山本が野球道具以外に竹刀も持ち歩くようになった。
あれからオレは支離滅裂になったけど、ちゃんとリボーンに説明したんだ。マフィアとかは話さなかったけど、不良を倒せるオレが危ないっていうなら尚更ついていくって山本が言って、野球選手になる夢がぁぁぁってまた嘆いて……。オレがあまりにも落ち込んでいたからか、リボーンがずっと応援していたオレの気持ちも理解できるけど、山本の意思を受け入れてやれって優しく諭してきてさ。リボーンにそんなことさせて、オレもう情けなくてボロボロ泣きながら、うんうんって頷いて……。もうその日は散々だった。
家綱にはバカにされるし、リボーンにやられて何も言えなくなったけど……。ランボもフゥ太もうつったのか、わんわん泣いちゃって。だからしっかりしなきゃって思えて泣きやめたんだけどさ。ビアンキには一緒の布団に潜りながら男のプライドというものを教えてもらった。前世で男だったのに……と思いながらも性別がかわるとわからなくなるもんだなーって思った。
ちょうど次の日が日曜日で、オレの目が泣きはらした後ってわかるぐらい腫れていたから、ヒバリさんもギョッとしてさ。笑って誤魔化したけど、バトルする気にはならなかったみたいで、ご飯に連れてってくれた。ヒバリさんがありえないぐらい優しくて、自分の頬を引っ張ってたらトンファーで小突かれた。オレも失礼だと思ったから、これは避けなかったんだ。でもそれはそれでヒバリさんは気にくわなかったみたいで、さっさといつものオレに戻れとため息混じりに言われた。
そんな感じでいろいろあったから、山本が竹刀を持っていてもオレは何も言わないことにしたんだ。骸にもその話をしたら、本当に君はめんどくさいですねって言われたけど……。なんで一番付き合いが長いコイツが優しくないんだよってちょっと思ったけど、骸にも優しくされたらオレは完全に立ち直れるかわかんなかったから、骸が居て良かったと思ってる。
ちょっとずついつもの日常に戻ってきたオレの家の前に、黒服の人たちがいっぱい居てびっくりしたんだ。
流石に付き合いが長かったから部下の人でも見覚えのある人がチラホラ居て、誰がきているのかすぐにわかったオレは慌てて家に通させてもらったんだ。
「よっ。お前が沢田ツナか」
や、やっぱりディーノさんだ!!
「ツナ、骸から聞いてお前もよく知ってんだろ?オレがお前らの前に家庭教師をしていたディーノだ。お前の兄弟子だな」
オレ、骸から何にも聞いてないのに知ってることになってるよ……。あいつが何も言わなかったのはオレに害がないからだろうけど。
「ええっと……」
「ツナ姉、ツナ姉」
ぴょんぴょん飛び跳ねてオレに何か伝えようとするフゥ太のためにオレはしゃがんだ。
「リボーンがね、ツナ姉のために呼んだんだよ。僕のランキングだとツナ姉の憧れランキングでディーノ兄は三位だからね」
「リボーン、お前……」
感動してリボーンを見つめながら気づいたけど、ランキング怖ぇ……。知り合ってないはずの人もランキングしてんじゃん!?今回も骸のおかげで乗り切れたよ……。
「んだよ、うまくやってんじゃねーか。こっちへきて早々にオレを呼びつけるから心配してたんだぜ?」
「そうか」
「リボーン?」
「……おめーと違ってツナは優秀だかんな。やることがねぇんだ」
「あはは。よく言うよ。オレこの前泣き言をいって迷惑かけたのに……」
でもそのおかげでこんなに早くディーノさんに会えたんだけど。
「あ、良かったら泊まってってくださいね!」
「ん?そうしたいところだが、泊まるとこねーだろ?」
「オレの部屋を使ってくれていいですよ。オレ、母さんやチビ達と寝ますし」
「……気持ちだけにしておくぜ。部下がホテルとってくれてるしなっ」
それならしょうがないよね。ちょっと残念だなぁ。昔みたいに夜まで話したかったんだけど……。
「それなら、ご飯ぐらいは食べてってくださいね!」
「わーった。わーった」
うわー、ディーノさんに頭撫でられるの久しぶりだよ。オレがボンゴレ継いでからは流石にやってもらえなくなったしなぁ。
「なに、やった本人が照れてんだよ、ボス」
「うるせー。こうも喜ばれると可愛いだろ……」
「あはは。またまたー」
あ、可愛い妹分っていう意味だったのかも。オレ、自惚れちゃったのかも……恥ずかしい……。
「ツナ、行きましょう。穢れるわ」
「げっ、ビアンキ!?って、そりゃねーぜ」
「ビアンキ、行くってどこへ?」
「ママンの手伝いよ。この男の分も増えるのでしょう?私も手伝うわ」
うわーっとオレは慌ててビアンキを追いかける。このままだとみんながポイズンクッキングの餌食になっちゃうよ!
オレがビアンキの料理を阻止しつつ母さんの料理を手伝ってる間に家綱と顔合わせは済んだみたいで、リボーンが何かしたのか4人で食事をすることに家綱は何も言わなかった。流石に人数が多いからね。ちび達は母さんとビアンキに任せた。
「そういや、お前らファミリーはできたのか?」
「ええっと……」
「ツナは優秀だぞ。オレが目をつけた奴はみんな手懐けてんぞ」
「手懐けてるっていうなよ!?協力してくれてるだけだから!」
「へぇ。リボーンが目をつけた奴ってことはこりゃ本気で凄そうだな」
いや、そんな……とディーノさんの言葉にオレは照れる。みんなが褒められるとやっぱり嬉しいから。
「家綱はどうなんだ?」
そういや、どうなってるんだろ……とチラッと顔色をうかがう。家綱は完全に無視をしていた。
「全然ダメだな。一応同じ奴にも声をかけたが、『面白い冗談ですね』や『嫌』、『誰?……ああ、口だけの草食動物ね。興味ないよ』、『わりぃ、オレはツナを守るって決めちまったからよ』、『極限に誰だーー!』という感じで散々だったぞ」
うわ、誰の言葉かわかっちゃったよ……。というか、いつのまにかお兄さんにも声をかけてるし……。
オレがリボーンの行動に引いていると、ガタッと家綱が立ち上がった。……ああ、機嫌悪くなっちゃったよね。
「おい、後でオレの部屋に持ってこいよ」
「自分でやれ。ツナに命令すんな」
わかったとオレが返事をする前に、リボーンが家綱に言ってしまった。オレは気にしてないからって言おうと思ったけど、リボーンに視線を向けられてオレは何も言えなくて……。それでも家綱のフォローしなきゃって思って、お盆をそっと差し出した。食べないと身体に悪いし、後で母さんに作ってもらったりしたらリボーンの制裁を受けるハメになるから。ひったくる勢いだったけど、家綱は受け取ってくれてオレは良かったとホッと息を吐いた。
家綱が料理を持って部屋に戻るのを見送った後、オレはディーノさんに頭を下げた。
「すみません!オレのせいで……」
「ツナ、オメーのせいじゃねぇんだぞ。謝んな」
「で、でも……」
「オレは気にしてねーから、大丈夫だ。な?」
ディーノさんの言葉にオレは安心したように座った。
「んで、ツナのファミリーはどんな奴なんだ?」
空気をかえるようにディーノさんは明るくオレ達に質問してきた。やっぱこういう気遣いがサラッと出来るディーノさんは、カッコいいなぁ。
「どんな奴……?こ、個性的かな」
「一筋縄ではいかねー連中なのは確かだな。特にあいつのヤバさは別格だ」
「あいつってもしかして骸のこと?」
「ああ。オレでも勝てるかわからねぇからな」
「は?」
ディーノさんが驚いてるけど、オレもちょっとその気持ちはわかる。リボーンが負けるとは思わないけど、骸は術師だから勝つのは苦労するよ、絶対。
「それ大丈夫なのか……?」
「大丈夫ですよ。リボーンにも言いましたけど、もしもの時はオレが止めてみせますよ。骸もオレにはやりにくいだろうし」
「おいおい。もしもの時の場合なら、情を計算に入れるのはよくないぜ」
「違いますよ。オレ、あいつの術のほとんどが効かないんですよ。なんとなくこれは幻術だなーってわかるんで」
ギョッとしたようにリボーンとディーノさんがオレを見た。え、何かまずいこと言ったっけ?
「……いや、この歳でもう幻術に対抗できるとは思わなくてな」
「そうですか?最近、ヒバリさんもわかってきてる気がするんですけど……」
「ヒバリもなのか……」
「あの人、天才だから。小学生の頃から、骸の幻術うけてるしね」
本当にヒバリさんは凄いよね。オレみたいに血じゃなくて、自力で耐性つけようとしてるから。末恐ろしいな……と呟いたディーノさんの言葉にオレも同意して何度も頷いちゃったよ。
「……いつもこうなのか?」
「そうだぞ」
ん?とオレが首を傾げれば、ディーノさんに頭を撫でられた。2人の会話が気にはなったけど、今でしか味わえないことだからオレは素直に喜んだ。
やっぱり部下がいないディーノさんは半人前で、ご飯をポロポロこぼしてたし、片付けを手伝おうとして転んで食器を割ったりした。でもそれはわかっていたことだし、ちび達で慣れていたオレは笑って流した。
「キャアア!」
「母さん!?」
オレは聞こえてきた悲鳴に急いで母さんのところへ向かう。オレがついた時には母さんは腰を抜かしながらも、風呂場へ指をさしていた。
「へ?」
「ディーノのペットのエンツィオだぞ」
いったい何!?と思っていたら、エンツィオが風呂場で暴れていただけだった。そういえばそんなこともあったなー、忘れてたよ。
「いててっ。うわっ、いつのまに逃げ出したんだ?っと、そんなこと言ってる場合じゃねーか。ツナはあぶねーから……」
よいしょっとオレはエンツィオを転がしてひっくり返す。まだそこまで大きくなかったし、オレが本気で殴ったらエンツィオが危ないからね。動けないようにするのが一番だと思ったんだ。
「言ったろ。優秀でやることがねぇって」
「……だな」
母さんにもう大丈夫だよと声をかけに行ってたオレは2人の会話を聞いていなかった。
ディーノ
冗談でリボーンに心配したんだぜ?と言ったのに、リボーンが言い返してこなかったので、何かあるなとすぐに察した人。
異性に部屋やベッドを譲ろうとしたりする迂闊なところは、ビアンキが担当していることにもすぐに気付く。
教えるまでもなく幻術耐性、強さ、咄嗟の判断が出来ているため、リボーンが優秀というだけはある。
ここまで出来て、本人は威張るようなことはなく、性格もよし。
ちょっと謙虚気味なのでそこを注意するぐらい。
家綱がグレたくなる気持ちもわからなくはないと思った。
ただツナに対する甘えが滲み出ていたグレ方だったので、リボーンを止めることはしなかった。
自分とまったく違うタイプで、さらにツナは女で、やりにくいんだろうなと理解した。
これから時間がある限り顔を出すことを決めた。
リボーン
ツナを元気付けたかったのもあるが、ディーノへの態度も見たかった人。
ランキングに入っていたのでわかっていたが、ツナは自分に向けるような信頼の視線をディーノにも送っていた。
まだ何か隠しているのは気付いているが、害がないので暴くべきか悩んでる。
ツナの憧れランキング
一位、雲雀恭弥
二位、リボーン
三位、ディーノ
四位、沢田奈々
五位、沢田家光
ツナのランキングでは基本この5人が上位に組み込む。