真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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幾分か書けるようになりました。
最近ダラダラ投稿でしたからね、申し訳ありません。


ゆっくりご覧ください。


第八十九話 狩人

アリス宅。

病床を除き改めて在住して既に二日。

俺はアリスの代わりに力仕事を手伝っていた。

 

 

「・・・じゃ、薪切ってくるわ。・・・外に出るなよ」

 

 

「どうして?いつも出てるわよ?」

 

 

「表に熊の爪痕があった。薪切りも兼ねて狩ってくる」

 

 

「・・・大丈夫なの?」

 

 

「熊程度楽勝に決まってんだろ。そもそも向こうの理解が速けりゃ追い払うだけだしな。心配してくれてありがとな。・・・昼過ぎには帰る」

 

 

俺はアリスから借りた鉈と鋸を担ぎ、狩りに向かう。

暫くすると、焦げ臭い匂いが木々を抜けて鼻をついた。

一番嫌いな奴らの匂いだ。

 

 

「・・・ダボカスが。熊で良かったのにここまで狩りに来やがって」

 

 

鋸と鉈の両方を右手に持ち、形を変える。

ノコギリ鉈の完成。こいつは基本糸鋸の様な形に巨大な鋸刃が付き、伸ばせば鉈になる。

薪より脆く、しかし切りたくないものを切るために俺は姿勢を低くする。

獲物は四匹。

 

 

目前の草が揺れた直後俺はそれに飛びかかった。

鋸刃を押し当て、そのまま縦に引き下ろす。

絶叫と血が噴き出し、俺の顔と服を染めた。

ガシャガシャと剣が抜かれる音がしたが、俺は抉り引き裂いた鋸を鉈に変え、二匹分の首を力任せに吹き飛ばした。

 

 

最後の一匹は背後にいたらしく、剣を振りかざして俺に迫る。

俺はノコギリ鉈で受け止め、近場の木に剣を叩きつけてめり込ませた。

空いた腹部に右腕をぶち込み、内臓を引き千切り地面に叩きつけ、鉈を振り下ろしてトドメを刺す。

血を浴びて全身が汚くなった。

 

「・・・ッ!あ゛ーっクソ!汚ねえなあ!」

 

 

息を吐き出し、言いたい罵声をひたすら口に出して吐き出しまくる。

狩った相手は既に物言わぬ骸になっているので、遺骸を四匹のつけた火の中に放り込んだ。

そしてこれ以上火が広がらないように周りの木を刈り取り、俺は川でノコギリ鉈にこびり付いた血と肉を洗い流し、元の鋸と鉈に戻した。

 

 

無論、今先程狩り倒したのは人間であり、ここ最近増えた奴らだ。

何故か知らんがこの森を燃やし、やれ異端は狩るだの神の名の下にだの吠える。

俺にとっての神は先生のみであり、それ以外は害なすものであれば唾を吐き、殺れるなら殺る。親父にもそう教えられてきた。

と言うわけで熊より弱く数の多い獣だ。数が増えると猪よりは面倒だ。

 

 

それはともかく、アリスにどう言い訳をつけようかと血で固まった髪を水で洗い流していると、薪が流れてきた。

人が作ったような枯れ木を割ったものではなく、まるで生きていた木を切ったようなものだ。

しかも切り方は刃物で切ったというよりは、自然に落ちたような形だ。

・・・この森は確かに異端で、害になるのならそれはとんでもない脅威だろう。

だがまあそんなに悪い奴でもない。

 

 

「・・・貰ってくぞ。解決はしてねえが、ありがとな。なんかあったら言えよ」

 

 

ほんの僅かに木の葉が揺れた。

 

 

____________________

 

 

「って事で、四メートル越えの熊に襲われ、襲い返して仕留めたものの、返り血で血みどろになった。川で洗ったが俺で分かるくらい獣臭いし血生臭いから寄るなよ。後何本かその時に濡れて、表で薪干してるから、もうじき更に使えるぞ」

 

 

「・・・だから水でぐしょ濡れなの?」

 

 

「まあな。粘着質の赤い液体よりは幾分かマシだろ。・・・ああ、後鉈と鋸汚しちまった。悪いが新しいの街に買いに行くわ」

 

 

「幸夜が無事なら、別に鉈程度良いわよ・・・」

 

 

アリスが恥ずかしそうに顔を逸らす。

俺も恥ずかしくなり顔を逸らす。

うわ、くせえ。血の匂い落ちてねえじゃねえか。台無しだよ馬鹿野郎。

 

 

「・・・すまん、着替えてくる。流石に匂いがキツすぎる」

 

 

「替えあるの?」

 

 

「同じのが何着かな」

 

 

短いマントのついた長袖長ズボンの黒いコートは俺のお気に入りだ。

先生が似たようなのを着ていると言うのもあるし、何より血が払いやすい。夏は暑いが。

先生はグレーを愛用しているが、よく血で汚れている。親父曰く先生は血を流さず相手を殺せるはずなのだが。

 

 

俺はアリスから借りている物置兼俺の部屋に入り、まだ血の匂いのするコートを脱ぎ、新しいものをクローゼットから出す。

そういや親父は同じ服装を続けてしないが、あの人何着あるんだろうか。

 

 

「幸夜ー、パイが焼けたけど食べるー?」

 

 

「食べるー」

 

 

「じゃあ降りてきてー」

 

 

ま、どうでも良いか。

アリスの声に応答し、俺は階段を降りる。

 

 

一階に降り、いつもの椅子に座る。

テーブルにはアップルパイが置かれてあり、アリスの人形の一体、上海が紅茶を運んでいた。

 

 

「ありがとな、上海」

 

 

「シャンハーイ」

 

 

「お前喋れたのか」

 

 

「何言ってるの?上海が喋るわけないじゃない」

 

 

「ん?」

 

 

「え?」

 

 

今こいつ喋った気がするんだが。

当の上海は首を傾げ、俺にだけ見えるように人差し指を口元に当てて自分で動いてんじゃねえか!

つまりアリスの魔法は完成していた・・・?

いやまあ良いか。上海が黙ってくれとこうしてジェスチャーしているわけだし。

 

 

「・・・いや、空耳だわ。まだ耳に水入ってた」

 

 

「そう?・・・もし一人でに喋ってたら気絶するわ。私」

 

 

おい上海、アリス気絶するってよ、喋るっきゃねえぞ。

上海に視線を移すと、器用にアリスから見えないようにティーポットに隠れて首を激しく横に振っていた。

分かってるって。

 

 

「・・・」

 

 

分かった黙るから!だからなんで知ってるか分からんがノコギリ鉈の構えを取るな!

・・・なんでコイツはノコギリ鉈を知ってるんだよ。さては俺の部屋の血塗れコートの下の設計図勝手に覗いたな?

とりあえず黙っとくよ。

 

 

「シャンハイッ」

 

 

よろしい!みたいなイントネーションで言うな。

 

 

「とりあえず食べましょ?感想も聞きたいから」

 

 

「はいよ。いただきます」

 

 

____________________

 

 

幸夜が食べ終えた食器を片付け、安楽椅子の上で眠る幸夜を眺める。

疲れていたのか、小さく寝息をたてて眉一つ動かさない。

私に警戒していないのが見て取れる。

 

 

そう言えば、今まで訪ねてきた人は皆私を警戒し、ぎこちない笑い方をするだけか、家を出るときに口汚く罵るだけだった。

そんな所も私からすれば新鮮で、心惹かれたのかもしれない。

 

 

「アリス・・・」

 

 

どきりと心臓が跳ね上がる。

ここ最近、幸夜に名前を呼ばれるだけで動悸が激しくなり、顔を見るだけで体が熱くなってしまう。

けれど、それが心地よく、私が幸夜を好きなんだとより強く思わせる。

 

 

「幸夜」

 

 

つい幸夜の名前を呼び返してしまい、口もとがにやけてしまう。

今誰も見ていないのが救いかもしれない。

待って、今幸夜と私しかいないのよね。

・・・もしかしても、今何してもバレない、のかしら・・・?

 

 

「落ち着きなさい私・・・!そんな事しちゃダメに決まってるじゃない!そ、そんな、寝てる間にキスなんか・・・!?」

 

 

・・・ああ、そう思うだけで恥ずかしくなってきた・・・!

いや、でも、頬くらいなら、バレない・・・?

 

 

「・・・そ、そうよね。寝てる幸夜が悪いんだもの。・・・ちょっとくらい、良いわよね・・・?」

 

 

「何が?」

 

 

「ぴゃぁぁぁぁぁあ!?」

 

 

「シャンハイ!」

 

 

「バッ・・・オメーは黙ってろ!うるせえ!みてえなイントネーションで言うな!」

 

 

な、なんで!?ナンデ!?

こ、幸夜起きてる!?起きてる!?

じゃ、じゃあさっきの聞かれて・・・っ!?

と、とりあえず聞く・・・!?

 

 

「こ、幸夜?い、いつから起きてたの・・・?」

 

 

幸夜は気まずそうに顔を逸らした。

え、もしかしてまさかそんな

 

 

「幸夜。から」

 

 

「全部じゃないのよぉぉぉぉ・・・っ!?」

 

 

ぁぁぁぁぁ・・・

 

 

「ま、気にすんなよ。んで、恐らく壮大な脳内ドラマを展開されてたアリスさんや。・・・するか?やりたいなら俺は良いけど?」

 

 

ん゛っっ・・・!

目を逸らし恥ずかしそうに頬を掻く幸夜に全てを持っていかれ、抱きついてしまった。

 

 

「なんだ、そっちか・・・」

 

 

「違うに決まってるでしょ!」

 

 

幸夜と唇を重ね、より強く幸夜にしがみつく。

幸夜もしばらくした後、私を優しく包んでくれた。

 

 

「・・・こ、こっちに決まってるじゃない」

 

 

「・・・さいですか。・・・ちょっと眠気覚ましに外行ってくる」

 

 

「あ・・・」

 

 

するりと私の腕の中から幸夜が抜け出して行く。

私が名残惜しいせいで声を漏らしてしまうと、幸夜が咳き込んだ。

 

 

「う゛ぇっほ!?・・・あーもう!すぐ帰ってくるからその名残惜しそうな声やめろ!クソ恥ずかしいから涼みに行くんだよ!」

 

 

「・・・私も行っちゃダメ?」

 

 

「意味ねーだろ!!そろそろ暴走するぞ!?」

 

 

「・・・優しくしてくれるなら、良いわよ?」

 

 

「やめろって言ってんだろ!!」

 

 

幸夜は玄関を飛び出し、姿が見えなくなってしまった。

私は幸夜の椅子の前にいた上海を抱きしめ、呼吸を整えた。

 

 

「恥ずかしかった・・・っ!?」

 

 

暫くすると、狼のような咆哮が響き、幸夜は帰ってきた。

 

 

次回へ続く




さーて、また話がポンポン飛ぶと思います。
ご了承下さいませ。


ありがとうございました、次回もお楽しみに。
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