魔法先生ネギま project in TOHO   作:水崎雨月

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10年前の闘い

 10年前。イスタンブール。

「『千の雷(キーリプル・アストラペー)』」

 赤髪の青年が言葉により魔法が発動する。

 文字通りの千ものの雷が、黒衣のローブを着た少年に降り注がれる。

 そこにさらに、

「『闇の吹雪(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)』」

 長い紫髪の先をリボンでまとめ、紫と薄紫の縦じまが入った、ゆったりとした服を着用した少女が右手を黒衣のローブに向けて呪文を唱える。

 闇をまとった吹雪が一直線に向かい、千の雷とほぼ同時に黒衣のローブに到達する。

「やったか」

「フラグ建てないで」

 2つの強大な魔法によって視界が悪くなっており、黒衣のローブがどうなったのかわからない。

「ほぼ直撃でしょう。パチュリー、そろそろ封印の準備を」

「そうね」

 魔法使い風のローブをまとった長髪の美青年が紫髪の少女、パチュリーに声をかけ、封印の準備を開始する。

「できることなら、彼女だけを封印したいのだけど」

「私もできるならばその方が良いです。しかし、現実的に見るならば」

「わかってるわよ。ゼクトの精神は、もう……」

 パチュリーが悲しげな表情をした直後。

 そこに、一閃の光が飛んできて、美青年に突き刺さる。

 それは、雷の槍。それが体を貫いていた。

「なっ!?」

「アル!!」

 美青年、アルビレオ・イマは不意を着かれた攻撃に驚き、パチュリーが名を叫ぶ。

「パチュリー!」

 赤髪の青年の叫びを聞いて、すぐさま最強防護(クラティステー・アイギス)を発動。数多の魔法障壁が前方に発動して、次々飛来する槍を防ぐ。

 パチュリーがアルビレオの方を見ると、その体が消え始め、一冊の本となる。パチュリーはそれをすぐさま回収。そして、次に来るであろう攻撃に備えて、2人とも後ろに下がった、その瞬間。

 まるで爆発のように、放射状に広がる黒衣のローブの攻撃に、数多に作った魔法障壁が砕け散る。

 2人は覚えていた。10年前に戦ったときも同じように、最強防護(クラティステー・アイギス)が砕かれ、自分も含め、皆がそれにやられたことを。

「『最強防護(クラティステー・アイギス)』二重起動」

 だから、後ろに下がり、2つの障壁をさらに張って防ぎきる。

「パチュリー、援護頼む」

 攻撃が収まると同時に赤髪の青年が突撃する。

「この古本を起こしたらね」

 手に持っている本をバシッと叩く。

「いやぁ、油断しました」

 アルビレオの声が本から聞こえてくる。

「早く復帰しなさい」

地球(こちら)での実体化は疲れるのですが……」

「知るか。やれ」

「やれやれ」

 パチュリーが本を投げると、本が消え、傷ひとつないアルビレオ・イマが現れる

「あんたね。このままだとどっちの世界も終わっちゃうわよ」

「わかっていますとも」

「『賢者の石』」

 パチュリーの言葉と同時に5つの石が表れ、パチュリーの回りに浮かんでいる。

「今日は喘息の調子良さそうですね」

「えぇ。さぁ、行くわよ」

 赤髪の青年は一人で黒衣のローブと戦っている。

 赤髪の青年が殴り、そして、持っている杖が雷を纏い、槍の形になると、それで斬りかかったりしている。

 アルビレオとパチュリーは高速移動術、瞬動術で近づいていき、パチュリーだけは一度中間で止まり呪文を唱え始める。

「セブンス・マイ・マジックスキル・マギステル

 契約に従い(ト・シュンボライオン)我に従え(ディアーコネートー・モイ)炎の覇王(ホ・テュラネ・フロゴス)

 来れ(エピゲネーテートー)浄化の炎(フロクス・カタルセオース)燃え盛る大剣(フロギネー・ロンファイア)

 ほとばしれよ(レウサントーン)ソドムを(ピュール・カイ)焼きし(テイオン)火と硫黄(ハ・エペフレゴン・ソドマ)罪ありし者を(ハマルトートゥス)死の塵に(エイス・クーン・タナトゥ)

 アルビレオは黒く丸いものが掌に作る。そして、それを黒衣のローブに叩きつける。その瞬間に、赤髪の青年が雷の斧を魔法で作り、叩きつける。

「避けなさい! 『燃える天空(ウーラニア・フロゴーシス)』!!!」

 熱線が一直線に黒衣のローブへと、大気を燃やして突き進む。

 一瞬という時間で一気に周辺を燃やし尽くす広範囲焚焼殲滅魔法。普通ならば仲間の2人も巻き込まれるが、

 アルビレオは転移魔法を用意。赤髪の青年とアルビレオの足元に魔法陣ができて、パチュリーの近くに一瞬で移動する。

「これで決まってくれればいいんだけど」

「そういうわけにはいかないでしょうねぇ」

 煙により視界が悪いが、巨大な何重にも重なった魔法陣が黒衣のローブから広がった。

「まだダメなの!?」

「だろうな……」

 パチュリーは驚き、赤髪の青年は当然といった風につぶやく。

 そこに、魔法陣から真っ黒な魔法の砲撃が何本も放たれる。

「へっ。まどろっこしい!」

「ちょっ。ナギ!?」

 それを見て、赤髪の青年。パチュリーにナギと呼ばれた青年はその砲撃に向かって突進するかのように突っ込む。そのままナギは魔法障壁で前方を守りながら砲撃を防いで最短のルートで一気に近づいていく。

「あの脳筋め」

 とにかく、こっちに来る攻撃は回避か防がなければならないので、魔法障壁で真っ黒な砲撃を防ぐパチュリー。

「フハハハ。私を倒したところで無駄なことは理解しただろう、人間どもよ」

 黒衣のローブが話しかけてくる。

「うるせぇえぇ!」

 ナギが魔力のこもった右拳でぶん殴る。

「10年前も言っただろうが!」

 ものすごい速度で何度も何度も殴るナギ。ローブが端からどんどん消し飛んでて、攻撃が当たっているのがわかる。

「明日世界が滅ぶとしても、あきらめぇのが人間ってモンだろうがッ。ってなぁ!!!」

「それならば私も言ったはずだ。私の語る『永遠』こそが、『全て』の『魂』を救い得る唯一の次善解だと」

 先ほどと同じ魔法陣が1つ、黒衣のローブの目の前にでき、ナギに向かって砲撃を放とうとする。

「『雷の投擲(ヤクラーティオー・フルゴーリス)』」

 パチュリーが雷の槍を作り出してそれを放つと、黒い魔力の塊ごと、黒衣のローブに突き刺さる。それによって砲撃の魔力が消えてしまう。

「あのね、あんまり」

「人間を!!」

 再び杖が雷を纏って槍の形となる。

「なめんじゃねぇええええー!!!」

 その言葉と同時に、槍が黒衣のローブのど真ん中に突き刺し、そして、槍を中心に爆発したかのように、黒衣のローブの体が吹き飛ばした。

「やった、って違う! ナギ! 急いでこっちに」

 パチュリーが最初は喜ぶがナギに急いでそこから離れるように伝える。

 しかし、

「パチュリー! 俺ごと封印しろ!」

「はぁ!? あんた何言って」

 黒衣のローブがナギの体を覆っていく。

「パチュリー! 今しかありません。絶好の機会です」

 その光景を見て、アルビレオがパチュリーに声をかける。

「でも!」

 仲間を、友を、永久に封印するしか解決がないのは、パチュリーもわかっている。でも、最後の決意がつかない。

「ナギとゼクト殿の犠牲を無駄にしてはいけません。早く」

「くっ。ごめんなさい。ナギ」

 右手を向ける。

「セブンス・マイ・マジックスキル・マギステル」

 呪文を唱える。

 ナギの表情が苦痛に満ちていて、どんどん黒衣のローブがその体を覆っていく。

「永劫氷結」

 氷の檻に、黒衣のローブに包まれてしまったナギを封じる。

「ごめんなさい、ナギ」

「パチュリー。諦める必要はありません」

「そう、ね。時間はあるわ。何をしてでも」

 氷包まれたナギをにらむように見るパチュリー。

 

 

 

 

 

 10年後。

 図書館のような大量に本がある薄暗い部屋でパチュリー・ノーレッジは目を覚ます。

 見た目は10年前と全く変わっていない。変わっているとすれば、視力が落ちてしまったのか、物を見るために目を無意識に若干細めてしまい、それによってわずかな差だが、目つきが鋭くなっているぐらいだ。

「……ずいぶんと懐かしい夢を見たわね……」

 『捨食の術』という、睡眠と食事が不要となる魔法を何十年も前に習得していて、寝る必要のないパチュリーだが、何を血迷ったのか、今回はソファーで寝てしまった。すると、久しぶりに自分の過去の記憶を夢として見てしまった。

「……。レミィ。何の用?」

 眠そうな目で後ろを向くと、そこには背中に蝙蝠の翼を付けた少女がいた。

「咲夜から連絡があったのさ。パチェが久しぶりに寝ていて、ナギ、ナギって寝言言っているって」

「……そう」

 ソファーから降りて軽く体を伸ばす。

「しかし、ナギとは懐かしい名を聞いたな」

「そうね。私も久しぶりに見た夢だったわ」

 やけに上機嫌の少女、レミリアを見てパチュリーは首をかしげる。

「どうしたのよ」

「いやいや。これはまさに運命だと思ってな」

「私とナギはそういう関係じゃ――」

「そうじゃない」

 パチュリーが否定しようとしたことを勘違いだと言ってくるレミリア。

「これから動き出すぞ。止まっていた歴史が。私の直感だがな」

「……」

 無言でレミリアを見るパチュリー。

「証拠が必要か? どうやら、隙間妖怪が動き出しているようだぞ」

「……わかったわ。情報ありがとう、レミィ」

 机に乱雑に置かれている本に指を向けると、本が浮かびだし、バラバラに飛んで行って本棚へと片付かれていく。

「パチェ。行くときは私も連れて行ってくれ。弾幕ごっこも楽しいから別にいいんだが、たまには本当の闘いも、な」

「連れていける日ならば、ね」

 

 

 

 

 

 

 次の日。

 日本、とある学校の校舎内。

「では、名を教えてもらっても良いかの?」

 異様に後頭部が長い白いひげを蓄えたおじいさんが目の前の2人に声をかける。

 2人は、真新しいこの学校の女子中学校の制服を着ていて、

「博麗霊夢よ」

「霧雨魔理沙だぜ」

 黒髪の少女が気だるそうに答えて、金髪の少女が元気に名乗る。

 

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