ウチの娘は仮面ライダー   作:ぽかんむ

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第2話 最高に勇敢な昆虫

 翌日、アカリは考え事をしながら、ベンチの上で横になっていた。バロンの正体も気になる点ではあったが、今は戦いのことについてだ。

 度重なる苦戦や敗北を味わった彼女は、より強くなることを望んでいた。今のところ、手っ取り早く彼女が強化される方法は四つ存在する。

 一つ目はエクシードギルスへの覚醒。外部装置を使わずに強くなることが可能だが、現在はまだ方法がわかっていない。

 二つ目はエナジーロックシードとゲネシスコアを見つけ出し、ジンバーアームズになること。アイテムさえ揃えばすぐに実行できるが、どこにあるのかは定かではない。

 三つ目はブレイバックルまたはギャレンバックルを見つけ出し、ジャックフォームへの二段変身。カイトからもらったラウズアブゾーバーを使うのだが、二つのバックルがどこにあるのかは不明だ。

 四つ目はドライブドライバーまたはマッハドライバーを探して、デッドヒートに変身。カイトからもらったシフトデッドヒートを利用するのだが、例によってドライバーがどこにあるのかはわからない。

 いずれも簡単には成し遂げられない難題だ。結局のところ彼女は、敵を倒して実戦経験を積みつつ、情報を集めていくことに決めた。

 

 

「……お腹すいた……」

 

 

 仮面ライダーとはいえ、食欲には勝てない。彼女は、オートバジンの後ろに積み込んだ荷物から、食料を取り出して食べた。廃墟と化した町のコンビニからくすねてきたものだ。

 破壊された町から得たものは多い。例えばラジオ。すでにテレビや携帯電話、スマホなどに取って変わられて久しいが、敵の出現をいち早く知るために重宝する。

 腹が満たされたあと、アカリはファイズフォンを取り出した。自宅の電話番号を打ち込み、耳に近づける。しかし誰もでない。本来であれば、アカリの父親か他の研究員が出るはずなのに。

 番号が間違っているのかもしれないと考えたアカリは、もう一度打ち込もうとする。そのとき、ラジオが鳴った。

 

 

『怪人が出現しました! 住民の方は早く逃げてください!』

 

「……近い! 飛ばそう!」

 

 

 彼女はバイクに跨がり、現場へと急ぐ。一人でも多くの命を救い、一日でも早くこの戦いを終わらせるために。

 現場へ到着する。すでに人の姿はなく、十体ほどの屑ヤミーが暴れていた。少し後ろには、怪人たちを率いる仮面ライダーブレイブレベル2の姿を見える。彼女は一先ず、課題を先伸ばしすることに決めた。

 

 

「変身!」

 

 

 その叫びとともに、アカリはファイズに変身した。屑ヤミーたちを切り捨てながら、鎧武は走る。その速さにブレイブが一瞬驚く。ところが、まもなく平生を取り戻した。

 ブレイブはガシャコンソードを握ると、ファイズに向かってきた。二人が剣を交える。

 そのとき、高いビルからもう一人のライダーが飛び降りた。その名は仮面ライダーガタック。ガタックダブルカリバーと呼ばれる双刀を操る戦士だ。

 

 

「二対二か……オートバジン! バトルモード!」

 

 

 ファイズの叫びに応じて、オートバジンがバイクからロボットへ変形される。それが終わると、タイヤから無数の弾丸を発射し始めた。その威力は、ブレイブとガタックを怯ませるのには充分過ぎる。

 

 

「このロボットは俺がやるから、ブレイブはアカリをやれ!」

 

 

 オートバジンは射撃をやめない。それを双刀で弾きつつ、ガタックは接近を試みる。そして素早い斬撃を浴びせた。だが、傷をつけることはできない。オートバジンが殴る。ガタックは後退りするも、再び立ち向かっていった。

ファイズのファイズエッジと、ブレイブのガシャコンソードが打ち付けあわされる。さらに束を押し付け、つばぜり合いとなる両者。

 ブレイブが足を引っ掻けて、ファイズを転ばす。ブレイブはガシャコンソードを、氷剣モードに変えた。逆手に持ち替え、突き刺そうとする。

 しかしファイズは、ブレイブから見て左に転がって避けた。彼女はブレイブの腹部を、剣で突き飛ばす。ブレイブがその場で剣を横に振るう。刃から数多くの氷塊が投げ飛ばされた。ファイズフォンを変形した小型銃─フォンブラスターシングルモード─で撃ち落とそうとするが、いくつか氷塊を受けてしまう。

 

 

「なかなか骨のあるやつだ」

 

 

 ブレイブは新たに、ドラゴナイトハンターZのガシャットを取り出した。それをゲーマドライバーに挿し込みむ。レバーを閉め開けすると、ハンターゲーマが現れた。それを纏ったブレイブは、ハンタークエストゲーマーレベル5にレベルアップする。

 ファイズがフォンブラスターバーストモードを発砲した。しかしブレイブに、両手をクロスされて防がれる。

 左腕のドラゴンガンから、エネルギー波が放たれた。ファイズはそれを避けながら、鎧武に再変身する。そして彼女は、大橙丸と無双セイバーの二刀流で、接近戦を挑んだ。素早く斬りつけて攻め立てる。

 ところがドラゴンブレードで、横凪ぎに叩かれて吹っ飛ばされた。さらにブレイブは、ドラゴンファングから炎を吐き出す。鎧武は多大なダメージを負い、横になってしまった。

 

 

「ギルスをなぜ使わない?」

 

 

 ブレイブが問う。

 

 

「あれは……体力の消費が激しすぎる……だからやたらめったら使える訳じゃない……」

 

「それは初期だけ。何度も何度も戦闘に使うことで段々その欠点は解消されていく。さらに使い続けると、エクシードギルスに覚醒できるそうよ」

 

「そういうことだったのか……」

 

「あいつの場合は一年かかったらしい。ただしそれは大して苦戦を経験しなかった場合。装着者が命の危機を感じれば感じるほど、使いこなせるまでの期間は短くなる」

 

「一年!? まだベルトが奪われてから一週間も経ってないのにどういうこと!?」

 

「あっ……これ以上は秘密よ。さあどうする? このまま死ぬか、ギルスの力でもう少し抗うか」

 

 

 その時、鎧武の目の前にあるものが投げられた。メロンのロックシードと、ガタックゼクターである。どうやらガタックの変身者は、オートバジンに破れて逃げ出したようだ。

 

 

「あいつはお前を倒したあと、そのロックシードで変身しようとしていた。だがまさかそれが私の首を絞めることになるとは」

 

「まずはこれだ!」

 

 

 鎧武が新たなベルトを巻く。そこにガタックゼクターを装填すると、鎧武は仮面ライダーガタックマスクドフォームにチェンジした。両肩のバルカン砲で、ブレイブに弾丸を撃ちまくる。

 ブレイブがドラゴンガンから、ビームを発射した。それはガタックに直撃する。ところが、ガタックは平然と砲撃を続けた。

 

 

「効いていない!?」

 

 

 重たい拳が、ブレイブに襲いかかる。何発もパンチを喰らい、ブレイブは仰け反らされた。ドラゴンブレードが振り下ろされる。ガタックはそれを両手で掴み、バルカン砲で攻め立てた。

 ガタックがゼクターの顎を畳む。すると装甲が弾き飛ばされた。ブレイブが怯む間に、ライダーフォームへのチェンジが完了する。ブレイブが火炎を吐き出した。それを避けつつ、ガタックはブレイブの背後に回り込んだ。そして、ダブルカリバーで連続して斬っていく。

 ガタックが、右腰のボタンを押した。クロックアップを発動すると、さらに縦横斜めに斬撃を浴びせる。ブレイブは反応すら、痛みを感じることすらなく、ダメージを蓄積していった。

 クロックオーバーとなる。これまで静止していたガタックが、痛みに身を打ちひしがれた。ブレイブは一度倒れるが、よろよろと立ち上がる。

 

 

「これで決める!」

 

 

 ガタックがゼクターのボタンを連打し、顎を開閉した。すると右足にエネルギーが流れ込む。

 

 

「ライダーキック!」

 

 

 足に稲妻を纏い、跳び上がる。そして大振りのキックを繰り出した。ブレイブを吹っ飛ばし、自身はその場に着地する。ブレイブは爆発し、変身が解除された。その顔を、アカリはよく知っている。ガタックは変身を解くと、その人の近くに寄った。

 

 

「ミラさん……どうしてこんなことを?」

 

 

 倒れていたのは、元々研究所で働いていた女性だった。名前をミラと言う。アカリの疑問に、ミラはこう返した。

 

 

「時が満ちたのよ。五年前からの計画を実行に移すときがね……あなたがどれ程頑張ろうと、私たちを止めることはできない」

 

 

 それだけ言い残すと、ミラは目を閉じて倒れた。あとには、タドルクエストとドラゴナイトハンターZと、今回は使用されなかったドレミファビートのガシャットと、ゲーマドライバーが残される。

 激闘を征した彼女だったが、その表情は芳しくない。次から次へと謎が飛び出し、対処に困っているようだ。アカリはしばらく動けなかった。そこに、一人の男がやって来る。

 

 

「ちょっといいかい?」

 

 

 彼女が黙っていると、オートバジンが肩を叩く。加減しているつもりなのだろうが、彼女には激痛だった。だがそのおかげで、謎の人物の声を聞くことができた。

 

 

「なんですか……あなたは!」

 

 

 その男とは、かつて失踪した研究員だった。名前はカツラギ。久し振りの再会に、アカリの心が踊る。

 

 

「もしかしてアカリちゃんか? しばらくだね。突然で悪いんだけど、よければ私の娘にこれを届けてくれないか?」

 

「娘?」

 

 

 カツラギの娘のことを、アカリは知らなかった。それどころか、結婚していることすら今知る。

 

 

「実は私の娘も君と同じ仮面ライダーなんだ。そしてそれは娘のために開発したその名もラビットタンクスパークリング!」

 

「どうして私が仮面ライダーだと知っているんですか?」

 

「知らないのか? 君、テレビじゃ有名なんだよ。日夜悪人と戦う正義の戦士だってね。仮面ライダーは必ず怪人の前に姿を現す。だから私も怪人出現の報道を聞いてここへやって来たんだよ。君か娘に会うためにね」

 

「娘さんはどこにいらっしゃるのですか?」

 

「私にもわからんよ。だけど事件が起これば偶然会うかもしれないじゃないか。少なくとも、私が持ってるよりも君が持っていた方が、渡しやすいと思うんだ」

 

「わかりました! ところで、聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

 

「別に構わないよ」

 

「どうして失踪したんですか?」

 

「……僕は、ライダーツールの真の開発理由を見誤っていたんだ。あれは悪事に使うためのものだった。僕はそれが嫌で逃げ出したんだ」

 

「どういうことですか?」

 

「ライダーツールは初めから、いずれ世界を転覆させるために作られていたってことさ」

 

「そんな……嘘だ……ということは、敵の目的って」

 

「日本乗っ取りだ。僕はもう行くね。頑張れ!」

 

「はい……」

 

 

 カツラギと話し終えると、アカリはバイクに跨がった。そして走り出す。

 走ってる間、彼女はずっと考え事をしていた。中身はズバリ、彼女の父親であるカイトについてだ。

 組織にライダーツールを奪われてから、まだ日は浅い。それなのに、ギルスの使い手は少なくとも一年以上、メタファクターを使っていた。どういうことなのだろうか。

 

 カイトが研究を始めたのは六年前。アカリの母親が死亡してすぐのことだった。最初は一人であり、周りは皆よってたかって、彼を馬鹿にした。研究は難航し、次第に資金もなくなり、貧乏生活を余儀なくされた。

 だけどプロジェクト開始から一年が経った頃、救いの手が差し伸べられる。とある人物が、資金と人材の提供を行うと持ちかけてきたのだ。条件はただ一つ。研究を極秘に進めること。カイトは快く承諾し、半年後には試作品が完成した。アカリも三年前からは、毎日のように父親の仕事を手伝っていたものだ。

 途中でカツラギが離反したこともあったが、それ以外は概ね平和に、仲良く開発に当たっていた。だから、一年前からライダーツールを扱える人物は、従業員の中の誰かということになる。

 アカリはそれから、襲撃にあった日のことについても考えていた。

 あの日はよくよく考えると謎が多い。なぜか従業員が他にいなかったり、カイトが出血していなかったり。もし本当に怪我をしていなかったのなら、アカリに揺らされるまで気絶する振りをしていたということになる。もちろんスタンガン跡なんて確認されてないのだから、どう考えてもおかしい。

 

 

「というかそれ以前に、変身して抵抗しろよ」

 

 

 アカリは思わず、自分で自分に突っ込みをいれた。直後、彼女の脳裏にとある考えてが浮かぶ。あの事件は"自作自演"だったのではないかと。

 

 

────────────

 

 

 その日の夜。マナは森を歩いていた。その途中、何者かが彼女の行く手を阻む。

 

 

「この前の借りを返す」

 

 

 その正体は、前回ザビーとして戦い、マナに敗北を喫したケイスケだった。

 彼はイクサナックルを起動させる。巻いているベルトに嵌め込むと、仮面ライダーイクサへの変身が完了した。さらに顔が開き、バーストモードに姿を変える。

 マナはビルドドライバーに、二本のフルボトルを射し込む。そしてビルドニンニンコミックフォームに姿を変えた。四コマ忍法刀を逆手に、敵に駆け寄る。イクサもイクサカリバーを片手に、ビルドに立ち向かっていった。

 ビルドが武器のトリガーを押す。するとビルドは、三人に分身した。増殖した彼女らが、三方向からイクサに攻撃を仕掛ける。その斬撃にイクサは翻弄されっぱなしだ。ビルドの一人が、イクサを背後から羽交い締めにする。

 

 

「ナイス私!」

 

 

 ビルドがトリガーを引くと、今度は刀身が燃え上がった。そして自分の分身ごと、イクサを切り落とす。その一撃はイクサに絶大なダメージを与えた。

 もう一人もトリガーを引く。そしてその場で剣を振り上げた。すると竜巻が生成され、イクサ目掛けて放たれる。彼はそれに巻き込まれ、高く打ち上げられた。

 

 

「これで終わりと思うな!」

 

 

 そう告げると彼は、ベルトにカリバーフエッスルを装填した。それによって、全身にエネルギーを蓄えられる。そして彼は、落下の衝撃を利用して強化された必殺技─イクサジャッジメント─を発動した。それを叩き込まれたビルドは、投げ飛ばされてしまう。

 イクサは武器をガンモードにして更なる追撃を試みる。しかし弾丸が命中しない。

 

 

「どこに行った?」

 

「後ろだよ!」

 

 

 ロケットパンダフォームにビルドアップしていたビルド。彼女がイクサの背後から突進する。ロケットの推進力を利用したその攻撃は、イクサを吹っ飛ばした。

 ビルドドライバーのハンドルを回すと、必殺技が発動される。彼女はロケットで突っ込み、パンダの爪でイクサを切り裂こうとした。

 ところがイクサはとっさに、彼女に飛び乗った。さらにイクサカリバーで突き刺し、墜落させる。そしてビルドを蹴り飛ばした。

 

 

「そんな!」

 

「手数の多さが厄介だ……一気に決める」

 

 

 彼が口から、イクサライザーを取り外す。それにライザーフエッスルを差し込むことで、イクサはライジングイクサに進化を遂げた。

 

 

「それならこれだ!」

 

 

 ビルドが今度は、ライオンクリーナーにビルドアップする。イクサライザーから放たれる銃弾を、左手の掃除機で吸いとっていく。

 イクサがライザーフエッスルをベルトに差し込んだ。すると全エネルギーがイクサライザーに集約される。ライジングイクサの必殺技─ファイナルライジングブラスト─だ。

 一方ビルドも、ハンドルを回して必殺技を発動させた。すべてを飲み込もうと掃除機の出力が上がる。

 イクサライザーから強力なエネルギー波が発射される。その反動で、イクサは吹き飛ばされるが、木を足場として蹴り返し、跳び蹴りの体勢に移行した。

 限界を越えた吸収に苦しむビルドだが、その力を右手に込めてパンチを繰り出す。キックと拳が正面からぶつかり合った。

 

 

「うおおお!!」

 

「はああああ!!」

 

 

 対決を征したのはビルドだ。彼女の渾身の一撃が勝り、イクサは投げ飛ばされた。その後空中で爆発し、ベルトが落ちてくる。

 ビルドはマナの姿に戻ると、マシンビルダーで森を越えていった。

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