オレが普通に授業を受けていると「1−A沢田ツナ。応接室へ来るように」という放送が流れた。オレ、ちゃんと授業中はケイタイの電源切ってるからなぁ。でもヒバリさんには授業中とか関係なかったよ……。
「さ、沢田。早く行きなさい」
「すみません。ちょっと行ってきますね」
何の用だろうなぁと呟きながら立ち上がると、勇者だ……と誰かが呟いた。相変わらずヒバリさんは怖がられてるなぁ。オレからすれば、今のヒバリさんめっちゃ優しいから。トンファーを振るう前に話聞いてくれるんだよ!?そりゃ歳をとって落ち着いてきてからはバトルが条件だったけど先に話を聞いてくれたけどさ。この頃のヒバリさんは理不尽の塊だったから!
オレが応接室に顔を出すと、ソファーに視線を向けられたからお言葉に甘えて座らせてもらう。
「わぁ。ありがとうございます、草壁さん」
「いえ。では私はこれで失礼します」
お茶まで入れてもらえたよ。ヒバリさんの許可がないと出ないから、やっぱりこのヒバリさんは優しいよね。
「さっき、僕のところに赤ん坊がきたんだけど」
「ぶはっ」
「……汚い」
すみません!すみません!と言って慌ててハンカチで拭く。いつかはリボーンがヒバリさんと接触するのはわかっていたけど、まさかオレが居ないところでするとは思ってなかった。
「君、マフィアの跡取りなんだってね」
うわー、リボーンの奴、どこまで話したんだろ。
「あはは。ヒバリさんには迷惑かけないように気をつけます」
用件はこれだけかなっと思って、残りのお茶を飲みこむ。
「……君の要求の中で1つ気になっていたのがあった」
要求って、風紀委員に入る時に言った条件のことだよな?
「え?何かありましたっけ?」
「中学まで」
ヒバリさんってなんでそんなに鋭いのかなぁ。それともオレが迂闊なだけ?
「最初は進路かなって思ったけど、決まっているなら君なら僕に言うはずだ。あの赤ん坊の話を聞いて納得した。……君、卒業すればここから出て行く気?」
ここっていうのは並盛じゃない。表社会からってことだ。多分オレが誤魔化せばヒバリさんは一生許さないと思う。だから本当のことを言った。
「骸と約束しましたから。……あ!オレから言ったんですよ!骸はどっちかといえばオレに付き合ってくれてるだけです」
ヒバリさんが骸に良い印象を持ってないから慌ててオレは説明を付け加えた。
「……僕は君と出会って、強さにも種類があると知った」
「ヒバリさん?」
「君の場合、ここは足枷にならない。強さの源だ。それを捨てるっていうの?」
さっきお茶を飲んだはずなのに、喉がかわく。
「危険が及ぶから?確かにそうだろうね。でも……選択肢すら与えないのは、君のエゴだ」
「エ、エゴって……オレは……みんなを思って……」
「選ぶのは君じゃない。それに……あの南国果実だけじゃ、君は無理だ」
ハハハ……。ほんと、ヒバリさんって容赦ないよな……。
「……そんなのわかってますよ。オレと骸だけじゃどうしようもないって」
「ふぅん。それならいい」
オレは頭を下げてヒバリさんの前から少しでも早く去ろうと足を動かす。
「僕は内容次第だよ。……君が僕にくだらない用件を持ってくるとは思わないけどね」
最後の最後にズルい。そう思いながらオレは扉を閉めた。
ゴロッとオレは寝転がる。屋上はヒバリさんがよく昼寝をする場所だけど、多分今日は来ない。学校でオレが1人になれる場所なんて限られてるから……。
「……リボーン、そこに居るんだろ?」
「よくわかったな」
「お前、ヒバリさんに何言ったんだよ」
はぁとため息を吐く。気を遣ったのか、リボーンはヒバリさんとの話は聞かなかったみたいだけど。その気遣いはいらないって。
「オレはそんなに話してねーぞ」
「ウソつくなよ。あの人、そんなちょっとやそっとでは動かないっての」
「ウソじゃねーぞ」
話す気はないってことかよ。子どもみたいにスネたオレはリボーンを見ないように横向きに寝る。
「オレはそんなにヒバリのことを知らねーからな。もしお前の話が本当なら、ツナ……ヒバリはお前のために動いたってことじゃねーのか?」
「……なにそれ、全然笑えないじゃん」
ああもう!と今度は仰向けになって腕で目を隠す。
「なぁリボーン」
「なんだ?」
「オレにとってさ、ヒバリさんはヒーローだったんだ」
「……過去形なのか?」
リボーンの疑問にはこたえず、オレは口を開く。
「やっぱ、ヒバリさんはオレのヒーローだよ」
「……そうか」
「あーもう!本当にいいとこ持って行くんだから!……オレ、ずっとヒバリさんみたいになりたかったんだよ。でもなれないや。オレはオレだから……。ダメツナなりに頑張るよ。だから頼んだよ、リボーン……」
言いたいこと言ってスッキリしたのか、オレは眠くなって寝た。
ツナの寝顔を見ながら、リボーンはポツリと呟く。
「おめーのどこが、ダメツナなんだ……?」
はっきり言って欠点の方が少ない。家光もよくこれだけの逸材を隠しきれていたと思うほど、ツナは優秀だ。たとえ家綱以外の候補者が残っていたとしても、ツナなら張り合えただろう。
確かにボスにしては甘すぎる。だが、シャマルが表現したように美点でもある。特にボンゴレのボスには相応しい。「全てに染まりつつ全てを飲み込み包容する大空」という使命をツナは体現しているようなものだから。
これのどこを見てダメツナと呼べるのか。
更にリボーンが困惑しているのがある。リボーンを見るツナの眼差し。……あの眼からは絶対の信頼しか感じられない。
骸からリボーンが凄腕の殺し屋であって、ディーノを育て上げた家庭教師と聞いただけで、あそこまでの眼差しを送れるとは思えない。
ツナが女ということもあるが、それを抜きにしてもリボーンはツナとの距離感を掴みかねていた。
「ツナ、おめーはオレにどーしてほしいんだ?」
理由はわからないが、そこまで信頼してくれるなら期待にこたえたい気持ちはある。が、いったいツナはリボーンに何を望んでいるのか。
リボーンを信頼しきって眠ったツナを見て、リボーンは溜息を吐いた。
雲雀恭弥
幼少期にツナと出会い、強さの答えは1つじゃないと知った。
ツナが弱くなることを許さなかった。だから動いた。
沢田ツナ
雲雀のようになるのは無理とやっと気付いた。
でも自分から巻き込む勇気はなく、リボーンに導いてとSOSを出した。
リボーン
一番困惑してる人。
雲雀の性格から盗み聞きはしない方がいいと判断したが、聞けば解決していたかも?