オレはそこまで気にならなかったんだけど、オレに近づけば近づくほど獄寺君達の足が重くなった。やっぱりヴァリアーの殺気ってすごいんだなぁ。あ、でも前と違ってヒバリさんはちょっと優しいし、黒曜組も攻めてこなかったもんね。経験不足なだけかも。オレは慣れちゃっただけだし。
でもちゃんとオレの側に来てくれたよ。
「みんな、ありがとう」
声をかけると、ちょっとホッとしたような顔をした。これなら大丈夫かなーって思ったんだけど、オレの超直感が反応した。まぁ少し前から気配は感じていたから、わかってたけどね。誰が来るかって。
「でたな……。まさかまた奴を見る日が来るとはな、XANXUS」
相変わらずXANXUSは暴君で、オレと目があっただけなのに手に炎を込め始めた。ヴァリアーのみんなも焦ってるじゃないか。……って、オレも焦った方がいいよね。
どーしーよーかなー、なんて思いながらも、みんなを守るために一歩前に出る。今のオレの死ぬ気のコントロールなら、防げるはず。でも、消費が激しいから何発も無理だよね。死ぬ気の零地点突破改、使えないかな?
「死ね」
懐かしいなぁ。って思うオレは多分重症。そしてもうちょっと焦った方がいいよね。でもXANXUSが来たことに超直感は反応したけど、今からの攻撃には反応していない。
だから、前の時みたいに父さんが間に合う。
「待て、XANXUS。そこまでだ」
オレの予想通り、ツルハシが地面にささった。……うん、ささったよ。
「ちょ、父さん。壊さないでよ!ヒバリさんに怒られるじゃん!」
「……父さん、もうちょっと喜んでほしいな。最近、ツナが冷たい」
「昔からこんな感じだったよね」
別にふざけてるつもりはないんだよ。だからXANXUS、殺気をビリビリ送るのはやめて。
「真面目にやれ。家光」
リボーンってほんと女に甘いよね。怒られたのは父さんだった。空気を壊したのはオレなのに。……壊す前から、オレだけこんな感じだったから怒られなかったのかも。
父さんにはXANXUSが目を覚ましたっていう情報しか流さなかったから、9代目がどうなってるか知らない。確認する間もなかっただろうし。9代目からの勅命をバジル君から受け取ったけど、これ偽物なんだよなぁ。
えーっと、なになに。イタリア語だよ、懐かしい。
「うげっ、読めねぇのな。なんて書いてあるんだ?ツナ」
「極限わからんぞ!」
お兄さんにもわかりやすく説明した方がいいよね。
「9代目とNo.2であるオレの父さんが次期後継者を別々で選んだから、同じリングを持つ同士で勝負しろって」
「なるほど。わかりやすい!極限、晴は誰だー!」
「指示があるんだとよ。今すぐじゃねぇ」
あはは、オレのツッコミを獄寺君がしてくれたよ。お兄さんがもう戦う気でいたからね。
ただなぁ……。オレの記憶力じゃあんま自信はないけど、後継者がXANXUSが相応しいと思って9代目が目覚めさせたって書いてあるんだよ。そもそも揺りかご事件のことを知ってる人も少なかったよね?これって何かのヒントかな。……なんのヒントだよ。お願いだから骸はやく帰ってきて!
骸がXANXUSの氷をとかした人物を追っていることを知っているリボーンは、オレの顔を見た。この紙、変だよねぇ。9代目の死炎印が入ってるから、やるしかないんだけどね。父さんが不思議に思ってないから、リボーンとラルがまだ教えてないのは確実だし。これはオレ達が掴んだ情報だから勝手に流さなかったのかも。オレが分けた方がいいって言ったのもあるかもしれないね。
新たな人の気配がしたから、オレはそっちに視線を向ける。うーん、チェルベッロはまた居るのかぁ。この人達ってほんと何考えてるんだろうね。出てくるタイミングを考えると7³関係なんだけど、川平さんとの関係はないみたいだし。
チェルベッロが審判することにXANXUSは異存はないみたい。父さんは異議ありって言ったけど、認められなかったね。これも前と一緒。
「オレもちょっといいかな?あ、審判に反対とかじゃないから。聞きたいことがあって」
チェルベッロ達は顔を見合わせた後、オレに顔を向け頷いた。
「チェルベッロ機関って普段どこに居るの?」
「…………」
「うん、もういいよ」
答えられないというより、答えになっちゃうから言えないが正解みたい。オレの仮説が正しいかな。チェルベッロは未来から来たんだ、10年以上も前から。
「ツナ、何か知ってんのか」
「うーん、オレの中だけに留めた方がいい気がする」
「……そうか」
ごめんね、とリボーンに謝る。いやでも黙ってた方がいいと思うんだよ。オレが話したことでまた未来が変わっちゃうし、難しい。
XANXUSから更に殺気を送られちゃったけど、どうしようもないよと流す。いつものことだったから。
「場所は深夜の並盛中学校。詳しくは追って説明いたします」
「ちょっと待った!」
「……なんでしょうか?」
オレが止めたら、チェルベッロが警戒したよ。さっきのそんなに嫌な質問だったんだなぁ。
「並中でするなら、風紀委員長にちゃんと許可とって!一応オレからも口添えするからさ」
「風紀委員長、ですか?」
「そう。オレが許可とってもいいけど、オレ達は許されてもチェルベッロ機関は許さないと思うよ。それでもいいならいいけど、オレは助けないよ」
「……わかりました」
よかったよかった。ヒバリさん怒らせると大変だから。オレに同調するかのように、獄寺君達も何度か頷いた。前の時、ほんとよく無事だったよね。
そんなことを思ってる間に、チェルベッロは明日の時間を言ってから去っていった。そしてXANXUS達も。
獄寺君達にお礼をしたし、このまま解散のつもりだったんだけど、父さんに捕まった。リボーンに任せようと思ってたけどダメみたい。
「ツナ、チェルベッロ機関のことを教えろ」
「家光」
リボーンは止めたけど、父さんは首を振った。門外顧問として聞き流せないんだろうね。
「んー、オレから言うとすれば、父さんと一緒でチェルベッロ機関なんて聞いたことがないってこと」
「ツナ」
「……骸も情報を掴んでねぇってことか」
「うん、そういうこと。本当に9代目に仕えているなら、あいつが知らないわけないよ」
特にオレと一緒で骸も前のこと知ってるんだよ。チェルベッロの存在を探さないはずがない。オレに報告がないってことは見つかってないってこと。まぁ黙ってる時もあるけど、チェルベッロの存在は前の時からオレが気にしているのを知っていたからね。
骸がボンゴレに詳しいことはリボーンから聞いて父さんも知ってるみたいで頷いた。チェルベッロに対しては結局何もわからなかったから、納得はしてないけど。
「オレの超直感には引っかからなかったから、敵じゃないよ」
味方とも言えないけどね。オレがあえて隠した言葉は二人ともちゃんとわかったみたい。難しい顔をしている。
「それより父さんはイタリアに行った方がいいよ」
「ああ。9代目が心配だ」
「どういうことだ」
簡単にオレらが掴んでた情報を教える。氷をとかしたのが9代目なら、遅くても骸はこのタイミングに戻ってきてるよ。今のオレだとボンゴレじゃそんなに権限もってないし、結局オレはなんもできないんだよね。だから後はリボーンと父さん達に任せて獄寺君達に声をかける。オレ達の話が終わるの待ってくれてたから。
「みんな、お待たせ」
帰ってくれても良かったのにって言ったら、オレを送るために待ってくれてたんだって。学校の帰りとかも前は同じ道までだったけど、遅い時間だと家まで送ってくれるようになったもんね。こういうところで自分が女って再確認するよね。いやまぁちゃんと女と思ってるけど。
「ツナ、明日から学校来れるんじゃね?」
「あ、そっか。ほんとだね」
山本に言われて気付いたよ。ボンゴレ公認の決闘だから、他のところで手を出しちゃ問題だよね。反則負けでオレが10代目に決まっちゃうし。最悪、復讐者がくるよ。
「よ、良かったスね……10代目……」
「うむ。京子も寂しがっていたから極限喜ぶぞ!」
……お兄さんは本気でそう思ってるね。獄寺君はまだ修行が終わってないから、悔しそうに山本を見ているよ……。
「みんな、よく聞いて。この勝負、勝たなきゃいけないことはないから」
いつもなら真っ先に獄寺君が口を開く気がするのに、オレを見て何も言わなかった。正直、オレの本音は出なくていい、なんだよね。でもそれは言っちゃダメ。みんなが覚悟してオレからリングを受け取ってくれたんだから。そういうのもわかって、何も言えなくなったのかも。オレ、顔にいろいろ書いてるみたいだから。
「みんなには言っておくね。オレの雷の守護者はランボなんだ」
「ランボって、あのちっこい?」
「なんであのアホ牛が……」
「おお!わかったぞ、あのちびっ子か!」
そういえば、お兄さんとランボってそんなに接点なかったかも。2人のヒントを聞いてわかったみたい。まぁ晴と雷だしね。
「みんなが言う通り、ランボはまだちっちゃくて、戦ってと言えないのに、勝てなんてもっと言えないよ」
オレは首から下げている雷のリングを触りながら、また口を開く。
「リングもいつ渡せばいいのか、オレはまだわからない。けど、オレの雷の守護者は、他の誰でもない、ランボ。オレが決めた」
みんなわかってほしい。どの守護者もオレが選んだ。勝ち負けとか気にしなくていい。オレが選んだのは君達なんだ。
「ツナ、それを言われるとますます負けれねぇって」
「え!?なんで!?」
どうしてそうなったの!?とオレはツッコミしたけど、言葉にした山本は笑ってるしお兄さんも頷いちゃったよ。獄寺君はオレの味方だよね?と視線を向ける。
「……自分、まだ10代目のことをわかってなかったみたいです」
「へ?」
「改めて、尊敬します!10代目!」
「ええええ!?」
獄寺君にキラキラした目で見られるし、山本には頭を撫でられるし、お兄さんはめちゃくちゃ燃えてるし……。なんでこうなっただろうね。
チェルベッロ
作者によって捏造された人達。
基本的に私の作品では、15代目のポスターに彼女達が載っていたことから、その未来から来たことにしています。
今回もそうしました。
沢田ツナ
大事なのは勝敗じゃないと伝えたら、士気があがった。
不思議に思ってるのはツナだけ。
この後、パジャマパーティーをしながら待っているクロームにちゃんと連絡して帰った。
沢田家光
イタリアに向かう。
ラル・ミルチ
ツナが掴んだ情報はリボーンに勝手に話すなと釘をさされている。
思うところはあるが、ツナの家庭教師はリボーンなので従う。ラルは護衛のために来ているから。
家綱の護衛は継続中。