「ツナ、また見てるの?」
黒川の言葉にハッとオレは我に返った。
「今日もツーちゃんは山本君の応援してるんだね」
「うん。そうなんだ」
別に隠すことじゃないから、素直に認める。山本にはずっと野球をして欲しかったから、見ているのが好きなんだ。
ちなみにオレに話しかけてきたのは、黒川と京子ちゃん。幼稚園から一緒でオレがどこでも寝るから、小さい時からしっかりしていた黒川がほっとけないって面倒見てくれたのがきっかけ。
京子ちゃんは黒川と仲良かったのもあったけど、髪の色のこともあったと思う。オレも京子ちゃんも変わった色をしてるからね。みんな話しかけづらそうにしていたもん。
最初、京子ちゃんはツナちゃんって呼んでくれたんだけど、オレがゾワってしたから変えてもらった。ツナちゃんって呼ばれた時、真っ白い人が思い浮かんだからだと思う。だから呼び捨てか、ツーちゃんなら母さんで慣れてるからどっちかにしてって頼んだんだ。
「はぁ。もったいないわ」
「え?何が?」
京子ちゃんと一緒に首を傾げれば、黒川はまた溜息を吐いた。
「いい、あんたはね。美人で可愛い、勉強もスポーツもできる。ちょっとドジだけど、そういうところがあったほうがポイントが高いの」
ますます黒川が何を言いたいのかわからなくて首をかしげる。
「あんたがいいっていう男は多いのに、そのあんたが見てる男は野球一筋でなーにもわかってないのよ!」
「大げさな。それにそういうところが山本のいいところだよ」
オレの言葉になぜか黒川は首をふった。
「あんたが男なら私が付き合ってたわ」
ハハハ……。それは絶対ないよ、黒川……。
「花の言いたいこともちょっとわかったかも。ツーちゃんは山本君を見てるだけで全然話しかけないんだもん」
「いや、それは邪魔しちゃ悪いから」
「なに、この可愛い子!」
黒川に抱きしめられながら、そんな変なこと言ったっけ?と思う。
「オレは見ているだけでいいんだ」
今日も山本が野球頑張ってるなって見れるだけで十分だよ。あ、また打った。やっぱりすごいなー、山本は。
「なんでこう不器用なのかしら……」
山本の野球を見ていたオレは黒川の呟きは聞こえていなかった。
今日は野球部の活動はないことを確認したオレは帰ろうとしたところで山本に話しかけられた。
「沢田」
「……えっ、なに?」
山本に沢田って呼ばれるのは地味にショックだ……。
「今週の日曜、ここで野球の練習試合するぜ」
「そうなの!?」
「ああ」
「わー、ありがとう!山本!」
良いこと聞いたと喜んでたけど、なんで山本はオレに教えてくれたんだろう。
「お前、野球好きなんだろ?ずっと見てるの知ってるのな!」
「ごめん!山本!オレ、山本の集中の邪魔しちゃってたんだ!」
やっぱりオレ疫病神かも!と頭を抱えると、山本は笑った。
「ハハッ、逆だぜ。お前、熱心に見てるだろ?だから不甲斐ないとこ見せられねーなって気合いが入るんだ」
山本、やっぱカッコいい!とオレが思ってると、周りにいるみんなも同じこと思ったのか、キャーキャー聞こえる。
「つっても、オレはまだ1年だから試合に出れるかわかんねーけどなー」
そっか。忘れてたけど、山本は一年なんだ。上級生と同じぐらい打ってるからってだけで試合に出れるとは限らないんだ。
「今回の試合は無理でも、山本ならすぐにレギュラー取れるよ」
「お?そこまで言われたら期待に応えるしかねーな」
「あ、でも怪我には気をつけてよ」
「わかってるって」
今世でこんなにも山本と話せたの初めてだったんだ。だからちょっと浮かれていたんだ。
「あ、あのさ……山本、もし良かったら……」
「ん?」
ゴクってオレが喉を鳴らしていると、いつのまにかクラス中がオレ達のことを見ていることに気付いた。
「わっ。ご、ごめん!オレ、うるさかったよね!」
オレ、なに言おうとしてたのー!?山本とは関わらない方がいいって考えてたじゃん!
「ツナ!もうそこまで言ったのよ!最後まで言っちゃいなさい!」
「うぇっ、でも……」
「ツーちゃん、頑張って!!」
黒川と京子ちゃんだけじゃなくて、みんながオレに言えって目で訴えてくるー!?
「沢田?オレになんか言いたいことあるのか?」
ああ、もう知らない!オレ、言っちゃうよ!?
「や、山本!」
「おう?」
「オ、オレと……友達になってください!!!」
バッと頭を下げると、教室中が静まったのがわかった。オレ、終わった……。山本、嫌な顔したんだ……。
「ハハッ!もちろんいいぜ!」
「ほんと!?」
「おう!」
やっぱ山本は山本だったーー!オレなんかと友達になってくれるなんて、すっげーいい奴!
「あ、隣のクラスに双子の兄が居るからさ、オレのことはツナって呼んでいいよ」
「オッケ。よろしくなっ、ツナ!」
「うん!」
今度、野球の話を聞かせてって山本と約束出来たし、すっげーいい日だった。
「黒川、京子ちゃん、ありがとう!オレ、2人のおかげで山本と友達になれたよ!」
「よかったね!ツーちゃん!」
京子ちゃんと一緒にキャッキャッとはしゃいでると、黒川は額に手をおさえてた。
「黒川、大丈夫?体調悪いの!?」
「……大丈夫よ。ただ私があんたの精神年齢を勘違いしただけだから……思った以上に低かっただけの話よ」
え。もしかして黒川はオレに前世があると怪しんでたのかな。
「オレ、そんなに高くないよ!?」
「大丈夫、ちゃんとわかったから」
慌てて否定したけど、大丈夫そう……かな?
「あんた、日曜日見に行くの?」
「もちろん!」
山本は出ないかもしれないけど、練習頑張ってると思うし!
「あ、でもあいつ帰ってきたらどうしよー……」
家に来ると思うから長時間出かけてるのはまずいよな。あいつ、母さんとは話すけど家綱とは話さないし。いや、家綱が悪いんだよ?あいつ、骸の髪を見て爆笑したから……。ケイタイがあれば良かったんだけどな。
「あいつ?」
「えーと、幼馴染?」
「私、会ったことはないわよ。京子は?」
「私も知らないよ」
まぁ基本的にオレがあいつの家に行くからね。2人が会うことはないよな。
「すぐ否定したりするけど、いい奴なんだ。人見知りが激しいから、2人は会えるかわかんないけど」
「そう。なら写真は?」
「無理無理。あいつ写真とか絶対うつらない」
骸のことだから幻覚を使って誤魔化しそうだよ。
「おや?僕の悪口ですか?」
「悪口なんか言うわけないだろ!?って、骸ー!?お前、何してんの!?」
ここ、学校だから!窓から入ってくるなよ!?
「あなたが帰ってきたら顔を見せろって言ったのでしょう」
「いや、そうだけどさ」
学校に来るとは思わないじゃん!
「それより手伝ってください」
「どうしたの!?」
「あの子と買い出しです。僕より君の方が適任でしょう」
「わ、急いでそっちへ行くよ!」
今ここにいるのは本物だ。骸のことだから、幻覚を置いていってると思うけど、クロームは不安だと思うし。
「ごめん!黒川、京子ちゃん、オレもう帰るね!」
えーっと何を買えばいいんだろう。服とかも絶対ないよな?父さんが買ってくれたから一度は着たけど、オレは落ち着かなくてそのままタンスに仕舞われてる服を持って行こう。クロームなら似合いそうだし。
「骸、お前もオレん家に来て。服とかオレ1人じゃそんなに持てないから」
「仕方ありませんね」
そう言いながらも、今もちゃっかりオレの手提げ袋を持ってくれてるじゃん。いやまぁそれはオレが鈍臭いからだけど。荷物を持って走ったらたまに転ぶんだよ……。多分死ぬ気になった感覚で動いちゃうからだと思う。
「先に行ってますよ」
「わかった!」
大変だー!って慌ててるオレはこの時気付かなかった。次の日に黒川に骸のことについて詰め寄られるなんて……。
沢田ツナ
山本から話しかけてくれて嬉しさのあまり暴走しかけた。
慌てて何もなかったことにしようとしたが、クラスメイトの視線に耐えきれず言葉にした。
今世でもぶっちぎり頼まれたら断れないマフィアランキングナンバーワン。
山本武
ツナの視線に実はずっと気付いてた。
自分ではなく、野球が好きな奴と認識している。
異性にしては珍しく会話があうから楽と思う。
黒川花
幼稚園で気付いたら眠ってるツナに驚愕した人。
よく先生に教えに行っていれば、なぜかツナ担当になっていた。
眠ってることさえ除けば、頭もいいし、バカなことを言わないツナは大人っぽい子だとずっと思っていた。が、今回の件でそっちの面では子どもと判明。
笹川京子
自分より目立つ色の髪をしたツナに驚いた人。
ツナが周りを気にしないので、自分も気にしなくていいんだと思えた。
黒川やクラスメイトとは違い、ツナが本当にただの友達になりたいと気付いていた。
六道骸
面白そうだったので、少し前から成り行きを見ていた人。
幻術を使えばツナに気付かれるので、普通に隠れてた。
あまりにもツナが鈍臭いので荷物は持ったが、一緒には行かない。