真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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書き溜め其の二です。


ゆっくりご覧下さい。


第九十二話 後悔、執念

『お前が好きだッ!!』

 

 

「クッハッハッハッ!」

 

 

「もう一回!もう一回!」

 

 

『お前が好きだッ!!』

 

 

「フハハハハ!!やめろ!止めろ馬鹿者!」

 

 

「よくもまあド派手に言い切りましたね。録音お疲れ様です」

 

 

「・・・バレてたら死んでたんですけど」

 

 

「バレないバレない!僕の息子なんだから!」

 

 

親父に背中をバシバシ叩かれながら、侵二に労われ、風魔に爆笑される。

事の発端は先生がすき焼きを囲いながら好きだと叫んだあの時。

俺は録音していた音声を侵二につき出すために紫さんに侵二を呼んでもらうとおまけで二人が来て、風魔の家に案内された。

 

 

「・・・まあしかしな、龍一の不死性が無くなったというのが本当であれば、大惨事だぞ?」

 

 

「殺し合えませんからね」

 

 

「違うわ馬鹿者」

 

 

「じゃあ何さ。別に問題なく無い?」

 

 

「あ、紫さんの事か?」

 

 

風魔が俺を見て面白そうにニヤリと笑った。

 

 

「ほう?お前の息子はお前より賢いらしいな。「ひどっ!」その通りだ幸夜。これから紫殿の為に龍一は奔走する。タガが外れたから尚更だ。すると当然考え無しに肉壁になりそのまま死ぬ。なんて事が起こりかねん。・・・ただ一応龍神の補正は残っているようではあるから、その補正を貫通してくるものが無ければ死なんだろうがな」

 

 

「まあ、それが出来るのは僕らだけだよね?流石にいないよね?」

 

 

「多分。ですけどね。私より風魔が詳しいのでは?主上を殺せる何かをご存知ですか?」

 

 

「伊織に関係ないから知らんぞ」

 

 

「この狂人が」

 

 

「ほざけ」

 

 

「やめなって、沸点低すぎだよ」

 

 

風魔と侵二がケラケラと笑い、やれやれと親父が首を横に振る。

親父が突っ込み役なのに俺は内心驚愕した。

 

 

「・・・で、二度目だが。お前の息子、大きくなったな」

 

 

「まあそうだね。結局龍一に預けて正解だったかも。幽香は時折寂しそうにしてるけどね。ちょっとは顔出してあげてね?」

 

 

「・・・分かってるよ」

 

 

「ん。・・・でさあ、彼女とはどうなのさ?」

 

 

「・・・ん?」

 

 

侵二の方を見るが、首を横に振られる。

風魔も同じだった。

 

 

「言ってないですよ」

 

 

「知らんぞ」

 

 

「・・・誰から聞いた?」

 

 

親父を問い詰めようと胸ぐらを掴むと、親父はするりと抜けてピースサインを向けて来やがった。

 

 

「ふっふーん。・・・僕にバレないと思ってんの?」

 

 

「クッソがァ!!」

 

 

成る程な、見つかっていたらしい。クソが。

 

 

「ちなみに幽香には話してません」

 

 

「つまり俺が母さんに会いに来た時アリスのことをひた隠しにしてたの見て笑ってたなテメエ・・・!!」

 

 

「そーなるね」

 

 

「なんて野郎だ・・・」

 

 

「で、どーなのさ」

 

 

「・・・先生と同じくらい?」

 

 

「早くない?」

 

 

「・・・文句あるかよ」

 

 

「んーん?・・・まあちょっと嬉しいかな」

 

 

「あっそ」

 

 

照れ臭くなり、親父から顔を背ける。

 

 

「・・・ところでだ侵二」

 

 

「はい?」

 

 

「私はお前に呼ばれて来た。そうだな?」

 

 

「まあそうですね」

 

 

「次に、幸夜はお前に頼まれて録音した。だな?」

 

 

「そうですよ?ボケましたか?」

 

 

「いや」

 

 

最後に・・・と風魔は親父を指差した。

 

 

「コイツは知ってたんだな?」

 

 

「ええ。知ってましたよ。私と幻夜の二人で仕込んだ事ですから」

 

 

「そうか」

 

 

ゆっくりと風魔が立ち上がり、だそうだぞ。とおもむろに窓を開けた。

直後全身に虫が這い回るような悪寒と、血が抜けていくような喪失感に苛まれる。

そんな中、窓に誰かが手をかけた。

 

 

「そうかあ・・・お前らかぁ・・・」

 

 

「草」

 

 

「・・・呪いますよ風魔」

 

 

「知るか。気づかんお前が悪い。・・・部屋を変えるぞ、幸夜」

 

 

おかしくなったように笑う親父と、僅かに笑いを堪えながら風魔を睨む侵二を残して、俺は風魔に来いと指示された。

 

 

「こ、ろ、す」

 

 

顔面が歪みきった先生が見えたような気がするが無視。

生々しい殴打の音と床を踏む音もするが無視。

 

 

「・・・はぁ。幸夜」

 

 

「ん?」

 

 

「あまり父親に乗せられるなよ」

 

 

「・・・そりゃ揶揄われるなって事か?」

 

 

「いや。・・・父親をお前の知る父親として見るな。という事・・・よく分からんだろうな」

 

 

「ああ。全く分からん」

 

 

「だろうな。言葉では足りんな」

 

 

ゾッ、と寒気がした瞬間。俺はどこから持ってきたか分からない刀を喉元に突きつけられていた。

風魔はこう言う事だ。と笑い、刀を仕舞った。

 

 

「今はお前の親で、ヘラヘラと生きているが。・・・忘れるなよ、あれは私と、侵二と、龍一と同格の男だ。アイツが本当は何をしたいのか。誰も知らん事だ・・・」

 

 

「・・・分かった。とりあえず気を付けておく」

 

 

「ああ。・・・まあその時が来れば、無意味かもしれんがな。・・・お前の名前をよく考えるんだな。そしてあまり人を信じるな。お前は優しすぎる」

 

 

「なんだよ、それ」

 

 

「さあな」

 

 

____________________

 

 

「何してるの?」

 

 

「・・・ん、ああ。ちと考え事」

 

 

「この前の?」

 

 

「・・・なんか言ったっけ?」

 

 

「ううん、変な顔してたから・・・」

 

 

「あっそ。・・・なんでもねえ。ぼーっとしてただけだよ」

 

 

あれ以降、ぼんやりと風魔の言葉を反芻するのだが、未だに真相が分からない。

親父を親父として見るな、か。

なら何として見れば良いのか。先生に仕える同僚か?

 

 

「・・・あるいは、外敵か」

 

 

親父が俺に害なすとして、どうするのか・・・

そもそも何故害するかの理由もない。

それに名前をよく考えろ、って言われてもなぁ・・・

 

 

「なあアリス」

 

 

「ん?なあに?」

 

 

「俺の名前ってなんか不思議か?」

 

 

「んー、そうね?」

 

 

しばらく机に頬杖をつきながら考えていたアリスだが、ポンと手を叩いて口を開いた。

クッソかわいい。

 

 

「そうね、個人的に不思議に思うわ」

 

 

「お、何が?」

 

 

「幽夜さんって人がもう一人の幻夜さんみたいにいるんでしょう?」

 

 

「らしいな。一応家族にもなんのかね」

 

 

「幻夜さんは貴方の事産む事を考えてたのよね。だったら幽夜、って名前を子供の方につけると思わない?」

 

 

「・・・いやいや、そんなの個人の感想だろ。とは言いつつも母さんから文字取らねえのも親父らしくないな・・・」

 

 

「でしょう?・・・他の家族の名前が入ってたりしてね」

 

 

「いねー、よ・・・?」

 

 

いや待った、確か亡くなってはいるが姉がいたんだったか・・・?

いやしかし、最初のが俺の姉であって、後はその姉貴の子孫みたいな話を親父から聞いたような・・・?

 

 

「・・・いるの?」

 

 

「ん、あー・・・いるかもしれん」

 

 

「なんでそこ不明瞭なの!?」

 

 

「ウチの家族意味不明なんだよ」

 

 

「・・・とにかく、いるならその人の名前から取ってたりしないの?」

 

 

「幸なんていないと思うけどなぁ」

 

 

「あ、サチ。とか?」

 

 

「尚更いねーよ!」

 

 

「じゃあ、高、とか?工とか?」

 

 

「随分と日本語達者になったなお前・・・つか書いてもらわねえとどのコウか分かんねえよ」

 

 

アリスが読み方がコウの漢字を並べていく。

ついでにヤの方も並べられていった。哉とか、はあるにしろ、八もあるのか。

 

 

「うーん・・・高八とか、工哉とか、工八?」

 

 

「誰だよ」

 

 

主に最後が酷え。カタカナのエハに見えて仕方がない。誰だエハって。

 

 

「・・・まあ、そこまで気に病むことじゃないと思うわよ?」

 

 

「いやまあそうなんだがな」

 

 

「・・・そう言えば、幸夜って自分のこと話してくれないわね」

 

 

「そうか?」

 

 

「そうよ。・・・結局私、幸夜がどんな人で何をしてきたか全然知らないもの。えっと・・・不安で仕方ないわ」

 

 

「それ付き合ってから言うセリフじゃ無いと思うけどなぁ」

 

 

「む。・・・聴きたいから遠回しに聞いてるのよ。教えて?」

 

 

「・・・マジでくだらねえぞ?」

 

 

「教えてくれるの?」

 

 

「まあな。・・・波乱の人生とかは期待するなよ」

 

 

俺の人生、家族、そんな辺りを話していると、いつのまにかアリスは寝ていた。

やっぱり寝るじゃねえか。

 

 

「・・・能力について再度聞かれなかったのはマシか」

 

 

ただやっぱり喋っている間に寝られたのはムカついたので、毛布をかけてほっぺたをこねくり回してやった。

 

 

次回へ続く。




ありがとうございました。

もう書きだめもありませんので以前も申し上げた通りクッソ遅くなります。
ご注意下さい。


次回もお楽しみに。
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