相変わらずの無気力感。
ただ書けそうな気はしてきましたね。頑張ります。
ゆっくりご覧下さい。
翌日。
あまりにも久々の食事と睡眠により体が驚いたのか、力が入らず寝たきりになった俺が寝ているところに、アリスはやって来た。
拾われの身で申し訳ない。動けん。
「おはよう。・・・あの、大丈夫?」
「大丈夫じゃない。ぜってー先生しばく」
そ、そう・・・と苦笑いを浮かべるアリスだったが、真面目な顔に変わった。
何かと思えば、昨日の続きだった。
「幸夜は、どうしてそんなに人間が嫌なの?」
「あ?・・・まあそうだな、己らが強者に虐げられた時は不平等だと喚き散らし、他生物の上に立って優位性を持てばその地位が揺らぐことを許さない。必ず自らより下の他者が欲しい。平等な中でも誰かが何かに僅かに優れていたらそいつを妬む。逆にコレをどう愛しろと言うんだ」
ただ、親父初の養子、つまり俺の義理の姉らしき人は俺の認識する人間とはかけ離れている。つまり、いつどんな状況でも悪に落ちない人達は嫌悪感が湧かないから嫌いではない。
あとは子供。アイツらは何も悪くないから嫌ではない。
俺が疎ましく思うのは成人し、俺みたいなガキよりも賢く、優れているのに悪事を働く奴ら。俺が嫌悪する事全て網羅するのだから、意味がわからない。
まあ、四割が記憶と伝聞からなので、俺もよくわからないが。
「・・・まあつまり、俺ら妖怪には少なくとも強者には逆らえない。みたいな弱くはあるが格差があるんだよ。人間はそれを望んで省いたくせにその後を考えていない。故に小さく意地汚い格差が生まれているってのが俺が最も嫌うポイントだな。後正当防衛以外の無駄に壮大な縄張り争いによる殺し合い」
俺が言いたいように毒を吐いていると、アリスは俯いていた。
「・・・私ね、人間なの」
「だろうな。助けてもらったやつの台詞じゃないが、こうして謎に助けるのも人間がよくする事だ」
先生もさっさと人間焼却すればいいのに、何をしているんだろうか。
意味がわからない。
「私の事、やっぱり嫌?」
なんて事を考えていると、予想斜め上の質問が来た。
「いや待て待て。だから、俺が嫌いなのは残念ながら大半を占める汚い人間であって、アリスや子供みたいな人間は嫌いじゃねえし、むしろ好きだぜ?」
今なんかすげえまずい事した気がするが、気の所為だろう。
「・・・!そ、そうなの?」
「そりゃそうだろ。こうして寝る場所も、飯も与えてくれる。逆に好感持たずしてどうすんだよ」
そ、そう?ありがとう。と言いながらアリスが部屋を出て行った。
まずい事をしている気はするが、何かわからない。分からなければ背後から刺されるような嫌な気配を感じるが、なんなんだろうかコレは。
「はい、紅茶淹れて来たわよ。飲む?」
「おお、貰う。・・・なんかすまんな」
「ううん、全然気にしてないわ!・・・ところで、幸夜」
「ん?」
「その、魔法使いって信じる・・・?」
アリスは恥ずかしそうに俺を見た。
普通なら「いるわけねーじゃん!」と笑って済ませるんだろうが、親父が魔法に両手突っ込んで当たり掴んでるような人の上に、現在逃亡した職場にもバリバリの魔法使いがいる。
つか先生も半分魔法使いの気がする。あの人基本なんでも出来るし。
「・・・いるんじゃねえかな。会ってみたいと思うぜ」
「そ、そう?・・・ま、まあ私は人間なんだけどね!あ、おかわり入れてくるわね!」
嘘つけ奥からエリクサーの匂いすんぞ。
などとは言わない。この森の中で一人暮らししてる時点で魔法使い確定だなんて言わない。
と言うか言える空気じゃない。
嬉しそうに何故かスキップして紅茶のおかわりを入れに行ったアリスに顔が緩む。なんで笑ってんだ俺は。
・・・全く。ここ最近俺は落ち着かないことが多くなって来た。
何故か急にイライラすることが増え、戦闘時も自分がわかるほど凶暴化し、その割にしきりに誰かに甘えたくなり、言い表せない気分が俺を包む。情緒不安定な時期なんだろうか。
先生に尋ねても「さっさとラブコメしに行け」しか返ってこないし、オルゴイさんに聞いても「若かりし頃誰にでもあるもの」なんて意味分からんことしか言われない。
人嫌い、母さんと親父以外からあまり褒められたこともなく、褒められる事を望んでいなかった俺が今更なんなのだろうか。
何を誰から求めるのか。
やはり母さん・・・
待て。
今何故アリスが浮かんだ。
・・・なんだこの感情、気持ちが悪い。
思考が冷静に取れない。おいなんだ、アリスが頭から離れない。
「はい、おかわり持って来たわよ。・・・幸夜?」
「え?あ、ああ!ありがとな!」
・・・落ち着け落ち着け落ち着け。
そもそも愛の感情が上手くわかってねえだろうが。
ただでさえ親父の記憶共有してるせいで感情が不安定だってのに。今もちょっとおかしかった。
まず深呼吸。吐いて、吸って、吐いて。
・・・っしゃ、落ち着いた。
最後に大きく吸って、
「そう言えば、幸夜に好きな人はいるの?」
吹いた。
全部出そうになった。
「っは!?ゲホッ!お゛はっ!?・・・バッカ、いきなり何行ってんだ、危うく吐くとこだったじゃねえか!」
吹き出したけどな!
「あ!ごめんなさい!・・・でも、折角こんな所に来てくれたから、聞くのも良いかなって」
「やめろください。・・・ったく、いねーよ。そもそもこの辺に来たのがまだ二、三ヶ月前なんだから、早々に出来るわけないだろ」
「そ、そうよね。ごめんなさい・・・」
「謝る事じゃないと思うんだが・・・」
そんな出会って即娘認定、即告白の親父じゃあるまいし。
畜生今すぐ親父と縁切りてえ。不穏な気配しかしねえ。つーか何故母さんはあのハイスペック放蕩親父と結婚したんだ。
顔か、強さか、性格か、なら仕方ねえな(誠に残念ながら非の打ち所なし)。
・・・だーっ、クッソやっぱ親父のせいで俺の理想像のハードル上がるじゃねえか。なんなんだよ世界が勘違いしてるから不死身、世界の法則書き換えたから魔法使える、そもそも、僅かにでも生きるものの恐怖対象になれれば万能とか。何をどうすればんな人類悪も顔真っ青の化け物になるんだよ。
そしてそれを片手で使役する先生と、先生と劣勢ながらも杭で一回殺せた互角のオルゴイさんはなんなんだよ。何故俺の周りの男はハイスペックばっかなんだよ。
「あ゛ー・・・」
なんなんだろう、この言い表すことの出来ない違和感と辛さは。
そもそも、なんで俺は先生の元へ来たんだったか。
強くなりたかった、何故?
親父に勝つため、何故?
・・・何故だろう。
俺は親父に勝つ事を目標にしてきたが、果たしてそれは俺のやりたい事なんだろうか。
俺は何がしたいんだろう・・・
「幸夜・・・?」
考えれば考える度分からなくなってくる。
そもそも、人嫌いと言うが、俺はほとんど街の人間と関わったこともない。
親父と先生の記憶と伝聞のみ。
結局俺自身が経験し、知ったことじゃない。
・・・知りたくなってきた。
人間が果たして滅ぶべき存在か。俺の存在する意味は何か。
この身の内に巣食う感情はなんなのか。
それは、自らで知らなければ分からないのではないだろうか?
伝聞のみで物を決めるのは人間と同じではないか。
「・・・アリス」
「ひゃっ!?な、何!?いきなり喋ってどうしたの!?」
「そんな人を無口キャラみたいに言うな」
確かに物思いに沈んでいた俺も悪いが、だからって喋って驚かれるのはどうなんだろうか。
いや、今はそんな事重要ではない。
俺は軽く咳払いをし、アリスの方を向く。
「本当になんとなくだが・・・街に行かないか?」
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「あーっ、幸夜が外に出てる!ずるーい!」
「お父様、見てる限りなさそうだけれど・・・幸夜は帰ってくるの?」
「・・・そうだな、些かあの歳と心持ちでここで働くのもあれかもしれんな。龍一、奴をここで働かせるのは後日にしてもらえるか?」
「その硬い面持ちでレミリアとフラン肩に乗せてんじゃねえよ」
ワインの口直しに紅茶を流し込み、水晶玉を見やる。
中では幸夜とアリスと名乗った少女が楽しそうに話している。
ま、レミリア達が良いなら良しとするか。
「・・・ま、その辺はそっちに任せる。幻夜の奴、案外人間と接点少ねえからな。そりゃ息子もああなるってもんだ」
「すまんな」
「こっちこそ悪いな」
・・・とりあえず、次帰ってきて鍛える時があれば飯と休息の禁止はやめておこう。
次回へ続く
ありがとうございました。
この前道にコマチグモと言う毒蜘蛛がいたので捕まえて観察していました。
噛まれてたら何か閃きましたかね。クソ痛いらしいですけど。
次回もお楽しみに。