ゼロの奇妙な腹心   作:Neverleave

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ドッピオ。おまえいつからこんなナランチャみてーなヤツになった。
バカではないがかなり短気だな。


4話

「あんたホントになにしてんのよ! もっとまじめにやりなさいよ!」

「しかたねーだろうがッ!! こんなこと初めてやるんだからよォ――――ッ!」

「うるっさいわね、それくらいちゃんと把握してなさいよ! 使い魔のくせに――――っ!」

「クソやかましいぞッ! このちっぽけなガキがァ――――ッッ!!」

 

 朝から互いを怒鳴りののしり合うドッピオとルイズ。

 水洗い場から己の記憶力だけを頼りにして、なんとドッピオはルイズの部屋まで戻ってくることができたのだ。

 さんざん迷いまくったあげく、水洗い場に一人取り残されたときはマジでもうダメかと思った。

 どれくらいかってーと、ブチャラティによって走行中の列車の外へ放り出されたプロシュート兄貴くらいに。

 ボスのサポートすら受けられない今、最悪のケースすら覚悟したというのに……ここぞという土壇場で成功をしてみせたというのは素晴らしいことじゃないだろうか?

 奇跡だ。今日ばかりは自分のことを褒め称えよう。

 そう思いながら部屋へと入り、ベッドの上でうずくまってるルイズを起こしたドッピオだったが――

 

「ンだよッ!? 突然テメーの服を着替えさせろだのなんだのよォ――――ッ!! 自分のことくらい自分でしやがれッ! マンモーニ(ママっ子)かテメーはッ!!」

「召使いがいるときは、貴族はそいつに身の回りのことを全部させるものなのよ! こんなこともできないだなんて、このド低能!」

 

 起こして早々、ルイズに彼女の着替えをさせろと意味不明の命令をされ、ドッピオは始終困惑していたのだ。

 幼児体型とはいえ相手は女性。しかも聞けば16歳だという(これはマジでドッピオもビビった)。

 年頃の女性の着替えを――下着も含めて、すべて思春期まっただ中のドッピオにやらせようとしたのである。

 そりゃもう恥ずかしかったし、当然最初は断ったのだが……

ルイズはルイズで『貴族というのは――』だの『自分は貴族であんたは平民なんだから――』だの、云々かんぬん。

 何かと『貴族』という単語で理由をつけて強制的にドッピオを行動させようとした。

 こうなったらテコでも動かないというのは、たった一晩でドッピオは嫌というほど理解していた。

 仕方なく、羞恥心をかなぐり捨てて拙い手つきながらルイズを着替えさせたのだが……

 

「それでどんだけ時間かけてるのよ! こんなんじゃもう朝食に遅れちゃうじゃない!」

「あぁクソッ、いいか! おめーが俺のことを人間じゃないみたいに扱ってもよ、俺はホモ・サピエンスっつー人類の仲間で! しかも男だッ! これだけはおめーがどんだけ否定しても変わらない事実なんだよボケッ!」

「なにわけわかんないこと言ってんのよ! そんなのあんたがろくに雑用もできないことの理由なんかじゃあないじゃない! 役立たずの犬っ!」

「ちくしょお―――――ッ!! 世の中こんなアホばかりなのかァ――――――――ッ!!」

 

 ……まぁこの通り、ディモールトディモールト(とてもとても)手間がかかってしまっているのである。

 どうやら朝食の時間というものはきっかり決まっているらしく、それに間に合わなかった場合はご飯抜きで授業に出なければならないのだという。

 確かに手際が悪いというのは認めよう。

 しかしいくらドッピオがギャングの一員だからといって、まさか女性の着替えを一から終わりまですべてやってのけなければならないような任務というものは、未だかつてなかったのだ。

 ドッピオに非はない。全くと言っていいほど。

むしろ場所すらわからぬ水洗い場になんとかたどり着き、そこから部屋へと帰還して主人を起こすなど、初日にしてはよくやったと褒めてもらうべき立場にあるはずだ。

なのに主人からもらうのは罵詈雑言ばかり。

 もう何度目かわからないが、ドッピオはまたブチキレた。

 そうして現在――ドッピオとルイズの罵声浴びせ合い合戦が進行しているのである。

 

 と、そこでガチャリ、と部屋の扉が開け放たれた。

「ちょっとルイズー、あんた朝からとってもうるさいわよ? もう少し静かにできないの?」

 イラついた口調でルイズの部屋に入ってきたのは、燃えるような赤い髪をした一人の女性だった。

 ルイズなどとは違い、至る所が成長していて『大人の女性』のような雰囲気を醸し出している。

「ちょっとキュルケ! あんた勝手に扉の鍵を開けないでよ!」

「しょうがないでしょ? 隣の部屋で早朝から怒鳴り声が何度も聞こえてきたら誰だって気にしちゃうわよ」

 赤い髪の女性を見ると、ルイズは途端に標的をドッピオからその人に変える。

 だが、相手はルイズの怒声も意に介さず飄々とした態度を崩さない。

 そのことがさらにまた腹立たしいらしく、ルイズは『う~~~~~~~っ!』と唸っている。

 ふと女性はルイズから視線を移して、ドッピオを見た。

「あら? あなたがルイズの召喚した平民ね? 私の名前はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アルハンツ・ツェルプストー。キュルケと呼んでくれていいわ」

「あ……僕の名前はドッピオ。ヴィネガー・ドッピオ、です……すいません、うるさくしてしまって……」

 自己紹介をされて、ドッピオは自分も名前を名乗る。

 さすがにドッピオも喧しくしすぎたかと思い、キュルケに対して謝罪した。

 すると相手は驚いたように目を丸くした。

「隣から聞こえてきた罵声の内容から、どんなにか乱暴な平民なんだろうって思ったら……なんかおとなしいじゃない」

「ふんっ、おとなしいですって? こいつは平民のくせにすっごく生意気なヤツよ」

 どっちがだよこのガキが、と心の中でルイズに毒つくドッピオ。

 

「ふ~ん……でも、使い魔にするのなら人間なんかより、こういうのがいいわよね~。フレイムー」

 と、キュルケは廊下にいる何かに声をかけて呼ぶ。

 すると、ドアから巨大で赤い何かが、ゆっくりと入ってくるのをドッピオは見た。

「――ッ!?」

 思わずドッピオはルイズの前に立って臨戦体勢を取った。

 なにせドアから入ってきたのは、虎ほどの大きさはあろうかというトカゲだったのだから。

 全身からは熱気が放たれていることが見て取れ、吐息は火がちろちろとほとばしっており、しっぽには火がついている。

「あなたも、サラマンダーを見るのは初めてかしら? 大丈夫よ、私の命令でもない限り襲ってこないから、安心していいわよ」

「あ……そ、そう、なんですか?」

 キュルケがそういうと、危険はないということを理解したドッピオは警戒を解く。

 別にドッピオはフレイムの姿形に対して驚いたというわけではないだが、任務のときのくせでつい体が動いてしまったのである。

 これまで数多のスタンド使いと相対してきたドッピオだが、その中には、今のフレイムのように動物の姿を取るスタンドもいた。

 そのためフレイムを見たときも、ドッピオは新たな刺客――スタンドがやってきたのだと思い、無意識に身構えてしまったのだ。

「なによあんた。あんだけ大口叩いておいて、サラマンダーを見てビビっちゃって」

 が、ルイズには『幻獣を目の前にして怯えた』と見られたようだ。

 ふん、と鼻をならすルイズだったが、キュルケはクスクスと口元を手で隠して笑っている。

「あら? 使い魔としてきちんとあなたを守るために、前に立ってくれたのにその言い草はないんじゃない?」

 うっ、と言葉を詰まらせるルイズ。

 それでもキュルケは言葉を続ける。

「それに未知のものに対しては警戒をすべきよ。何が起こるか、何をされるかもわかったもんじゃないんだから。そんな中でもあんたの護衛を優先して行動した彼はむしろ褒めるべきだわ」

 次々とキュルケに正論を述べられ、ルイズはぐぅの音も出なくなった。

 その一方で、ドッピオはキュルケを高く評価する。

 初見の人物であっても、キュルケはきっちりと行動を観察して客観的な評価をしてみせたからだ。

(戦いの場においても冷静に動き、戦果をあげることができるだろうな……)

 身なりは少し破廉恥ではあるが、かなりいい資質の持ち主だと、ドッピオはキュルケを認識した。

 

「いいでしょ、この子。ここまで鮮やかで大きい炎の尻尾を持ってるんだから、間違いなく火竜山脈のサラマンダーよ? 好事家に見せたら値段なんかつかないわ」

「ぐぬぬ……」

 ルイズとは違う、大きな胸を張るキュルケ。

 ルイズは悔しげに歯噛みしながら、忌々しげにフレイムを見る。

 

「素敵でしょ。相性だってぴったりだもの」

「ああ。あんたは『火』属性だものね」

 そうよ、とキュルケはルイズの言葉に相槌を打つ。

「ええ、『微熱』のキュルケですもの。ささやかに燃える情熱は『微熱』。でも男の子はそれでも私の熱で燃え盛るのよ……あなたとは違って、ね?」

 あ、とドッピオは思わず声をあげた。

 この女言いやがった。あっさりと言ってのけやがった。

 ドッピオは冷汗を流しながら、流し目でルイズの方を見る。

 顔はうつむいているためよく見えないが――わなわなと小さな体を震わせるその姿は、今にも目の前で爆発しそうな炸裂弾を彷彿とさせる。

 

 ――あぁ、こりゃやっべえ――

 

 ドッピオが他人事のようにそんなことを考えたそのとき……ルイズは顔をあげてキュルケをキッと睨み、

 

「私は! あんたと違って! いちいち色気を振りまくほど! 暇じゃないのよっ!!」

 

 室内が、グラグラと揺れたかと錯覚するほどの大音量で怒鳴り、足早に部屋を出ていった。

「あ、ちょ、ちょっとルイズ! ……失礼します!」

 呆気にとられていたドッピオだったが、彼女を追わなければならないと気付くとキュルケに一礼して部屋を出る。

「またね~ドッピオ~」

 キュルケの方はこれでもかというくらい輝いた笑みを浮かべて手を振っていた。

 ああ。ありゃルイズで遊んでやがるな。

 そんなことを思いながら、ドッピオはルイズのあとを追うのだった。

 




書けねーなら書かねーでよォ~~~~~ッ、オメーをやる気にさせる方法はあるぜェ――――――ッ!!

こんな感じの励ましがほしい……かもしれなかったが。すまん。ありゃあ嘘だ。
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