真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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幾分か書けるように(大嘘)
申し訳ありません。自分でも驚くほど時間がありませんでしたね。
以降も無くなりそうです。

ゆっくりご覧下さい。



第九十話 序列

最近、唐突ではあるが俺はアリスとかなり離れた別の場所に住むことになった。

とはいえ仲が悪くなったのでも、居心地が悪くなったのでも無い。

 

 

理由は二つ。

一つはアリスが魔法の研究を行うから。

研究する人間には床、壁、天井、あらゆる所に髪を貼り付け書きまくる人間が時々いる。

例えば親父とか、先生とか。

アリスもその癖があるらしく、部屋が散らかる。

それを俺が踏んで邪魔するわけにも行かないからと言うのが一つ。

 

 

二つ目は魔女狩りが目に見えて増えたと言う事。

最近の行いを振り返れと言われるかもしれないが、運良く魔女狩りに躍起になっていた人間たちは、手から武器を出す男を探している。

俺ですね。魔女じゃねえんだけど。

その為囮も兼ねてかなり離れた場所に情報を漏らしながら住んでいる。ちなみに吸血鬼狩りはここ周辺からいなくなった。不思議ですね。

 

 

無論、会えなくなる時間の方が多いので困るのだが、親切なことに紫さんがアリスの家に行く時に送ってくれることになった。

そう言えば先生の彼女っぽく見えたかと聞かれてはいと答えると嬉しそうに消えていった。あの人先生の事好きだよな。多分先生もだと思うんだけどな。なんで付き合わねえんだろ。

 

「なんて考えてると必ずと言っていいほどお客が来るんだよなぁ。休みねえのかな」

 

 

ベッドに寝転がっていると、鎧の音、足音、松明の炎とその匂いが俺の感覚を埋め尽くす。

俺はベッドから起き上がり、天井にぶら下がる紐を引いた。

 

 

「うわあ!?」

 

 

悲鳴が聞こえ、高いところから金属が落ちたような音と、肉が潰れる鈍い音がする。

紫さんとアリスの家への転送の話を先生の家でしていると、部屋にいた刀をぶら下げた刀傷の目立つ男の人に呼び止められ、お前は糸が使えるかと聞かれ、使えると答えた。すると糸を使う罠を教えてもらった。

先生、オルゴイさん、親父と違い、身体的なスペックで間違いなく負けると確信した相手だった。確か風魔だったか。

 

 

ついで机の上を掌で叩くと、落とし穴の中に落ちた生き残りの上にタライが落ちていく。ついで水が穴を埋め、やがて物音がしなくなった。

もう一度机を叩くと土が上から降り注ぎ、穴を塞いだ。

 

 

「誰だよこんな罠考えた奴・・・タライはいるのかよ・・・」

 

 

水を打ったように静まり返った広場を眺め、俺はコーヒーを淹れようと立ち上がり、豆を切らしていたのに気がつき、舌打ちをする。

 

 

「チッ、茶葉はあるんだがな・・・淹れたくねえしなぁ」

 

 

「お困り?」

 

 

「ああ、紫さん、ご無沙汰してます。今お茶淹れますね。俺が飲まなきゃ良い話なんで」

 

 

「いいわよ、お構いなく」

 

 

すっ、と机の横から紫さんが現れた。

冷静に対応できたが心臓に悪すぎる。

 

 

「まあ余ってるので、どうぞ。・・・で、なんのご用です?先生は来てませんよ」

 

 

「違っ・・・んんっ、そうじゃなくてね。アリスの事よ」

 

 

「アリスが?」

 

 

「ええ。・・・魔女狩りが増えてるのは、分かってるわよね?・・・最近あの子の方じゃ見なくなってるけど」

 

 

「まあその為に引っ越しましたしね。・・・まあ、最近食事の回数並みに来るようになりましたけどね」

 

 

「まあ、そうなのよ。・・・だから、あの子、ウチに誘わない?」

 

 

「ウチ・・・?」

 

 

紫さんは優しく微笑んだ。

 

 

「ええ。人と妖怪、誰もが笑える世界。それを今、私は作っているの」

 

 

「それ土地と人と実力と人のツテが要りますよね」

 

 

「ええ。確かにね。・・・否定はしないの?」

 

 

「否定出来るのは一度作ったことのある人くらいだと思いますけどね。第一そんな壮大な話、俺には良くわかりませんし。まあとんでもなく難しいんじゃないですか?」

 

 

「作ったことが・・・ええ、そうね。ありがとう。・・・今、八割程出来ているの。形は取れたから、人を集め始めているのだけれど、どう?」

 

 

「前提としてアリスが行きたいと言う事。魔女狩りに一度でも加担した人間がいない事。それさえ出来れば快く送りますよ。つか八割って凄いっすね」

 

 

まあ、と俺は一呼吸起き、紫さんに笑った。

 

 

「そん時は、俺もそっち行きますけどね」

 

 

紫さんは満足そうに微笑み、机に出したハート形クッキーを一つ食べた。

 

 

「そう。それは心強いわ。私としても実力者の知り合いが多いのは嬉しいもの。・・・あら、美味しい。見た目も可愛らしいわね」

 

 

「先生の手作りです」

 

 

「え?」

 

 

「先生が「紫がお前んとこに来るときに何も出せませんじゃ失礼だろ、これでも出しとけ」と家に置いていかれました」

 

 

紫さんは慌てたようにクッキーをもう一つ取り、俺とクッキーを順に眺め、恐る恐るといったように口を開いた。

 

 

「・・・じゃあ、これは、つまり、そう言う、事?」

 

 

「そうじゃないんですかね」

 

 

「ちょっとごめんなさいね」

 

 

紫さんが消えた。

五分が過ぎ、五十分が過ぎ、さらに三十分過ぎ、痩身の男の人が困ったように笑いながら、後ろに紫さんを連れて帰ってきた。

 

 

「・・・これは失礼、幸夜」

 

 

「・・・あんたは?」

 

 

「龍一の部下、侵二です。まあ覚えてませんよね。一応貴方を抱き抱えた事はあるんですが・・・」

 

 

「親父の同僚、って事だよな?・・・ああ、聞いたことあるぜ、饕餮だよな」

 

 

「ええそうですね。喋り方もそれでよろしいかと。・・・ほら紫殿、いつまで照れてるんですか。仰りたい事があるんでしょう?」

 

 

「そ、そうだけど・・・そ、その、ね?幸夜君、そのクッキー、余ってたら、分けて、貰える?」

 

 

俺は侵二を見た。少し申し訳なさげに笑っていた。

 

 

「・・・良いですよ。元々紫さんにって先生が渡しに来たものですし、欲しければどうぞ。後奥の本先生の日記です」

 

 

「ありがとう!」

 

 

嬉しそうに笑い、クッキーと余計な物の場所を教えるとその部屋に入っていった紫さんを確認し、侵二に聞いた。

あの部屋先生の私物ばっかだから仕方ないな。

 

 

「なんで先生と付き合ってないんです?」

 

 

「大人の事情です」

 

 

「そうっすか」

 

 

「およ、深入りしないんですね」

 

 

「まあ、あの人なら明確な理由あるんだろうなーと。・・・そういや侵二さんは紫さんの理想に協力してるんです?」

 

 

「ええ。まあ彼女の右腕とお付き合いしてますので、立場上手伝う必要がありますからね。個人的にも面白そうなので見たいんで、そこそこ尽力してますよー」

 

 

「割と適当なんだな」

 

 

「んー、まあ、そうですかねえ」

 

 

あの人も適当でしょう?と侵二は笑った。

確かに。

あ、そうだ。

 

 

「先生って紫さんに好きって言ったことあるのか?」

 

 

「ありません」

 

 

成る程俺に説得力が無いと言っていたのはこの事か。

 

 

「ちなみにいつから紫さんと?」

 

 

「百年以上前です」

 

 

そりゃ説得力無いわ。と言うかなんでそこまで時間かかるんだ。

 

 

「・・・まあ、主上の愛情論が歪んでるから拗れるんですけどね。大人の事情なんて誤魔化しましたけど、話しましょうかね」

 

 

俺は紫さんと侵二用に紅茶を出し、自分には水を注ぐ。

侵二は紅茶を啜り、聞きます?と笑った。

俺が頷くと、侵二さんも頷いた。

 

 

「今紫殿いるんで後でいいですか?」

 

 

「紫さんならあの部屋から多分出て来ねえぞ」

 

 

「・・・そうみたいですね。何があるんです?」

 

 

「先生の日記」

 

 

「ああ・・・」

 

 

どちらかというと日常の日記というか俺の成長記録を書いているのだが、紫さんの話がしょっちゅう出るので多分紫さんは出てこない。

と言うかホントに紫さん、先生が関わると十七、八の女の子みたいになるなあ。

 

 

「さて、じゃあ話しましょうか。あれは今から三十六万、いや、一万四千年前でしたかね」

 

 

「そんな前なのか」

 

 

「・・・うーむ」

 

 

侵二が渋い顔をした。

なんで?

 

 

「実はツッコミポイントなんですよ」

 

 

「・・・あ、マジか。・・・んで実際何時頃なんだ?」

 

 

「百年くらい前です「最近じゃねえか!」それが聞きたかったんですよ」

 

 

満足げに侵二が笑った。

意地悪りぃわ。

 

 

「えーまあ、さっさと述べますと。主上は特定の一人を愛することが出来ません」

 

 

「クソ野郎じゃねえか!」

 

 

「ん?ああ失礼。言い方が悪過ぎました。正確には個人を愛せないんです」

 

 

「・・・今してると思うんだが。言い方も悪意があったぞ」

 

 

「心情的にはそうでしょうし、私達から見てもどう考えても紫殿が好きなのは分かります。ただまあ一応証拠を出せということのようで。好きと直接言ってやっと愛した判定になるそうなんですよ」

 

 

「・・・そんなのが世界作ってて良いのかよ」

 

 

「そこは堪えてください。・・・ま、そういう訳でして、主上は好きと言うと世界と紫殿の優先順位を変えてしまうわけですよ。紫殿の方が世界より好き、なんて言うのは仕事上よろしくないと思ってるんでしょうね。あくまで神様として頑張ってるみたいですよ。人間臭いですけど」

 

 

「いやまあ人間だよな先生は」

 

 

「ま、そんなわけで、簡単には言えないんじゃないですかね」

 

 

「・・・そんなもんか」

 

 

「何が起きるか知りませんから、あんまり覚悟無しに言いたくないんじゃないですか?」

 

 

「そうだよな。・・・ちなみに侵二は?」

 

 

「言うに決まってるじゃないですか。世界なんて知ったこっちゃないです」

 

 

すっ、と侵二に録音機を手渡された。

 

 

「これでもし今の話が出たら、録音しといてください。上映会するんで」

 

 

「ひっでえなアンタ」

 

 

「悪神ですから。しばらくしたら事は起こると思いますよ。風魔がそう言うので」

 

 

「何者だよあの人」

 

 

 

次回へ続く。




以前から学生と名乗っていたのですが、ここ最近進路が大幅に変わりまして、その進路の為に作るモノをここ最近作り始めております。
遺憾せん私が脳味噌に茸生やしたような奴なので、ソレの制作にクソ程時間がかかっております。
以降おっそろしく遅れますが、どうかご容赦のほどよろしくお願いします。
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