合同体育祭前日、オレはヒバリさんに睨まれていた。まぁ理由はわかるけどね。黒曜中の出場選手の資料を受け取ったのはオレだから、真っ先に確認したし。
「ねぇ、これどういうこと」
「さ、さぁ……?」
オレが聞きたいってば。あいつの考えなんて、わかんないことも多いし……。でもオレも黒曜中の総大将が骸じゃないとは思わなかった。
「ふざけてるの?」
「それはないと思います。骸と炎真は小学生の頃からの付き合いですから、骸に鍛えられている可能性があります」
まぁシモンリングは使えないけどね。そういうのアリになったら、ずっと骸を見張らなくちゃいけないから。一番最初になしってオレが言った。……なんでもありなら、オレも手段選ばないからね。オレの副音声が聞こえたのか、骸はすぐにしませんと断言した。
そのことを思い出しながら、ヒバリさんの様子を伺う。……うん、機嫌が悪そうだけど大丈夫かな。嫌々ながらも骸の実力は認めてるし、ヒバリさんも骸と出会ったことでかなり強くなったからね。ヒバリさんは骸のおかげなんて死んでも言わないだろうけど。
「あいつ本人が出ないのは、暗躍が好きだからだと思います。オレ、あいつがみんなと一緒に競技するなんて想像出来ませんよ」
これはヒバリさんにも言えるけどね。でもまだヒバリさんの方が可能性はある。ヒバリさんは学校のためなら動くから。骸が動くなら誰かに成り代わってやる。今回の体育祭ではできないけど、やってもオレが見破っちゃうよ。
「ですので、あいつが代理で出たとしても総大将しかありません」
「その根拠は?」
「オレが笑うから」
何言ってるの?というような視線をオレはヒバリさんに向けられた。
「もし骸がリレーとか出たなら、爆笑します。我慢出来ませんよ」
絶対無理。オレ、お前そんなキャラじゃないじゃん!!って思って爆笑する自信しかない。総大将ならまだわかるけど、みんなと走るとかもう……。
「ぶっ、あはははっ。……す、すみませんっ」
ひぃひぃ言いながらもオレは謝る。想像しちゃったじゃん!
「……ふぅ。ええっと、そんな感じでオレに笑われるのはあいつのプライドを考えると耐えれないと思います。総大将も炎真なら変わる必要がないので、出ないと考えていいと思いますよ」
オレがそう言うと、ヒバリさんは納得出来ないという顔をしていた。まぁあれだけ勝つ気でいたのに、自分は出ないんだもん。骸の実力を知っているヒバリさんからすれば、気にくわないよね。でも骸って昔っからそういうところあるよなー……。
「あ。骸の行動ちょっとわかったかも」
「なに」
「あいつ、人の企みを理解したら放置とかあるんですよね。なに考えてるのかわからなかったら積極的に動きます。で、内容次第ではオレか誰かに情報をさりげなく流すんです」
そうそう、昔っからそうだった。あいつどこから調べてるのかわからないけど、モスカに入ってた9代目のことや、大空戦後のヴァリアー隊のこともそうだし、ユニがおしゃぶりに炎を込めて復活させようとしたことだって知ってたんだよ。白蘭の能力だって自ら乗り込んで調べてたし。で、ちょっと教えてくれるんだよ。オレ達の命がやばい内容なら。
「……ふぅん。つまり僕たちの考えが読めたから、出ないってこと」
「ひっ」
ヒバリさんの機嫌がやばいことになってたー!!いやでも、オレが言ったことはそういうことだよね!?
「オ、オレが勝手にそう思っただけで、違う可能性の方が高いですよ?だって向こうの代表を見る限りでは情報は漏れてなさそうですから」
黒曜中の生徒をヒバリさんの力で調べて、要チェックした人達の種目を見たけど、獄寺君とお兄さんと被ってたからそれはない。あいつが本当にわかってたなら全部避けるよ、絶対。
「それにあいつは人を煽るのが好きってヒバリさんも知ってますよね?今回もそうですって」
「……君がそう感じて口にした時点で、僕はそれを考慮しなくちゃいけないんだ。負けるわけにはいかないからね」
「確かにオレは骸と幼馴染ですけど、そこまであいつのこと知ってるわけじゃ……」
「それが理由じゃない。君は……厄介なんだ」
オレは首を傾げるしかない。いきなり厄介とか言われたけど、どういうことかさっぱりわかんねぇ……。ヒバリさんがそこまで悪い意味で言ってないことはわかるんだけど……。
「……それ」
「え?どれ?」
「はぁ。もう後で自分で考えなよ。僕は忙しいんだ。君もさっさとコピーして配って」
「は、はい。わかりました」
ヒバリさんの言う通り、今日中に全生徒に配らないといけないオレは後で考えることにした。……さっぱりわかんなかったけど。
ヒバリさん結局どうするのかなーと思いつつ、体育祭当日を迎える。オレは始まる前に家族のところへ向かう。オレはずっと本部に居なくちゃいけないから、次は昼休憩ぐらいしか帰ってこれないからね。
「みんな来てくれたんだ」
「もちろんだよ!」
とオレの言葉に真っ先に反応したのはフゥ太だった。もうその流れでちび達の相手をしつつ母さんに声をかける。
「今日の弁当は大変だったよね。手伝えなくてごめん」
「ツーちゃんが前の日に手伝ってくれたし、ハルちゃんが朝から来てくれたの。だからツーちゃんが気にするほど大変じゃなかったわ」
「はい!ハルもお手伝いしたんですー!」
「ありがとう、ハル。助かったよ」
「ええ。それにビアンキちゃんも頼もしかったわ」
えっ。とオレは声をあげる。オレ、ビアンキには観戦するために必要なものとかの準備を頼んだんだけど……。
「ツーちゃんがお願いしてくれたんでしょ。ランボちゃん達のものまで全部揃えてくれて助かったわー」
「う、うん!!そうなんだ!!」
よ、よかったー!!ポイズンクッキングはやってなかったー!!ビアンキにもちゃんとお礼しとこ。料理回避のためっていっても、前の日に準備出来ることだったのに、当日急に頼んだからさ。まぁリボーンにはよくやったと珍しく褒めてもらったけど。
「ビアンキありがとう!」
「どういたしまして」
ビアンキは料理さえしなかったらほんといい女の代表って感じだよな。オレにはあんなクールな感じでお礼を言える気がしない。
オレんところが大所帯みたいな感じになってるけど、不正はしていない。山本のとこはお父さんだけだから1枚くれて、獄寺君から2枚。クロームも使わないから2枚。京子ちゃんからも2枚。お兄さんの分があるから大丈夫って言ってくれたんだ。それに加えてオレと家綱の分もあるから余裕でいけた。逆に余っちゃったぐらいで、オレは慌てて炎真に連絡したんだ。みんなのおかげで炎真のお母さんも来れるようになったんだ。
炎真は最初遠慮してたけど、オレが押し切ったらやっぱり嬉しかったみたいで笑ってお礼を言ってくれたんだ。というか、骸が譲ってやれば良かったんじゃない?って一瞬思ったけど、オレのためかなーなんて炎真の笑顔を見てそう思った。
「ツーちゃん、骸君は黒曜中の本部なのよね?お弁当持って行こうかしら」
「あ、それならオレが持っていくよ。ついでだし」
真ん中を基準に2つの学校を分けた形にしたし、本部も2つに分けたけど、正面にあることもあってそこまで遠くない。
「でもせっかくだし……」
「うーん、あいつも忙しいだろうから。でも、骸ならどこかで母さんにはお礼言いにくると思うから会えるはずだよ」
「そう?なら楽しみに待ってるわ」
そうしてとオレは頷く。真剣勝負のせいかちょっと殺気立ってるし、母さんが行くとなればビアンキとかもついていくと思うんだよね。母さんだけならいいけど他のマフィアがいれば骸も嫌だろうし。リボーンはオレのセットみたいに考えて諦めてるみたいだけど。
骸の弁当を預かってオレは本部へと戻る。本当はもっとゆっくりしたかったけど、そろそろトラブルは絶対起き始めるはずだからオレは本部で待機しないと。
「遅い」
本部に戻ってきすぐヒバリさんに怒られた。もうトラブルが起きてるらしい。とりあえずトンファーをしまってください。風紀の乱れが発覚すれば黒曜中でも咬み殺すとは伝えて許可をとってるけど、常に出してると相手の代表選手を強襲しに行くようにも見えるから。
オレが苛立つのはわかりますが、誤解が生まれてさらに風紀が乱れるのも体育祭が中止になるのも嫌ですよね?というとヒバリさんは渋々トンファーをしまった。風紀や学校行事を出すと素直になるよなーってオレが思ってるとトンファーで殴られそうになった。避けたけど。
「いきなりなんですか!?」
「顔に書いてる」
またか……とオレは遠い目しながらも弁当を片手に頬を揉む。って、骸に届けないと。
「すみません。ヒバリさんちょっとオレ向こうの本部へ行ってきます」
「何かあったの?」
「えーと……ハハハ」
骸に弁当を届けるって言ったらヒバリさんがどんな反応するかわかんねぇ。とりあえず笑って誤魔化したけど、行くときに持ってなかった弁当袋があるから、頭のいいヒバリさんは想像できたらしく、機嫌が悪いながらも視線で行ってこいと送ってきた。これはここに置いてる方が嫌だと思ったかな。
ヒバリさんの機嫌がこれ以上損ねる前にオレはさっさと骸のところに顔を出す。ちょっとピリっとした空気が流れてるけど、オレは気にせず歩く。黒曜中の生徒もオレを止めることはない。この体育祭のために何度も黒曜中にも顔を出してるからね。
「骸ー」
と、軽い気持ちで顔を出して後悔することになる。なにあいつ、めっちゃ慕われてるんですけど。すっげー気持ち悪い。
「相変わらず失礼ですね、君は」
「……オレの顔どうなってんの」
はぁと軽くため息を吐いて、骸に弁当を渡す。いつものことなので骸もふつーに受け取った。
……そう、ふつーに受け取ったんだよ。
「……君はもう行きなさい」
「悪い!骸!」
女の子ってこえぇぇ!すっげー睨んできた!!母さんからとか、オレと骸はそんな関係ないからとかそんな説明出来る感じもなかった。
とにかくオレは安全地帯へと逃げた。そりゃもちろんヒバリさんのところ。だってあの人不機嫌なオーラが全身から出てて誰も近づこうとしないんだもん。
「ヒバリさんのところが安全なんて思うようになるとは……」
「君、さっきから僕にケンカ売ってるの?」
「まさか!逆です!頼りにしてます、ヒバリさん!」
オレの言葉にヒバリさんは大きな溜息を吐いた。え?なんで?
沢田ツナ
ピリピリした空気は怖くないのに、女子に睨まれるのは怖かった。
雲雀恭弥
ツナの一番厄介なところは強さじゃないと気づいてる。
無自覚で飄々とやってのけるからタチが悪い。
六道骸
黒曜中ではいい人を演じている。
演じてるだけなので、内側には絶対入れない。
察しのいい人と炎真は笑顔でも拒絶していることに気付いている。
ツナが想像した六道骸
リレーでアンカーを走り一位を取った後、「この一位は皆さんが頑張ったからですよ」と爽やかな汗を流していた。
目的のためなら言いそうなので流せたが、爽やかな汗の部分でツナの腹筋は崩壊した。