沢田綱吉、逆行。   作:ちびっこ

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細かい話し合いを終えたオレは応接室を出た。悪い内容はなかったんだけど、やっぱガックリと肩を落としたよ。

 

ツナと声をかけられて振り向けば、ディーノさん達がこっちに向かって歩いていた。いつものように挨拶した後、ディーノさんに心配そうな目を向けられてしまった。まぁ今回は態度に出てるって自覚してるけどね。

 

「……恭弥を説得できなかったのか?」

「大丈夫です、出来ましたよ。ただ、ヒバリさんを強くしてしまうことに頭を抱えたくなって」

「そ、そうか」

 

まさかそんな内容とは思わなかったみたいで、ディーノさんが引いていた。

 

「すまん、ツナ。今から恭弥を鍛える」

「もうダメだー!」

 

今度こそオレは頭を抱えたよ。

 

「うるさいよ。……ワォ。懲りずにまた来たんだ」

 

あはは、仲良いですね。嬉しそうにトンファー出しちゃってるし、ディーノさんはディーノさんでムチかまえちゃってるよ。

 

「ちょっと君、今度の日曜日は逃げないでよ」

「……はい」

 

はぁぁぁと大きなため息を吐きながらオレは2人から離れたよ。このまま学校を出る前に一応職員室に顔を出す。しばらく休むことの報告をしにね。ヒバリさんの許可を取ってますし連絡がいくと思いますって言えば、引き止められなかった。学校に来ないのもあって最後に念押しされたんだよね……。

 

今週の日曜、オレ死ぬ気にならない状態でヒバリさんの相手出来るのかな。……というか、今度の日曜って絶対リング争奪戦の途中でしょ。オレ、何やってんだろ。マジで。

 

 

 

一度家に帰って、クロームにただいまと声をかける。いやまぁ夜までまた出かけるけど、クロームに待ってもらうのとは違うから、顔を出したんだよ。後、着替え。

 

クロームはちゃんとしてるから、今から学校に行くみたい。オレだったらサボるよ。……ごめん、嘘。ヒバリさんとリボーンが怖いから行くかも。

 

母さんにしばらく学校休むけど、もう許可取ってるから連絡しなくていいって伝える。それと休むけど、出席扱いになることも。

 

「あら?そうなの?」

「うん。ヒバリさんに風紀委員の仕事を頼まれたんだ」

 

学校に来れないなら、遠出してきてって。いつも放課後しか見回りしないのもあって、オレの活動場所は学校周りになるんだよね。風紀委員の中でやっぱオレが一番人当たりがいいから、暇なら行ってきてだってさ。もちろん風紀を乱した人がいれば捕まえるように言われた。

 

別に高校に行くつもりのないオレは、出席数とか関係ないんだけど、学校を休む言い訳にもなるし、ヒバリさんの話に乗ったんだ。オレの場合、修行すれば使えるようになるとかの話じゃないし。

 

ちなみに見回りしている時にヴァリアーが襲ってくる可能性があるから最初は断ろうとしたんだよ。でもヒバリさんが、君がそんなヘマするの?という一言でその話は終わった。これで建物とか壊しちゃったらどうしよう。怖い。

 

学ランに着替えたオレは並盛の街を見回りするために家を出た。

 

「……いいの?聞かなくて」

「おめーに任せるって家光が決めたんだ。オレからは文句ねぇぞ」

 

ヒバリさんとの会話を聞いていたのにね。そのことにはスルーしたよ。オレが何か隠してるのも知ってるし、大空ってそういうものと思ってるのかなぁ。

 

オレの首には今3つのリングがかかってる。大空はオレ、霧の守護者候補である骸は今居ないから渡せない。問題は雷のリング。

 

「決めてはいるんだ。ただ、今渡していいのかわからないんだ」

 

甘いと言われるだろうけど、オレはやっぱランボが大怪我するのをわかってて渡せないよ。けど、大人ランボが幼いオレをどんどん連れ出してくださいと言った言葉も覚えている。

 

「おめーのそういうところ、オレは嫌いじゃねーぞ」

「……リボーン?」

「マフィアのボスとしては失格だがな」

「ははっ」

 

オレが男なら、つべごべ言ってねぇで渡しに行けって蹴られていただろうなぁ。こういう優柔不断なところはリボーンに何度怒られたか……。それでもまたギリギリに答えを出すんだろうな、オレは。

 

「でもお前がオレの優柔不断なところ嫌いじゃないとは思わなかったなぁ」

「おめーだからな」

「……リボーンってオレのこと結構好きだよね」

 

なんだかんだ言いながら、前の時もオレが死ぬまでほとんど一緒に居たもんな。そりゃ依頼を受けたりしたら出かけてたけど、戻ってきたもんな。9代目の依頼はオレが継いだ時点で終わっていたのにね。

 

ピタッとリボーンの足が止まったから、オレも足を止めて振り返る。

 

「どうしたの?リボーン」

「……アリアを知ってるか?」

「うん。知ってるよ。確かジッリョネロファミリーのボスで、アルコバレーノのボスでもあるんだよね?」

「そうだぞ」

 

……大丈夫かな。オレ、ちゃんとポーカーフェイス出来てるかな。

 

だってリボーンだよ、もしもの時はオレがアルコバレーノになる覚悟をしていることに気付いちゃうかもしれない。そのことがバレたら、どっか行っちゃう気がするんだ。オレをボンゴレ10代目にするために、リボーンは自分を切り捨てる。呪いを解いても、戻ってはこない。だからリボーンにはオレが呪いを解こうと考えているだけって思わせないといけない。

 

「リボーン、オレとの約束覚えてる?」

「おめーの子どもの家庭教師だろ」

「うん。絶対に叶えようね」

 

オレがそう言うと、リボーンは帽子を抑えて歩き出した。もしかして、ちょっとテレた?……そんなことあるんだ!?驚きつつも、初めて見るリボーンの姿にオレは笑いを噛み殺しながら追いかけたんだ。

 

 

 

 

 

 

平和な時間は5日しかなかった。

 

オレはその日の朝から超直感が反応した。まだそれほど強くないから、前みたいに夜に来るんだろうね。まだ時間があるのに、超直感が警告するのは今の状態ではXANXUSには敵わないからだと思う。まだ手から炎出せてないしね。そう思うとやっぱフゥ太のランキングが一番謎だなー。なんでオレが一位なんだろうね。

 

「父さん」

「おー、どーしたー。父さんの目玉焼きはあげないぞー。ツナがどうしてもっていうなら、わからんけどなー」

 

いや、別にいいよ。自分の分があるし。ってツッコミしてる場合じゃないや。まぁ母さんがいる朝食中に声をかけたオレも悪いんだけどさ。いやでも念のためさっさとオレはこの家から離れた方がいいし。

 

「今日、オレに会いに来る人達がいるんだけど、やっぱ失礼がないようにスーツの方がいいと思う?」

「そうだなー。それがいいかもなー」

「そういうことだから、母さん今日帰ってくるの遅いから心配しないでね」

「家に連れてきてもいいわよ?」

「んー仲良くなったら連れていくね」

 

オレの言葉に父さんが噴いた。家綱も意味が通じていたみたいで、ポカーンって顔をしていた。そんな中でも「その時を楽しみにしてるわー」って返事する母さんって凄いよね。オレは2人の反応に腹筋が鍛えられてるよ。

 

家を出る前に、ちび達のなかでも一番大きいフゥ太に今日の夕方以降は家の中に居るように言いつけた。情報屋でもあるフゥ太はその意味をしっかり理解してるんだろうね。ランボとイーピンだけじゃなく、家兄のことも任せて!って返事をしてくれたよ。

 

クロームにもお願いをした。オレの帰りを待ってていたいだろうけど、今日はクロームの家で京子ちゃん達とパジャマパーティしててほしいって。フゥ太へのお願いを聞いていたのもあって、夕方からずっと一緒にいるって返事をしてくれた。ほんと、いい子に育ったよねぇ。

 

ヒバリさんにも今日は風紀委員の活動をしないことをメールで報告する。ついでにちょっと騒がしくなったらすみませんっていう一文も入れた。返事はかえってこなかったから多分大丈夫。後はオレが人気がないところでいるだけかな。

 

「ツ、ツナ……、さっきのは……」

 

用が済んだし、さっさと家から離れようとしたのに、父さんに引き止められた。さっきのXANXUSのことかな?

 

「そのままの意味だよ。オレは仲良くしたいと思ってるから」

「……そうか」

 

難しいことだと父さんはわかってるのに、反対しなかったよ。オレも仲良くなるのは難しいとは思ってるけど、家には来る可能性はあるよ。前にもオレの部屋にきたしね。

 

「ツナ、父さんはまだ手が出せない」

「うん。大丈夫だよ。いってきます」

 

いや、手から炎はまだ出せないんだけどね。でもまぁ今回も父さんはギリギリに間に合うだろうなぁってなんとなく思ったんだ。そういうところが父さんだから。

 

でもなぁ、ちょっと気になる。父さんが9代目がやられる可能性に全く勘付いていないことに。やっぱ、こういうとこで白蘭っぽいなぁって思うんだよね。オレらが簡単に振り回されてるところがさ。

 

 

人気のないところって、なんで不良が居るんだろうね。オレ、今日学ランじゃないのに。……学ランじゃないから、襲われそうになるのかな。はぁとため息を吐きながら、気絶させて草壁さんに連絡を入れたよ。今ヒバリさんに連絡入れるのはダメかなと思って。でもオレの予想を反して、後で電話かかってきた。なんで僕に連絡しないのって。思わず隣に居たリボーンを見ちゃったよ。マジで?って感じで。

 

オレとしてはヒバリさんがバトル中だから気をつかったんだけど、前と違ってヒバリさんは事情を知っている。ディーノさんが戦いを仕掛けた理由もヒバリさんはわかってる。鍛えるという考えにはムカついてるだろうけど、ディーノさんが逃げないならいいってことだと思う。ヒバリさんはディーノさんを咬み殺したいはずだから。そして逃げないってわかってるなら、風紀活動もちゃんとするよね。

 

そんなトラブルがあったものの、オレは今日一日中暇だった。多分夜だろうと予想しているけど、念のために居るだけだからね。することもない。ゲームもマンガもないし。せっかくだからリボーンと話をして過ごしたよ。いろんな国の言葉でね。やっぱちょっと忘れてるのもあって、詰まったりはしたけど、リボーンには悪くねぇと言ってもらえた。

 

コンビニで買った晩飯を食べ終わると、やっと人の気配がし始めた。朝みたいな不良じゃないのは動きでわかってる。でもオレの超直感は反応なし。正確にいうと、反応はしているけど強くなることはなかった。

 

「それ使うのか?」

「うん。せっかくだしね」

 

オレがトンファーを出したらリボーンに声をかけられちゃった。これぐらいでしか使うことないんだよ、マジで。一般人にトンファーを使うのは過剰な気がするし、強いと思う人にはオレのトンファー使いでは通じないしね。

 

ボコボコとトンファーで殴った。うーん、雷撃隊だね。気絶してるところ悪いけど、無線を使わせてもらう。

 

「やるならもっと強い人寄越さないと、怪我人が増えるだけだよ」

『貴様……!』

 

ごめんね、レヴィ。他のところ、特にランボのところに行かれちゃ困るから挑発した。レヴィが部下思いなのを知っているから。

 

効果はあったみたいで、すぐにレヴィ達が姿を見せた。

 

「やったのはお前か。……罠か!」

 

それでもやっぱ暗殺部隊の一員だよね。オレの挑発には乗ったけど、首からリングを3つ下げてるのを見て警戒したもん。

 

「違うよ、レヴィ。大空のリングも持っている。彼女が沢田ツナだよ。どうやら守護者を集めきれなかったようだね」

「はっ」

「油断は禁物だよ。僕の存在に気付いていたんだ」

 

それでマーモンは姿を見せたんだ。せっかく幻術で隠れていたのに、変だなって思ってたんだ。

 

「ツナ、行けるか」

「大丈夫。でもトンファーは使えなさそう」

 

マーモンの姿を見て、リボーンの警戒があがったから聞いたみたい。アルコバレーノかもしれないって疑ってるからしょうがないけど。呪いをといたマーモンの凄さはオレもよく知ってるからね。……でもなぁ、正直あいつより怖くない。

 

「それもそうだな」

「え、またオレ顔に書いてた?」

 

リボーンは手を出せないから2対1の状況のはずなのに、一向に警戒しないオレ達にしびれを切らしたのか、レヴィが武器に手をのばした。

 

「待てェ、レヴィ!」

「一人で狩っちゃだめよ」

「よくも騙してくれたなぁ」

「って、二人しかいねーじゃん。つまんねーの」

 

言いたい放題だなぁと思いながらも、こんな感じだったと思うオレがいる。

 

「そんなことないよ、来るよ」

 

オレがそう言ったら、人の気配がし始めた。ヴァリアーのみんなも気付いたみたいで、オレを警戒した。オレの方が感覚が鋭いって思ったのかもしれない。でも多分そこまで変わらないよ。みんなが来るってわかっていたから。前がそうだったとか、超直感とかじゃなく、信頼でわかる。そういう意味ではヒバリさんは来ないだろうなぁ。オレがやられるなんて思ってなさそう。

 

「10代目!」

「ツナ!」

「沢田!」

 

父さんから聞いて、慌てて駆けつけてきてくれたんだろうなと思ったオレは嬉しくて、ヴァリアーと緊張状態が続いてるけど、みんなに手を振ったんだ。




沢田家光
ツナの発言に驚いきつつも、ボンゴレのボスに相応しいと感じた。
9代目からの回答がはやく来ないかと待機中。
残念ながら、9代目がやられたとは思ってない。XANXUSが目覚める前から、9代目の行動にちょっと疑問を持っていたから。

リボーン
アリアがみた予知の相手がツナかと思って、カマをかけたが、わからず。
ただツナに叶えようねと言われ、ツナだったらいいなと思った。

沢田ツナ
ヴァリアーからの殺気の中でも通常運転。
多分ヴァリアーから殺気を感じない方が慌てる。
感覚が相変わらずおかしい。

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