魔法先生ネギま project in TOHO 作:水崎雨月
だって、エヴァにそのセリフ言わせる機会多分ないから。
小太郎VS夢子。
ネギVSヘルマン伯爵。
その二つの闘いは、まさに子供と大人の闘い。一方的な戦いだった。
夢子と小太郎は、小太郎に反撃を許してくれない。一本の剣が剣舞のように美しく振られ、小太郎は防ぐしかできない。
普通ならば剣を腕で防ぐなどできるはずがないが、小太郎は気を腕にまとうことで剣をそれで受け止めている。もしも気がなければ、その腕は炎を模した波打つ刃によってズタズタに引き裂かれていた。
「ぐっ」
小太郎は後ろに飛んで一度距離を作る。しかし、その細身の身体のどこにそんな力があるのかと言いたくなるほどの脚力で一瞬で距離を詰められ、剣が振られる。
上から振られる剣を小太郎は白刃取りの要領で刃をつかむ。
「はぁはぁ。や、やるやないか、メイドの姉ちゃん」
「私は、失望したわ。犬上小太郎」
「あぁ!?」
夢子から告げられた言葉に小太郎が叫ぶ。
「あなた、本気を出してないわ。もちろん、力の一部を封じられているというのもあるんでしょうけど。それにしても今出せる全力を出さないというのは相手に失礼よ」
「へっ。女に本気が出せるかよ」
小太郎のその言葉に、夢子の表情が消える。
「撤回するなら今よ、犬上小太郎」
「あぁ!?」
「女に本気が出せない? ふざけているの? 自らの意思で戦場に立つものに、男も女も子供も老人も何もない。そこにあるのは戦士。戦う意思がある者に対して本気を出さない? あなたは、それが最上級の無礼であることを理解しているのかしら?」
「それは姉ちゃんの考えやろ。俺はそうは思わん」
「考えを変えるつもりはないのね」
「ああ」
夢子は小太郎の目を見る。そしてあきらめたようにため息交じりに息を吐き、
「ならば、愚かな選択をしたと後悔して死になさい」
腰の二本目の剣に手がかかる。そして、鞘から抜かれると同時に小太郎を斬り飛ばした。
ネギVSヘルマン伯爵は、同じように一方的な戦い。
ヘルマン伯爵の攻撃はただのアッパーですら、地面を走る衝撃となるし、その力はネギが受け流せる威力ではない。
さらに、魔法はアスナの魔法無効化能力を使用され、消されてしまう。となると、最近修行を始めたばかりの中国拳法しかない。
圧倒的な経験値の差。あっという間にネギは地面に倒れる。
「やれやれ。この程度かね。先ほどの動きはなかなかよかったが、どうやら私が手を下すほどではないかったようだね」
ネギが気合を入れて立ち上がる。
そしてネギは杖を使った突きを使った連続攻撃をするが、それもすべて防がれてしまう。
「いや、違うな。ネギ君、君は、本気で戦っていないのではないかね?」
「なっ。ぼ、僕は本気で戦っています」
「そうかね? いやはや。サウザンドマスターの息子だと聞いているから楽しみだったのだが。彼は正反対。戦いには向いていない性格だよ」
魔法を無効化してこの言い草。とてつもなく厳しく、分が悪い。
「君は、何のために戦うのかね?」
2人は動きを止め会話を始めてしまう。
ヘルマン伯爵は小太郎と夢子の方に視線を向ける。
「見たまえ。小太郎君は実に楽しそうに戦う」
夢子の剣を小太郎が腕で防いでいるのをネギが見る。苦しそうではあるが、楽しそうでもある。
「君が戦うのは仲間のためかね? くだらないぞ。実にくだらないぞ、ネギ君。期待外れだ。
戦う理由は常に自分だけのものだよ。そうでなくてはいけない。
『怒り』『憎しみ』『復讐心』などは特にいい。誰もが全霊で戦える。あるいはもう少し健全に言って『強くなる喜び』でもいいね。小太郎君のように。そうでなくては闘いは面白くならない」
「ぼ、僕は別に戦うことが面白いなんて」
ネギの性格では闘いとは本来避けるべきこと。戦わなくて良いのなら戦わない。それがネギという少年。
「僕が、僕が戦うのは」
「一般人の彼女を巻き込んでしまったという責任感かね? 助けなければという義務感? 義務感を糧にしても決して本気になどなれないぞ、ネギ君。実につまらない。いや、それとも、君が戦うのは、あの雪の夜の記憶から逃げるためかね?」
「え?」
ネギの記憶。悪魔に襲われ、村の人たちが全員石となってしまった6年前の記憶。それを、ヘルマン伯爵は告げる。
「何で、それを。ち、違います。僕は」
「そうかね?」
否定するネギにヘルマン伯爵は帽子を手に取り、帽子で一度顔を隠すように帽子を外す。
「コレなどは、いかがかね?」
その顔を見たネギは、一つの記憶を思い出す。
封印の瓶を使用した、近所のおじいさん。そして、それを石にした……、
「ははは。喜んでもらえたかな、いいカオだよ、ネギ君。その
「あ、あなたは……」
「そうだ。君の仇だ。ネギ君」
その顔は、あの時、おじいさんを石化し、姉であるネカネの足を石にした悪魔。瓶に封印されたはずの悪魔がそこに立っていた。
「あの日召喚された者たちの中でも、ごくわずかに召喚された爵位級の上位悪魔の一人だよ」
爵位級の上位悪魔。悪魔たちの中でも、格別の強さを誇る悪魔。自分をそれだと言うヘルマン伯爵。
「君のおじさんやその仲間を石にして村を壊滅させたのもこの私だ。まったく、あの老魔法使いにはしてやられたがね」
元のひげ面に戻るヘルマン伯爵。そして、
「どうかね? 自分のために戦いたくなったのではないかね?」
その言葉の直後、ネギは一瞬でヘルマン伯爵の懐に入り込み、
掌底で何メートルも上空に突き飛ばす。
続けてそのまま高々とジャンプして追いかけるネギ。今まで攻撃を許してはくれなかったのに、とてつもない速度で一気に近づき、殴り、肘打ち、蹴りで攻撃しまくる。
魔力の
しかし、それはいうならば、火事場の馬鹿力。体への負担がとてつもないのだが、ネギは怒りに任せて拳を振るう。
「ふははは。素晴らしい、これだよ。これが見たかったのだよ。それでこそ、サウザンドマスターの息子だ」
ヘルマン伯爵は空中で顔だけでなく、全身が悪魔の元の姿に戻る。
翼も生え、何倍もの大きさになり、口を大きく開く。
未来ある若者が好きだ、というヘルマン伯爵。しかし、その一方でその才能が潰えてしまうのを見るのも好きだと告げる。夢子がヘルマン伯爵をちょくちょく変態だという理由でもある。
開いている口が光りだす。これは、石化の光。このまま解き放たれれば、ネギの全身は石となってしまう。
回避は間に合わない。ネギに直撃するように光が放たれる。しかし、
ネギの足に細い何かが絡みつき、引っ張られる。
「!?」
そのおかげで石化の光を回避、そのまま地面に落ちる。
「あ、う……」
意識がはっきりしてくると、ネギは近くに立つ女性に気が付いた。
女性は金髪で、一見すると人形のような姿をしている。
瞳の色は青。青のワンピースのようなノースリーブにロングスカートを着ている。肩にはケープのようなものを羽織っていて、頭にはヘアバンドのように赤いリボンがまかれている。そして、左手で一冊の分厚い本を持っていて、それはリボンで十字に縛り、鍵もかけられている。
「魔力の
「あ、あなたは……?」
「アリス・マーガトロイドよ。あなたがネギ君ね。魔理沙の言ってた通り、本当に子どもなのね。びっくりだわ」
女性が名乗ったとき、小太郎と夢子のところでは、夢子の一撃をやってきた魔理沙がホウキで受け止めていた。
「よう、久しぶりだな、夢子」
「魔理沙、ようやく来たのね」
待ち人がようやく来たことで夢子が一瞬笑顔になる。しかし、
「どうして、アリスちゃんまで来てるのかしら?」
アリスのほうを見る夢子。
「……かあさ、じゃなくて、神綺様から『夢子ちゃんがいないの』って泣きつかれたので探しに来たんです。魔理沙と一緒に」
「まったく、あの方は」
ヘルマン伯爵はアリスを見る。そして、
「アリス……。もしや。アリス嬢かね。神綺様のお気に入りの」
「……あなた、悪魔ね。それもかなり上位の……」
「お久しぶりですな、アリス嬢。私の名は、ヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・ヘルマン。しがない没落貴族です」
「久しぶり? あなたにあったことがあったかしら?」
「まだ幼き頃の話です。覚えていらっしゃらなくても仕方がない」
ヘルマン伯爵はそう言って拳を握る。
「さて、どいていただけますかな? 私は今ネギ君と楽しんでいるところでしてな。邪魔をするというのならば、あなたといえど、容赦いたしませんよ」
アリスは指を動かす。すると、たくさんの人形がアリスの周りを浮かぶ。
「魔理沙に頼まれたのよ。悪いけど、邪魔させてもらうわ」
「そうかね。残念だ」
「ネギ君。まだできるわね」
「はい!」
「無理はしないように。いくわよ」
アリスは腕と指を動かす。すると、ランスや剣を持った人形たちがヘルマン伯爵めがけて飛ぶ。
「人形遣いですか」
人形の武器での一撃を回避しながら少しずつ近づくヘルマン伯爵。そこにネギが突撃して肘打ちで殴り飛ばす。
「ぬぅ」
人形による多角的な攻撃にネギの攻撃。さすがにすべて受け流すことができずに直撃を食らうヘルマン伯爵。
「リン・ラン・リ・ティウス・グリモワール」
加えてアリスは始動キーを唱え、
「
「ダメです!」
魔法の射手を放ったのを見て、ネギが叫ぶ。しかし、もう遅い。光の射手はヘルマン伯爵の近づくと、アスナのペンダントが輝き、壁に当たったように消えてしまう。
「消えた? なぜ」
「
「魔法無効化。なるほどね……」
アリスは抜け目なく、アスナのつけているペンダントが光ったことを見逃していなかった。
「リン・ラン・リ・ティウス・グリモワール 『
魔法が通じないのならば近接攻撃しかできない。
指を少し動かすだけで一目もせず、人形を1体、アスナのところへと突撃させる。
「させねーぜ!」
しかし、それはスライム娘にはじかれてしまう。
「スライムね。また面倒な」
「デーモンアッパー」
ヘルマン伯爵の拳が振られる。アリスはそれを闘いの歌で強化された反射速度で回避する。さらに手を振るって糸を操作。ヘルマン伯爵の全身を縛り上げる。
「ぬぅ。厄介な糸ですな」
「ネギ君」
「はい!」
一気に近づいて弓歩沖拳で殴り飛ばす。
しかし、糸で固定されているためその場から動かないヘルマン伯爵。
「もう一発!」
「ぬううう!」
ブチッ、ブチッ。と糸が切れる音が鳴り響き、ヘルマン伯爵の右腕だけが動く。そして、ネギが続けて肘打ちしようとした腕をつかむ。
「くっ」
「逃がさぬよ、ネギ君」
ヘルマン伯爵が口を開く。すると、口の中が発光しだす。間違いなく石化光線の準備である。
が、発射寸前にアリスが高々とジャンプして石化光線の準備中でネギしか見えていなかったヘルマン伯爵の頭を思いっきり蹴飛ばす。
「さすがにそれは使わせるわけにはいかないわよ」
「ぬぅ。アリス嬢。やはり君は厄介ですな」
再び糸が切れる音が鳴り響くとすぐにその場を離れる。
「ネギ君はそこまで脅威ではない。アリス嬢をまずなんとかしなければ」
ヘルマン伯爵はそう呟くと、夢子のほうを一瞥する。
魔理沙がホウキを振り回し、夢子が剣を振り回す。
近接戦闘が得意ではない魔理沙は1人では夢子にはかなわないが、そこは小太郎が援護をすることでどうにか戦いになっている。
「夢子君の援護は期待できそうにないな」
アリスが追撃に走る。周囲にはランスを持った人形が数体。
「近づかせはしない!」
ジャブのように拳を軽く振るう。すると魔力の塊が拳を振るうたびにアリスに向かって飛ぶが、それはアリスにはあたらず、周囲の人形にあたり地面に落ちる。
「デーモンアッパー!」
さらに拳を振り上げるとアリスめがけて衝撃が地面を走る。
横によけるアリス。だが、そこに近づいてアリスのお腹を直接殴りつけるヘルマン伯爵。
「がっ」
何メートルも殴り飛ばされ客席に転がるアリス。
「アリスさん!」
「終わりだ! アリス嬢!」
アリスに突撃するヘルマン伯爵。が、突如としてその身に痛みが走る。
「?」
ヘルマン伯爵が痛みのある所を見ると、そこにはアリスの人形が1体、ランスを突き立てていた。
「ば、バカな。アリス嬢は指を動かしていない。なのになぜ人形が動く」
ヘルマン伯爵は人形の操作をしているかどうかの識別として指の動きを見逃さないようにしていた。
「これが、私の研究の成果よ」
悠然と立ちあがり言うアリス。
「私の目的は、全自動型の人形を作ること。その上海は私が作った人形の中でも最高傑作」
ヘルマン伯爵のもとから離れる人形、上海。
「残念ながら全自動はまだ完成していないけど、上海は半自動型の人形。私の命令なしでは動けないけど、私の命令に対して自分で考えて最適な行動をしてくれるわ」
「自分で考える人形だと……」
ありえない。ヘルマン伯爵はそう考える。
「お疲れ様、上海」
アリスが人形の頭をなでると人形は喜んでいるように笑顔になる。
「アリス嬢自身の魂を中に入れている……?」
ヘルマン伯爵は自分の知識から一つの可能性を考える。が、これは今は必要のない思考。と考えるのをやめる。
「それは確かに脅威ですな。しかし、それならば3人を相手にしていると考えればいいだけのこと」
「それは、どうかしら。上海、あの少女のペンダントを取りなさい。人形は3体まで使っていいわ」
上海人形は敬礼をすると、アスナに向かって直線に飛ぶ。
「させませんぞ! スライムたちよ、人形を止めよ!」
スライム娘たちが全員、上海人形の進行方向に行き、止めようとする。しかし、上海人形は人形でありながら人形を操作できる。スライム娘は3体だからアリスは3体の人形を使ってもいいといった。
つまり必然的に1体だけがノーマークとなる。
その結果、ペンダントは上海人形のランスによって鎖の部分を貫かれペンダントが外れ落ちる。
「ぬぅ、しまった」
ヘルマン伯爵が上海の方に意識が向いている隙にアリスは足で蹴り上げてガラスの瓶を手に取る。そして、上海の操っている人形の操作権を奪い、自分に近づくように操作する。
「『
アリスは機転を利かせ、厄介なスライムだけをまずは捕える。
「いやあああああ」
「また瓶の中カヨーーー」
「まあ、悪役デスシ」
瓶がコルクによって閉じられ、スライムたちが完全に封印される。
「ネギ君!」
「はい!」
ネギがヘルマン伯爵へと向かう。
「ぬぅ。さすがアリス嬢。しかし、ネギ君だけならば全く問題ない!」
迎撃しようと拳を握るヘルマン伯爵。
アリスは人形を1体手に取ると、それをオーバースローで投げつける。
見事、人形はヘルマン伯爵の目の前に落ち、爆発した。
「がっ」
まさかの攻撃にヘルマン伯爵がひるむ。
そこを狙って爆発の煙をまっすぐ走り抜け、肘打ちの攉打頂肘を
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル
ネギが右手を振り下ろすと、巨大な雷の斧が現れて、ヘルマン伯爵を撃ち抜いた。