正月。振袖を着たオレはみんなと一緒に神社へと向かう。
この振袖は父さんからのクリスマスプレゼント。高すぎっ!ってオレは思って躊躇したんだけど、父さんは察してたみたいで、返事が遅くなったのと、まだしばらく帰れないという2つの詫びと一生物だからって手紙に書いてたんだよ。返事が遅くなったのはオレがもう一回送り直すのを忘れてたせいでもあるんだけどね……。
母さんの話だと、オレが大きくなってもサイズ直し出来るように作ってて、本当に一生物なんだなーってオレは感心したんだけど、みんな揃ってため息を吐いたんだ。
「パパンがツナのことを大好きなのはわかるわ。けど、一生物の意味が違うでしょうね」
「そうよねぇ。お父さんがツーちゃんにお嫁に行って欲しくない気持ちはわかるのだけど……」
教えてもらうまでオレは知らなかったけど、結婚すれば振袖は着なくなるんだって。娘が出来れば譲ったりするから一生物というのは間違いなんだけど、今回は多分違うって。父さんらしいちゃ、父さんらしいけど……。あの写真が原因だよね、絶対。
誤解が解けて、これだもんなぁ。不安だったオレはちゃんとリボーンに確認してもらってから送ったし。
あれ?オレが結婚するのに一番の障害になりそうなのって、もしかして父さん?
なんだろう、ドラマでありそうなオレに勝てる奴じゃなきゃ認めんとか言い出しそうな気がする。……超直感はこんなところで仕事しないで、お願いだから。
「父さんに勝てる人って何人居るんだろう……」
「数える程しか居ねぇのは確かだな」
オレが脈略もない呟きにでもリボーンはきっちり返してくれた。嫌な肯定だったけど。
「ツーちゃん、どうしたの?」
声をかけてくれたのは京子ちゃんだったけど、オレがズーンと落ち込んだのはみんな気付いていたらしい。せっかくだし、女の子達の親はみんなどんな感じなのかなって聞いてみた。あ、クロームはオレと骸が認めた奴ね。
「……あんた、父親のことあんまり言えないわよ」
「父さんよりは絶対マシ。オレ達に勝てとか言うつもりはないから」
それにオレがそう言ったら、クロームが嬉しそうにしてるからいいの。
「ツナさんのお父様はお強いんですか?」
「そうだね。見えないけど、めちゃくちゃ強いよ。ヒバリさんですら、一撃を耐えられるかどうか……」
わかりやすい例でヒバリさんを出したら、みんなギョッとした。ヒバリさんがリングの力を使ってないのもあるけど、それを抜いてもほんとあの人強すぎ。下手したら9代目より強いんじゃない?まぁ9代目は年齢のこともあるんだけど。
獄寺君、そんな真っ青にならなくても大丈夫だよ。ちゃんと誤解は解いたからね。
「まっいけんだろ。ツナのこと本気で好きなら、それぐらいやってみせねーとな。オレの親父もツナが結婚するつったら、やりそうだかんなー」
「山本のお父さんもなの!?」
ハハッ、って笑ってるけど、山本のお父さんは時雨蒼燕流の使い手じゃん。山本のお父さんに勝てる人も少なそうなんだけど……。
「オレ、結婚できるかな……」
この歳から神頼みしないといけなくなるなんて……と思いながらオレは賽銭を多めにいれた。
お詣りした後、オレ達はわいわいとふつーに屋台をまわる。……リボーンが何にも企んでないのが怖い。あいつの無茶振りが普通になるなんて、オレの前世濃すぎ。
でもリボーンのことだから、ここがオレの帰って来る場所って教えてくれてる気もするんだ。前の時と違って、オレは継がなきゃって考えてるから。ヒバリさんにもバレてたし、こいつが気付かないはずがないもんなぁ。
「あ、コラ。ランボ、こっちにおいで」
黒川の反応を楽しむんじゃないっての。まぁオレの抱っこが好きなのもあって、前よりは聞き分けがいいから助かってるけど。
「アホ牛。10代目は振袖なんだ。こっちに来い」
「やだもんね!」
ああ、獄寺君が無理矢理ランボを掴んじゃったよ。絶対ランボが嫌がって暴れるって。こんな人が多いところでそれはマズイってば。そう思ってオレは2人の間に入ろうとしたんだけど、悪寒が走って振り向く。
「っ!」
「ツナ?」
オレの様子にいち早く気付いたリボーンが声をかけてきたけど、すぐには答えられない。誰かに見られていた。今は感じないけど、間違いないと思う。
「うわあああん!」
ランボの泣き声にオレは意識が逸れる。ひぃ!10年バズーカ使おうとしてるよ!
「ちょ!ランボ、たんま!」
なんでか知らないけど、今のリボーンはランボが10年バズーカを使おうとすれば、鉄拳制裁するんだよ。だからリボーンが手を出す前にとオレは止めようといつも動いているんだけど、すっかり忘れてたんだ。……オレ、今振袖きてた。
「あっ」
オレが転びそうになってるのを見て、みんな焦ってるなぁ。オレはもう、またやっちゃったなとしか思えなくて。死ぬ気になれば、なんとかなるかもしれないけど、場所もだけど、こんなことですることじゃない。
「いてっ」
地面にダイブするよりも、断然軽い衝撃だった。それもそのはずで、オレは人にぶつかって転ばなかったんだ。
「す、すみません」
オレとしては助かったんだけど、迷惑だったよねと恐る恐る顔をあげる。って、大人ランボ!?
あれから会ってないのもあって、大人ランボには悪いんだけどちょっと苦手意識がある。そーっと離れようとしたんだけど、バッチリ目が合ってるし肩を掴まれていた。
「若きボンゴレ、お久しぶりです」
「う、うん。久しぶりだね」
ランボなのは間違いないんだよ。でもオレの知ってるランボとやっぱり違って……。どこがって言われたらわからないけど。
「10代目、お知り合いですか?」
「え、うん。まぁ」
そっか。リボーンが阻止してるってことは、獄寺君達も大人ランボと会ったことがなかったんだ。
「いつまでツナに触ってやがる、エロガキ!」
……止める間もなかったよ。流石、リボーンだよ。オレの意識がそれた瞬間だった。
「って、感心している場合じゃないよ!」
大変だーと大人ランボの様子を見たけど、リボーンだからね。一撃できっちり気絶していたよ。
「おめーら、あいつを見たらぶっ飛ばせ。オレが許可する。ツナに近づくエロガキだぞ」
「今すぐトドメを刺しましょう」
「ひぃ!」
リボーン何教えてんの!?獄寺君、ダイナマイトしまって!山本もクロームも警戒しないであげて。黒川も前は大人ランボに一目惚れしたじゃん、そんな汚物を見るような目で見るのはやめてあげて。
みんなを抑えてる間にランボは元に戻った。10年バズーカ使わないように教えてないと……。それがランボのためだから。
リボーンが企んでないのに疲れた……と思いながら帰っていると、リボーンに何があったか聞かれた。そういえば、アレなんだったんだろう。
「誰かに見られてたとは思う。いやーな感じの視線だったけど、嫌な予感はしなかったんだ」
オレを見ていたんだろうなぁ。だってリボーンが気付かなかったんだよ。狙いはオレなんだろうけど、超直感が反応しなかったのが気になる。リボーンも同じところで引っかかってるんだろうね。腕を組んで考えていた。
「今、殺し屋とか来てないの?」
「そういう情報は掴んでねぇぞ」
骸にも確認するけど、多分一緒。ヤバイのが来ていれば教えてくれるはずだから。
「念のため、みんなの周りを強化しといてくれない?」
「ああ」
オレの超直感は身内にも反応するから、ないと思うんだけどね。でも何かあれば怖いから、今日は獄寺君と山本にみんなを送ってって頼んだけど。オレは振袖だったのもあって断られたから。ちび達も居るしね。
「出来れば、お前は家綱についてほしい。家綱が狙われる可能性も高いから」
少し悩んだ後、リボーンは頷いた。リボーンにハイパー死ぬ気モードになれるって知ってもらっててよかったよ。じゃなきゃ、リボーンはオレから離れられなかったと思う。ボンゴレボス候補筆頭はオレだからね。
「オレは着替えたらすぐに骸のとこ行ってくる。あいつと連携とったほうがいいし」
本当はこのまま行きたかったけど、あいつ今のオレの姿みたら絶対嫌な顔する。超直感が反応していれば、そんなこと言ってられないけどさ。
「……おめーは骸を信用すんだな」
「うん。大丈夫。後でお前にも報告するから安心しなよ」
なんであいつはそんなに信用されないんだろうね。でもそれが骸らしくてちょっとオレは笑った。
大人ランボ
出番が激減。
出てくれば、死にかける。
リボーン
ツナの悪寒、ドジのダブルコンボでランボの10年バズーカを防げなかった。
沢田ツナ
正月から嫌な感じ。
今年もいろいろありそう。