デートの一件から獄寺君はちょっと変わった。獄寺君は獄寺君なんだけどね。なんていうか、肩に力が入りすぎていたのがなくなったんだ。オレとしても疲れないかなと心配していたから嬉しい。なにがキッカケかはわかんないけど。
ちょっとした変化はあったけど、オレはいつものように授業を受けていたんだ。
そんな時、オレはハッと顔をあげた。クロームも気付いたようで、オレの方を見たから頷く。オレが見に行くよって。
「すみません、ちょっと抜けます」
オレを先生は止めることはない。ヒバリさんの力ってすげーと思いながら、獄寺君や山本に大丈夫って視線を送る。気にはなったようだけど、無理してついてくるほどじゃないと思ったみたいで、見送ってくれた。
「……なんで屋上にするのかなぁ」
ヒバリさんの出没場所ってわかってるだろうに……とオレは文句を言う。
「おや?僕としては人目につかない方がいいと思って選んだのですよ?」
うん、わざとだね。オレ、知らないよ?ヒバリさんに見つかっても。
「で、何しにきたんだよ。骸」
「君に預けた方がいいと思いまして」
そう言って、骸は何かを投げたのでオレはキャッチする。って、イーピン!?
「ちょ、なにしてんの!?」
かわいそうに、イーピン縛られてるじゃないか!
「それ、人間爆弾と呼ばれる殺し屋でイーピンと言う名ですよ」
っと、サンキュー。リボーンが見ていることに気付いた骸がわざわざ教えてくれたよ。でもなんでイーピンは骸のところへ行ったの?いやイーピンがド近眼なのは知ってるよ。でもオレか家綱のところに来ると思ってたんだよ。
「お前に何かしたの?」
「古里炎真にですよ。ターゲットを間違えたらしいです」
……炎真だったよ。たしかにオレと同じぐらい不運だもんな、炎真って……。
「なんでも前の日に犬に追いかけられてるところを助けてもらったらしいですから、やりすぎないようにしてほしいと頼まれましてね」
オレ、今思い出したよ。見間違えて殺されかける方の印象が強くて忘れてた……。確か、オレも犬に追いかけられてたところを助けてもらったのがイーピンと最初の出会いだった。オレより犬に嫌われてる人、居たんだった……。
「うん、わかった。こっちで相談する」
「そうしてください」
オレが預かるという話になったから、骸はイーピンを縛ってる縄を消した。有幻覚って便利すぎ。
これでもう骸は用がないよねとホッとしたところで、扉が開いた。オレは超直感に従ってイーピンを背に隠した。
「ワォ。死ににきたの」
「クフフ。さて、どうしましょうか」
オレ、今絶対遠い目になってる。2人とも武器を出してヤル気満々みたいだし、勝手にしてくださいね。オレは関係ありませんから。
骸が適当なところで切り上げるだろうと思ったオレはいつものように帰ろうとしたんだけど、ヒバリさんがオレを見た。え、なんでオレを見るの!?
「なに、隠してるの」
「……えーと、ヒバリさんは見ない方がいいです。オレの直感がそう訴えました」
咄嗟の判断だったけど、オレの行動は正解だったんだよ。イーピンはヒバリさんを見ると惚れて、爆発しちゃうから。
「僕の学校に持ち込んだんだ。いくら君の言葉でも確認しないわけにはいかないよ」
普段ならいけるのにー!とオレは思った。絶対骸が関係しているってわかってるから譲れないんだよ。
「え?」
聞こえてきた言葉にオレは驚いた。今、イーピン出るって言ったよな。オレは大丈夫だよって声をかけた。専門用語とかはダメだけど、日常会話ぐらいは覚えてる。最近使ってなかったから忘れかけてるけど。……他の言語もヤバイかも。復習しなきゃ。
「誰?」
「ええっと、イーピンという名の殺し屋です」
……殺し屋って言うんじゃなかった。ヒバリさんの機嫌が急降下したよ。主に骸に向かってだけど。何連れてきてるの?ってね。もう完全にヒバリさんの中で骸が連れてきたってことになってるよ。あってるけど、これは普段の行いだよね。
「気をつけた方がいいですよ。彼女が筒子時限超爆という技を使えば、この校舎を壊すほどの威力ですから」
いやそうだけど、そうだけどー!とオレはヒバリさんの視線から逃れるように、距離を取ろうと一歩ずつ下がる。骸、お前笑ってる暇があるなら助けろよ!?
「ほ、ほんと勘弁してくださいっ!」
「……沢田ツナ、いい加減にしなよ」
ヒバリさん本気で怒ってるー!?オレがどうしようとアタフタしていると、リボーンが出てきた。
「見せてやればいいじゃねぇか」
「や、絶対ダメだって。嫌な予感するもん」
「イーピンは極度の恥ずかしがり屋だが、本人が出てもいいって言ってんだぞ」
イーピンからも大丈夫という声が聞こえ、リボーンとヒバリさんの2人に敵うわけもなく、オレはなくなくイーピンを前に出した。
「……イーピン、大丈夫?って、ヒバリさんに惚れてるーーー!」
やっぱりオレはそうなったよー!と頭を抱えたくなる。イーピンを持ってるから出来ないけど。
「おやおや。カウントダウンが始まりましたね。僕はここで失礼します」
「ちょっ。お前ならなんとか出来るだろ!?このまま放置する気かよっ!」
「ええ。彼は僕の手を借りたくないでしょうから」
そうでしたーとオレは項垂れる。骸が行っちゃったよ……。
「な、投げなきゃ」
もうそれしかないとオレは空を見る。すると、ヒバリさんがオレに手を出してきた。
「貸して。僕がする」
「や、オレがしますって」
「いい。元はといえば君の忠告を僕が無視したからだ」
そうそう、ヒバリさんって結構律儀なんだよ。じゃないよ!
「絶対ダメ!!」
なんで?という顔をしているヒバリさんに向かってオレは言った。
「惚れた相手に投げられるなんて、イーピンがあまりにもかわいそうです!!同じ女としてそんなことさせたくありません!」
ああ、話してたから時間もないよ。仕方ないとオレは額に炎をともす。こうしないと時間がなさすぎて、そんなに飛ばないから。ヒバリさんにそう言った手前、オレは校舎に傷ひとつつけるわけにはいかない。
オレの言葉になのか、変化なのかはわからないけど、ヒバリさんは驚いて固まった。
だからそのスキにオレは思いっきり空に向かって投げたんだ。
「わっとと」
オレは落ちてきたイーピンをキャッチして、ふぅーと息を吐いてハイパー死ぬ気モードから普通に戻る。音は凄かったけど、校舎に被害はない。もちろんオレ達も。
「……ツナ」
「えへへ」
別に隠してるつもりはなかったんだけど、なんとなくリボーンの視線に気まずくて笑ってごまかす。そんなオレの態度をリボーンはため息一つで飲み込んでくれた。うぅ、ごめんって。
「……君」
ヒバリさんの声が聞こえ、オレはそっちを見た。……見るんじゃなかった。
「まだ本気じゃなかったんだ」
「あ、ちょっ、待って、ヒバリさん!」
「やだ」
ひぃ!とオレはトンファーを避ける。
「イーピンのことはオレに任せとけ」
「ちょ、リボーン!?」
結局、その日は暗くなるまでヒバリさんは逃してくれなかった。
リボーン
ランキングで戦闘力一位を取れる理由が少しわかった。
もちろんまだ何か隠していることには気付いている。
ハイパー死ぬ気モードだけで一位を取れるはずがないから。
この年齢で死ぬ気がコントロール出来ることもあり、骸を警戒。
ツナの人の良さをつけこんで鍛え上げたのは骸だと思っている。
雲雀恭弥
ツナの底はまだだと知っていたが、武器以外にも隠していたことを知った。
ひぃひぃ言いながらも、さっきみたいにならないのでご機嫌ナナメ。
「誰かを守るために使いたいんですっ」とツナが叫んだため、仕方なく見逃した。
ツナの譲れない部分だろうとわかったから。
六道骸
リボーンが警戒していることに気付いているが放置。
それもまた面白いから。
古里炎真
犬に呪われてるかもしれない。
イーピンが悪い子に見えなかったので、骸にやりすぎないでと頼んだ。
ツナのところに預けると言ってくれたので、一安心。
後日、ツナにもだが、イーピンにも会いに行く。
イーピン
2人の話やツナの目を見て、悪いようにはされないとは思っていた。
カウントダウン中にツナの言葉が心に響いて懐く。
お師匠様にも許可をもらえたので、ツナの家に居候。
かけれないけどないよりはいいと、ツナにメガネを買ってもらった。よく見える。