ゼロの奇妙な腹心   作:Neverleave

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前座がかなり続くなぁ……
とっとと私的にはフーケあたりまで行きたいのだが……



3話

「おい……これ、マジにやべーぞ」

 召喚されてここ、トリステイン魔法学院で生活をし始めてから、初めての朝を迎えるドッピオ。

 そんな中、ドッピオは危機的な状況に陥っていた。

 どれほどかといえば、たぶんリゾットのメタリカで口からカミソリ吐き出しちまったときくらいのレベルだ。

(クソッ、なんで俺は毎回こんな目に遭っちまうんだッ! クソッ!)

 冷汗がだらだらとドッピオの顔を流れる。

 今直面している問題は、できる限り早々に解決しなければ面倒なことになってしまう。

 だが解決したくとも、その方法を先ほどからずっと詮索しているのに見つからないのだ。

 打開案の一つも思いつかないド低能な自分の脳ミソに毒つくドッピオ。

 ヤバい。マジにヤバい。

 このままでは……

 

「ここはいったいどこなんだよォーーーーーーーーッ!!」

 

 彼がどういう状況にいるのかというと……簡潔に言えば、寮内をさまよっている。

 彼は主人であるルイズから、彼女の衣服を今日の朝までに洗濯するよう命じられているのだ。

 普段の生活が規則正しいものだったために早起きするのは特に問題にはならなかったのだが……この施設、元々が貴族御用達の施設なだけにバカでかく、地図でもなければ道がさっぱりわからない。

 おかげでドッピオは部屋から出て早々に迷ってしまった。

「ちくしょ~~~、あのガキあとで覚えてろよ~~~ッ」

 愚痴をこぼさずにはいられないドッピオ。

 このまま歩き回っても、さらに迷い込んでしまうだけで意味はない。

 道を聞こうにも、まだ早朝である今の時間にここを通る人はいないのだから、不可能だ。

 

 いや、まだそれは僥倖であると思わなければならないだろう。

 最悪なことに、ここは女子寮だ。下手すると道を聞く前に貴族の女性に不審者扱いされてしまう。

 魔法なんていう未知の技術に襲われれば、キング・クリムゾンの両手と『エピタフ』すらない今は立ち向かうことすらできない。

逃げることができればいいが、よくて半殺しの目に遭うだろう。

 社会的、物理的に。二重の意味で抹殺される可能性があるのだ。

 

「あぁ……帰りたい……ボスのいるヴェネツィアに……帰りたい……マルガリータ・ピッツァが食べたい……」

 ドッピオの人生の中でも最高に下らない理由で、彼は追いつめられてしまっていた。

 今まで遂行してきた任務の中でもこれほどどうでもいい内容のものはなかったし、理不尽なほどいろんな危機を背負ったものもなかった。

 自分はどちらかといえば運のないほうだと理解しているドッピオだったが、今回はいつにもまして不幸な目に遭っている。

 どうしよう。

 豪奢に飾られた廊下の中で惑うドッピオ。

 

 そのときッ!

 彼の、背後から、何者かがやってきたッ!

「あのぉ~どうしたんですか?」

 ビクッ! と肩を震わせ、ドッピオは恐る恐る振り返る。

 まずい。ディモールトディモールト(とてもとても)まずい。

 ついに学生の誰かがここへやってきちまったかッ!? と顔面を真っ青にするドッピオだったが……

 そこにいたのは、ルイズやコルベールのようなマントを着た者ではなく……これでもかというほどに大量の洗濯物が入った籠を抱えた、メイド服を着た女性だった。

「あ、あれ? えっと、あなたは……?」

「私はこの学院でお仕事をさせていただいているメイドです。何かお困りのようですが、いったいどうしたんですか?」

 なんという幸運ッ! なんという数奇な運命ッ!

 貴族ではなく使用人と遭遇することができるなんてッ!

 ドッピオは、この幸運に心の底から感謝した。

「ええと、その……水洗い場って、どこにあるんでしょうか?」

「あ、それでしたらこちらです。私もそこへ行く途中でしたので。ついてきてください」

「助かるなァ~~ありがとうございます」

 一瞬ドッピオはそのメイドを天使かなにかと見間違うほどだった。

 そのメイドはそのままドッピオの先を歩いていき、ドッピオもまさしく軽い足取りでそれについていった。

 

「ん、と……あれ? どうすんだ、これ?」

「あ、その衣服でしたら、ここをこうして……」

「あ、ホントだ! スッゲー洗いやすい!」

 水洗い場にたどり着いてからも、ドッピオはメイド服の女性に助けられてばかりだった。

 よくよく考えてみれば、彼は手洗いの洗濯などというものはやったことがない。

 ほとんど洗濯機であるとか、コインランドリーを使っていたのだ。

 当然ドッピオは初めての手洗い洗濯のやり方などわからなかったが、それはすべてメイド服の女性が教えてくれた。

 その教え方ときたら、どこぞの自称ご主人様がするものよりもずっと優しくて丁寧なものだった。

(やっとまともな人と会えた……なんか、ほっとしたというか、カンドーだなぁ)

 ここに来てあった人間など、わがままで話を聞こうとしない自称貴族の小娘に、魔法のことやありもしない国のことばかりを言い聞かせてくる禿げたおっさ……男のみ。

 まだ三人目だというのに、まともに自分を人間扱いしてくれる人と出会ったことがこんなにも心に響くだなんて……

 話をしているだけで心が安らぐ人がいるだなんて……

 と、これまたどこぞの吸血鬼よろしくドッピオは感動を禁じ得なかった。

「……君って、女神様?」

「ふえっ!? な、なんですかいきなり!」

「あ、いや……その……」

 しまった。つい思ったことを口にしちまった。

 バツが悪そうにドッピオは頭をかく。

「ホントにありがとうございます。えーっと……」

「あ、シエスタです。いえいえ、平民どうし困ったときはお互い様ですから……えと……」

「僕はドッピオです。ヴィネガー・ドッピオ」

「よろしくお願いしますね、ドッピオさん」

「やだなァ~~さん付けなんて、なんかくすぐったいや。僕のことは普通にドッピオでいいですよ、僕もあなたのことをシエスタと呼びますし」

「あ、はい。わかりました、ドッピオ」

 お互いの名前を教え合い、言い合うシエスタとドッピオ。

 見ていてとてもほほえましい気持ちになる平民同士のやりとりが、女子寮の水洗い場でひそかに行われていた。

 当のドッピオにしてみれば、大げさかもしれないがもう泣いてしまいたいほどに素晴らしい出来事である。

 

「あの、ひょっとしてドッピオって……ミス・ヴァリエールに召喚されたっていう……」

「ミス・ヴァリエールって……? ああ、ルイズのことか。うん、そうだよ。ほら。これが使い魔のルーン」

 問いかけてきたシエスタに対して、一瞬首をひねるドッピオだったが、すぐに肯定した。

 ドッピオは自分の左手にあるルーンをシエスタに見せる。

「わぁ……ホントだったんだ。平民の使い魔が召喚されたって……」

「……やっぱり珍しいことなの?」

 今度はドッピオが訊ねかける番だった。

 シエスタは首を縦に振ると、続けて話をする。

「みなさんは使い魔を召喚すると、大抵が幻獣であるとか、そうでなくても他の動物らしいですから……私も初めて聞きましたよ。平民が召喚された、だなんて」

「……そうですか」

 話を聞いて、ドッピオは肩を落とした。

 本来使い魔の召喚というのは、やはり動物やら幻獣やらを召喚するためにあるものであって、人間を召喚するためのものではないのだ。

 そう聞くと、やはり気分が落ち込む。

 どうして自分なんかがここへと召喚されてしまったのか。

 百歩譲って召喚してしまったとしても、どうして他の誰かではなかったのか。

 他の誰かであったなら、またボスからの電話を待つことができたかもしれなかったのに――。

(……あれからボス、電話をしてくれてるのかな……)

 自分がこんなところへと呼ばれていることも知らず、もしかしたらボスはドッピオに電話をずっと送っているのかもしれない。

 いつまでも電話に出ない側近を、ボスは怒るのだろうか……それとも、心配してくれるのだろうか。

 そう思うと、ドッピオはやりきれない気持ちになる。

 と同時に、憤りを感じる。

 あのとき電話に出ることができなかった自分の不甲斐なさに。

 そんな状況で自分をここへとやってこさせた、魔法に。

 主人である、ルイズに。

 そして……運命に。

 

「……………………………………………………」

「あ、ド、ドッピオさんっ!」

 と、シエスタの切羽詰まった呼びかけで、ドッピオは自分の手に異常なほど力が込められていることに気づいた。

 彼は今、洗濯の途中であるルイズのマントを持ったままだ。

 ハッとしてドッピオは手を離したが、シエスタが止めてくれなかったらそのままマントは真っ二つになっていただろう。

「あっ……ご、ごめん、シエスタ……」

 別に、これで不始末を行えば怒られるのはドッピオだけなのだが、なんだか雰囲気でドッピオはシエスタに謝ってしまう。

「いえ、私は大丈夫なんですけど……貴族の方の服をダメにしてしまったら、どんなひどい目に遭うかわかりませんよ?」

 シエスタはそう言っていたが、まだその表情には怯えのようなものが残っている。

 大丈夫、と答えてくれたことにほっとするとともに……ドッピオは首をかしげた。

 何なのだろう、このシエスタの、猫に睨まれたネズミのように不安になっている様子は。

 この世界では、平民にとって貴族はそんなにも怖いものなのか?

「たかが服くらいで大げさだなァ~~。そんなに怯えることないですよ、こんなの」

 呆れるようにドッピオは笑っていたが、シエスタはそんなドッピオを見て安心するどころか、逆に驚いているようだった。

「……あの、ドッピオさんは、貴族が怖くないんですか?」

「? なんで怖がる必要があるんです?」

「え? なんでって、それは、あの……」

 と、何を言おうかと口をモゴモゴさせるシエスタ。

 身分の差というのもあるかもしれないが、それにしてはいささか過剰な気もする。

 なんだ? とドッピオが疑問に思ったそのとき、後ろから声がかかった。

 

「シエスタ! あんたまだこんなところで洗濯なんかしてたの!?」

 肩越しに振り返るドッピオとシエスタ。

 彼らの背後に立っていたのは、シエスタと同じメイド服に身を包んだ女性だった。

 どうやらシエスタの同僚らしい。

「もう貴族の方が学校に向かわれる時間よ! 急いで仕事にかかりなさい!」

 同僚がそう叱責するとシエスタは顔をサァッと青ざめさせて、あたふたと慌てて洗濯物を籠の中に放り込んだ。

「すいませんドッピオさん、またあとで!」

「え? あ、ちょ、ちょっと!」

 ドッピオの質問に答えることもないまま、シエスタはその場を後にする。

 一人ドッピオは取り残されることとなったが、シエスタの同僚が言っていたように今が学生が起きる時間なのだというのなら、こちらも急いだ方がいいだろう。

 ドッピオは洗濯物をまとめて、部屋へと戻ることにした。

(なんだ? あのシエスタのビビった顔……貴族っつーのはそんなにヤバい奴らなのか?)

 貴族のことを話題にしたときの、あのシエスタの豹変ぶりはかなりドッピオには気にかかった。

 いろいろと貴族について早めに知っておいた方がいいかもしれない……そう考えたところで、

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………

 

「……帰り道、どっちだっけ……」

 

 再び窮地に立たされてしまったことに気付くドッピオだった。

 




ここは『待つ』のだ……
じっくりと文章をつくりあげていくのだ……これは途中で『中だるみ』などする作品ではない……
俺には頂点に返り咲ける『文才』があるッ!

あったらいいな。そんな文才。
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