魔法先生ネギま project in TOHO 作:水崎雨月
4試合目。古VS龍宮。
500円玉を指で撃ち、終始
「古か……。近接を避けるようにすれば……」
骨折していることを知らない霊夢は古菲とどう戦うか考える。
そして、一人の服が脱げて素っ裸が公開されたりしたが、問題なく一回戦、二回戦も終わる。
「準決勝第一三試合! 博麗選手VSクウネル選手」
霊夢とフードをかぶった男、クウネルがステージ上で対峙する。
「今年は豊作ですね。あなたもなかなかにできますが、一回戦であなたと戦った長瀬さんも素晴らしい才能の持ち主でした」
「……」
フードからわずかに見えるその顔に霊夢は胡散臭さを感じていた。
「ねぇ、降参しない?」
「フフフ。申し訳ありませんが、決勝でするべきことがありまして」
「なるほど。目的はネギ先生ね」
決勝に用があるとすれば、ネギが目的ではないか、とあたりをつける霊夢。言い当てられたことに驚いたのか、意外そうな顔をするクウネル。
「おや。あなたは選手席にはおらず、エヴァンジェリンに私のことは聞いていないはず」
「ふぅん。エヴァンジェリン、ねぇ。ということは、ネギ先生の父親関連かしら」
隠しもしない驚きの表情。
「さすがは博麗の巫女。この少ない会話でよくそこまで」
「私の素性まで知ってるのが気になるわね」
「私の趣味は他者の人生の収集でして。それぐらいならば」
「嫌な趣味ね」
嫌悪感をあらわにする霊夢に微笑んでるように見えるクウネル。
「Fight!」
朝倉の開始の言葉と同時に両者が行動を即座に開始する。
「申し訳ありませんが、全力でいかせてもらいましょう」
直後、霊夢を中心にステージ上に不可視の押さえつけるかのような力が発生して、ステージにクレーターを作り出す。
「む、意外と脆い」
ステージが破壊されたことによる砂埃があたりを漂う。一瞬にしてクレーターを作り出す不可視の攻撃。選手席にいたネギと古が霊夢の心配をするが、クレーターの中心には、霊夢は無傷で佇んでいた。
「小太郎にとどめの一撃を与えたやつね。予想通り、引力と斥力、ってところかしら」
「ほう。これはうまいですね」
クウネルは本心から称賛する。
「三角錐型の結界で上からの力を受け流すようにするとは。なるほど、これは厄介」
「次は私の番よ。夢想封印!」
霊夢から放たれる様々な色の光弾。クウネルは後ろに下がり回避をしようとするが、そこに霊夢が零時間移動で後ろに回り込む。
夢想封印を目くらましに近づいた霊夢はまず左拳を後ろに移動してきたことに気づいて振り返っている最中のクウネルの脇腹に叩きつける。
さらにクウネルの腕を掴むと、足払いをして体を浮かせる。そして、そのまま迫りくる光弾へと背負投の要領で投げ飛ばす。
投げ飛ばされては回避はできない。夢想封印がクウネルの体にあたり、閃光と炸裂を撒き散らす。
すべての光弾が当たる。だが、クウネルは平然と立ち上がり、その体にダメージのようなものは一切見当たらない、完全なる無傷だった。
それを見た霊夢は半目でクウネルを睨むような顔をする。
「素晴らしい。まさかの零時間移動。さらに移動のために私の注意をそちらに向ける目くらましかと思いきや本命ですか」
「ねぇ、幻影だか分身だか、原理はわからないけど、それはズルくない?」
突然の霊夢の言葉にローブで顔を隠していても動揺しているのがわかるほど大袈裟に驚きをするクウネル。
「むむ。バレましたか」
「いくらなんでも損傷がなさすぎるもの」
楓でも気づいただろうなー。と内心思う霊夢。
「で、本体はどこよ。この手の術式はそこまで遠くにはいけないはずよ」
「意外と遠いですよ。3〜4キロほどですが、場所は秘密です♪」
「……さすがにその距離だとカウント10以内には戻ってこれなさそうね。ほんと狡賢い」
「申し訳ありませんね。どうしても決勝に用があるもので」
「……やれやれ。私も一千万ほしいからここで倒せないから降参。なんてできないのよ」
だから、と付け加えて御札を取り出す。
「あらゆるものを遮断する結界でここを取り囲ませてもらうわ。本体と遮断されればその姿維持できないでしょ」
「さすがにそれをさせるわけにはいきません。しょうがない。あなたに負けては意味がありませんので、いささか卑怯ではありますが、これを使いましょう」
ローブの袖から取り出されるは、1枚のカード。
「それ、は」
その言葉とともに光り輝くカードが消えて、大量の本がクウネルを取り囲む。
「っ……」
本型、ならば宮崎のようなサポート系のはず、なにかやらかす前に結界を張る。
と霊夢はまずアーティファクトが重力攻撃のブラフの可能性を考えて、三角錐型の結界を周囲にはり、次にあらゆるものを遮断する結界を張ろうとする。しかし、あらゆるもの、といえど、空気等の生命に必要なものは通さなくてはならない。その結界の設定にかかる数瞬が、クウネルに本を使わせてしまう余裕を与えてしまった。
左手で宙に浮く本郡から一冊を手に取ると、真ん中あたりを開いて、しおりを挟んで閉じる。そして、その栞を抜き取る。
栞は燃えるように端から消えていくが、次の瞬間、まばゆい光がクウネルを消し去る。直後、霊夢は殴られた感覚とともに自身の身体が宙に浮いている感覚を覚えた。
遅れて結界が砕かれたガラスを割ったような音が鳴り響く。
霊夢自身も何が起きたのかわからない。が、鋭い痛みと先程の音から、殴り飛ばされたのだろう、と考える。
そして、背中を地面を向けた状態で宙に浮く自身の目の前に明らかに追撃狙いのクウネルが現れる。しかし、そのローブの端はズタズタになっていたり、先程とはまるで違う雰囲気を醸し出しているが、霊夢は追撃を防ぐ手を考えていて気づかない。
「神降ろし。愛宕様」
その身に神を宿す。
「炎よ!」
その言葉と同時に霊夢の体が炎に包まれる。
これで追撃は不可能。そのはずだが、今のクウネルにその常識は通用しない。
追撃の拳によって、霊夢の体は湖へと勢いよく落ちる。
「ゴボッ」
あまりの威力に体が湖に入ってから、思い出したかのように、肺の中の空気が水中で吐き出されてしまう。
(神威の炎よ!? それを無視して平然と殴る!?)
拳が止まるものだと思っていた霊夢は驚きを隠せずにいる。だが、ステージ外でカウントを取られることを考えるとすぐに出なければならない。
(愛宕様がだめなら)
別の神を思い出している暇はない。ならば、身近な神でこの状況を利用できそうなもの。
(気は進まないけど。神降ろし。洩矢諏訪子!)
(んー? なんだいなんだい。早苗と遊んでたのに。わざわざ私を降ろすなんてどうした?)
(力を貸しなさい)
(どうやら強敵と戦ってるようだね。あの霊夢を追い詰めるやつは気になるね。何をしてほしい?)
(この水操作できる?)
(容易いことさ)
霊夢は湖から飛び出すと同時に諏訪子に言って、水の龍を何体も作り、ステージ上に立っているクウネルめがけて水の龍を解き放つ。
(なんだい、格闘大会みたいなもんかい?)
(そうね。場外、ダウン10カウントで負け。あと呪文詠唱の禁止と銃、刃物の禁止が決まりよ)
(ふむ。見たところ観客は一般人のようだが。呪文詠唱の禁止、と名言するか。なかなかに度胸のある主催者だな)
水の龍がクウネルに襲いかかる。だが、
クウネルが光り輝くと水の龍が何かに撃ち抜かれて、水煙となるほど砕け散る。
「今のは、高畑先生の!?」
水煙でステージ上は観客からは全く見えない。が、まだステージには戻っておらず、湖の上で滞空していた霊夢からはクウネルの姿が見えた。
ローブ姿ではなく、白スーツ姿でポッケに手を入れている渋いおじさんの姿が。
(ほほう。なかなか渋いいい男だねー。でも、私の好みでは、ん? 霊夢?)
「違う。あれは誰」
ローブのフードから若干見えた胡散臭い顔とは全く違う顔。だが、ステージ上にはこの白スーツのおじさんしかいない。
そのおじさんは、左手をポッケから出すと、指で2枚の栞のようなものを挟んでおり、再び輝く。次に現れたのは白と赤の和風の服を着た長い黒髪の女性。服は、肩のところで切り離されて脇の部分が見えてしまっている、霊夢の今着ている巫女服とほぼ同じ形をしていた。
霊夢は見たことはない。だが、感覚でわかった。霖之助から話は聞かされていたから。
「先代、巫女!」
女性は、右手を勢いよく伸ばすと、七色の光球が放たれる。
「夢想封印!」
負けじと霊夢も
「今のは間違いなく本物の……」
女性も先程のおじさんと同じくしおりのようなものを持っていて、再び輝くと、ローブを着て頭からフードをかぶった姿へと変わる。
フードの隙間から見える髪の色は赤色とまたクウネルとは違う人物だと霊夢はわかった。
「まさか、あなたのアーティファクトは」
(霊夢!)
霊夢の体はローブの男の放った右拳から放出された帯電したレーザーのような魔法攻撃によりその身が観客席を超えて遠くへと吹き飛ばされ、再び湖へと落ちる。
(む、無詠唱でこの威力って頭おかしい!)
諏訪子の警告でどうにか結界を張れたが、若干威力を削いだだけでほぼ直撃をくらった霊夢。
(いやー、強いねぇ。変身系の能力かな?)
(……おそらく。過去の人物の再現とか、イタコの口寄せとか、そういう感じだと思う……)
(やっかいだね。どうする?)
(………。まずは会場に戻るわ)
かなり体が痛いがステージへと飛んで戻る霊夢。
ステージ上ではフードを深くかぶったクウネル本人とカウントを数える朝倉の姿。
「は、博麗選手カウントギリギリで戻ってきました」
「大丈夫ですか?」
「まったく。何よあの威力。無詠唱で使っていいものじゃないでしょ」
「正直心配しましたよ。直撃でしたし」
「ダメージは、減らしたわよ……」
霊夢はぼやくように言う。
肩で息をしており、かなり消耗していることが見て取れた。
「あなたの、アーティファクト。人物の再現、ってところ、かしら?」
「その通りです。私のアーティファクト、
(ほほう。面白い魔道具だね)
「しかし、この能力は自分より優れた人物の再生はわずか数分しかできません」
「どうやらあまり使い勝手は良くなさそうね」
「ええ。大抵の人間は私より弱いですから再生する意味もありませんしね」
(おー、言い切るかい)
「私の周囲にある魔導書。一冊につき一人の半生が記されています」
「なるほど。そこに記された人物の能力を使えるようになると」
(そうなると自然と顔見知りぐらいの能力しか使えなさそう? いや、記す条件があるからそれが敵にも適用できれば面白い魔道具になるよ)
「そして、私のアーティファクトのもう一つの効果。この『半生の書』を作成した時点での特定人物の『全人格の完全再生』」
(なんだって!?)
「もっとも、再生時間はわずか10分。魔導書も魔力を失ってただの『人生録』となってしまうため、これまた使えない能力です。まぁ、使えるとしたら、『動く遺言』として、といったところでしょうか」
「なるほどね。ネギ先生に、父親の遺言でも聞かせよう。と」
「はい」
「………」
目を閉じて何か思考を始める霊夢。
「まぁ、ネギ先生のためなら協力してあげることも、やぶさかではないわ」
(おぉ!? 霊夢がそこまで言うとは。そのネギ先生と言う人に惚れたか?)
(何をバカなこと言ってるのよ)
諏訪子の言葉にため息をつく霊夢。
「でも」
そこで一度区切ってお札を取り出す。
「悪いけど、試合外でやって頂戴? 一千万がほしいのよ、私は」
「では、降参してくれたら一千万はあなたに譲りましょう」
「え?」
クウネルの言葉に顔を明るくする霊夢。しかし、すぐに表情を戻す。
「本当に言ってるの?」
「私は賞金を狙っているわけではありませんから」
訝しげにクウネルを見る霊夢。
「信用していいのよね?」
「神と名誉に誓って」
笑顔で言うクウネルにあまり信用できそうにない、と霊夢は考えるが、
「わかった。今回は信用するわ」
(いいのかい?)
(悪かったわね。呼んでおいて)
(いいよいいよ。酒のつまみになる。また困ったら呼びな)
神卸を解除する霊夢。そして、
「朝倉。降参するわ」
「え?」
水煙が晴れた直後、そんなことを言う霊夢に朝倉が一度何を言われたのかわからないような表情をする。
「あ、クウネル選手の勝利ーーー!」
思い出したかのように高らかに宣言をする朝倉。
「じゃ、約束忘れないでね」
「ええ」