【クローズ共和国 西部自然公園内・クラウス高原】
月明かりが照らす壮大な高原の中、その列車は疾走していた。周辺は、所々に生える木々以外は高原一杯に拡がる草花位しか存在しない。その為、その列車の疾走している姿は『場違い』と言っても可笑しくないが、意外にも月明かりに照らされ、光沢が出ている列車は『様に成っている』っとも感じ取れる。
列車は9両編成。先頭車両は、空気抵抗を軽減する為に突起物を横に倒した様な形状をしており、両側正面に備え付けのライトが点灯している。覗き窓は見当たらないが、側面に出入用の扉が有るため、『操縦車両』だということは見てとれる。後続車両は
、よく見掛ける列車の小窓の有る後続車両とタイプであり、最後尾のみ、先頭車両を正反対に繋げた編成である。付け加えると、列車全体は『分厚い装甲』に覆われており、従来の列車とは倍近い大きさを誇っていた。
その列車の2両目通路に、1人の男性が歩いていた。一目で軍服と分かる、白を基調に、所々装飾の施された上下。それと同様のロングコートを肩から羽織っていた。
「さて…」
男性はそう呟くと、1つの部屋の前に立ち止まり、部屋のドアを強めに二回ノックした。部屋の中から「はい」と言う『女性』の声を確認してから、男性は要件を伝える。
「おやすみ中すまん、大将。あと十分ちょいで、王国の国境駅に着くらしい」
『大将』と言われた女性からの「分かりました」という返答を聞いた男性は、寝て居たで有ろう女性に「おやすみ」と声を掛け、部屋の前を後にした。
日が昇り始め、明るくなりつつある高原の中を走る列車の先には、先程の男性が口に出していた『国境駅』が見え始めていた。
【アルカディア王国 ウルフス州・国境駅】
「ずっと列車の中だと、やはりキツいな…」
列車から降りた俺は、無意識にそんなことを呟いていた。レグナント合衆国からオーバル公国、クローズ共和国を跨いで、ここのアルカディア王国まで来るのに約一週間。その間、ほぼ列車内に引き篭もりの状態だ…辛い……。ここでの検閲が終われば、この新型『装甲列車グノーシア』の輸送任務も終わりに近い。だが、アルカディア王国の『王都セイントフォース』には約半日、目的地の『アルカディア王国本部』に至っては、丸一日掛かる。いい加減、広々とした部屋でのんびりと過ごしたいものだ…。
「大佐、そろそろ検閲が終わるそうです」
悲観に囚われていた俺の背後から、若い青年の声が掛けられた。