真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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日が日なのでとある事を暴露します。
私は嘘つきです。


ゆっくりご覧ください。


第七十九話 障害

目の前にいるのは壊夢。

俺は拍手と口笛と何故かウエディングケープと冷やかしの飛び交う中、壊夢を睨んでいた。

壊夢は心底腹の立つような物を見た顔をしていた。

 

 

「・・・幽夜」

 

 

「・・・なんだ、壊夢」

 

「中々ええ事言うぜよなあ」

 

 

「そりゃどうも「じゃが」・・・分かってる」

 

 

壊夢がギャリリと拳を打ち鳴らす。決して出て良い音じゃない。

その辺の妖怪なら見ただけで死ぬような、奥底に秘められた明確な憤怒の色を表す目に見据えられる。

 

「力を見せろ、だよな?・・・たっちゃん、れいちゃんを頼む。下がっててくれ」

 

 

「・・・俺は死なんからよく分からんが、死ぬなよゆうちゃん」

 

 

「・・・ああ」

 

 

たっちゃん・・・正確には月野にれいちゃん・・・鈴仙を安全な場所に移してもらう。

ふと、れいちゃんに呼び止められた。

なんでケープ被ってんの?死ぬよ俺?

 

 

「ねえ!」

 

 

「・・・ん?」

 

 

れいちゃんは震えながら俺に笑ってくれた。

俺はケープを被っているれいちゃんに心から震えそうだ。

 

 

「・・・ちゃんと帰ってきてね。話したい事、まだ沢山ありますから!」

 

 

「・・・おうっ!」

 

 

今はそれがすごく嬉しくて、なんなら壊夢も倒せそうで。

 

「ッシャァコラァかかって来いや壊夢コラァ!」

 

 

「行くぜよッ!」

 

 

俺の右拳と壊夢の右拳が激突し、

 

 

俺の右拳が破裂し、戦意も崩壊した。

さらに言えば、背後の月軍の拠点も吹き飛んだ。

 

 

「 」

 

 

「ほう?今のを耐えるぜよか?」

 

 

待て待て待て。

は?え?マ?

 

 

「・・・クッソがぁぁぁぁぁあ!!?」

 

 

左腕の鋏で殴る、壊れる。再生させた右腕で殴る、破裂する、左腕、破裂、右、破裂、左、右、左、右、左・・・

 

 

拳を防ぐたび俺の体が壊れ、再生する。バカ言ったせいで引き下がれなくなった俺は、そのまま一歩ずつ前進する。

しかし壊夢は微動だにせず、逆に拳骨の威力を上げ始める。次第に壊夢の拳が繰り出されるたびに壊夢の拳が空気と擦れ合い、着火する。

そのままぶん殴られるため、熱いし燃える。

壊夢の目が殺意を帯びている。ぶっちゃけ言う、怖い。

俺の再生が徐々に追いつかなくなり、次第に体内水分が火のために減り始め、動きも鈍くなり、体の細胞が減る分眠くなってくる。

壊夢との相性は最悪だ。と言うかマジで怖い。死ぬ、死にたくない。

 

 

そして俺はこのまま、この場に倒れ伏し

 

 

「出来るか馬鹿野郎!!」

 

 

俺は再生した右腕で自分の顎を殴り目を覚ます。

何が倒れ伏すか。俺はこの程度か。それでも、

 

 

「混沌滅ぼしたのは伊達じゃねえんだよッッッ!!」

 

 

右脚の足裏から尖らせた体の一部を地面に刺し、地面に含まれる少ない水分を吸い上げる。

と同時になるべく壊夢と目を合わせながら壊夢の体をコピーしていく。俺は見るだけである程度の対象の情報を得てコピー出来る。ただし壊夢もそれは知っているためすぐに目線を切られ拳が飛んで来た。

コピー出来たのは50パーセント、痛覚云々の制御がコピー出来ず、激痛が走る事になるが知ったこっちゃない。

 

 

 

 

 

 

 

壊夢と拳を合わせる。

痺れるような痛みが全身に流れ、悲鳴が出そうになる。だが俺はそれを噛み殺し、再度拳を合わせる。

そのまま何分過ぎたか。

 

 

「いんや、伊達ぜな」

 

 

「あ゛ッ・・・!?」

 

両腕の骨が折れる。咄嗟にまだ襲い来る二撃目を脚で対抗するが三発目で折れる。やはりオリジナルには通用しない。

完全に戦闘手段を失い、壊夢の拳が目の前に迫ったが、俺の目の前で拳が止まった。

 

 

「・・・あ?」

 

 

激痛に顔を歪め、仰向けになりながら壊夢を睨み据える。とんでもなくダサい。

当の壊夢は何を考えているのか、あの明確な憤怒や気に入らないといった表情は消え、嬉しそうに歯を見せて笑っていた。それが尚更怖かった。

 

 

「悪いが時間ぜよ。中々良かったぜな」

 

 

「良いっすかお前ら!幻夜さんに止められてたぶんも仕事するっすよ!」

 

 

壊夢が示す先からは、暴走車両の上で旗を振り回しているサブの姿。

どうやら壊夢は忙しかったらしい。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・クソッ、ナメプかよ・・・」

 

 

負けた。完膚無きまでに壊夢に叩きのめされた。

どうやってもコイツには勝てないと、体がそう思ってしまった。・・・クソが、クソが、クソがァァッ!

 

 

「・・・まあそうヤケにならんでええぜよ。間違いなく俺と殴り合ってるんぜよから。・・・まあ、届きたいならさらに強くなるぜよな」

 

 

そう言って壊夢は笑うと、俺を見下す表情を冷たくして、冷たいトーンで言い放った。

 

 

「今のお前じゃあ、あの娘は守れんぜよ」

 

 

身を翻して一歩一歩着実に歩いて帰る壊夢が途轍もなく遠い存在に見えて。言われた事実が強く刺さって。

俺は一人、歯を食い縛った。

 

 

____________________

 

 

「よう、戻ったぜよ」

 

 

「・・・貴様ら飲んでるかぁァァ!?」

 

 

「・・・ああ、壊夢か。報告なら私にしろ。侵二が壊れた」

 

 

「応。・・・中々強かったぜよ」

 

 

「そうか・・・む?壊夢、貴様、右の籠手の傷はどうした?」

 

 

「おん?・・・割れとるぜよな」

 

 

「ふむ・・・まさか、な」

 

 

「・・・そうだとええぜよがなぁ。まだまだガキぜよ」

 

 

「そう言うな、見届けてやろうではないか。若者達の姿を」

 

 

「しゃーねーぜな」

 

 

____________________

 

 

俺が失意に沈み、手足を再生させて仰向けに寝転がっていると、たっちゃんが戻ってきた。

 

 

「・・・ゆうちゃん」

 

 

「・・・悪い、しばらくほっといてくれ。今すっごく誰とも会いたくない」

 

 

「れいちゃんは?」

 

 

「今合わせるツラがねえ「すまん連れてきた」アホォ!?」

 

 

俺が慌てて飛び起きると、れいちゃんが心配そうに俺を見つめていた。

次第に悔しさが再び燃え上がり、れいちゃんから顔を背けてしまう。

少なからずウエディングケープを着けているのにも問題はある。

 

 

「・・・ごめん、負けた」

 

 

ついさっき、守ると言ったばかりだったのに。形だけだった俺が情けなくて、それしか言えなかった。

 

 

俯く俺の頭に、ふと何かが乗せられた。

れいちゃんの手だった。

 

 

「あ、あのっ、その・・・私は、ゆうちゃんに守られて、嬉しかった、です」

 

 

「・・・励まし?わざと?」

 

 

「わざとじゃないです!・・・あ、ごめんなさい!」

 

 

大声を出した事に謝るれいちゃんがちょっとおかしくて。

 

 

「ははっ、はははっ」

 

 

目から熱い何かが出そうなのは分かっているのに。

どうしてか笑ってしまった。

 

「・・・むぅ、何笑ってるんですか!・・・って、ええ!?ゆうちゃん!?足折れてるじゃ・・・手も折れてる!?」

 

 

「ごめんごめん。すぐ治すからアイテテテテテテ!」

 

 

「もう!・・・んっ!?重〜いっ・・・!?」

 

 

「痛い!ちょっと!れいちゃん痛い!持ち上げようとしないで!脚変な方向に曲がってるけどもっと曲がる!さっき生やしたばっかだから痛い!脱皮したばっかの蟹みてえになる!」

 

 

「蟹・・・ふっ」

 

 

「「たっちゃん(武田さん)が笑った!?」」

 

 

「何故二人ともそこだけ合わせるんだ・・・?」

 

 

そして今はそれが、とても心地良かった。

なのに、目から何かが溢れたのは何故なんだろう。

 

____________________

 

 

「あー・・・畜生。なーんで毎度毎度飽きる事なくイレギュラーは発生するんでしょうねえ」

 

 

「侵二。疲れたのは分かってるから、その、人前で抱きつくのは・・・」

 

「うるさいですよー。なんならここで押し倒してますよ」

 

 

「お、押しっ・・・!?こ、この馬鹿!」

 

 

「ハハハー。ごめんごめん・・・」

 

侵二さんがワイングラスに注いだワインを飲みながら、生気を感じさせない目で笑い、藍に抱きついている。

あれ以来、侵二さんは人によく自分の弱さを見せるようになったけれど、私たちが信用してもらえたという事だろうか。それにしても今は酷い。

 

「おーい、オーナー!新しいボトル空けて良いかー!?」

 

 

「あー・・・テキトーに開けていいですよー!勝ったも当然なんで、じゃんじゃか飲んで報酬分飲んでくださいねー」

 

 

侵二さんがそう言いながら、私に死んだ目線を移す。

 

「・・・どうです?ここのバーの雰囲気は?」

 

 

「・・・ちょっと不思議ね」

 

 

カウンター席で幽香と話しながら眠そうに頭を揺らす幻夜さん、カウンターテーブルと呼ばれる場所の真ん中で歯を見せてお酒を飲み、笑い合う壊夢さんと風魔さん、馬鹿騒ぎしながら大量の酒を飲む妖怪や人間達。

奇妙だけれど、良いなと思えた。

 

 

「・・・ま、不思議でしょうね。ここの輩はどんだけ殺し合っても、ここに来て酒飲んだらはい仲直り。ごめんなさい、こっちもごめんなさい、じゃあ飯おごれ、やなこった、やんのかコラァどんがらがっしゃーんうるせぇぇぇぇぇでお終い。「終わってないわよね!?」性格といいますか、ここのは次へ次へと恨みや文句を引き延ばすつもりは無いんですよ」

 

侵二さんがそう言って笑うと、バーの入り口が開いた。

 

 

「まだやってるか?侵二?」

 

 

「・・・まだと言うか、今日一日ずっとやってますよ「こら侵二、私の胸の中で横着して動くな」適当にお酒開けて飲んでくださいねー」

 

 

やって来たのは幽夜さんで、隣には女の子を連れている。

女の子の方は今は垂れてはいるが頭からウサギの耳を生やし、おどおどと周りを見渡していた。

 

 

「お、今日のイレギュラーの幽夜さんじゃん。今日はよくも吹っ飛ばしてくれやがったな?」

 

 

「おお、オメガ11か。わりーわりー。ちょっと、な。ってか日課だろ?」

 

 

「誰が日課だ!」

 

 

「・・・幽夜、貴様。隣の女子は貴様の連れか?」

 

 

「さすが頭デカイだけあるな。ご名答だぜぬらりひょん。手ェ出したら殺すからな」

 

 

「ちょっと、幽夜さん・・・!」

 

 

「誰がオメーみたいな物騒な奴の女に手ェ出すかよ。なあぬらりひょん。「そうだな、牛鬼」手出す前に俺の脚が飛んでいくわ。てか似合わねえぐらい女の子大人しいな」

 

 

「ええじゃろ?やらんからな?」

 

 

「・・・畜生!俺も彼女欲しいなぁ!」

 

 

「おい牛鬼のアレがまた始まったぞ」

 

 

「アイツ見かけも中身も良いのに酒癖悪いせいで酒の席で女に逃げられるからな・・・でも濡れ女さんが牛鬼を好きだって話があるぞ?」

 

 

「は?それどこの詐欺師が流したんだよ?お前あのツンツンした人がそんなわけ・・・おいおい、濡れ女さん牛鬼のとこ行ったぞ!?」

 

 

「は?んなわけ・・・ん?」

 

 

「お?」

 

 

「これは?」

 

 

「やったか?」

 

 

「よっしゃあああっ!!」

 

 

「行ったァァァァ!!」

 

 

「キタァァァァ!」

 

 

「わ、私が奥さんになっても良いのよっ?は殿堂入りだなこりゃ・・・」

 

 

「しかも牛鬼指輪用意してたァァ!」

 

 

「準備良すぎて草ァ!しかもぴったりハマったァァ!」

 

 

「幽夜さんと一緒に同時に囲め囲め!胴上げだ胴上げ!侵二の兄貴!樽開けるぜ!」

 

 

「好きにしてくださーい」

 

 

「・・・侵二?」

 

 

「寝ます」

 

 

「そうか。お休み」

 

 

「お前ら待て!・・・おい壊夢!」

 

 

「・・・あん?なんぜよ!?」

 

 

「次はぜってー勝つからなァ!」

 

 

「・・・ダーッハッハ!!ええ根性しとるぜよ!またぶん殴ったるぜよ!」

 

 

「幽夜の兄貴が壊夢の旦那に喧嘩売ったァ!?」

 

 

「これは大波乱だぞオイ!お前ら賭けろ賭けろ!いつか結果出るぞ!」

 

 

「俺は詳しいんだ。それオメーがいつのまにか金ちょろまかす奴だろうが!」

 

 

「おいこらやめろ泥田坊!ッ!オメガ11!後ろ!」

 

 

「うわっ!?・・・あ!」

 

 

「きゃっ!?」

 

 

「・・・んだテメコラてめえられいちゃんにぶつかってんじゃねえよ殺すッ!!」

 

 

「れいちゃんってもうあだ名呼びですかァァァァ・・・!?」

 

 

「うるせえ寝させろォォォ!!喰うぞてめえラァァァァ!!」

 

 

「じゃかぁしゃい!全員ぶん殴るぞ!」

 

「酒もまともに飲まんのか貴様らァ!全員直れェ!斬るッ!!」

 

 

「うるさいよ?みんな死にたい?」

 

 

瞬く間に彼方此方で殴り合い、口喧嘩が始まって。

大乱闘と化している目の前を見ながら、龍一ならどうしていたんだろうなんて思ってしまって。

会えないのが、とても辛い。

 

 

「龍一・・・」

 

 

次会えば、龍一にどう謝れば良いんだろう。

 

 

 

次回へ続く

 




ちなみに私は嘘をつかないと思われているらしく、実はあと三年で死ぬ、と言う嘘をつくと周囲が葬式ムードになりました。そのムードは三年早いんですよ。
嫌ですねえ、私は100回中1回は嘘をついているのに。


次回もお楽しみに。
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