真・幻想創星録   作:青銅鏡(銀鏡)

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 これでアリスはしばらく見納めとなりますかね。


 ゆっくりご覧ください。


第九十七話 またいつか、そしてもう一度

 「触れたものを?」

 

 

 「そう。【手にした無機物と有機物を兵器に変える程度の能力】。簡単に言い換えりゃ【触れたものを武器にする程度の能力】だな。ちょっと複雑ではあるんだが、例えば今ここにフォークがあるよな?フォークは金属なのでナイフに変えられるし、形を持つ前の液体にも出来る。ただし何か関連がないと武器に変換は出来ない。連想ゲームみたいな奴だな」

 

 

 「それで、どうして言わなかったの?」

 

 

 「そりゃ怖がられるかなーと思ってたからな」

 

 

 「どうして?」

 

 

 「血ってのは少なからず金属が混じってる。つまるところ俺からすりゃ武器の素なんだよ。人の手に触った瞬間針だらけにすることも出来る。その辺りの牛肉一つから武装した肉人間を作り出せる。・・・なんて言ったらドン引きだろ?握手したくねえだろ?」

 

 

 「・・・確かに、会って初めてで言われたらそうだったかもしれないわね」

 

 

 「だろ?この際正直に言うが、時々鉈ダメにしたのも武器に変えてたからだ。割と鎧とか斬ろうとするとすぐボロボロになるからな」

 

 

 「そうだったの・・・」

 

 

 「悪いな。・・・で、どうだ?俺の能力は?」

 

 

 「さっきも言ったけど、今更よ。今から何言われたってもうなんとも思えないわよ。・・・受けたものが多かったしね。ありがとう」

 

 

 「・・・そうかよ」

 

 

 幸夜は頷き、目線を鋭いものへと変えた。

 

 

 「じゃあ、俺からも良いか?」

 

 

 「なあに?」

 

 

 「・・・まだ人間、好きか?」

 

 

 「ええ」

 

 

 「バカだな」

 

 

 「・・・かも、ね」

 

 

 「だが俺の方がバカだな」

 

 

 はあ、と短く幸夜は息を吐いた。

 

 

 「・・・そりゃ、そんな返事が返ってくるよな。アリス」

 

 

 「ええ。確かにひどい事はされたけれど。・・・でも、その分あの村で素敵な人にも会う事は出来た。貴方からすればプラスマイナスでマイナスの方が大きいと思うかもしれない。そうかもしれないけれど、私は嬉しかった」

 

 

 恥ずかしそうに、しかし何処か誇らしげにアリスはそう言うと、にっこりと笑った。

 

 

 「だからね。私は絶対人間を嫌いにならない」

 

 

 ごめんね。とアリスが言うと、幸夜は笑いを堪えるように口に手を置き、肩を震わせた。

 

 

 「いいさ。それを決めるのはお前なんだから、どうこう言いやしねえよ。・・・ただ、危なくなったら直ぐに助けを呼んでくれよ。特にこの先!・・・しばらくお前とは会えないから」

 

 

 「・・・ええ。約束するわ」

 

 

 「なら大丈夫。先生と風魔が来てくれる事になってるから、また会う時までは二人に何か用があるなら言ってくれ」

 

 

 「ええ。・・・幸夜、一つお願い」

 

 

 「ん?」

 

 

 「貴方も・・・心から、人間を嫌わないであげて?」

 

 

 「・・・へっ、お前に言われたらしょうがねえ。分かったよ。・・・ただし、一線は引くからな?」

 

 

 「ありがとう・・・」

 

 

 「何、有り難がれる事ですらねえ。惚れた弱みだよ、コレは」

 

 

 自嘲する様に幸夜は呟くと、席を立った。

 

 

 「じゃあ、またな」

 

 

 カツン、と足音を軽く鳴らし、幸夜はアリスに背を向ける。

 アリスはそんな彼を見送ろうとして立ち上がりかけたが、何故か今立っては、今だけはもう一度顔を見ては行けない気がして、彼女は黙って見送った。

 

 

 この時の彼女は正解だった。

 

 

 アリスからは視認できない位置で、幸夜の顔が窓に映り込んだ。

 その顔は、目を細めて口角を薄く上へと曲げ、さながら■■のような姿を映した。

 

 

 「それじゃあ、行きますか」

 

 

 少し調子の上がった声を口から出すと、幸夜は地面を蹴った。

 それきり、森は静かになった。

 

 

 ____________________

 

 

 「で、この場所に帰ってきたと言うわけか。大した奴だな」

 

 

 「まあそう言うな、風魔「これでも褒めているのだがな・・・」これは失礼」

 

 

 「・・・あの、なんで風魔さんが居るんです?」

 

 

 幸夜が紅魔館に戻ると、奇妙なことにオルゴイと風魔が出迎えた。

 風魔はオルゴイと向かい合い、碁を打っている。

 横には将棋盤やチェス盤も置かれ、将棋盤は風魔が、チェス盤はオルゴイが勝利した状態で置かれていた。

 

 

 「何、お前の体調を見にきただけだ。・・・何度か会ったが改めて。いや態度の変わった貴様からすれば初めてか?最初は名乗り忘れるわ、前の時はバタバタしていたからな。私が風魔だ。よろしくな、幻夜の息子」

 

 

 「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。・・・それでオルゴイさん、働く話なんですが。ホントに大丈夫ですか?」

 

 

 「うむ、負けそうなのだが「仕事の方ですよ。後今置こうとしてるとこの二つ右です」・・・む。別に構わん。前からその予定であったし、見たところ・・・強くなってきたようだからな。ここか」

 

 

 「そう、ですか?そこです」

 

 

 「要らんものまで背負ってきたようにしか私は見えんがな」

 

 

 風魔はぴしゃりと言い放つと、盤面を一睨みして負けだ。と囲碁板の上に石をジャラジャラと撒いた。

 

 

 「よくもまあ今見ただけで局面を理解したものだ。得たのはいいが、過ぎた観察眼はろくなものにならんぞ。時には見ぬふりをせんと、な。・・・邪魔をしたな、吸血鬼」

 

 

 「何、楽しかったよ、風魔。また教えてくれると助かるな」

 

 

 「ああ、貴公がそれを望むなら。その囲碁板と将棋盤は渡しておく。代わりと言ってはあれだが、またチェスも教えてくれ。中々面白かった」

 

 

 風魔は一つ微笑みをオルゴイに負けると、姿を消した。

 

 

 「幸夜」

 

 

 「はい」

 

 

 「風魔と言ったあの男、未来が見えるのか?」

 

 

 「はい?」

 

 

 幸夜が不審そうに顔を顰めると、オルゴイは手を軽く振って忘れるように言う。

 次いでオルゴイは引っ込めていたオーラを放出し、幸夜に浴びせかけた。

 

 

 「うおっ」

 

 

 本来なら対等な立場のものでも屈するカリスマを、幸夜は強風を受けたかのように仰反るだけで、膝を折る事は無かった。

 

 

 「・・・本当に、逞しくなったな」

 

 

 「一回死んだようなもんですからね」

 

 

 そうか。と少し嬉しさと心配の入り混じった微笑をオルゴイは浮かべると、放出していたオーラを引き下げた。

 

 

 「これより・・・お前をこの館の使用人と認めよう。念の為、私の命には従うように「はい」・・・まあお前には言う事はないな。娘達や美鈴、パチュリーに顔を合わせておけ。知り合いではあるがな」

 

 

 後一つ。とオルゴイは頭を掻いた。

 

 

 「親馬鹿。と言われればそれまでなのだが、レミリアが面白い未来を視たらしくてな。三桁目の年にはなりそうなのだが、その時にはお前に一番働いてもらう」

 

 

 「・・・多分世の中の何処にも百年先の仕事頼まれる奴いないでしょうね。とりあえずよくわかりませんが分かりました。その時はやろうと思います」

 

 

 「その時はお前にとっても意味のある時だとは思うが、些か説明しづらいのでな。異様な言い方ですまないな」

 

 

 「いえ。・・・それでは、顔合わせしてきます」

 

 

 背を向け立ち上がる幸夜。

 その後ろ姿に、ハッと目を見開いたオルゴイは、狼狽したように僅かに口を開閉し、そして声をかけた。

 

 

 「幸夜、お前は・・・「幸夜だー!」っ」

 

 

 「わっ、とっ、たっ!・・・おお!久しぶりじゃねえか!・・・んんっ!お久しぶりですね、フラン様、それに・・・レミリア様」

 

 

 「ええ。本当に久しぶりね、幸夜。少し強くなったの?」

 

 

 「ん、ああ・・・そうですね。ちょっとだけですけど」

 

 

 「そうなの!?じゃあ幸夜!向こうで鬼ごっこしよー!」

 

 

 「ああ、ちょっと待ってな。・・・良いですか?オルゴイさん・・・じゃなかった、オルゴイ様」

 

 

 「む、ああ、良いぞ。好きにするといい。ただし外には出ないようにな」

 

 

 「りょ・・・畏まりました。では行きましょうか、フランお嬢様、レミリアお嬢様」

 

 

 誰から教えられたのか、美しい礼の体制を取ると、幸夜が帰ってきた嬉しさを顔に出すフランドールと、フランドール程ではないものの、嬉しそうに微笑むレミリアを連れて幸夜は退出した。

 

 

 「幸夜・・・お前に混じってるのは、誰だ?」

 

 

 オルゴイの呟きは部屋の壁に吸い込まれ、幸夜達に届く事はなかった。

 オルゴイはハッとしたように首を横に振ると、いかんな、と苦笑した。

 風魔から話を聞けば、幸夜は瀕死の傷を負ったという。そこで多少なりとも他の人間の血を入れたかもしれないのだ。

 

 

 「今彼はここにいる。信用せずしてどうする」

 

 

 娘達も気がついていない程違和感は微弱なものだ。何もないだろうとオルゴイは思考を止め、散らかった囲碁板を眺めた。

 

 

 「どう見ても、後二、三手私が置いたら、私が負けていた筈なのだがな・・・」

 

 

 

 次回へ続く

 





 さて囲碁の結果は、見えたのか、知っていたのか。


 次回もお楽しみに。
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