聖遺物を巡る物語   作:風来のがばお

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聖遺物『聖槍』 前編

まだ世界が生まれる前、始まりの神が存在した。

 

 

始まりの神は世界を創造し、今日に至るまでのあらゆるものの、全ての『始まり』・・・『起源』を創造したのだ。

 

 

だが始まりの神の世界にある一つの存在が生まれた。

 

 

 

対になる神・・・終わりの神が現れたのだ。

 

 

終わりの神は世界に存在するあらゆるものに『終わり』・・・『終焉』をもたらしたのだ。

 

二つの神は争い、激しくぶつかりあった。そして二つの神は戦いの果てに肉体を失い、やがて世界の概念に溶けていった。

 

神の存在が溶け込んだ世界には『魔力』と呼ばれる力が満ち、その世界で魔力を扱う者を『魔道士』と呼んだ。魔道士達は様々な思想によって、その力を振るっていった。

 

そしてその魔導士達が集まり、その力を生業とする組織を『ギルド』と呼ぶようになった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「プロローグさん!プロローグさん!起きてください!もうすぐ着きますよ!」

「んっ…!おお…すまんすまん…いつの間にか寝てしまっていたようだな。むぅ…かれこれ一時間、ってとこだな」

 

坑道を走る馬車の中で、私は目の前の一人の老紳士を起こしてあげました。よく揺れる中で寝れるなぁ…まぁ、逆にそれが眠りやすくしてたのかも。

 

「しかし馬車は退屈だな。四輪魔導車があれば早く着くんだがねぇ…」

「無理言わないでくださいよ。あれはまだ最近出来たばかりのものですし、魔力石をいっぱい使って燃費が悪いみたいで評価はあんまりみたいですよ。あと高いですし、お金」

「試乗会の抽選に応募してはみたのだが…せめて試乗したかったな〜…」

 

私の名前はツイ・テスタテートといいます。ギルド『聖遺物の足跡』の魔道士です。そして私の目の前にいるこの老紳士の人がギルドマスター、プロローグ・テイルズさんです。そこそこお茶目な人で少し抜けてそうな人に見えますけど、こう見えてとても高い実力を持った魔道士なんです。

 

「抽選のハガキの枚数が一枚だけだったのが悪かったのか…?確かに一枚だけはあれかな〜と思ってはいたが…くぅ〜…!何故あそこで十枚投稿しなかったのだ!あそこでケチな事をしなければ…!」

「そんな事で悔やまないで下さい!それに十枚投稿したとしても当たるとは思いませんよ!プロローグさんみたいに乗りたがってた人は大勢いたんですから!」

「でもさぁ〜…」

「そんな顔しないでください…これから依頼人に会いに行くのにそんな顔されたら相手の人も困っちゃいますよ…」

 

今私達は、ある場所へ向かっています。もちろん目的はギルドに舞い込んできた依頼のためです。普通だったらギルドマスターがそんなにホイホイと通常の依頼には参加しないんですけど、ウチのギルドは私を含めてたったの二人だけなんで、まだ13歳で経験不足の私を一人でこなすにはまだ早いので、プロローグさんが引率で付き添ってくれているんです。

 

どうしてギルドのメンバーが二人だけなのかは、またいずれ…

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

「ようやく着いたみたいだな。ここに来るのは何年かぶりだが…あまり変わっていないようにも思えるな」

「大きいですね…ここが『聖都』…」

 

馬車を降りてしばらく歩いて、私達はここ『聖都』へとやって来ました。聖都は私達がいるシュヴァイツ大陸で最も大きい王国『フェアリス聖国』の首都で、世界の中心とも言われている場所なんです。

 

街の門をくぐると、そこには色々な人達がいました。露天の商人や買い物客、そしてこの聖都に住んでいる人達が街を行き交っていました。

 

「すごい人だかりですね…!私、こういう場所には何度か行った事ありますけど、ここまで多くの人達がいるのは初めてです!」

「フェアリス聖国の首都だからな。他の街とは比較に並んだろうな。観光地としても有名で、街の真ん中に大きな噴水があったはずだ」

 

へぇ〜…そうなんだ。時間があったら行ってみたいな〜。ん?あれ?なんだろう…プロローグさん、難しい顔をしてどうしたんだろう…

 

「あの…プロローグさん。どうかしましたか?」

「いや、気のせいかもしれないのだが…あそこにいる奴を見ろ」

 

プロローグさんが指さす方向を見ると、そこには黒いマントを着た二人組の騎士の人が歩いていました。この街を巡回してる警備をしてるのかな?

 

「騎士さん、ですけど…それがどうかしたんですか?」

「あの騎士…黒いマントをしているだろう?」

 

確かに白い服の上にマントを着ていますが…

 

「それがどうしたんですか?」

「あれは聖都を守護している者の証なんだが…あの黒いマントは聖都の精鋭のみが着用を許可されている証で、普段は白いマントを着た騎士が見回っているはずなんだ…黒いマントを着た騎士は女王のいる居城で守護しているはず…」

 

それってつまり…

 

「何かあったという事ですか?」

「それか聖国自体に何か変わった事でもあったのかもしれんな。それ故にこのような依頼が来たのだろうな」

「聖国の女王様が依頼人、ですからね…」

 

そうなんです。今回の依頼人。それはこの国を統治している女王様なんです。

 

「ともかく、女王様を待たせる訳には行かんからな。早く行くとしよう」

「そうですね。早く顔見せしませんと」

 

何故一国の王女様が私達のような小さなギルドに依頼をしたか。それは私達のギルドには、ある目的があるからです。そして今回の依頼は、その目的に関する内容故に受けたんです。

 

神が創造したとされる神造物…『聖遺物』に関する依頼を…

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

有名な泉を数秒チラ見しながらも私達は聖都の中心にそびえ立つお城、『聖城』にたどり着きました。有名な泉…もうちょっとだけ見たかったな〜…人が大勢いたせいで本当にちらっとしか見えなかったんだよね…

 

「依頼が終わったら好きなだけ見ればよかろう?」

「まぁそうなんですけど…内容によっては見れずに終わるなんて事も…」

「そういうフラグは建てない方がいいぞ。依頼が聖遺物関連の依頼だから起こる気がしてならん…」

 

そんなフラグはへし折ってやりましょう。

 

「そこの二人組、待て」

 

と、聖城に入ろうとしたら入口から黒いマントの騎士さんがやって来ました。今回は二人組ではなく真ん中の隊長さんを筆頭に何人かを引き連れていました。

 

「誰かね?そこの若者よ」

「私は聖都近衛騎士団隊長ユーリ・ヴェルディだ。ここはフェアリス聖国を治める女王様が居られる聖城…それを知らない訳がないだろう?何の目的だ。ここは一般の者が立ち入る事は禁止されている筈だが?」

「私達はその女王様から依頼を受けた者です!そこを通してくれませんか?」

「女王様から依頼、だと?ならばそれを証明するものを持っているだろうな?」

 

確か…依頼書と一緒に聖城への入城許可証みたいなのが入ってたっけ…?

 

「プロローグさん。許可証って持ってます?」

「え…ツイ、お前持ってないのか…?てっきりお前が持ってたのかと…」

 

あ…えっと…つまり…

 

「忘れて来ちゃったって事に…」

「ほう…持っていないのか…」

「いや待て!女王が記入した依頼書なら持っているぞ!」

「女王様の筆跡を真似ている可能性があるかもしれん。女王が記入された文章が公開された時があったからな。それだけでは駄目だ」

 

あう…ど、どうしましょう…

 

「な、何か手立てとか…一旦取りに帰るとか…」

「とはいえ取りに帰るのも面倒だぞ…ど、どうするか…」

「何をコソコソと話している?怪しい奴らだな…」

 

なんて話をしてたら…あわわわ…いつの間にか私達…囲まれてました…

 

「どうしましょうプロローグさん…」

「どうにも帰してはくれそうにないし…かと言ってここでやり合うとかには行かんしなぁ…」

 

女王様に会いに行く前に牢屋行きなんて…そんな事には…

 

 

「おや、どうかしましたか?」

 

と、どこからともなく男の人の声が聞こえました。

 

「ああ。これはミカミ神父。いえ何、怪しい者がいましたので連行しようかと思いましてね」

「怪しい者ですか…ん?その顔…もしやあなたはマスタープロローグでは!?」

 

と、男の人…ミカミ神父という神父様はプロローグさんの顔を見た途端驚いた顔をしていました。

 

「む!その声は…まさかミカミか!?」

「ええそうですよ!ユーリ様、この方達は決して怪しい者ではありませんよ。私の恩人なんです。どうか解放していただけませんか?」

 

プロローグさんの…恩人…?

 

「この男がミカミ神父の恩人…?…これは失礼を…お前達」

「「はっ」」

 

神父様のお陰で隊長さんは騎士の方達を退かせてくれました。

 

「お久しぶりですね。マスタープロローグ」

「久しぶりだなミカミ。大きくなったな。しかし、聖堂教会の使徒だったお前が今や神父とはな…」

「私一人の力でなれたものではありませんよ」

「あの…プロローグさん。この方は?」

 

昔からの知り合いって感じだとは思いますが…

 

「はじめましてお嬢様。私はミカミ・ソウジといいます。聖堂教会の神父を務めています。マスタープロローグとは魔法の先生と生徒の関係でしてね」

「えっ、プロローグさん先生やってたんですか?」

「ま、10年くらい前だったかな。まだギルドを建てる前は普通に教師をやっていたのだよ」

 

へぇ〜…知らなかったな〜…そういえばあまりプロローグさんの昔の事全然知らないんですよね、私。今度時間があったら聞いてみよっと。

 

「女王様に用があるのでしょう?」

「何故それを?」

「今回の依頼人は女王様ではありますが、依頼を考案したのは私なんですよ」

「ミカミ神父様が?女王様とは一体どういったご関係で…?」

「まぁ…ちょっと色々ありましてね…」

 

色々?

 

「ユーリ様。この御二方を案内していただけませんか?」

「あなたが絡んでいるのであれば仕方がありませんね。二人共、ついて来い。女王様の元へ案内してやる」

 

ミカミ神父様の仲介で何とか女王様の元へを行く事が出来ました。

 

「…威圧的な感じがすると思いますけど、本当は優しい人なんですよ。それにあの人…恋人の前では…」

「…っ!?神父!それ以上言いますと…!」

「おっと。これは失礼を。では御二方、気をつけて」

 

ミカミ神父様と別れた私達は、そのまま隊長さんの引率の下、女王様へと会いに行くのでした。

 

「それで…どんな相手なんだ?その恋人ってのは?」

「う、うるさいぞ!黙ってついて来い…!」

 

顔を真っ赤にして怒ってますけど…なんだか仲良くなれそうな気もしてきました。




ツイ・テスタテート…イメージCV:佐藤聡美

プロローグ・テイルズ…イメージCV:土師孝也

ユーリ・ヴェルディ…イメージCV:岡本信彦

ミカミ・ソウジ…イメージCV:内山昂輝
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