リレーってやっぱり盛り上がるよなーってオレは軽く身体を動かす。ポツポツあったトラブルも全くなくなったからね。オレは集中できるしすっげー助かる。まぁヒバリさんもオレには仕事まわすつもりはなかっただろうけど。ちょっとあれから流れが黒曜中にいっちゃったみたいで、バトンを落とすミスとかはないんだけど黒曜中が押せ押せって感じになってるんだ。棒倒しの前に流れを戻したいだろうからね。
集合場所につくと、オレはすぐに緊張しているみんなに大丈夫だよと声をかける。オレが言っても効果があるのはやっぱこの腕章のおかげなんだろうなー。みんなの顔がちょっと明るくなった。
一年のオレ達が上位二つを独占したのもあって、少し流れがかわる。二年と三年も一位はとった。それでも黒曜中は二位と三位をちゃんと確保するから凄い。結局オレ達が予想した通り、棒倒しの結果次第になったんだ。
リレーが終わったオレはみんなと一緒に退場する。そのままここで待機の方がいいのかな。ヒバリさんにははっきりと言われたわけじゃないけど、多分オレは出ることになるから本部に戻っちゃダメな気がするんだよなー。と、いろいろ考えてるとヒバリさんを見つけた。
……そうだった、ヒバリさんは総大将だったよ。でもみんなと入場するイメージなんかないんだけど……。そう思ったのはオレだけじゃなかったみたいで、ちょっとざわざわしながらヒバリさんが通る道をみんな譲る。ヒバリさんはオレの前にとまった。
「やっぱりオレが出る感じですか?」
「勝つって言ったよね?」
「はい?そりゃ言いましたけど……」
うわっとオレの視界が黒に染まる。なんだなんだ?と思いながら、オレの視界を遮った物を広げる。
「え……?」
オレが驚いてる間にヒバリさんはもう居なくて、放送が流れた。
『そ、総大将……ひ、雲雀恭弥さんにかわり……さ、沢田ツナ』
えーーーっという声が並盛側から響き渡る。オレはオレで「ハハハ……」と苦笑いが出た。言ったのはオレだけど……そりゃないですよ、ヒバリさん……!それならせめて先に言ってください!!
あーもう!とオレはヒバリさんの上着をきて、動揺している棒倒しのメンバーに声をかける。
「みんな、落ち着いて!ヒバリさんが出なくても勝てると判断したんだ。だったら、オレ達は勝つだけだ!」
オレの声に少し動揺が収まる。それでもやっぱりヒバリさんはみんなにとって大きな柱で、オレはヒバリさんにはなれない。どうしようとオレが困ってると大声が響き渡った。
「沢田の言う通りだ!!極限、勝つのみ!!!!」
「お兄さん!!」
「何より沢田はオレが認めた奴だ!極限に総大将として不足はない!!」
お兄さんはボクシング部主将というのもあって、説得力がある。オレが言うよりも動揺が収まったんだ!不利な状況を変えるのはやっぱりお兄さんだよ!
「10代目ー!!この右腕の獄寺隼人が来たからにはもう安心してください!必ず勝ってみせます!」
「獄寺君!」
「てめぇら、10代目……沢田さんを落とすようなことがあってみろ、果たすぞ!」
……うん、それはやりすぎだよ。獄寺君。
なんだがいつもの感じになった気がしたオレは、ヒバリさんの上着をギュッと握ってから頭を下げる。
「みんな、話を聞いてほしい」
ヒバリさんの誇りに泥をつけるわけにはいかないんだ。
トラブルを避けるために黒曜中と入場門を別にしてよかったよ。作戦を立てる時間があったし聞かれる心配がなかったから。
「獄寺君、ごめんね?わがまま言っちゃって」
「それはいいんですが……。10代目の負担が多いような……」
「そう?オレが考えた作戦だとみんなの方が負担が多いと思うよ」
そこがなーってオレも気にかかってる。ちょっと怪我しやすいんだよね。でも短期決戦狙いなのもあって、意外とみんなの反応は悪くなかったんだよなー。もともと怪我の危険があると考えていたのもあると思うけど。って、そんな話をしている間に時間が来ちゃったよ。
「じゃ、獄寺君よろしくね。この作戦、獄寺君が居なかったら出来ないから」
「え?」
靴を脱いだオレは、よいっしょっと登りきって棒の上に立つ。うーん、懐かしいなぁ。あの時は、相手はヒバリさんだった。それが今ヒバリさんのかわりにオレが出てるんだもんなー。2度目ってすげーって思う。死ぬ気なったら変わったけど、死んだらもっと変わったよ。
「炎真、行くよ」
女のオレが総大将になったことで、優しい炎真は動揺してるだろうけど勝負だからね。悪いけど炎真の優しいところも利用させてもらうよ。負けるわけにはいかないから。
『開始!!』
号令がかかったと同時に並盛のみんなは黒曜中へと攻める。オレの周りに残ったのは棒を支える数人と獄寺君のみ。上から見ていた炎真が目を見開いてるのがわかった。多分オレが女だし、守備重視にすると思ってたんじゃないかな。でもお兄さんが居るんだよ?ここはもう行くしかないじゃん。本当は獄寺君にも特攻して欲しかったんだけどね。
「みんな、行くよーー!」
上から見て、割といい感じになったからオレは声をかける。いくらオレが軽いっていっても、衝撃はあるからね。それも死角である後ろからだしね。
驚いた声があちこちから上がる。でもオレは気にせずそのままみんなの肩を借りてぴょんぴょんと飛び跳ねて黒曜中の陣地へ突っ込む。目指すは前のオレがたどり着かなかった総大将!!
「よいしょっと!炎真、来たよ!」
「ツナさん!?」
ついに相手の棒に掴んだオレはそのまま駆け上がる。下の方で黒曜中の生徒が動揺してるなー。でもまぁそうだよね。落としたいけど、オレを落とそうとすれば、炎真も落ちちゃうかもしれないからね。
「炎真、ごめんっ」
「わわっ」
オレが殴ろうとしたら、炎真はやっぱりやり返すことはせずにオレがしたみたいに飛び跳ねる方を選んだ。オレとしてはこのまま拳で語り合う感じでもよかったんだけどね。炎真が居なくなったことで、オレは黒曜中の生徒が支えてる棒にいるのもあって当然ピンチになる。周りも黒曜中の生徒ばっかりだしね。
「次は逃げるが勝ちってね」
死ぬ気の状態だったら絶対出来ないことだよなーって思いながら、並中の方へと同じように引き返す。これでどっちも棒が倒れてしまった。
「獄寺君!!」
「はい!10代目!!ぐはっ」
……うん、ごめん。出来るだけ減らしたけど勢いは残ったし、重かったよね。でもやっぱり獄寺君はオレを落とすようなことはしなかった。
オレは獄寺君に抱っこされながら炎真を見る。
「あー、やっぱ炎真はおりれないかぁ」
もしかしたらいけるかもって考えもあったけど、炎真はオレと違って男だからね。いくら勢いを落としても衝撃は凄まじいはずだよ。数人かがりで受け止めないとキツいんじゃないかな。炎真は棒から降りたら飛び続けるしかないんだ。どこかで停止しようとすれば、衝撃が全部いっちゃって下の人が怪我しちゃうよ。
1回目にオレが止まれたのは棒を掴んだから。炎真のために何人もの人が棒を支えていたからね。2回目はまぁこの作戦をみんな知っていたから。オレは靴を脱いでいたし、体格の良い人の肩を優先するけど獄寺君のとこに行くまでに小刻みで飛んで衝撃を減らす必要があった。だから近くにオレが居たらもう来ると思っててと言ったのがあったと思う。2回目はオレは黒曜中の方からやってくるから、みんなからはよくオレが見えたはずだしね。でもやっぱ体重差かな。
「きょくげーーん!!」
「あ、お兄さん」
やっぱお兄さんには難しいことを頼まなくて正解だった。炎真を目指して一直線って言っただけの作戦で、本当にたどり着いた。他の人たちにはオレが棒にたどり着いた時点で、黒曜中を囲むようにしてねって伝えてるからね。オレを守る人が少なすぎるのもあるけど、飛び跳ねる炎真の体重を支え続ける黒曜中の生徒の負担がキツくて自滅を促したのもあるんだ。
『勝者、並盛!』
「勝ったよ、獄寺君!」
「はい!10代目!」
やったーとオレはそのまま獄寺君の首に抱きつく。
「へ?うわぁ!ちょ、獄寺君大丈夫!?やっぱり重かった!?」
「……い、いえ。10代目が軽くてやわら……、驚いたほどですから……。だから大丈夫ッス。怪我はないですか?」
獄寺君が尻餅ついちゃったけど、横抱きなのもあってオレは獄寺君のお腹の上に居るし怪我はない。というより、獄寺君、よく気絶しなかったね。いくらオレが軽いって言っても絶対この体勢は重い。だからオレは大丈夫と答えてすぐにおりたよ。
「ツナさん」
「っと、炎真!お兄さんの拳受けたけど、大丈夫!?」
見た目からはわからないけど、お兄さんだから容赦しなさそうだもん。ちょっと混戦すぎてあんまり見えなかったんだよなー。
「うん、僕は大丈夫。でもあの人凄いね。ガードしたのに、手がしびれちゃった」
「お兄さんだもんね」
手がしびれただけで済んだ炎真も凄いと思うけどね。
「僕たちの完敗だよ」
「うーん、でもそれは仕方がないんじゃないかな」
「え?」
あ、バカにしたわけじゃないよと慌ててオレが手を振る。
「オレには獄寺君が……信頼できる友達が居たからね。絶対オレを落とさないってわかっていたから」
そりゃ前の時は落としちゃったけど、あれはコンビネーションがちょっと悪かったからだし。急に立てた作戦で騎馬戦を組んでオレを支えてくれたんだよ。最初からお願いしていた今回の状況とは全然違うよ。
「炎真も信頼できる友達が居れば違ったんじゃない?」
今日シモンファミリーのみんなが居れば、炎真もおりることは出来たはずだよ。オレの言いたいことがわかったのか、炎真は笑った。
「そうだね。……今度、オレの友達を紹介するよ」
「ほんと!?」
「うん。みんなに……新しくできた友達ってツナさんを紹介したいから」
えっ……とオレは炎真をジッと見つめる。オレ結局何もしてないよな?拳で語り合うみたいなことも出来なかったし。
「君と話していると、ファミリーのみんなと居る時みたいに楽しいんだ。……真美にも、怒られちゃったしね」
「まみちゃん?」
「もううるさかったよ」
まみちゃん何言ったんだろ……。オレの疑問が顔に出てたのか炎真は口を開いた。
「ヒミツ」
「えー!そりゃないよ、炎真!」
「……ぷっ、あはは」
オレの反応に炎真は笑い出した。でもオレもつられて笑ってしまった。
なんか思っていた形とは違ったけど、オレ達はまた炎真と友達になることができたんだ。
沢田ツナ
何もしていないように見えるが、炎真の家族を助けたいと願ったのはツナ。
ちゃんと普段の行いが返ってきている。
総合MVPで表彰される。みんなのおかげと思ってるので、いいのかなー?と思いつつ受け取る。
笹川了平
雲雀が総大将でも燃えたが、ツナが総大将になって燃えるに燃えた。
わかりやすい作戦で極限に突き進んだ。
棒倒しのMVP。
獄寺隼人
あげて落とされた人。
いろいろと幸せだったが、『信頼出来る友達』とはっきりと言われる。
それでもやっぱ幸せ。
ツナの中でMVP。
雲雀恭弥
ツナの強さの根源を知っているので、保険をかけた。
腕章はもちろん外して自分の腕。
ツナだけならましも、いろんな人がベタベタと触ったので、ツナにクリーニング後の返却を命じる。ツナは喜んでクリーニングに持って行った。
次は小話集です。
後書きだけではもったいないかなと思ったから。
①炎真と妹(炎真視点)
②応援席にて(黒川花視点)
③報告(ツナ視点)
④雲雀の学ラン(ツナ視点)
以上の4本です。
この小話集で体育祭編は終了予定。