魔法先生ネギま project in TOHO   作:水崎雨月

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3-Aと報告

 中等部3-A組教室

 教壇に立つのは、スーツを着て、小さなメガネをつけた赤い髪の少年。

 この教室の担任で、子供先生と呼ばれるイギリス出身の天才少年、ネギ・スプリングフィールドは、教壇からクラスを見渡す。そこにいるのは、中学3年になったばかりの少女たち。

「皆さん、すでにわかっていると思いますが、転校生が2人います」

 クラスの女生徒の半分ほどが立ち上がったりしてテンション高めで喜ぶ。

「それでは、どうぞ」

 ネギの声に制服姿の霊夢と魔理沙が部屋に入ってくる。さすがに制服姿だからか、魔理沙はいつもかぶっている黒のとんがり帽子をかぶっていない。霊夢はいつものようにリボンで髪を縛っている。

「それでは、名前を黒板のほうに」

 ネギの言葉で霊夢と魔理沙は黒板のほうを見て、

「これ、どうやって書くの?」

 手で黒板をトントン叩く。

「そのチョークを使ってください」

「これ?」

 つまむように白いチョークを持つ霊夢。

 魔理沙はぱっぱとすぐに自分の名前を書き始める。

 霊夢もすぐにまねをして書く。

「博麗霊夢よ。ま、よろしく」

「霧雨魔理沙だぜ」

『よろしくーー』

 クラスの半分ほどが大声で言う。

「お2人は一番後ろの席でお願いします。では、1限目は英語ですね」

 結果として、霊夢が英語で四苦八苦して、魔理沙は魔導書を常日頃読んでいたため、英語は特に問題なく終わった。

「英語とかわけわからない」

「まぁ、しょうがない。私が1から教えてやるよ」

 その言葉に霊夢がめんどくさそうな表情をする。

「博麗さん。よろしければ今日の夜に僕が1対1でお教えしましょうか」

 授業が終わったばかりのネギが霊夢の席に近づいて提案してくる。

「それはありがたいけど、先生の負担になるでしょ?」

「大丈夫ですよ。よくアスナさんに教えていますし」

 その言葉に金髪の美女が勢いよく立ち上がった。

「ね、ネギ先生の個人講習!?」

 ものすごい形相に霊夢と魔理沙は驚き。

「アスナさん! あなたはそんなうらやま――。いえ、先生の負担になることをしているのですか!」

 金髪の美女、このクラスのいいんちょ、雪広あやかがオレンジ髪のツインテールの少女、神楽坂明日菜に詰め寄る。

「うっさいわね。仕方がないでしょ」

「あなたが勉強できればそんなことには」

 アスナといいんちょが言い合いをしていると、唐突にやめて霊夢の席に近づいてきて、ネギに、

「ネギ先生。(わたくし)にも、個人授業を」

「あ、いえ。まずは博麗さんに教えないと」

( わたくし)も一緒に教えますわ」

「いや、いいわよ。先生だけでいいわ」

 こんな騒がしい人が来たらやかましくてしょうがない、と考えた霊夢が丁重に断るが、

「博麗さん。まさかあなたも……」

 ギロリ、と霊夢をにらむいいんちょ。

「何言ってるかわからないけど。ただ英語を教わるだけよ」

 ため息交じりの言葉にいいんちょは笑顔で、

「えぇ、えぇ。そうですわよね。でしたらいいのですが」

 牽制するかのようなことを言う。

 それを聞いて、霊夢は何この人、という感じで訝しんでいる。

「では、今日の夜に博麗さんの部屋に行きますね」

「悪いわね」

「大丈夫ですよ、それでは」

 ネギはそういうとチャイムが鳴り、急いで教室から出る。

 霊夢は何か変な雰囲気が部屋に蔓延しているような、そんな嫌な予感を感じながら次の授業を始める。

 一番後ろの席から、他のクラスメイトを見ながら。

 

 

 

 その日の夜。

「それでは、また明日ですね。おやすみなさい」

 ネギが霊夢の部屋から出る。

「はぁー。疲れたわ」

「おつかれだな」

 霊夢は部屋の真ん中に置いてある丸テーブルに倒れ伏せる。開きっぱなしのノートや教科書を手で押しながら倒れ伏せたので、ノートと教科書が丸テーブルの反対側から床に落ちる。

「本当に難しいわ」

「まぁ、ネギの教え方はかなりうまいからな。コツさえわかれば何とかなるぜ」

「確かに教え方はうまいわね。私たちより年下なのに」

 霊夢はそういうと立ち上がり、

「ちょっと外の空気吸ってくるわ」

「おう」

 魔理沙は霊夢が落としたノートと教科書を拾いながら返事を返す。

 霊夢は外に出ると、空を飛んで屋根の上に行く。そして、

「生徒たちを観察したけど、ほとんどが普通の子たちよ」

 空を眺めながら腕を組んでそんなことを言い出す。

「出席番号1番の相坂さよは地縛霊ね。私でも意識しないと見えなかったからかなり隠密性が高いわ。でも、そんな危険性を感じないから放置していても問題ないでしょうね。

 次に出席番号10番の絡繰茶々丸は普通の人じゃないわね。機械仕掛けだと思うわ。それはあなたもわかっていると思うけど。

 次は、出席番号31番、ザジ・レイニーデイも人じゃないわね。ただ、ちょっと正体はいまいち不明。あんたならもうわかっているんだろうけど。

 他は私が見た感じ普通の人よ。

 正直、生徒よりもあの世界樹っていう木のほうがおかしいわよ。おそらく認識阻害系の術が使われているんでしょうけど。そっち調査するほうがいいと思うわよ。

 これで報告としては十分かしら? 八雲(やくも)(ゆかり)

 霊夢の言葉に反応するかのように、霊夢の隣に、裂け目ができた。

 裂け目としか言い様のないものが空中に浮いている。裂け目の両端にはリボンが結ばれていて、それが開き出して中に多数の目が除きこんでいる空間が見える。

 正直に言って気持ち悪い裂け目の中から金髪の美女が出てくる。八卦の萃と対極図が描かれた中華風の服に赤いリボンのドアキャップのような帽子をかぶった女性だ。髪は金髪のロングで毛先をいくつか束ねて赤いリボンで結んでいる。そんな女性、八雲紫が霊夢の隣に立つ。

「ええ。十分ですわ」

 空間の裂け目が閉じると、今度は横向きに紫の腰の下あたりにできて、その裂け目に座る。

「大丈夫なの? こっちに来て」

「結界にさえ当たらなければ侵入は察知されませんわ」

 霊夢は目を細めて空を見上げる。

「結構強力な結界よね。侵入を防ぐタイプではなく、侵入を感知するタイプね」

「感知したら魔法先生、もしくは魔法生徒が侵入者の撃退をする感じね」

 霊夢の言葉に付け加える紫。

「で、あんたはどうして私と魔理沙を外の世界に送り込んだの? あんたならこの程度の情報、すでに集めているでしょ?」

「……。これから世界が動き出しますわ。幻想郷への悪い影響を最小限にして、良い影響のみを受け入れたい。しかし、蚊帳の外にいては影響を選択することすらできず、訪れた影響を問答無用に受け入れなければならなくなりますわ。それは幻想郷の危機」

 紫の険しい表情に霊夢も驚くが、

「まるであの教室がその原因、渦のど真ん中にいるような口ぶりね」

「その通りですわ。ネギ・スプリングフィールド。彼を中心とした渦になると、わたくしは思っています」

「なんで」

 そんな様子が全く見えなかったため聞くが、

「説明するにはまだ早いでしょう。まだ渦は弱く、竜巻に例えるならば微風の状態ですわ」

 霊夢は紫を睨むがそれをスルーしている。

「はぁ。で、私はこれからどうすればいいわけ?」

「好きに動いていいわよ」

「は?」

 その言葉に驚く霊夢。わざわざ自分を外の世界に送ってまで何かをしたいはずのなのに、好きに動いていいとはどういうことなのか。

「好きに動いてくれて結構ですわ。魔理沙もそう。あなたと魔理沙が敵対することになっても良いですわ。普通に外の世界を楽しむも良いですし。ネギ・スプリングフィールドの手助けをするのも問題なしですわ」

「何を考えているのよ」

「言ったでしょう? 幻想郷への悪い影響を最小限にしたいのですわ」

 霊夢はその言葉の真意を探る。

 最小限にしたいのならば、自分たちに何かをさせたいのではないか。そう考えていたのだが……。

「ネギ・スプリングフィールドと仮契約をしても良いですわ。あなたの思うがままに動いて結構。それが幻想郷のためになる」

「仮契約?」

 聞きなれない言葉が出てきたので問うが、

「いずれわかりますわ」

「ちっ」

 答えようとしない紫に霊夢が露骨に舌打ちをする。

「好きにしていいなら、この報告も次回からなしにしていいのかしら?」

 からかうような口調で霊夢が言うが、

「ええ。構いませんわ」

「ちっ」

 何も困らない。そんな思惑が今の一言から感じ取れて、霊夢は再び露骨に舌打ちをする。

「それでは、この報告を続けるのならば、明日以降もここにきて頂戴」

 紫が立ち上がると、座っていた空間の裂け目が消えて、紫の目の前に縦に同じように空間の裂け目ができる。

「待って。1つだけ、聞いてもいい?」

 霊夢は空間を通ろうと、片足を入れた紫を止める。

「あら。何かしら?」

「紫は、わざわざあの教室内の人間を観察させたってことは、あの教室内にあなたが脅威と感じている人間がいるってことよね。それは、誰?」

「あら。面白いことを聞くわね。そう、ね……。幻想郷にとって脅威と感じている人間か、私個人が脅威に感じている人か、どっちを聞きたい?」

 その言葉に霊夢は呆気にとられる。まさか紫本人が脅威と感じる人間がいるとは。

「紫が脅威と感じる人間って言うのは興味があるわね。誰かしら」

「神楽坂、明日菜ですわ」

 霊夢は明日菜の容姿を思い出す。

 鐘のような耳飾りを付けたツインテールの少女。ただの人間にしか見えなかった霊夢は驚く。

「そんな風に見えなかったけどね」

「今はまだ脅威ではないですわ。ですが、成長すればどうなることか……」

「へぇ」

 紫は歩を進めて、体が完全に裂け目の中に入る。

「では、良き学園生活を」

 それだけ霊夢に言うと、空間が閉じて何もなくなる。

「……ふん。妖怪の言いなりにはなりたくないけど、幻想郷への悪影響というのは、博麗の巫女として見逃せないのよね。利用させてもらうわよ、紫」

 

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