真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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 自分にとって大切なものが生まれると、それを大切にするでしょう。
 そうして大切なものを失った時、その絶望から立ち上がり未来へ進むか、絶望の中の今で立ち止まるか。
 どちらにしろ、それが人間でしょう。
 決して過去へは進まないのです。進めないのです。


 ゆっくりご覧下さい。


第九十六話 獅子身中の

 ぴくり、と幻夜が動きと表情筋をを止めた。

 風魔は表情をより鋭いものに、そして口元に笑みを浮かべながら、自身の頭を指先でつついた。

 

 

 「ここに一本、アリス達を襲った矢がある。形状は一般的。鏃もしっかりしたものだ。・・・ただな、何処から撃ったか分からんが、距離十メートルとして、弓はまあ、強弓が必要だろうな」

 

 

 まあつまりだ。と取り出していた矢をへし折った。

 

 

 「幸夜の頭を横に貫通する事は、不可能に近いのだが。幻夜」

 

 

 「・・・だから僕がやったとでも?向こうに大男がいたら解決する話でしょ?」

 

 

 「まさか。それが証拠にならん事くらい誰にだってわかる。実際大男が放ったようだからな。本題はその続きだ。・・・お前、今日アリス以外の少女達をどうした?」

 

 

 「ん?だから龍一のとこに連れて行って「そこがおかしい」・・・チッ。と言うのは?」

 

 

 いや何、と風魔は口元を更に吊り上げた。

 対して幻夜は不快そうに口を真一文字に引き締めた。

 

 

 「今日、龍一は紫殿とずっと一緒にいた」

 

 

 「あっそう。ならなんで来なかったの?感知できるよね?」

 

 

 「もっともだ。だがしかし決定的な理由がある」

 

 

 「私が直接私一人で済むから来るなと言った」

 

 

 風魔のその言葉に、はあ、と幻夜は長い息を吐き出し、ガシガシと頭を掻いた。

 ひとしきり頭を掻いた後、風魔を睨み上げた。

 

 

 「明らかに人選ミスったなあ。侵二は知ってそうだし、壊夢は勘でバレそうだったんだけど、可能性に賭けすぎた。・・・そうだね、君は見ていたんだね。そりゃあ怪しまれる」

 

 

 「まあ、偶然だったのだがな。・・・しかし、何が目的だ?残念ながら私はあの風景を見た訳ではなかったので憶測だった。お前の目的はなんだ?よもや二人の仲を深めると言った理由ではあるまい?」

 

 

 「先に言い訳潰すんだもんなあ。・・・そうだよ。そんな理由じゃあない。・・・それに、言わなくても分かってんじゃないの?答え合わせしてあげるから言いな?」

 

 

 ふむ、と風魔は調子を取り戻したかのように口元を吊り上げ、目を細める幻夜にニヤリと笑った。

 

 

 「・・・私は、女性を主とした人間の確保、だと思ったのだが」

 

 

 「うん。二割正解。ただそれじゃ全く本質に近づいちゃあいないよ」

 

 

 「・・・何?」

 

 

 「うんまあ、今の一件のみで二割正解は凄い。折角だし、五割分、つまり残り三割までは教えてあげよう。・・・今風魔は人間と言ったけど、別に喋る人間なんか要らないんだよ。生きてても死んでても良い」

 

 

 トントン、と幻夜は胸を叩いた。

 

 

 「肉が要ったんだよ。小さな女の子、若い女性、壮年、中年、高齢、そして僅かながらも男性。・・・肉という言い方はあれだね。要は皮膚内臓筋肉が要ったんだよ。更に言うと脳以外全て」

 

 

 「いや元々細々と拐うつもりだったんだけどね?まあ偶然アリス狙ってるって話聞いたから、折角だし・・・と思ってね。いやあ人ってほんとに動かしやすいねえ」

 

 

 まあおかげで二つ目の目的も同時進行出来たんだけどね。

 と幻夜は不快な笑みを浮かべている。

 風魔は笑ったまま、そうか、とだけ答えた。

 

 

 「成る程な。・・・しかしそんなもの何に使う?それに、お前が大切に抱き抱えていた子供もいたが、大丈夫なのか?」

 

 

 「やだなあ風魔。僕がロリコンみたいじゃないか。・・・僕が真に愛するのは自分の子だけだよ。・・・それと幽香以外、どうだっていい」

 

 

 「狂っているな」

 

 

 「そう?」

 

 

 「ああ。私達はよく丸くなったと言い、言われるが。・・・お前は逆だ。よりおかしくなった。不思議な事だ」

 

 

 「獣が中途半端に人間性を得るととんでもない事になるって言ういい例だね。ま、僕自身もこうまでおかしくなるとは思ってなかった。・・・でもね、欲しいんだよ」

 

 

 幻夜は空を仰ぎ、より一層口を笑みの形にした。

 

 

 「あの瞬間が、あの日々が。今度はきっちり三人。二人なんてこともなく、欠けることなく、そして三人がすぐに別れる事もないように。それで、今度は僕を一番愛してくれたらなって。・・・その為なら人間十数人、なんなら数万人なんてどうだっていい。逆にあんなとこに連れてかれてるってのは要は爪弾きものだったり厄介払いされてる人ばかりだ。有効活用されてるんだから感謝して欲しいね」

 

 

 「龍一が聞けば、なんと言うだろうなぁ・・・?」

 

 

 「さあね。知らない。・・・で、今僕の残り三割の秘密を知った訳だけど?どうするの?」

 

 

 幻夜の更に細められた目から、刺すように警戒と殺意が風魔を射抜く。

 しかし風魔は当然動じることなく、軽く鼻で笑った。

 

 

 「くだらん。何故こんなクソ程つまらんことを一々報告せねばならん。勝手にしろ」

 

 

 「む、報告されると思って・・・殺す気だったんだけど」

 

 

 「馬鹿が。誰が貴様ごときに。・・・似たものを持っている気がした。気のせいかも知れんが。故に見なかったことにしてやろう。そして、いざその時、私も混ぜろ」

 

 

 「おっと、共犯って事かな?・・・ねえそれマジで言ってんの?」

 

 

 「ああ。・・・ただし、全てが終わってから。私は全員に平等。ただ一人しかいない。悪いが最後に回すぞ?・・・その時私にはおそらく斬りたいものがあるのでな」

 

 

 「はぁ・・・」

 

 

 呆れ返ったように幻夜が今日一番の長い息を吐き、舌打ちをする。

 

 

 「受け入れるしかないじゃん。断ったら今この場で殺されるんだから。・・・ホント、あらゆる生物の反射神経を凌駕し、あらゆる位置にゼロコンマ一秒で到着して首を斬る。反則なのわかってる?」

 

 

 「しかしお前が私に気がつかない確率はゼロではない。違うか?・・・要はその場の勝負だ、幻夜」

 

 

 「そう言うの気疲れするから嫌なんだよ・・・」

 

 

 「同感だな。・・・で、受けるか?」

 

 

 「話聞いてた?受けるって言ったじゃん」

 

 

 「そうか。・・・そうだ、一つお前の聞きたいことをなんでも答えてやろう。代わりに一つ答えろ」

 

 

 「えー・・・」

 

 

 まあいいか、と窓の外から気を取り直したアリス達を一瞥すると、幻夜は風魔の頭を指差した。

 

 

 「んじゃ質問。・・・どこまで見えてる?」

 

 

 ニイ、と風魔の口が裂け、ずい、と幻夜の瞳を覗き込んだ。

 

 

 「お前が死ぬまでだ」

 

 

 「ふーん・・・ならやりたい事も見えてるのかな。まあいいや、ありがと」

 

 

 「うむ。では私だ。・・・残り五割の目的。そして総合的にお前が何をしたいか、正確に言え」

 

 

 「ちぇー。なんかそれ僕に不利な気がするなー。しかも見えてなかったのね。謀られてんじゃん。・・・まいっか。答えてあげるよ、仕方ない」

 

 

 幻夜は口を尖らせたのち、風の音と人の囁き声と機械音が入り混じった奇妙な音を二度発した。

 

 

 「残り五割は■■■■■■を■る■■」

 

 

 「本来は・・・」

 

 

 「■■■き■■■■た■」

 

 

 「・・・そうか、お前はそこに行き着くんだな」

 

 

 「悪い?人は正の感情と未来に希望を持てるけど、化け物は負の感情と過去にしか希望が持てないんだよ。そこを理解して、そして人間的には理解しないでね。君は人に近いんだから。後、さっき後回しみたいなこと言われたけど、誰?」

 

 

 「侵二」

 

 

 「侵二も?・・・まあいいか。どうせすぐ終わるでしょ」

 

 

 「どうだか。・・・まあせいぜいそれまで死なんようにな。お前のすることは龍一の逆鱗に触れるのだから」

 

 

 「はいはい」

 

 

 なら良い。と再度風魔は口を吊り上げると、付近の落ち葉を巻き上げた。

 落ち葉が皆落ちる頃には、風魔は消えていた。

 また同様に、幻夜も姿を消していた。

 

 

 ____________________

 

 

 「ん?」

 

 

 「・・・どうしたの?」

 

 

 二人が消えたのとほぼ同時に、幸夜は窓の外を見た。

 窓の方に近づいて外を見ると、少し風が吹いたのか、落ち葉の位置が変わっている程度だった。

 幸夜は首を傾げたが、まあ良いか、と呟いた。

 

 

 「いやなんでもない。誰かいるような気がしたんだが・・・特になんの跡形も無いから、気のせいみたいだけどな」

 

 

 「そう?・・・あ、そうだ、幸夜」

 

 

 「おう?」

 

 

 「貴方、能力は何?」

 

 

 「・・・確か最初に無しって言わなかったっけ「幻夜さんがあるって」なんだ、バレてんのか。・・・まあ悪かったよ、黙りっぱなしで。俺もちゃんと能力がある。ま、それはそれは酷い能力だがな」

 

 

 「・・・だから、言わなかったの?」

 

 

 「まあな。・・・つっても今この場でダンマリでもそれはそれで良くねえからな。ちゃんと説明するよ、俺の能力」

 

 

 次回へ続く




 幻夜の能力の補足
 ・万物を欺く条件は、【その事象が100%不可能なこと】ではない事。
 ・過去どんな事であろうと、【誰かが一度達成したことがある】場合、代償無しに肉体的に再現可能。精神的なものが関連すると不可。

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