沢田綱吉、逆行。   作:ちびっこ

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夜更かししたのもあってちょっと眠いなと思いながらも着替える。いつもはランニングウエアで、毎朝の日課が終わったら学ランだけど、今日は黒のパンツスーツ。このスーツはリボーンに頼んでレオンに作ってもらったんだ。ちょっと前に頼んでたのもあって、レオンはやつれるほど無理をしなくてすんだ。ちょっと前のオレ、グッジョブ。

 

そしてリボーンから何も聞いてないけど、このスーツは死ぬ気の炎でも簡単に燃えない素材で出来ている。嬉しくてレオンにお礼を言ってなでなでしてたら、リボーンにレオンはオレの相棒だぞって言われたんだ。だから恐る恐るだったけどリボーンも撫でた。正直……え、なにこれ。って思ったけどね。あいつ、女に甘すぎない?知ってたけど。

 

ネクタイをキュッとしめて、オレは鏡を見る。前も思ったけど、レオンってセンスいいよね。黒のパンツスーツなのに、可愛いって感じるもん。これなら持田先輩でも女に見えるよ。

 

着替え終わったオレはちょっと朝早いけど、雲雀さんと京子ちゃん達に家の用事で休むとメールを入れた。さっさと送らないと忘れそうな気がしたからね。クロームも今日は休むことにしたみたい。約束したからだと思う。帰りを家で待ってるっていう約束。母さんはオレ達の顔を見て、学校を休むと聞いても止めなかった。学校に連絡しておくわねって言ってくれたぐらいで。

 

ふぅと息を吐いて、家の前で獄寺君を待つ。基本的に順番は決めてなかったけど、最初だけは獄寺君って決めていたんだ。だって獄寺君はオレの右腕だから。

 

「10代目!?すみません、遅くなりました!」

「違うよ。オレがいつもより早かっただけで。それに獄寺君を待ちたかったんだ。おはよう、獄寺君」

「……おはようございます、10代目」

 

オレの顔や服装を見たからか、獄寺君はいつものような元気いっぱいの挨拶じゃなかった。

 

「獄寺君、これ受け取ってくれない?」

「……リングっスか?」

 

うんって返事をしてから、このリングについて説明した。獄寺君はオレの説明が終わるまでずっと黙ってたまま最後まで聞いてくれた。だからオレの嵐の守護者になってほしいってちゃんと伝わったと思うけど、獄寺君は前みたいに感動はしなかった。けど、喜んでないわけじゃない。

 

「……10代目はオレでいいんですか?」

「え?」

「オレはまだ未熟です。10代目を守護するのに相応しいのか……」

 

ちょっとネガティブになってるのかな。いろいろ言うより、ちゃんと伝えた方がいいよね。

 

「んー、オレは獄寺君がいい。それじゃ、ダメ?」

「……いいえ」

 

あ、今よりも大人になった時の獄寺君の顔だ。随分久し振りにみた気がする。落ち着いたというか、オレを第一じゃなくて、オレの考えを第一に考えるようになった獄寺君の顔。こんなにも早く見れるとは思えなかった。

 

「すみません。オレしばらく学校休みます。あなたの右腕になれるような男になってきますから!!」

「うん。無茶だけはしないでね」

「はい!」

 

獄寺君の返事を聞いて、前みたいに止めなくて良さそうだなって思った。これは超直感じゃなくて、信頼から。

 

「成長したな」

「うん。ますますカッコよくなっちゃうだろうね」

 

獄寺君が居なくなってから現れたリボーンに返事をしながら、お兄さんの待ち合わせに遅れないようにオレは歩き出した。

 

 

 

お兄さんと合流したオレは近くの公園で説明する。お兄さんはボクシングのシャドーをしながら話を聞いてくれた。トレーニングの時間をもらってるからオレも止めなかったよ。

 

「沢田」

「はい」

「さっぱりわからん!」

「だと思いました」

 

お兄さんだからね。予想はしてた。トレーニングしながらだったし。

 

「けどな、沢田に頼りにされていることはわかる。そして、京子を……いや、京子達を巻き込みたくないからオレに遠慮しているのもわかる」

 

……ほんと、そういうところお兄さんだよね。

 

「大丈夫だ!沢田、オレに極限に任せろ!」

「話はあんまりわかってないんですよね?」

「おう!」

 

あははとオレは笑った。どっピーカンだよ。お兄さん以上の晴の守護者なんて絶対いないよ。こういうところで巻き込んでるってわかってるのに、甘えちゃうんだよね。お兄さんに晴のハーフボンゴレリングを渡すと、リボーンがまた顔を出した。ちょ、待って、その服。

 

「こっからはオレの出番だな」

「む、パオパオ老師!」

 

えっ、いつの間にリボーンはパオパオ老師として接触してたの!?オレ、女になってから初めて会うんだけど……。そうこうしているうちにコロネロ来ちゃうし、オレのツッコミが追いつかないって!

 

「ではな、沢田!」

「あ、はい」

 

途中から完全に置いていかれたよ。オレの守護者になるっていう話だったよね?最後にオレが置いてけぼりってどうなの……。

 

「ツナ、まだ半分も配ってねぇぞ」

「……うん、次行くよ」

 

置いていかれたオレが悪いのね……と思いながら今度は学校に向かった。もう時間が時間だったから。

 

 

オレが学校についたのは朝のHRには間に合うけど、遅刻している時間。そして制服じゃない。けど、担当の風紀委員に止められることはなかった。オレが風紀委員で顔が知られているからじゃない。オレが門をくぐる前に校舎の窓のところからチェックしているヒバリさんと目を合わせたから。お咎めなしって伝わったんだろうね。

 

スーツ姿で上履きはなんか変な気がしたから、スリッパを借りる。さっきヒバリさんと目が合ったけど、オレは教室に向かう。家の用事で休むとメールして、スーツで学校に来た意味を察しのいいヒバリさんがわからないはずがない。だから後でも怒らないと思う。あまりにも遅かったら呼び出されるだろうけど。

 

ちょうど先生が来るような時間なのもあって、教室の扉を開くと視線が集中した。朝から会わなかったのもあって、家綱はオレの服装に驚いていた。けど、理由はわかってるから家綱の方へ質問したクラスメイトには父さんの仕事関係と軽く答えていた。

 

「ツーちゃん、今日はお休みじゃなかったの?」

「うん、休んでるよ」

「休んでないじゃないの」

 

黒川のツッコミにあははと笑う。まぁ普通休みって言ったら、学校には来ないよね。オレが声をかけるまでもなく、山本はオレのところに来てくれた。竹刀を持って。

 

「オレも休む感じか?」

「んー、山本次第かな」

「そっかそっか」

 

山本はみんなに今んとこ遅刻ってことにしといてと伝言を残した。今んとこってなんだよってみんなからツッコミされたけど、そこは山本、笑って流したよ。

 

オレと山本は屋上に行って、今日三度目の説明をした。山本はもうマフィアのことを知っているし、親父さんから時雨蒼燕流を継いでいる。だからヴァリアーを誤魔化してる時間をどう過ごすかは本当に山本次第なんだよね。リングを受け取る、受け取らないとか、そういうのはオレと山本の間ではとっくの前に終わった話。だからすぐに雨のハーフボンゴレリングは渡した。

 

「ツナはどうするんだ?」

「オレはしばらく学校には行かないつもり。顔ばれちゃったし」

 

多分スクアーロは家綱の顔を知らないんだよね。前の時、オレの顔を知らなかったから。オレ達は双子でも全然似てないのもあって、オレが学校に行かない方が家綱は安全なんだよね。まぁラルがついてるけど、隠れてるかどうかでまた違うし。

 

「おっけ。なら、オレは普通に通うのな。もしなんかあっても任せとけって」

「ありがとう、山本。助かるよ」

「いいって、オレとツナの仲じゃねーか」

 

ラルの強さを知ってるけど、それとはまた別の話だよね。だって、山本はオレが選んだ守護者だもん。

 

山本が教室に戻るのを見送ったオレは、ヒバリさんに会うために応接室に向かう。どーしよーかなー。どう考えても今日一番の難関だよ。ヒバリさんがリボーンからマフィアのことを聞いた後に、協力してもいいって感じの言葉はもらってるけどさ。ちゃんと話は通してないからね。ぶっちゃけ今日スーツを着たのは、ヒバリさんと話すから。学ランだとオレは風紀委員の一員になっちゃうし、普通の私服で学校に行ったら怒られそうだしねぇ。

 

……思い出してきた。前もこんな感じだった。ボスを継いだ後でもヒバリさんに頼むのはちょっと気をつかうというか、ヒバリさんのアジトに行くのが気が重いというか、説得が出来ればこれ以上のない味方なんだけど、説得するまでが大変なんだよ……。そういう意味では骸も似たようなものだったんだけど、あいつは普段からどこにいるかわかんないし、基本的に非協力だったから諦めもついた。ヒバリさんは説得できる可能性がある分、失敗できないプレッシャー。説得できなかったら全部最初から計画を練り直さないといけないぐらい大きな穴になるし、リボーンにはしばかれるし……。

 

あああ……と応接室の前でしゃがみこんで頭を抱えていると扉が開いた。恐る恐る見上げるとそこにはヒバリさんがいた。オレがいつまでたっても入ってこないから開けたんだろうね。ラルの気配に気付くぐらいだし。

 

「はぁ。いい加減、入ってきなよ」

 

呆れた顔をしているヒバリさんを見て、ちょっと落ち着いた。そうだよね、前とは違うんだ。一応ヒバリさんとも幼馴染って言えるぐらい付き合いは長いんだよ。それこそ咬み殺す前に、話を聞いてくれるぐらいで。オレの目が真っ赤に腫れていたら、ご飯に連れてってくれるぐらいに。

 

応接室に入って誰もいないと確認したオレはすぐに頭をさげた。

 

「ヒバリさん、オレの雲の守護者になってください!!」

「やだ」

 

……今のはオレが悪かった。オレはヒバリさんに守護者になってほしいけど、他の守護者と同じことをしてほしいわけじゃないから。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。ちゃんと説明しますから……」

 

オレは必死に説明した。ヒバリさんは今まで通り自分の理念に沿って行動してほしいと思ってるし、邪魔をする気はないって。ボンゴレの力を使って欲しいと思うぐらいだよ。そのかわりにオレの相談を聞いてくれれば嬉しいなって感じで。もちろん話に乗るか乗らないかはヒバリさん次第。オレは出来ればヒバリさんとは対等な関係でいたいんだよ。

 

「僕はボンゴレの力なんていらない。交渉不成立だよ」

「ま、待って。えっと多分ヒバリさんにとって一番のメリットはそのリングです」

 

オレがそう言うとヒバリさんは何言ってんのっていう顔をした。いや気持ちはわかるけどね。そのリングはオレの守護者っていう証だし。

 

「前にオレ、手から炎をブワッて出すって言いましたよね。そのリングがちゃんと揃えば、オレの炎に対応出来ると思いますよ」

 

ははは……。獲物をみるような目で見られたよ。まぁわかってて言ったんだけどね。

 

「これから先、オレや骸と戦う気ならそのリングは必須です。リングにはランクっていうのがあって、このリングを超えるようなものはありませんね。同等のものは1つ知ってますけど、それは他のマフィアが代々管理してますからヒバリさんがもらえるかはわかりません」

「ふぅん」

「えっと探せばいいと考えてるかもしれませんけど、ほとんど残ってないかも?数年かけて所有者のないリングを探してもらって、オレが管理してますから」

 

正確に言うと川平さんだけどね。でも多分オレが欲しいって言ったら、川平さんが使わない分は全部くれるよ。

 

ジロッて睨まれたちゃったなぁ。でも、集めちゃったんだもん。それなのに欲しかった大空のリングは全然なかったし。ボンゴレリングもだけど、大空のリングにはわかりやすくファミリーの紋章が入ってるから砕いちゃったんだと思う。もう見つけれるのは白蘭ぐらいじゃないかな。

 

「作るっていう手がありますけど、今のヒバリさんにはツテはないと思いますし……」

 

オレもまだタルボじいさんと接触できてないんだよ。まぁたとえ接触できてもリングがないと話にならなかったから後回しでいいやってなって。それに前みたいに9代目からの紹介の方がいいと思って。そっちの方が信頼もあるだろうし。

 

「あ、後お金も」

 

確かすっげーお金がいったはず。前にヴァリアーリングってどうやって作ったか聞いたことがあるんだよ。オレ目ん玉飛び出るほど驚いた記憶があるから。いくらヒバリさんでも無理だよ。額がおかしいから。ランクを落とせば作れるかもしれないけど、それじゃ意味ないよ。

 

「……リング、本当に必要?」

「間違いなく。あ、これは秘密ですよ。この情報を知ってるのはマフィア界でも一部でしょうから」

「君は未来でも見えてるの」

 

どういう意味だろ?また顔に出てたのか、ヒバリさんが教えてくれた。

 

「君はいつから集めてるのっていう話。僕ならその情報を掴んだ時点で集める」

「……あ」

 

うん、やっちゃったね。骸の呆れた顔が浮かんだよ。

 

「うーん……産まれる前からかな」

 

嘘をついて誤魔化してもよかったけど、そうすればヒバリさんはもうオレを信じない気がしたからやめた。

 

……ほらね。ヒバリさんは何か言おうとしたけど、オレの顔をみてやめたもん。相変わらずオレの顔どうなのって話だけど。

 

「……交渉成立だよ」

 

その言葉を聞いて、ジーンと感動した。オレ、頑張ったなぁ……。小さい時から目をつけられて、骸との間に何度も入って、全部、全部無駄じゃなかった……!

 

「これから日曜日が楽しみだよ」

「すみません。やっぱなしで」

「やだ」

 

オレなんでヒバリさんに武器を与えちゃったのー!?




獄寺隼人
守護者の中で弱い分類に入るだろうと気付いていた。
それなのに、ツナが自分に一番最初に声をかけるなど右腕として扱ってくれるから、弱音が出た。
すると、これ以上のない言葉をもらえる。
この後シャマルにしっかり頭をさげて頼み込んだ。

笹川了平
実はなんとなくわかっている。
ただ彼にとっては些細なことだった。
幼い頃から京子と一緒に妹のように可愛がっていたツナが頼ったことが何よりも大事。

山本武
守護者の中で恐らくツナが望んでいることを一番理解して動いている。
しかし本人は前と違って右腕に興味ない。
ツナが獄寺と決めているから。
もう父親から時雨金時を受け取っているので、修行の時間は無理に取らない。ただ部活は休んで剣は振るう。

雲雀恭弥
これでも手伝う気はあった。多分ツナが泣いてすがってきたら、渋々引き受けるぐらいの情はあった(全面協力するとは言ってない)
ツナがどう頼み込んでくるかは興味があったので様子見しただけ。
予想以上のものが釣れた。
これからもツナに情報をポロポロこぼさせる。
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