいるぜよか?」

 

 

「・・・繋がるなら」

 

 

「応」

 

 

侵二さんが不思議そうにマイクの指示を出すと、幽夜さんが叫んでいるのが聞こえた。

 

 

「俺はお前に惚れた!お前が月の住人だろうがなんだろうが関係ねえ!お前が月に攻めてくる奴等が怖いと言うならば、戻るのが怖いと言うならば!俺が敵を全て受ける!俺が居場所を作ってやる!何、会えなくても良いさ!会えずとも俺はお前をずっと見上げる!それで上等だろれいちゃん!少なくとも俺はそれで幸せだからな!・・・俺は、お前が、好きだ!聞いてるかてめえら!特に月の奴ら!俺はここでこいつを貰うからな!!」

 

 

「・・・なんすかこれ」

 

 

「・・・告白ぜよ」

 

 

「なーんでこの場でしてるんですかねぇ!?風魔、さっきから念の為繋いでるログで笑ってますけど何か知ってるんですか!?」

 

 

「フハハ。・・・あのな、四年ほど前幽夜と私が永琳殿に呼ばれてな、その時月から逃げてきた娘に、ブッ、幽夜が、惚れたんだ。・・・まさかこのタイミングで再度クサい台詞とは、天を貫くど阿呆だな。ハハハハハ!」

 

 

「笑い事じゃないんですよね、これ。・・・あーもうアホらしくなりました!全員撤収!満足するまで拍手と冷やかしと口笛吹いたら撤収!帰りますよ馬鹿野郎達!ちゃんと気絶してロストしてる奴らも回収してくださいね!「待つぜよ」・・・なんですか壊夢」

 

 

「あのまま言うだけだと俺が許さんぜよ。・・・俺が試すぜよ」

 

「・・・ッッッ〜!ああもう揃いも揃って馬鹿ばかり!ええいクソ拍手しながら全員逃げなさい!今晩私が奢るんで逃げなさい!てか逃げろ!風魔は後背の援護ッ!壊夢ッ!十分が限界です!それ以降は認めません!後それぐらいで幻夜の抑えてた変人部隊が来ますッ!そこ誰かわからんがブーケ投げるなッッ!女郎蜘蛛お前ッ、ケープ織るな!ぬらりひょんテメエエエエ!形式上ロストしてんだから大人しく帰れエエエ!!オメガ11の上に乗ってケープ届けんじゃねええええ!!」

 

 

発狂して徐々に口の悪くなる侵二さんに、いつもなら笑って済ませたけど、どうしても龍一の事が引っかかって、心がチクリと痛んだ。

 

 

 

次回へ続く




第二次月面侵略作戦も失敗。
敗因、情報漏洩と離反者の出現。



次回もお楽しみに。
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