ヒバリさんを隠れ蓑として使っていたオレの判断はある意味正解だったらしい。ヒバリさんの近くにオレがいると知った風紀委員や他の委員はオレを間に挟むようになった。ヒバリさんが動くまでもない内容なら、オレの判断で処理してから報告するだけでいいからね。草壁さんも同じことをやってるだろうけど、オレの方がそういうの慣れてる。これでも前世ではボスだったからね。それにオレはヒバリさんのトンファー避けれるし。まぁ基本的にオレの判断は正しいみたいでトンファーが飛んでくることはないんだけど。
トラブルに追われながらも、無事に合同体育祭は開幕した。両校から長ったらしい挨拶とかは辛いけど。一応まじめに聞いてるフリをする。近くに一番厳しい人が居るからね。寝たりしたら怖い怖い。
眠気覚しを兼ねて、オレは自分のクラスを観察する。みんな本部の方を見ながら立ってるから見やすい。女子達は真面目に聞いてるね。黒川はうんざりしたような顔をしながらだったけど。男子はどうだろうなーと思ったら、山本と目があった。オレと同じようなことをしてたらしい。ちょっと笑ってしまった。……すぐにヒバリさんに睨まれて口は閉じたけど。獄寺君の方へ視線を向けると、オレのことをずっと見ていたらしくて山本に苛立ちの念を送っていた。オレの視線に気付いたら、嬉しそうな顔になったけど。獄寺君らしくて笑わないように笑顔だけ送ると、真っ赤な顔して視線をそらされちゃった。オレに笑われたと思っちゃったのかな?そんなつもりなかったんだけどなぁと思いながら、家綱の様子も見る。……あ、寝そう。ガクッと首が動いた瞬間、どこからか狙撃されていた。ちょっと驚いたけど嫌な感じはなかったからすぐに正体に気付いた。家綱は痛がってたけど気絶するほどじゃなかったから、リボーンにしては優しい対応。
そういや家綱は今回選手として出ない。リボーンにこっそりいいの?って聞いたけど、死ぬ気弾を打っても逃げる方に死ぬ気になるから意味ねーんだって呆れたように溜息を吐いていた。それを聞いてオレは思ったよ。なんでオレは逃げなかったんだろう……って。嫌だったのに練習までしちゃってたよ……。
っと、そんなこと考えてる場合じゃないや。オレはフラッと本部から離れて生徒の方へ向かう。
「大丈夫?ちょっと向こうで休もう?」
オレが声をかけた時点で限界だったらしく、その子は頷くことは出来たけど動くのは無理そうだった。女同士だしいいよな?とオレはその子を抱き上げる。周りの女の子達がキャアァとちょっと叫んだけど、静かにねと声をかければすぐに頷いてくれた。協力ありがとうとオレは笑顔を向けて彼女を抱えたまま本部に隣接している救護室へと向かう。
あんまり目立たないようにしたかったけど、それでもやっぱ目立っちゃって、寝かせた後もその子はちょっと気にしてたみたいだから大丈夫だよと頭を撫でる。オレの言葉に安心したようにその子は目をつぶった。
「……ツーちゃんが女の子で良かったぜ。オレのライバルになるところだった」
それはないよ……シャマル……。オレ、女の子と喋れなくてシャマルに同情されたぐらいだから。
そりゃボスの女という座を狙う人は居たけど、オレ自身はモテないダメダメライフだったよ……と遠い目をしながらオレは本部へと戻る。ヒバリさんはオレが戻ってきたことに気付いているだろうけど、何も言わなかった。ちゃんとした理由があったし、大事にならなかったのもあるし、代表選手じゃなかったという3つの理由かな。
開会式もちょっとトラブルが起きたけど、本格的に体育祭が始まるといっきに落ち着いた。みんな勝負の方へ興味が移ったのもあるだろうし、慣れてきたんだと思う。生徒達もだけど、トラブルを対処するオレ達も。これなら大丈夫そうかなとオレは本部の端で準備体操する。結局オレは400メートル走とスウェーデンリレーのアンカーに出る。ヒバリさんからは何も言われてないけど、絶対負けちゃ咬み殺されるし油断はしない。
「気合い入ってますね!10代目!」
「わっ、獄寺君!わざわざ応援にきてくれたの!?」
「もちろんです!」
ありがとうと言いながら思い出す。獄寺君ってそろそろ出番じゃなかった?
「覚えてくれたんですか!10代目!」
「感動してる場合じゃないから!行かないと失格になるから!」
「そうっスね。行ってきます!」
ふぅとオレが息を吐いていると、ヒバリさんに「君、負けたらどうなるかわかってるよね?」と怒られた。なんでオレが怒られるのー!?理不尽だー!と嘆きながらも、ちょっとどこかでオレのせいかもって思うから、結局いつものようにオレは頭を下げた。
獄寺君はやっぱ凄くて、一位だった。オレも頑張らないと!と気合いを入れて走ったらオレも一位だった。小学校の時もとったことがあるけど、やっぱり感動。前の時はダメダメすぎて、万年ビリだったから。リボーンとヒバリさんにいい報告ができるなーとか、でも2人とも見てただろうしなーとか、いろいろ思いながら本部に帰っていたのに一瞬で吹き飛んだ。
「勝手に入ってこないでくれる?」
「わりぃ、わりぃ。ツナに会いにきたんだよ。ここに居るって聞いたんだけどなー」
「ディーノさん!?……と、ロマーリオさん!」
なんでこの2人出会ってんの!?そしてディーノさん相変わらず懐大きすぎ!機嫌が悪くて殺気を出してるヒバリさんを笑ってかわしてるよ……。
「お?ツナ!見にきたぜ」
ヒバリさん、オレにも殺気を向けないでください。呼んだのは絶対リボーンですから。チケット余ってたのあいつも知ってたからなぁ……。
「ええっと、それは嬉しいんですけど……どうしてここに?」
オレに会いにきたのはわかるんだけど、昼になったらそっちに行くってみんな知ってるはずなんだけどな。オレの言いたいことが伝わったのか、ディーノさんは答えてくれた。
「ちょっと骸って奴を見ようと思ってな。後、雲雀恭弥っていう奴も」
「わー!ヒバリさん、ストップ!咬み殺しがいがありそうな人が来たとか思ってるでしょ!そうだけど!今、体育祭中!それも合同!」
一応オレの言葉に納得したのか、ヒバリさんはトンファーをおろした。あっぶねぇ……。ディーノさんなら付き合ってくれるだろうけど、このタイミングはさすがにマズイって。
「ディーノさん、ヒバリさんはもう見たでしょ!骸のところ、案内しますよ!」
「お?そうか?」
ヒバリさんが追っかけてこなかったことに、ふーと息を吐く。あの人、ほんと戦闘狂。
「いやぁ、悪かったな」
「いえ、オレもすみません……。ディーノさんのこと強いって教えたから、今度会ったらバトル仕掛けられると思います……」
「それぐらいどーってことねぇよ」
「それならいいんですけど……」
ディーノさんなら大丈夫だよね?前回よりヒバリさん相当強くなってるんだけど……。
「……油断して死なないでくださいね」
「お、おう。そんなになのか……。わーった、そん時は気合入れるぜ」
ぜひお願いしますとオレは何度も頷く。
「骸でしたよね?会って話しますか?」
「あー、そいつマフィア嫌いなんだろ?遠くからでいい」
「ありがとうございます」
骸のことだから視線で気付くだろうけど、多分ディーノさんなら大丈夫。苦手なタイプだろうけど、嫌いじゃないはずだから。
案の定、ちょっと遠い位置から教えたのにあいつはすぐに気付いた。オレの顔を見たら警戒をといたけど、ごめんと手を合わせてジェスチャーする。
……うん、怒ってなさそうで良かったよ。
「普通の奴に見えるが、反応の速さから考えてもリボーンが言うだけのことはあるな……。あいつ、あれで術士なんだろ?」
「そうですよ。格闘できる術士ですね」
感心したようにディーノさんは息を吐いた。あいつ、ゲームでいうとラスボス級だもんな。
「ついでだ。古里炎真はどいつだ?」
「ええっと、骸の席の近くにいる赤い短髪です」
ついでって言ったし、同盟ファミリーだから気になるっていう感じかな?
「リボーンから聞いたぜ。ツナが継ぐなら、シモンファミリーはボンゴレにつくすって」
あいつ……いつの間に聞いたんだ?オレが炎真と初めて会った時は居なかったから知らないはずだもん。というか、前はオレを積極的に巻き込んでたのに、最近はオレの知らないとこでいろいろやってない?
「炎真が言ったんですか?」
「そう聞いてるぜ」
いつリボーンが動いたか知らないけど、多分海よりも後。炎真を巻き込もうとしたのはその時だけだし。
「嫌なのか?」
今回はオレも顔に出たとわかっていたから、眉間を揉む。
「……オレだって子どもじゃないからわかってるんです。ボンゴレは大きいし、まだ何も実績のないオレにそう言ってくれるのはどれだけ有難い話なのかって。……でもオレはボンゴレとかシモンとか、そんなの関係なしにまず友達になりたいんです」
「言いたいことはわかるが……あいつは次期ボスとしての自覚があるんだぜ?ツナを次期ボンゴレとして見ないわけにはいかねーだろ」
「オレを次期ボンゴレボスとして見るつもりだったら尚更です」
ディーノさんはオレをジッと見た。
「昔……ある人にオレはヒーローになれないって言われました。オレは1人じゃ何も出来ない。誰かに背を押してもらってやっと動けるんです。……オレは甘ちゃんって散々言われてますけど、線引きできないほど子どもでもない」
ハッと息を飲んだのはディーノさんなのか、後ろにいるロマーリオさんだったのか、オレにはわからない。……違う、知りたくない。
「……まだそんな風に考えたくないから、気付かないフリをしてますけどね」
はぁーと大きな溜息を吐いて、オレは頭を切り替える。
「オレにつくすって言ってくれるなら、オレのことちゃんと知ってほしい。そして背を押してほしいんです。じゃないと、オレはどっかおかしくなる」
「……そういうことか」
ディーノさんもオレがマフィアのボスに向いてないと思ったのかもしれない。元々オレにはそんな器はないんだ。すっげーしんどかったし、泣きたくなる日もいっぱいあった。でもみんなが居たからオレは頑張れた。
「今の関係のままなら炎真の覚悟を背負いきれないんだな……」
ディーノさんの言葉をオレは否定出来なかった。もちろん、オレはシモンが日の目が当たるところに居るべきだと思ってる。でもボンゴレのボスだったオレは、他のファミリーの決定に口に出すことも出来なかった。だからあの時、「なんで?」とか「そんなことはないよ」とは言えたけども「絶対にダメだ」とは言えなかった。
「覚悟した炎真からすれば、オレが友達になりたいっていうのは迷惑だと思うんです。でもオレはこのままじゃ嫌で。すっげーオレ、ワガママ……」
「……ツナ、それはワガママじゃなくて、優しいっていうんだぜ?」
ポンっとディーノさんがオレの頭に手に置いたのが合図になったのか、オレはほんの少しだけ泣いた。
ディーノ
リボーンに誘われたのでイタリアからやってきた。フットワーク軽い。
ツナをボンゴレボスにするつもりでリボーンが動き始めたのも知っている。
だからついでに骸と、雲雀恭弥を見に来た。
でもディーノの中では今回来た一番の目的はみんなの応援だった。
ツナは線引きは出来るといったが、うまく出来ず、傷つきながらも進むタイプだとすぐに察した。
女の子で、あまりにもボスに向かない性格だが、家綱をボスにススメたくはないという複雑な心境。
またツナがボスになる覚悟もしているので、ツナが男だったらなーと本気で思った。
とりあえずリボーンには報告。
本人も自覚があるためまだマシだが、ボロボロになる前に周りが気付いてあげないといけない。
ツナをボスにするつもりなら、ケアは必須。
沢田ツナ
実は一度もシモンの決定に口出しはしていない。心の中は別でも。
あまりにも他ファミリーを心配しすぎるので、前世でリボーンが徹底的に教育していた。
そうしなければ、ツナの心が持たないと思ったから。