小さな研究所があった。そこでは日夜、人を安全に超人─仮面ライダー─に変えるための装置─総称してライダーツール─が開発されている。
現在の従業員はわずか六人だ。昔はもう一人いたのだが、昨年失踪してしまった。
そこの所長を勤めるカイトには、娘が一人いる。名前はアカリ、歳は十五、完成品の実験を主に担当している。
ある日アカリは、ガラスの割れる音を耳にして目を覚ました。ベッドから窓を見ると、外はまだ暗い。星も月も今日は見えない。アカリは再び眠りにつこうとしたが、爆音がそれを遮った。怖くなったアカリは、布団にくるまって耳を押さえる。
数分後、これまでの騒音は突然、嘘のように消えた。アカリは部屋内から、手探りで懐中電灯を探し出す。そしてそれを照らしつつ、真っ暗な階段を恐る恐る下りていった。
アカリが一階のラボに着く。その光景は凄惨なものだった。窓ガラスや試験管はすべて割られ、床には危険な液体がこぼれ落ちている。保管されているはずのライダーツールは軒並み消え去っていた。
しかし、アカリにはそれよりも重要なことがある。父親の安否だ。なぜか他の従業員は影も形もおらず、カイトだけが白衣姿で倒れていた。アカリは必死になって、カイトを揺らす。すると彼はすぐに気がついた。そしてアカリに、ここで起こったことについて話始める。
「アカリ……聞いてくれ……何者かの襲撃を受け、ライダーツールをほとんどすべて奪われてしまった……」
「なんだって!?」
「常々口うるさく言っているが、ライダーツールの開発は極秘任務。従って、警察に頼ることはできない。そこでお前に頼みがある。取り返してきてはくれないか?」
「私が!? そんなの無理だよ!」
「幸いこれだけは奪われなかった。必ずお前の力になるはずだ……」
カイトはアカリに、戦極ドライバーとオレンジロックシードを渡した。二つのアイテムを使えば、仮面ライダー鎧武に変身することができる。
「それから今はまだ使えないが、そのうちお前の力になるアイテムもある」
「ラウズアブゾーバーとシフトデッドヒートと……もうひとつは……なにこれ? ロックシード?」
「すまない……それは研究過程で偶然できた代物……戦極ドライバーで使うことはできないから、利用方法はわからない。だが決して無駄にはならないはずだ」
「そんなこと言われても……」
「頼む! お前しかいないんだ!」
「……うん……やる……」
無茶な要求ではあった。ところがアカリは、カイトの懇願に破れ、それを承諾する。現実離れした事態に対応できなかったのか、アカリは正常な判断力を失っていた。こうして、謎の組織とアカリとの壮絶な戦いの火蓋が切られた。
アカリがすぐさま、旅の準備を始める。そして日が昇るのと同じくらいに、彼女は出発した。荷物をお気に入りのリュックサックに積めて。
「とはいえ、どこに向かえばいいのやら」
開始早々、アカリは自分のなすべきことがわからずに、困惑してしまう。そこへ悲鳴が轟く。アカリが駆けつけたとき、彼女の眼前にいたのは、二体のサナギワームと仮面ライダーギルスだった。彼女の足下には、さっきまで生きていたであろう物体が転がっている。
「まだ生き残りがいるぞ。やれ!」
ワームがアカリに襲いかかる。彼女は咄嗟に身を左に翻して、敵の突進をかわした。それから、戦極ドライバーを腰に巻き付け、オレンジロックシードを解錠する。
「変身!」
彼女は錠前をベルトに装填し、カッティングブレードを下ろす。すると、彼女の頭上に巨大なオレンジが現れた。それが頭に覆い被さられ、展開していく。吹き出す果汁と共に、仮面ライダー鎧武への変身が完了した。
「俺たち以外にベルトの所有者がいるとはな。まあいい殺せ」
鎧武は右手に持った無双セイバーで、ワームを一体切り下ろす。さらに横にも切り、追い討ちをかける。もう一体が、彼女の背中を蹴り飛ばした。怯む隙に、正面のワームが殴る。彼女は挟み撃ちにあってしまった。
すると彼女は、大橙丸を左手に召喚する。それから、その場を一回転して、二体に斬撃を浴びせた。
彼女はドライバーからロックシードを取り出すと、それを無双セイバーに取り付けた。すると剣にエネルギーが満ちる。彼女が上段から切りつけると、ワームが一体爆死した。
その光景を目の当たりにしたもう一体は恐れをなす。だが彼女は暇を与えない。ロックシードをもとに戻して、カッティングブレードを二回動かした。高く跳び上がった鎧武が、ライダーキックを放つ。攻撃が当たりもう一体のワームも、緑の爆発を起こした。
「次はお前だ。ベルトを返せ!」
「なかなかやるな。だがそんな雑魚を倒したくらいでいい気になるなよ」
そう言うとギルスは、手足を広げて叫ぶ。すると変化が始まった。胸部にワイズマンモノリスが現れ、手足にトゲや刃が生え、角が三本に増えたのだ。ギルスはエクシードギルスへ進化する。スペックは鎧武や元のギルスを遥かに驚愕するものだ。
エクシードギルスが背中の赤い塊を解き放つ。すると二本の赤い触手が放たれた。それが鎧武の両腕に巻き付く。
彼は近づくと、両腕に生えた刃で切り上げた。さらにパンチするように、何度も何度も斬りかかる。そして触手を上下に揺らして、彼女を地面に叩きつけ続けた。
「リーチの差が厄介ね」
しかし鎧武も諦めない。触手がたわんだ一瞬の隙に腕を交差させ、揺れる勢いも利用しつつ切断した。彼女はなんとか、肉体の自由を取り戻す。
なおも彼の猛攻は続く。彼女は、パンチを剣でいなすなで精一杯だ。するとエクシードギルスが回し蹴りを放った。鎧武は吹き飛ばされ、街路樹に激突した。スペックのみならず、技術面でもエクシードギルスが勝る。
彼が触手を打ち付けて攻撃を仕掛ける。大橙丸を弾き飛ばされ、体に傷を負わされ、大ピンチに陥る鎧武。無双セイバーから弾丸を放つも、エクシードギルスに効き目はない。
彼女は再度立ち上がり、彼に上から斬りかかる。だが動きを読まれ、白羽取りをされてしまう。そして胴に重い拳を受けた。
痛みにこらえて連続パンチを繰り出すが、効いてるようには到底見えない。だがその時異変が起こった。エクシードギルスの動きが止まったのだ。これは好機と、彼女が敵の顔を殴る。エクシードギルスは吹き飛ばされ、地面に転がった。
「なに!? 帰れだと? ふざけるな!」
エクシードギルスが独り言を吐いた。鎧武は少し驚いたが、すぐに答えを理解する。誰かと通信しているのだろう。
「すまんが急用が入った。この勝負は俺の不戦敗、お前の勝ちだ。だからこいつをくれてやるよ」
ギルスが爆弾のようなものを、地面に投げた。そこから煙がもくもくと立ち上る。追いかけようとする鎧武だが、一歩足を踏み出したとき、倒れてしまった。それでも彼女は、這って追いかけようともがく。
煙が晴れた。そこにはメタファクターだけが残される。アカリはそれを掴むと、意識を失った。
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ツールを強奪した組織には、アジトが存在する。あまり大きくない五階建ての建物で、地下室も備わっていた。
一階は倉庫であり、備品が詰められている。大きい冷蔵庫があり、食料品も取り合えずここに仕舞われる。
二階は組織のメンバーの居住スペースだ。全員分の個室が用意されている。
三階は研究室だ。サナギワームはここで作り出された戦闘用アンドロイドである。他にも、ミラーモンスターやバグスターウィルスなどが開発されていた。彼らは単体性能では仮面ライダーに劣るが、安く大量に作れるというメリットを持つ。
四階と五階は多目的スペースである。作業をしたり、練習したり、大がかりな実験をしたりと、用途は様々だ。
地下室は白を基調とした、会議室のような見た目をしている。しかし、光が入らないため少々薄暗い。奥の椅子に男が座っている。それ以外は誰もいなかった。そこに、先程ギルスとしてアカリと戦った男─リョウ─が入ってくる。
「ユウスケ、どうして俺を呼び戻した?」
椅子に座っている男は、名前をユウスケと言う。二人の間に上下関係はない。
「君は十分任務を果たしてくれた。あれ以上暴れてもメリットは少なかっただろう」
「戦いに水を射していい理由にはならねぇだろうが」
「戦い? そう言えば護衛につけたワームの姿が見えないな」
「いきなり鎧武が現れてな。そいつに呆気なくやられたよ。俺たち以外に変身できる奴がいるとは思わなかったぜ」
「恐らくアカリだろうな。見つけ次第殺せ」
「あいつか。通りで」
報告を済ましたリョウは、その部屋から立ち去った。
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「ここは……?」
アカリが目を覚ました。視界に天井と丸い蛍光灯が見えることから、ここは室内であることがわかる。彼女はベッドで横になっていた。すると女性が、嬉しそうにアカリの顔を覗きこむ。そして、ここまでの経緯を説明し始めた。
「目を覚ましたんだね。ここは私の家、あなたが道の真ん中で倒れてたから思わず拾っちゃった」
「ありがとうございました。それでは」
世間的に見れば、仮面ライダーは極悪人だ。ベルトを持っていることから、アカリが仮面ライダーということは、女性もわかっているはず。それなのに、女性はなぜか怖がらない。
彼女は布団を剥ぎ、立ち去ろうとする。
「ちょっと? その体でどこにいくのよ?」
「すみません。だけど私いかないと……」
「しばらく休んでいきなさい。無理しちゃダメよ」
「でも……」
そのとき、テレビから緊急速報が流れる。
『速報です。怪人が現れました。住民の方は速やかに避難し、他所から立ち入ることのないようにしましょう』
「ごめんなさい! やっぱり私行かなきゃ!」
介抱してくれた女性の制止を振り切り、アカリは現場へと向かった。
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「変身!」
鎧武になった彼女は、上昇した走力を使って急行する。彼女が到着したとき、町は一面火の海になっていた。暴れているバグスターウィルスの後ろには、仮面ライダーファイズの姿が見える。
三体のバグスターウィルスが、一斉に向かってきた。彼女は二振りの刀の束頭を合体させ、薙刀モードへ変形させる。そして駆け出し、すれ違い様に切り刻んでいった。
「くらえ!」
鎧武がロックシードを武器に取り付ける。そして薙刀無双スライサーを繰り出した。ウィルスたちは呆気なく切り裂かれる。ウィルスを全滅させたため、残る敵はファイズのみ。
鎧武が薙刀から弾丸を飛ばす。ファイズは左右に身を揺らして見切った。弾丸が切れたのを見計らって、間合いを狭めていく。
ファイズのキックが、彼女の腹に決まった。痛みに苦しむ彼女に対して、ファイズは連続パンチを放つ。最後の一撃が打ち込まれたとき、彼女は激しく吹っ飛ばされた。
「鎧武で勝つのは難しそうだね。ならばこれを試してみようか」
彼女は変身を解除した。前回戦利品として得たメタファクターを取りだし、それを腰に巻き付けた。
「変身!」
「お前にギルスを扱えるかな?」
ファイズの言う通りだった。確かに彼女の姿は、ギルスのそれに変わる。だが、角が短い不完全な姿だ。
「うぉぉぉぉ!!」
雄叫びを挙げた後、ファイズに飛びかかるギルス。彼女は、膝蹴りをファイズの顎に当てて転倒させる。それから、馬乗りになって顔面を戸惑うことなく殴りまくる。
必死に暴れて抵抗するファイズだが、逃れることができない。
「不完全体なのに何て強さ……! だけどまだよ!」
突然、ギルスの背後に弾丸が浴びせられた。撃ったのはファイズのバイクが変形したロボット─オートバジン─だ。その隙にファイズは、ギルスを投げ飛ばす。
オートバジンとファイズが、同時パンチを繰り出した。ギルスが地面を転がっている間に、彼はオートバジンからファイズエッジを抜き取る。
「これでとどめよ」
ファイズが携帯のenterを押し、必殺技の準備を行う。一度素振りをすると、赤い光がギルスへ飛ばされた。光はギルスを、円柱状に拘束する。ファイズが剣を片手に、走り出した。彼は後ろから前へ横に剣を振り、ギルスの首を撥ね飛ばすつもりだ。
絶体絶命のその時、彼女は左腕から触手─ギルスフィーラー─を生み出して、ファイズエッジに巻き付ける。ファイズの手から武器を奪い、右手に持った。
そして、ファイズの胸を剣で突き刺す。必殺技が破られたため、ギルスを拘束していた光は消え去った。
「馬鹿な!?」
「うぉぉぉぉ!!」
ギルスが顔を上げて咆哮する。すると角が巨大化し、かかとの後ろの刃が伸びた。彼女は必殺のかかと落とし─ギルスヒールクロー─を放つ。ファイズは刃から、エネルギーが流し込まれた。ギルスが左足でファイズの胸を蹴り、その反動でギルスは着地した。
「負けるはずが……!」
ファイズが爆発する。あとには、ファイズギアのみが残された。どうやら使用者は逃げ出したようだ。
アカリがギルスの変身を解く。するとすぐに、疲労感が込み上げてきた。強大なパワーを使った代償なのだろう。アカリはなんとか意識を保ちつつ、その場を離れた。
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深夜の河川敷にて、二つの人影が対峙している。一人は屈強な男─ケイスケ─、もう一人はアカリと同い年くらいの少女だ。各々ライダーツールを操作し、掛け声をあげる。
「「変身!」」
男は仮面ライダーザビーライダーフォームに、少女は仮面ライダービルドラビットタンクに変身した。
二人の戦いは、パンチの連打から始まる。拳と拳がぶつかり合い、両者にダメージが入る。徐々にビルドの拳打が速を増した。ザビーのパンチを右手で捌き、もう片方の拳で頭部へ命中させる。
「貴様、何者だ?」
「マナ、天才物理学者の一人娘さ!」
ビルドが専用武器のドリルクラッシャーで、ザビーを投げ飛ばす。それからビルドは、タカとガトリングのフルボトルを取り出した。それを何回か揺らし、ビルドドライバーに差し込む。
「ビルドアップ」
ビルドはホークガトリングフォームになった。専用銃─ホークガトリンガー─を召喚すると、ザビー目掛けて引き金を引く。しかし当たらない。ザビーは辺りを駆け巡って避ける。そうしながらザビーゼクターのスイッチを押し、必殺技─ライダースティング─の準備に取りかかっていた。直撃を恐れたビルドは、背中の翼で宙に舞い上がる。
ビルドが空中から再び狙い撃った。虚をついたこともあり、弾丸は全弾命中する。ザビーは武器のゼクトマイザーを召喚した。放たれる蜂型のマイザーボマーも、ビルドはことごとく撃ち落とす。
ビルドはホークガトリンガーのカートリッジを回転させ、エネルギーを充填させていった。ザビーの射撃を紙一重で華麗にかわしつつだ。やがてフルチャージが完了する。
十回回すと最大の火力で放つことが可能である。空中から、ビルドの銃撃が決まる。鷹の形をした無数の弾丸が、ザビーを貫いた。そしてやがて爆発する。
「覚えてろ!」
使用者の男は、ほうほうの体で逃げ出した。あとにはザビーブレスとザビーゼクターが残される。ビルドはそれを回収すると、どこかへと飛び去った。
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アカリは近くの公園でしばし眠りにつく。目を覚ましてある程度体力を回復すると、先程激闘の行われた場所へ再度赴いた。
誰にも拾われることなく、ファイズギアとオートバジンが残されていた。早速ギアを回収してリュックに積める。彼女はオートバジンを、ロボット形態からバイク形態に変えると、それに乗って現場を離れた。
彼女がゴーストタウンを走っていると、道の真ん中に人影が見えた。はねそうになったので、ブレーキをかける。だがそれはただの人間ではなく、仮面ライダーバロンバナナアームズだった。
「また敵か……変身」
コードを打ち込み、アカリはファイズに変身した。オートバジンからファイズエッジを引き抜く。
両者が駆け出した。バロンがバナスピアーを横に払う。ファイズは剣を両手で逆に持ち、左の方に添えた。ところが防ぎきることができない。バロンによってファイズは、強引に投げ飛ばされる。
ファイズは受け身をとって着地した。刃先を向けて、バロンが駆け寄る。ファイズはミッションメモリーを、ファイズフォンにつけ直す。そして携帯を外し、銃に変形させた。近づいているバロンに、フォンブラスターを撃つ。
放たれた光線を受け、バロンの足が止まった。ファイズは左腰から、デジカメ型の武装─ファイズショット─を取り外す。それにメモリーを差し込み、起動させた。ファイズショットを右手に装着すると、ファイズは助走をつける。そして必殺パンチ─グランインパクト─を繰り出した。
バロンが跳び上がる。ファイズは攻撃を避けられ、さらに後頭部をバナスピアーで叩かれた。そしてうつ伏せに倒れる。
傷は痛むもののファイズはなんとか立ち上がり、振り返る。それを待ち受けていたバロン。彼がバナスピアーで突く。ファイズの胸に当たり、彼女は吹っ飛ばされた。
バロンがカッティングブレードを倒す。全身に黄色いオーラが、武器にはバナナ型のエフェクトが現れた。
ファイズは右腰から、ファイズポインターを取り外す。それにメモリーを入れ、足のジョイントにはめた。その場で回し蹴りすると、赤い円錐状の光が飛び出され、バロンの動きを止める。ファイズはそのあと、ライダーキックを放った。
ファイズの右足と、バナスピアーの先端が激しくぶつかり合う。威力が拮抗しているのか、しばし膠着状態が続いた。
やがて、激突の凄まじい衝撃で、両者は吹き飛ばされる。ダメージが大きいのか、二人ともうずくまったまましばらく動けない。
すると、荒い息づかいを見せながら、バロンが立ち上がった。一方ファイズは、変身が解除されてしまう。
バロンは変身を解くと、アカリを尻目にどこかへと去っていく。その後ろ姿に、アカリは見覚えがあった。