日本に帰って一番驚いたのは、オレが海外に行ってる間に父さんと9代目がオレん家に来ていたことだった。本当はオレが帰ってくるまで居るつもりだったらしいけど、急用が出来て帰ったらしい。特に父さんは泣く泣くだったらしい。オレ、母さん似で娘だから……。
その話を聞いて、2人が慌てて帰った理由に心当たりがあったオレは苦笑いするしかなかった。死ぬ気の炎を封じられるのは回避出来たけど、父さんの置き土産を見るとちょっと可哀想かなって思う。
「可愛いクマさんだけど、ちょっと大きいわよね」
オレの苦笑いはテディベアの大きさに引いていると母さんは思ったらしい。オレがあんまり女の子らしいものが好きじゃないのを知ってるから。
「せっかく父さんが買ってくれたんだし、大事にするよ」
「ふふっ。あの人も喜ぶわ」
父さんが喜んでくれるならいいかと今回は諦める。昔は苦手だったけど、父さんはオレが出来なかったことをしたから少し尊敬しているんだ。オレは京子ちゃんやハルを守れる自信がなかったから……。
テディベアを母さんと一緒にオレの部屋に運ぶ。記憶と少し違ってオレの部屋は少し小さい。多分家綱の部屋があるから。性別が違うから部屋を別々に作ったと思うんだ。
「……今度から父さんに大きいのはもうやめてって言うよ」
「そうね。母さんからも伝えるわ」
前世の影響で、あまり欲しいものがないオレの荷物は少ない。だから大丈夫だったけど、オレじゃなかったら何も置けなくなってたよ……。
「ツーちゃん、何か欲しいものある?」
「え?なんで?」
「イッ君はお父さんだけじゃなくて、お父さんの上司の人からもいっぱい買ってもらったの」
そう言って母さんは溜息を吐いた。母さんが困るぐらいだから、家綱は相当買ってもらったのかもしれない。あ、でもだから家綱はテディベアを見ても何も言わなかったんだ。オレの方がもらってるって感じで。
「欲しいもの、ね」
オレが欲しいのはグローブなんだよな。母さんに頼んでも意味がない。でもオレがないと言えば、母さんは困ると思うんだ。何かあったかなぁ……。
「あ、あった」
「なに?なに?」
「貯金箱」
机の引き出しを開けて、母さんに袋に入っているお金を見せる。
「このままだと味気ないし、何かに入れたいと思ってたんだ」
それに家綱が勝手に使ってることも知ってるし。オレは別にお菓子とかいらないから買わないだけで、チビ達が来た時のために残してるのに。
「そうね。ツーちゃんだったら、割らないと開けれないものでも大丈夫そうね」
その言葉に驚いて母さんの顔を見てしまった。母さんは何も言わずにオレの頭を撫でた。……ああ、そっか。家綱のお小遣いを渡しているのも母さんだよな。買える量にも気付いていないはずがなかったんだ。
「今度一緒に買いに行きましょうね」
「うん!」
オレは何も言わなかったのに、母さんはちゃんとオレ達を見てるんだなって思った。
「骸ー」
いったいどうやってこのマンションを買ったんだろ。いや、もちろん幻術を使ってるのはわかってるけどね。骸はちゃんとまともな方法でお金を用意しましたよって言ってるからその言葉を信じるけどさ。
「おや、また来たのですか?」
「母さんからの差し入れを持ってきたんだよ」
「そうですか」
少しは標準体型になったかな?と思う。子ども好きの母さんは骸を見て、燃えちゃったからね。オレもちっこいけど、骸はガリガリだったから。
母さんは骸を引き取るぐらいの勢いだったけど、骸がもう落ち着いたからと言って断ったみたい。それ以来、時々持って行ってあげてとオレに頼むんだ。もちろんオレも協力する。骸はチョコばっかり食うからね。母さんの子ども好きに助かったよ。
「……なに、お前どこか行くの?」
カバンに服が入ってるのを見て、オレは眉間にシワがよった。
「ええ。ですが、君の言う無茶はしませんよ。復讐者に目をつけられたくはありませんから。ただ僕が記憶していた通りなのか確認しに行くだけです。君の兄のように何か違うかもしれませんから」
「あんま無理するなよ?」
「はいはい、分かってます」
オレもついていけたらなと思う。でも何度も家を出る説明なんか出来ない。
「いでっ」
「少しは僕のことも信用しなさい」
「……えー?お前を?」
「クフフ。そうです、僕をです」
前世では出来なかったやりとりに笑ってしまう。骸はオレが笑っても嫌な顔はしなかった。これなら、大丈夫そうかな。それにコイツのことだから、犬と千種の様子も見に行くと思うんだ。
「うん。わかった、信じるよ」
「ええ。では、いただきましょうか」
「食べて食べて。あ、今回オレも手伝った」
「大丈夫ですよね……?」
ビアンキじゃないから!とオレがつっこめば骸は何も言わずに食べた。ほんと、コイツとの関係は変わったな。骸は察しがいいから、オレが寂しいことに気付いてるのかもしれない。
「そういえば、ヒヨコと会いましたよ。彼、この頃にはもうあの武器だったんですね」
「ぶはっ、お前何してんの!?」
ヒヨコって絶対ヒバリさんのことだろ!?オレもまだ会ってないのに……なんで一番会っちゃいけない組み合わせが出会ってんの!?
「僕は何もしてませんよ。ただ向こうが……」
「ヒバリさんが?」
「僕の頭が気にくわないと言って、いきなりトンファーをふるってきたのです!」
余程苛立ったのか、骸は箸で玉子焼きを突き刺した。まぁちゃんと食べたからいいけど……。
「お前、手加減したよな?」
「もちろんです」
「あー良かった!」
オレも骸も前世の影響か、ふつーに強いからな。いくらヒバリさんでも今のオレ達には敵わないよ。
「まぁ返り討ちにしてあげましたけど」
「お前、何してんの!?絶対ヒバリさん、お前のこと探しまわってるよ!?」
「その時はまた返り討ちにしますよ」
……この2人は今世でも相容れない仲なんだとオレは察したよ。
「しかしやはり彼は面白いですね。このまま行けば、彼は随分強くなりますよ」
「まぁあの人、根っからの戦闘狂で負けず嫌いだからなぁ」
オレも何回手合わせしたことか。ヒバリさんにお願いしに行ったはずなのに、着ていたスーツが綺麗なままで帰ってきたことはないよ。草壁さんには随分お世話になったなぁ。
「あ、話かわるけどさ。お前小学校とか行かないの?」
「今更行ってどうするのですか」
「それもそうか」
ヒバリさんってことで、学校のことを思い出したけど、骸は行かないのか。
「ああ、でも黒曜中学には行くかもしれませんね」
「なんで?お前、あれはする気ないんだろ?」
「今のところは」
いや、するなよ?と心の中でツッコミする。骸がボカした言い方をした時は何か考えがあるんだろうなって、長い付き合いでわかるから口には出さないけどさ。
「それと僕が帰ってきた後、クロームを迎えに行くのでそちらに通わせますから」
「え?クローム?」
「あの子もまともな環境で育ってませんからね。本人が望めばここで一緒に住む予定です」
そっか、クロームのためにもこの家を用意したんだな。1人にしちゃ大きいと思ったよ。
「先程も言いましたが、今更僕が小学生に混じる気はありません。だから頼みましたよ」
「わかった。オレも女だし、前より助けれると思う」
「……そうでしたね。時々忘れそうになります」
あははと笑う。小学校は私服っていうのもあって、スカートは履かないからなぁ。
「君はその口調をどうにかする気はないのです?」
「それこそ、今更じゃん。それにオレが私とか言ったら、気持ち悪くねぇ?」
「たしかに。僕が一番ダメージを受けそうです」
そうかもとオレはまた笑ってると骸が食事を終えた。だから話も終わりだ。骸は食事の間だけ、文句も言わずに付き合ってくれるから。
「帰ってきたら顔ぐらい出せよ」
「もちろんです。あなたの家にせびりに行くつもりですから」
「はは。母さんは喜んで作ってくれるよ」
母さんは骸のことを幼馴染とか思ってるだろうし。
「ではまた会いましょう」
パタンとしまった扉に寂しさを覚える。わざわざ付き合ってくれてる骸のためにも、山本と接触した方がいいのかなーと思う。でもオレと関わったら野球出来なくなるかもしれないし……。せっかく家綱は人気者の山本にはいい印象は抱いてないのに。
やっぱり関わらない方がいいよなーと思いながらオレは家についた。
沢田ツナ
骸が何も言わないから、甘えてる。
以前とは築けなかった関係でちょっと嬉しい。
六道骸
ツナが死んでからはつまらないと思っていたのもあって、くだらない言い合いをするのも割と気に入ってる。
雲雀に関してはあっちから絡んで来たので、遠慮なく巻き込む気になった。「向こうが悪いのです」
そしてツナが女だということを度々忘れる人。