学園祭を前にしてサークルやらなんやらの準備でてんこ盛り。
やっとのことで解放された土曜日、さぁ明日の日曜日は書くぞと思い眠る。
目覚めてみれば、時計にはP.M.9:00とか書いてありやがる。
……来週も多忙なのに(涙)
そうして急ぐももう明日のレポートに追われて不可。
再び一週間が過ぎて、今に至る。
……言い訳はここまでにして、お待たせしました。
ゼロの奇妙な腹心21話、どうぞ。
……ちょっと短いのは勘弁(泣)
いつからこんなことをするようになったんだろうか。
これまでの人生の中で、フーケはときどきそんなことを思うことがある。
彼女も昔は、まさか自分がこんな悪行に身を染めることになるということすら思っていなかった。
まず名前から違った。彼女の名前はフーケではない。本当の名前はマチルダ・オブ・サウスゴータという。
といってももう彼女はこの名前を捨てている。この名前は、今のこの世界では名乗るとまずいものだし、それに何より貴族の名前なんてものは持っていたくもない。
彼女の父はある王国の大公に仕える貴族だった。地位も高く何不自由ない生活を送っていたフーケは、こんな平和な日々がいつまでも続くのだと信じていた。
だが、その国の大公はやってはならないことをした。
それはエルフとの交流。ハルケギニアのすべての人々が恐れるエルフの種族と、彼は関わりを持ってしまったのだ。
そして、大公の子供が生まれた。名前はティファニア。もちろん、その子供は人間とエルフのハーフ。
王国の、しかも重役を担う人間がエルフとつながりを持つなど、許されるわけもなかった。
結果、大公家はとりつぶし。それに仕えていた彼女たち一家も貴族の名をはく奪された。
彼女の家族はもういない。全員、死んでしまった。
打ちのめされた彼女に残ったのは、大公が残したティファニアだけ。彼女はティファニアを守るために、戦わなくてはならなかった。
貴族だった彼女は盗賊に身をやつし、ティファニアが日々生きていくだけの金を稼ぐ毎日。
別にそれが嫌というわけじゃない。彼女にとってティファニアはもう家族同然で、その子を守ることができるのならばなんだってやる覚悟がある。
それでも。今でも彼女は考えることがある。
どうしてこうなってしまったんだろう、と。
平穏な日々がずっと続くと信じていた少女の願いを、世界はあざ笑うかのように否定し、彼女を地獄へと叩き落とした。
ただ彼女の親が仕えていた者が……恋をしたというだけで、世界は彼らを駆逐しようとした。
幼い頃も、大人になった今でも、フーケは理解できない。
たったそれだけのことで、王国は……貴族は大公を恥とし、すべてをなかったことにしようとした。大公を、大公の愛娘を、彼女の家族を、すべて消し去ろうとした。
ティファニアは、自分の父と母が愛しあっただけで家族を奪われたのだ。
わからなくて悲しくて、思い出せば憎悪が自分の中で湧き上がる。
だからこそ彼女は貴族ばかりを狙い、彼らが大切にしている財宝を時にこっそり、時に大胆に奪い去るのだ。
慌てふためく彼らの顔を見れば胸がすくような気分になる。
だけど、それを何度繰り返しても、彼女の中で渦巻く憎悪は止まることを知らない。
憎い。
国王が憎い。
貴族が憎い。
すべてが憎い。
自分から。ティファニアから。すべてを奪った者達が憎い。
それをさも当然と言い張る世界が憎い。
ときどき、そんな自分を振り返ると悲しくなる。
そしてまた、どうしてと、疑問が自分の心の中で浮かぶ。
でもそれはただ浮かぶだけで、答えは決して出てこない。
あるのはただ……底知れぬ怒りだけだった。
(なんだあれは!?)
フーケは、自分の目を一瞬疑った。
死にかけていたはずのルイズの使い魔は復活し、なぜかすべての傷が完全に治癒されていたのだ。
ただでさえ厄介な相手であり、しかもこちらは魔力が尽きかけているというのに、あちらは万全の状態でこちらへと迫っている。
そして……その使い魔の傍らに立つ、人の形をした真紅のヴィジョン。
これまで多くの戦闘経験を積んできた、フーケの直感が叫ぶ。
あれに、近づいてはならないと。
「う、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
フーケは、ゴーレムの腕をつたってこちらへ接近してくるドッピオを目撃し、迎撃しようとする。
急いで彼女はゴーレムに命令して、もう片方の手を使ってドッピオを弾き飛ばそうとした。
凄まじい速度で迫るゴーレムの掌。
そんなものになど見向きもせず、ドッピオはただこちらへと走ってきて……
ゴ ォ ッ !!
ゴーレムの手がドッピオのいた場所に直撃し、轟音が響く。
ボロボロとゴーレムの腕から土がこぼれたが、それはすぐに修復された。
(くそ……!)
しかし、フーケは警戒を解かなかった。
ドッピオとゴーレムの手が激突したあの一瞬。またも時間が消し飛ばされたのをフーケは感じたからだ。
その証拠に、『音が途中から聞こえて』きていた。
おそらくまだヤツは生きている。さっきの一撃は回避されたに違いない。
ゴーレムの腕を見てみると、そこにドッピオの姿はなかった。
(どこだ? どこにいる!?)
姿を消したドッピオを探すが、どこにも見当たらない。
地上へと降りたのかと思い、フーケはゴーレムの肩の端に立って見下ろす。しかしどこにもドッピオはいなかった。
いったいどこに消えたのかと、疑問を抱くフーケ。
その瞬間。
ガシィッ!! と。
フーケの足が何かの手に掴まれた。
「!?」
驚愕したフーケが掴まれた足を見ると、そこには真紅の腕があった。
その腕の先には、ゴーレムの上腕部にもう片方の手の指をくいこませ、しがみつく真紅の帝王。
そして真紅の帝王を従える……ルイズの使い魔。
そのままキング・クリムゾンは、掴んでいるフーケの足を思い切り引っ張った。
「なっ――ああああああああああ!?」
もちろん、キング・クリムゾンに引きずられたフーケは落下する。
そしてドッピオは彼女の胴体へとしがみつき、自らも共に落ちた。
まずい。
このまま何もせず落下すれば、フーケは間違いなく死亡する。
もちろんここでレビテーションを使えば、転落死は免れるのだが、ドッピオが自身を捕えているこの状況ではそれで終わらない。
限りなく接近したドッピオは、その瞬間に彼女へさらなる追撃を繰り出すだろう。
レビテーションの魔法を使うとともにゴーレムを操ることは、いかにフーケと言えどもできはしない。自らを守る術が、その瞬間だけなくなってしまうのだ。
(く、そッ!!)
心の中で悪態をつくフーケ。すでに地面は目前にまで迫っていた。
ドッピオの方は、フーケを捕まえたまま放そうともしない。
フーケが魔法を使うかもしれないとはいえ、片時もその腕の力を緩めず自らも落下する胆力はいったいどこから来るのだろうか。
フーケが魔法を使えなくとも自分だけは助かる方法があるのか、それとも自棄になっているだけなのか――
(ちぃッ!!)
もはやそんなことを考えている余裕もない。
フーケは舌打ちをしながら、レビテーションの魔法を自身にかける。
そして落下死を避けたところで、次の瞬間にフーケはゴーレムへと命令を下す。
(崩れろっ!!)
するとゴーレムは身体がボロボロと崩れていき、巨大な土の塊となってドッピオとフーケに降り注いだ。
「…………」
ドッピオは落ちてくる土くれを黙って見たまま動かない。
フーケはすぐさま土のシェルターを作って自分の身を守った。
ド ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ッ !!
土砂崩れに二人は飲まれ、轟音が響く。
辺り一帯には土煙が舞い、何も見えない。
やがて完全に崩壊が止まったところで、フーケは土のシェルターを解除して立ち上がった。
「ゲホッゲホッゴホッ!! ……ったく、あの忌々しいルイズの使い魔め、よくもこんな目に……!!」
舞い上がった土を吸い込み、むせ返りながらもドッピオを罵倒するフーケ。
だが、彼女は安心などしていなかった。
また『時間が吹き飛んだ』。
フーケの反撃を、難なくヤツは脱出したのだ。まだ姿を確認することはできないが、そう考えていいだろう。おそらくは土の中に隠れているはずだ。
先ほどからここぞという時にタイミングよく、ヤツは時間を吹き飛ばしている。
まさかとは思うが、あいつは未来を予測することもできるのか?
(だとしたら厄介どころじゃあない……何者をも超えた無敵の能力じゃあないか……!!)
この状況が非常にまずいものだと、フーケは考えていた。
いったい何がどうなっているのかわからないが……自分の推測が正しければ、だが……ドッピオは『時間を吹き飛ばす』ことができる。
その間に起こったことを、フーケは全く知覚することができない。そしてこれも推測だがおそらく、吹き飛ばされた時間の中でいったい何が起こっているのかを知っているのは、ドッピオだけだ。
つまり、『奇襲』を行うにはもってこいの能力なのである。
どれだけ警戒をしていようが、いつ時間が吹き飛ばされるのかこちらには全く予測ができない。気づいたときには背後に回り込まれている可能性だってある。
しかも『未来を予測する能力』も持ち合わせているときたものだ。
そうなってしまえば、いかにフーケと言えども敗北は免れない。
接近戦においてドッピオが自分よりも上なのはもはや経験済み。相手はこちらのゴーレムすら粉々に吹き飛ばす力を持っているのだから、咄嗟の防御だって間に合わないし、まず意味がないだろう。
もうこの場にいることはフーケにとってリスクが高すぎた。
確かに顔は割れてしまった。このまま逃走してしまえば、世界中から追われることは確実だろう。
しかし、だからといって得体のしれぬ怪物と対峙する必要があるだろうか?
このまま戦い続ければ、死ぬかもしれない。いや、かなりの確率で死ぬことになるだろう。
これからどんなことがあろうと、命があってこその物種だ。
ここで死んでしまう必要も何もない。
……ここで、逃げるべきか?
(……逃げる? このあたしが? 土くれのフーケが、逃げるだって?)
しかし、フーケはその選択肢を斬り捨てる。
今まで一度だって、フーケは逃げたことがなかった。
数々の名門貴族の邸宅へと侵入しては、絶対に奪われることはないと言われていた秘宝をそこから奪い去ってきた。
一度だって逃げたことなんてなかった。
自らに襲い掛かる脅威は、悉く消し去ってきた。
これからだってそうだ。
そうして彼女は今まで生きてきて、罪深い自らの業を世界から……自分の家族からも隠してきたのだから。
そして、ある意味これはチャンスでもあることを、フーケは理解していた。
即座に等身大のゴーレムを作り出すと、フーケは、杖を持っていない方の手の人差し指を思いきり噛んで、そこから血を流させる。
そして杖を持っている手の上に、自らの血を流させた。
彼女の鮮血がポタリ、ポタリと何度も落ちては、彼女の手に赤い痕を残していく。
(時間が吹き飛べば、この血の痕は一瞬で増えるはず。そのときが、ヤツが『時間を吹き飛ばした』瞬間……つまり、攻撃を仕掛けてくるときのはずだ……!)
奇しくもそれは、ディアボロと戦った歴戦のスタンド使い、ジャン・ピエール・ポルナレフがとった方法でもあった。
相手はとんでもない能力を手にしたようだが、それでも時間を吹き飛ばすことは連続して行うことは出来ていない。しかも一回につきせいぜい数秒程度といったところか。
それでは、隠れている場所からフーケのいる場所にまでやってくるのがやっとというところだろう。
それに『未来を予知する能力』も、もってせいぜい数十秒。完全にすべて予測することができるなら、とっくのとうに彼はフーケを始末しているはず。
無敵ではあるが、こちらにだって勝つ方法はある。
ようは、こちらが相手の奇襲にいち早く感づけばいいのである。いくら相手が半端じゃない攻撃力を誇っていたところで、所詮は生身の人間。こちらの攻撃も当たれば、ドッピオとてタダではすまない。
『一手先の先』を読んだ者が、この戦いにおいて勝つ。
もしフーケが反応するよりも早く『キング・クリムゾン』の拳を叩き込めば、ドッピオの勝利。
逆にドッピオの奇襲に素早く反応してカウンターを入れることができれば、フーケの勝利。
この場においてフーケに対抗することができるのは、もうドッピオだけだ。
ルイズはすでに魔力が尽き、他の者達は戦闘不能。
この場さえ凌ぎきれば……フーケは、ようやく平穏を取り戻すことができるのである。
(さぁ……準備は整った。いつでもこちらへかかって来な……!!)
焼けつくような日の光に当てられ、手からこぼれる赤い滴とともにフーケは汗を流す。
攻めてくるその瞬間。反応できるかどうかは、五分五分といったところか。
果たして自分は勝てるのか?
この土くれの拳は、ヤツに届くのか?
それはフーケにもわからない。未来の見えるドッピオと違い、この勝負の行く末などフーケには見当もつかないのだ。
だが。
勝って見せる。
逃げ切って見せる。
フーケの心はすでに、そう決まりきっていた。
(あたしは逃げるんだ……このまま死ぬわけにはいかない! 捕まるわけにはいかない! まだあたしはフーケとして戦って……孤児院のみんなを……あの娘を守るんだ!)
思い浮かぶのは、故郷にいる一人の少女の姿。
金色の髪、エルフ特有の尖った耳をしていて、天然でそれでも温かい心を持ったあの少女。
自分が一生をかけても守ると誓ったあの少女を残して、自分が死ぬわけにはいかないのだ。
これまでも自分はあの娘のために戦ってきた。そしてこれからも、守ってみせる。
負けるわけには、いかないのだ。
決意を改め、フーケは滴り落ちる血の痕を数えていた。
今は、10。
11。
12。
13。
14……
次の瞬間、フーケの手は鮮血で染め上げられた。
「ッ!!」
そして、背後からヒシヒシと伝わってくる殺意。瞬間フーケは振り返った。
そこにいたのは、紫の髪とセーターを着た青年。
自らに襲い掛かる死神を見つけたフーケは、それを打ち砕くべくゴーレムへと指令を下す。
「くらい、やがれェ――――――ッ!!」
フーケは、叫ぶ。
それに応えるかのように、土くれのゴーレムの拳は動き出す。
寸分違わず、ドッピオの頭部めがけて。
すさまじいスピードで繰り出されたその攻撃は、彼の目前にまで迫った。
避けることは、できない。
その光景を見たフーケは、自らの勝利を確信した。
ド ゴ ォ ォ ォ ッ !!
炸裂する、爆音。
それは森の奥にまでこだまし、そこらにいた野生の動物たちを驚愕させる。
鳥たちはその場から飛び去り、陸の動物たちは走り逃げていった。
やがて静寂が訪れ、すべてが一時の間沈黙する。
そして。
「…………あ…………ぁ…………」
小さな、かすれるような声が、音の中心でこぼれる。
フーケの眼前には、真紅の双腕。
それは彼女のすぐ目の前の地面から伸び、一つはドッピオに迫るゴーレムの腕を吹き飛ばし、もう一つは彼女の胸部へと叩き込まれていた。
「……奇妙なもんだな。自分がやられた時とそっくりだ……」
ぼそり、と。ふと思ったようにドッピオは言葉を漏らす。
そのままドッピオはフーケに向けて言葉を吐き続ける。
「キングクリムゾン……スタンドは、どれも物体をすり抜けることができるんだよ……そしてこいつは、俺を中心にして半径2m以内なら自由に行動可能……こういった使い方だって、やりゃあできるさ……」
だが、フーケはもはやドッピオの言葉は聞いていなかった。
意識が朦朧とし、視界もおぼろげになっていく。音ももう聞こえない。
だんだんと目の前が暗くなり、瞼が重くなっていった。
何もかもがぼんやりとした中で、しかしフーケは一つだけ理解した。
(……あたしは……負け、たの……か……)
手に持っていた杖を落とし、その場に崩れるようにして倒れた。
自分の意識が消えていくのを感じながら、フーケは小さくつぶやいた。
「……テ……ファ……」
その言葉とともに、彼女の意識は闇に消えた。
俺は! この瞬間に対する覚悟はしてきたッ!
だがやはりどす黒い気分になるぜ……!!
更新が遅れたのは本当にごめんなさい。来週とかあたりテストラッシュだけど、これからまたなんとかして一週間ペースに戻します。
あと、設定とかどこかにおかしなとこがあったらツッコんでください。修正します。