死ぬ気で治す気ではいたけど、流石に1日では治らなくて朝から四苦八苦しながらもオレは日課の走り込みのために外へ出た。
「おはようございます!10代目!」
……いったい、いつから獄寺君は家の前に居たんだろう。オレが学校前に走ってることを話してないのにもう居たよ。
「ランニングですか?お伴します!」
「今日は走るだけだから、手を使わないし大丈夫だよ?」
「いえ、自分も鍛えたいので!」
そこまで言うならとオレも気にしないことにした。獄寺君が強引なのは昔っからだし。責任を感じて世話をする気満々だったから。
まだ怪我も治ってないし、身体が鈍らないために走っただけだから、いつものコースは当然やめて早目に切り上げた。
「流石です、10代目!オレも鍛えてるつもりでしたけど、もっと必要だと痛感しました」
「獄寺君は制服だったしね。走りにくかったよね、ごめんね」
オレの知ってる獄寺君なら「滅相もありません」とか言いそうなのに、真っ赤な顔してそらすからやっぱりこの獄寺君はちょっと変だよなぁ。
「良かったら家で休憩しながら待っててよ」
「い、いえ……」
「でもオレまだ朝食べてないし、着替えないといけないから気をつかっちゃうよ」
「10代目がそうおっしゃるなら……」
どうぞあがってあがってと玄関まで来たのは良かったんだけど、オレすっかり忘れてたんだよ。前世ではビアンキは常にゴーグルしてくれたからさ。
「ツナに悪い虫がついたと思ったら隼人だったのね」
「ア、アネキ……」
ぐぎゅるるるというお腹の音と共に、獄寺君は倒れてしまった。
「ご、獄寺くーん!!」
オレの叫びもむなしく、ビアンキがこの場にいる限りどうしようもなかった。仕方なくオレは朝食を抜いて、さっさと着替えて獄寺君を外へ連れ出した。
「すみません!荷物持ちます!10代目!」
「リュックの許可もらったから大丈夫だよ。あ、でもそう言ってもらえるなら弁当は持って欲しいかも」
「もちろんです!」
手が使えないから腕に通して持ってるけど、やっぱり持ちにくくて獄寺君の言葉に甘えることにしたんだ。クロームの家に向かいながら、獄寺君の壮絶な過去の話を聞く。何度聞いてもビアンキの料理は恐ろしいよ……。
「10代目はアネキと親しいんですね……」
「そうだね。料理は……うん、作らないように防いでるけど、よくしてもらってるね。今日だって手を使えないから手伝ってもらったよ」
「オレに言ってくだされば……」
「えっと、汗を拭いてもらったり、着替えの手伝いだったから……」
ボンっと獄寺君の顔が赤くなった。……うん、ごめんね。オレももうちょっと言葉を濁して言えば良かったよ。でも両手が使えないと不便だなー。よく考えるとオレはいろんなところを怪我したけど、手を怪我したことはないかも。グローブつけてたし。
「そ、そういえば……10代目の弁当は大きいですね」
「ごめんね。重いよね」
「いえ、そんなことはありません!」
獄寺君、もうちょっと肩の力を抜けれないかなぁ。懐かしい気持ちもあるけど、しんどくないかなって心配になるよ。
「実はそれ3人分なんだ。骸とクロームの分もあるから」
「……骸。昨日の優男……」
え、骸……獄寺君に何したの。事件を起こしてないのに、もう険悪なんだけど……。
「む、骸はオレの幼馴染なんだ。昔っからオレの事を知ってて、頼りになるし、悪い奴じゃないよ」
「じゅ、10代目は……骸の野郎と付き合ってたりは……」
「ないない。オレ、フラれてるもん。……あ、弁当」
なんか変な音がしたなーと思ったら、獄寺君が弁当を落としてた。割れてなきゃいいんだけど……。
「えっと……獄寺君、どうしたの?」
「すみません!オレ驚いた後、一瞬でも喜んでしまいました!右腕失格です!」
あ、やっぱり右腕を目指してるんだ。オレも右腕は獄寺君のイメージだから、嬉しいなぁ。じゃなくて、獄寺君はオレがフラれたのを喜んでしまって謝ったんだよね?……ハハハ、そんなにオレにモテて欲しくないんだ。
「……どこかで縁があればなーって思ってるから、その時は獄寺君に応援して欲しいな」
「じゅ、10代目のためなら……オレは、オレは……」
……すっげぇ嫌そうなんだけど、オレ泣いてもいいのかな。
「この話はもうやめようよ、獄寺君……。オレまだそういう人と出会ってないし……」
オレのライフが0になる前にと思って言ったら、獄寺君が嬉しそうに頷いてくれた。そんなにオレがモテるの嫌なのー!?
クロームの家についたオレ達は、骸とクロームに弁当を落としてしまったことを説明した。漏れてなさそうだから、割れてはないと思うんだけど崩れてるだろうから。
説明が終われば、すぐにオレ達は学校に向かった。獄寺君が骸にガンを飛ばしてたからね。骸は何が面白いのか笑ってたし、クロームの機嫌も悪くなってきたからさ。
オレの予想通り、骸と獄寺君が絡まなければ大丈夫だったみたいで、オレが間に入って学校につくころにはなんとか普通に会話もできるようになっていた。
「ツーちゃん、大丈夫?」
「そんなに痛くないんだけどね。シャマル……医者の人の話だと後数日はこのまま無理させないようにだって。教室による前に診てもらえたんだ」
クロームがシャマルを見た途端、三叉槍を出した時はビビったけど。ヒクッと頬を引きつらせながらも、オレの手を見るだけで何もしないとシャマルは必死に弁明してたけど、これは間に入らなかったよ。シャマルの自業自得だし。
心配して声をかけてくれた人達にオレは何度も大丈夫だよーと教えてると、お腹が鳴った。朝食食べ損ねたからね……。
「ツナ。腹減ってんのか?」
「聞こえちゃったんだ……」
「まぁな。オレいいもん持ってるぜ」
山本にそう言われてオレは目を輝かす。なんでもいいから恵んでください!
「ほら、あーん」
「あーん」
クッキーもらえちゃったよ。ラッキー。もぐもぐとオレが食べてる間に、獄寺君がプルプル怒りに震えていて驚いた。
「山本!10代目になんて失礼なことを!」
「ん?そう言われてもガキのころから何度もやってるしなー。な、ツナ」
「そうだね。山本ん家に行けば、お菓子絶対もらえるもんね」
子どもの頃の遊びの延長みたいな感じで、オレ達はあんまり気にしてない。クラスのみんなも慣れてるのか誰も気にしてないし。山本のファンの子達に恨まれるかもってちょっと思ったことはあったけど、オレ達にそういう感じの雰囲気は一切ないからね。すぐに誤解が解けて今のところ問題になったことはない。
「ははーん。さてはあんたもやりたかったのね」
「なっ」
「お?そうなのか?ほらよ」
黒川が真面目な獄寺君をからかって楽しんでるよ……。山本は天然だから純粋に信じちゃって獄寺君に渡しちゃったなー。オレとしてはどっちでもいいんだけど……。いや出来れば貰えるなら食べたい。一枚じゃ足らないし、手がこんなだし。
チラッと期待を込めて獄寺君を見ると、恐る恐るだけどクッキーをオレの前に持ってきてくれた。やったねとオレが食べれば、獄寺君はプルプルと震えていた。……怒ってはないみたいだね。どっちかというと感動かな。そういえば瓜に初めてちゃんと餌を食べてもらった時もそんな感じの反応をしてたよ。
その流れで面白いと思ったのか、順番にみんなからも食べさせてもらった。
「なんだがみんなに餌付けされてるみたい。オレ、家でもそんな感じだよ」
「昼食の時間が楽しみだわ」
「あはは。頼むよ」
オレはいつも一緒に食べてる京子ちゃん達に向かってお願いした。
朝の出来事が広まったのか、休憩時間にオレが歩いてると女の子達がお菓子をくれる。もちろん、あーんって感じで。お腹が減ってたのもあって相手は女の子だし、遠慮なくいただく。流石に山本と獄寺君以外の男の子からは恥ずかしいから貰わないけど。まぁそんな感じで歩いてたのが悪かったのか、後ろから殺気がしてオレは振り向いた。
「なに、君が風紀を乱してるの」
「アハハハ……」
笑って誤魔化したけど、ヒバリさんの機嫌は直るはずもなくオレはうなだれた。
「はぁ……。廊下は禁止。教室の中でして」
チラッとオレの両手をみて、ヒバリさんが譲歩してくれた。あのヒバリさんが、だよ!オレもう感動しちゃって笑顔でお礼を言っちゃったよ。
「……君、本当に反省してるの」
「すみませんでした!」
まぁすぐに頭を下げるハメになっちゃったけどね。
それからはみんなの協力もあって普通に過ごせていたんだけど、ハルから放課後に遊べないかっていうメールが届いたんだ。ちょっとぐらいなら大丈夫だけど、長文を打つのはしんどいから京子ちゃんにお断りの内容を代筆してもらった。もちろん手のことを書いて、かわりに打ってもらってるってこともちゃんと説明して。しばらくすると電話がかかってきたんだ。まぁメールよりはいいよね。
『ツナさん、大丈夫なんですか!?』
「うん。大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね。後、持つのがちょっと痛いからスピーカーにしてるから」
『はい!ハルもちゃんとわかってます!』
よかったよかった。伝え忘れてても怒られることはなかったみたいだよ。
『それでですね、ハルも一緒に銭湯行きます!ランボちゃん達の面倒はハルに任せてください!』
話を聞いてるみんなが銭湯と首を傾げた。ハルは銭湯帰りに会ったから、オレん家の風呂が壊れてるのを知ってるもんな。みんなにそのことを説明しつつ、なんとかなるかなーと思う。そりゃ家綱は嫌がるかもしれないけど、リボーンと2人で銭湯行ってもらえれば問題ないはず。でもこのことをハルに説明すれば、反対するだろうしなー。
と、オレがいろいろ考えていると京子ちゃんとクロームも行くって言い出した。黒川にはなぜか謝られた。子どもが居なけりゃ……とブツブツ呟いていたから、蕁麻疹出るもんなーとオレは一緒に行けないことを謝ってくれたんだって気付いた。
「や、ちょっと待ってよ。気持ちは嬉しいけど、お風呂に入ってると遅くなっちゃうし女の子がそんな時間に外に出ちゃ危ないよ」
ハルにみんなを会わせられるしいいかもって一瞬思ったけど、ダメだダメだとオレは首を振る。
「なら、オレと獄寺も付き合うぜ。みんなを送ればいいだけなんだろ?」
「なんでオレも……!?」
「ん?じゃオレ1人でするのな。獄寺はいかねぇって」
「誰も行かねぇとは言ってねぇだろうが!」
「お兄ちゃんにも声をかけるね」
『はい!では決まりですね!』
決まっちゃったよ……。でも獄寺君と山本とお兄さんが来てくれるなら大丈夫だし、オレも嬉しいしお願いしよっかな。
その日の夜、みんなと集まって銭湯に向かった。お兄さんがヒバリさんを誘ったのに来なかったって怒ってたり、獄寺君がフゥ太を男湯に無理矢理連れて行ったりとか、一緒に入ることはなかったけど骸がクロームの迎えに来てまた獄寺君が睨んだりといろいろあったけど、オレはずっと楽しくて笑っていた。オレは女になったし出会い方も全然違ったのに、変わらなかったから。
沢田ツナ
風紀委員なのに、女子に大人気。
イタリアでの生活でレディファーストが体に染み付いている。
六道骸
忠犬が期待を裏切らなくて、心の中で爆笑中。
次から新章です。
時期は飛びませんし数話で終わる予定ですが、わけた方がいいと思ったので。
ついに?あの人が出ます。