ゼロの奇妙な腹心   作:Neverleave

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前回ちょっと仲良くなったかに見えたルイズとドッピオ。
ここからどうやってイチャイチャの関係にまで持ち込むのかッ!

実は私もどうすりゃいいかよくわからん。


6話

 ドッピオはこの世界に来て初めての授業を受けることとなった。

 いや、というより使い魔の使命として、授業を受けているルイズのそばにいることになった、というのが正しいだろう。

 どっちにしろ、彼にとっては自分が召喚された世界のことについて知る貴重な機会だ。

「ここが教室ですか?」

「そう。ここで今回は土系統の魔法について学ぶの」

 食堂もさることながら、やはり教室もバカみたいに広い。

 あちこちに目をやると、ふと男子生徒が群がっているのを見つけて、ドッピオは疑問に思った。

 その答えはすぐにわかった。その中心に、今朝会ったキュルケがいたからだ。

 やはり男性にはモテモテらしい。いろんな男子生徒が彼女と話そうと躍起になっていて、それにキュルケは笑いながら応えている。

「すっげぇな、やっぱり」

「これくらい当然よ。なんたってここは貴族達の学び舎なんだから」

 話し合いをしながら、ドッピオとルイズは席まで歩く。

 その途中、食堂のときと同じようにルイズやドッピオを見て嘲笑する者がいたが、今度はドッピオは無視することにした。

 いちいち相手をしていれば、それは体力の無駄になってしまうからだ。

 ストレスは、ためないようにする方がいい。

 もっとも、ルイズの方は律儀(?)に睨み返しているようだが。

「……ところで、僕の席って」

「……ないわ」

「やっぱりなァ~~」

 やれやれといったように首を振るドッピオだが、以前のように怒りがこみあげてくることはなかった。

 自分なりにルイズのことを考え、整理することができたからだろうか。

「はい、どうぞ」

 と、ドッピオはルイズの座る椅子を引く。

 するとルイズは目を点にしてドッピオを見た。

「き、気が利くわね……」

 ついさっきあんな風に自分に歯向かったはずのドッピオがそんなことをするものだから、ルイズは驚かずにはいられない。

「僕は床に座ればいいです? それとも教室の一番後ろで立ってましょうか?」

「えっ?」

 ドッピオは続いてこんなことを言ってきた。

 この使い魔、あの短時間の間にいったい何が起こったというのだろうか?

「あ……じゃ、じゃあ、そばにいるべきだし、床で……」

 そう命令すると、ドッピオはあぐらをかいてその場に座った。

 なんだろう。ここまで従順だと、逆に気味が悪い。

 ……なんだ? マジになにが起こった?

 スープとパンになにか変なものでも混じっていたのか?

 なんだか落ち着かないルイズだったが、そうしているうちに先生が教室に入ってきたので、授業に集中することにした。

 ちらと使い魔の方に目をやれば、ドッピオの方も授業に集中している。

 とりあえずはこのままにしておこうとルイズは決めた。

 

 教壇に立った教師は女性で、満足げな笑みを浮かべながら教室を見回している。

「みなさん、この春の使い魔召喚は大成功のようですね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期にみなさんが召喚した使い魔を見ることがとても楽しみなのですよ」

 と、そこでシュヴルーズはルイズのそばにいるドッピオを見て少し驚いた様子を見せる。

 が、すぐにニッコリとほほ笑んで、とても優しい口調でこう言った。

「まぁミス・ヴァリエール。とても変わった使い魔を召喚されたのですね」

 その言葉は、さっきルイズをあざ笑った貴族達のように皮肉をこめたものではなく、純粋に自分の気持ちを言ったものだとドッピオにはすぐわかった。

 それはルイズにもわかったようで、ほっとしたように胸をなでおろしている。

 だが、どこにもそういう発言者の意図がわからないアホはいるものだ。

 

「おい『ゼロ』のルイズ! 使い魔召喚ができなかったからってそこらへんの平民をつれてくるなよ!」

 

 どこからか、そんな罵声が聞こえてきた。

 声の聞こえた方向を見ると、そこには小太りの少年がニヤニヤと笑いながらこちらを見ている。

 その言葉につられてクスクスと笑い始める者もいた。

「なん――」

 ルイズが小太りの少年に言い返すべく席を立とうとしたとき、不意にルイズは腕を掴まれた。

 見ると、ドッピオがルイズの腕を引っ張っている。

 ドッピオは首を横に振った。

「授業中です。静かにしましょうよ」

 その声はとても静かなものだったが、とてつもない力強さを持ったものだった。

 最初こそルイズは反感をもったものの、今は喧嘩などしている場合ではないと理解して、しぶしぶ座り込む。

 そこで調子にのって少年はこちらを侮辱してきたが……シュヴルーズが杖を振ると、彼を始めとして笑っていた者の口に赤い粘土が出てきて、口をふさいだ。

「友達を侮辱してはいけませんよ。罰としてそのまま授業を受けなさい」

 そのとたん、教室に静寂が訪れた。

(ざまぁみろ屑が)

 心の中であざけ笑いながら、ドッピオは少年たちを罵倒した。

 また一つ、理解できた。

 ルイズは魔法がまともに使えない。だからあんなにも馬鹿にされているのだ。

 しかし、たったそれだけのことでここまで嘲笑するとは、貴族というのにはまともな奴がいないらしい。

 早朝にシエスタが言っていたことも、ちょっぴり理解できた。

(それにしても……あんなこともできるのか……)

 一方でドッピオは一連の様子を見て、魔法という技術にますます関心を抱くこととなる。

 スタンドとはまた違う能力のようだが、いったいどのような原理でこの現象を発生させているのだろう。

 まぁスタンドもどんな原理であんな怪奇現象を起こしているのか理解できないのだが。

 それにしてもとても興味深い。

 それから行われたシュヴルーズの授業に、ドッピオは熱心に耳を傾けた。

 

「ではミスタ・グラモン。魔法の属性をすべて答えてみてください」

「はい。火、水、風、土の四つです」

 シュヴルーズが当てた、金髪のキザッたらしい少年はさらりと答えて見せる。

 それを見てシュヴルーズは頷いた。

「正解です。答えていただいたように、魔法には火、水、風、土の四つの属性、そして今は失われた虚無の属性をあわせて五つの属性が存在します。属性の他にもランクが存在し、低い順番にドッド、ライン、トライアングル、スクウェア……となっていきます」

 説明に合わせて、ドッピオはふんふんと頷く。

 中々に面白い。さっきシュヴルーズは赤い粘土を出して見せたが、さっきの魔法は土属性か。

 そんなことをドッピオが考えていると、シュヴルーズは授業を続けていく。

「これらの魔法はそれぞれ利用方法が異なり……例えば私の得意とする土属性などは、我々の生活に強く根付いたものが多く存在しています。代表的なものとしては、錬金でしょう」

 そこまで言い終えたシュヴルーズは懐から石を取り出し、机の上に置く。

 そして杖を振って呪文を唱えると、なんと石は金色に光りだしたのだ。

「ゴ、ゴールドですか!? ミス・シュヴルーズ!!」

 これにはドッピオも驚愕したが、思わず椅子から立ってそのように訊ねかける生徒までいたようだ。

 チラとドッピオがそちらを見やると、どうやら生徒はキュルケのようだ。

「いえ、残念ですがこれは真鍮です。黄金は確かに錬金できるのですが、私は土のトライアングルですから」

 苦笑いしながらシュヴルーズがそう答えると、キュルケはとたんに興味を失ったようで椅子に座った。

 なんという現金なやつだろう。

 ちょっぴりドッピオの中でキュルケの評価が変わる。

「このように錬金によって、本来異なる物質である素材を変えることもできます。コモン・マジックですので、他の属性を得意とする者でもできますよ……ではこれを生徒に実践してもらいましょう……ミス・ヴァリエール」

 シュヴルーズはルイズを指摘した。

 

 すると、静かに講義を傍聴していた生徒たちがざわつき始めた。

(……? なんだ?)

 ドッピオは小首をかしげた。

 どうしてルイズが魔法を実践するだけでこんなにもみんな落ち着きをなくすのだろうか。

 ルイズは魔法をうまく使えないだけじゃないのか?

 そんな疑問が次々と浮かぶ中、キュルケが立ち上がってシュヴルーズに抗議した。

「あの、ミス・シュヴルーズ。それはやめておいた方が……」

「なぜですか?」

 シュヴルーズが至極まともな問いかけをする。

 ドッピオも訊ねたかったことだ。

 それに対して、キュルケは一言で簡潔に理由を述べた。

「危険だからです」

 彼女の返答に、生徒一同が首を縦に振る。

 ……危険?

 どういうことだ? なぜそんなことになるってんだ?

 ますます理解できないドッピオだったが、そんな中でも生徒と教師のやりとりは続いていく。

「先生はルイ……ミス・ヴァリエールの参加する授業に立ち会ったことがないのです。だから……」

 ルイズ、と言おうとしたところでキュルケは言い直す。

 どうにか彼女はシュヴルーズを説得したいようだが、シュヴルーズは首を横に振って答えた。

「確かに、私はまだ彼女の参加する授業に立ち会ったことはありません。しかし、彼女は座学において常にトップをとっています。魔法も失敗を多くしていると聞いていますが、だからといってやらせないわけにはまいりません。失敗を何度重ねても、めげずに努力すればいずれ成功するものなのですから」

 このシュヴルーズという教師、どうやら人間的にもかなりできた人のようだ。

 貴族という存在について、これまたちょっぴりとドッピオは評価を変えた。

「……やります」

 彼女の言葉に後押しされたのか、それとも馬鹿にされたのが悔しいのかわからないが、ルイズはそう言うと教壇まで歩いていく。

「ルイズ、やめて」

 横からキュルケが懇願してくるが、ルイズはそれを無視して杖を取り出し、教卓に立った。

 幾分か緊張した顔つきだったが、数回深呼吸するとルイズは覚悟を決めて杖を握る。

 シュヴルーズはそれをみてニッコリと笑って、ルイズに言い聞かせる。

「いいですかミス・ヴァリエール。錬金したい物質を強く思い浮かべるのです。そして石に杖の先を向け、呪文を唱えなさい」

 こくり、とルイズはシュヴルーズの言葉に頷き、石に杖を向ける。

 その瞬間、教室の中は騒然となった。

 生徒全員が机の下に隠れると、口ぐちにルイズに罵声を浴びせる。

(なんだ? マジで何が起こるってんだ? クソッ、こんな時にエピタフでもあれば……)

 そんなことを重いながら、ドッピオも生徒たちを見習って机の中に隠れた。

 こちらを睨みつけてくる生徒が何名かいたが、そんなものは全く気にしない。

 

ドッピオが全く状況を理解できないまま……ルイズは呪文を唱えた。

 

その瞬間、教室に閃光が走ったかと思うと、教室で大爆発が発生した。

「う、うわぁ―――――――――ッッ!?」

 思わず悲鳴をあげるドッピオ。

 それは他の生徒も同じだったようで、教室中に多くの悲鳴がこだました。

 やがて光と爆風が収まり、ゆっくりと生徒たちとドッピオは机から立ち上がる。

 ドッピオが教卓があった場所を見ると、そこには粉々に吹き飛んだ机と……あちこちの服が破けて黒こげになったルイズ、そして気絶したシュヴルーズの姿があった。

「……ちょっと失敗しちゃったみたい」

 ルイズはなんでもないように、さらっとそんなことを言う。

「わぁ――――――っ! 僕の使い魔が!」

「全く、『ゼロ』のルイズ! いったいなにやってくれてんだよ!」

「全く迷惑しちゃうわ! さっさと退学しちゃいなさい『ゼロ』のルイズ!」

 続いて、生徒たちがルイズに一斉に罵詈雑言を浴びせた。

 ドッピオは、やっとルイズが馬鹿にされている理由を知った。

 彼女は魔法が使えないだけじゃない。必ず失敗して、爆発させてしまうのだと。

 魔法使いのランクにドッド、ライン、トライアングル、スクウェアとあったが、彼女の場合はそのどれにも当てはまらない。

 

「だから……『ゼロ』のルイズ、か……」

 半壊した教室の中で、ボソリとドッピオは呟いた。

 




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