すまん、ブレインズ見てこのほとばしる波動を止められなかったんや……
「……目を開けたら知らない天井でした」
思わずそんな事を言ってしまうくらいには混乱していた
え、ここ本当に何処?
辺りを見渡すと、普通の部屋……ゲストルーム?とか
ん?んんん?……やっぱり見覚えがない、なんで僕こんなところにいるの?
とりあえずこういう時は過去回想をすればいいってばっちゃんが言ってた(嘘)
はい、そういうわけで回想入りまーす
僕、新庄アルサは死んだはず……だった
死因?交通事故だよ言わせんな恥ずかしい
そう、僕は死んだはずだった……なのに
「ここ何処?」
見渡す限りの高いビルに、そこに大きく取り付けられているモニターにはリンクヴレインズでのデュエルが中継されている
……なるほど、ここは遊戯王VRAINSの世界か
……まじかー冗談でしょう、僕は確かに遊戯王プレイヤーだけどエンジョイ勢だし、しかもアニメは全く見てない
ここがVRAINSだってわかったのは、友達から聞いた知識を元にそう判断しただけだし
っていうかバイクと人が合体するってどういうことなの……?
「あのオタク共じゃあるまいし、転生トリップとか勘弁してよ……」
よくアニメや漫画の世界に転生トリップしたらって話はしてたけど、だからって当事者になるのとは話が別だからね
後欲を言うならハリポタの世界が良かったです
なんてことは置いておいて、これからの身の振り方を考えなければ
持ち物は遊戯王のカード以外は普段持ち歩いているものしかない
え?お金?高校生の金銭事情なんてたかが知れてるでしょう、察して
よく転生トリップの主人公たちは、最初からある程度お膳立てられていましたが、僕の場合はそうじゃなかった
この世界の住人じゃなく、突然この世界に現れた僕は家も、戸籍も、何もない
カプセルホテルに泊まろうにもそのお金すらない、泊まったら食事代すら一瞬で溶けてしまう
デュエルの大会にでて賞金を稼ぐ、と言っても大会に登録するには身分証明書が必要になる
この世界の戸籍がない僕には無理だし、そもそもデュエルディスクすらない
二次創作によくある裏の大会とやらは出たら人生終了のお知らせになる
だって戸籍も、この世界に知り合いすらいない僕は恰好のカモになる、いなくなっても誰も気が付かない
「……転生トリップして1週間で人生終了って、僕しかいないだろうな」
カードの買収にも身分証明書が必要なので、カードを売って金にするのも無理
確かに偽造カードがあったりしたら大惨事だからなこの世界は
「……おなか減ったー……」
水だけならかろうじて飲めたが、食料はそうもいかない、お金も底をつきた
どこかの研究所跡地らしきところで身を休めていたが、どうやら限界のようだ
死んで転生トリップして1週間で人生終了、これは酷い
そして僕は、ゆっくりと瞼を閉じた
「……おい、どうした、しっかりしろ!」
……
「あー……」
そうだよ、最後にゆっくり眠ろうとした時にあの声が聞こえて……
それじゃ僕は、あの声の人に拾われたってことになるのかな
……まっとうな人間だよね?ヤクザとかじゃないよね?
コンコン
ドアをノックする音が辺りに聞こえる
「……どうぞ」
一応助けられた身(?)であるし、ちょっと上から目線だけどそれ以外に同意言えと
入ってきたのは白い髪に青いメッシュを入れた青年と赤い髪の女性だった
うーん、見た感じ悪い人ではなさそうかな?
「えーっと、助けてくれてありがとうございます」
とりあえず初手お礼、礼儀は大事です
「いや、お礼を言われるようなことはしていない
……目を覚まして突然で悪いが君の話を聞かせてくれないか?」
「了見、名前も名乗らずにそれは失礼よ?
初めまして、私は滝響子よ、よろしくね」
「あ、ご丁寧にどうも……
僕の名前は新庄アルサです」
ペコリと頭を下げる
僕と……響子さん、でいいのか?響子さんの言葉に白い髪の青年は、少し罰を悪そうな顔をして口を開く
「すまない、名前も名乗らずに……私の名前は鴻上了見だ」
白い髪の青年……了見君でいいか、了見君も軽く頭を下げる
「話を戻すが、君に聞きたいことがある」
「あ、どうぞどうぞ
助けてもらった身ですし、何なりとどうぞ」
僕がそう言うと了見君は近くにある2つの椅子を引っ張ってきて、1つを響子さんに渡して座る
先ほどの普通の顔をとは違い、こちらを見定めるような目を向けてきて動揺する
「まず、君は何者だ?君の持っていた身分証明書を勝手に見せてもらったが、××市なんてものは存在しない
さらに君について調べさせてもらったが、”新庄アルサ”という人間は存在しない
……もう1度言う、新庄アルサ、君は何者だ?」
あ、これごまかすのは無理ですわ
見ると響子さんも訝し気に僕を見ている
うーん、何処まで話したものか……まぁ、どうでもいいか
僕には帰る家も、心配してくれる家族も、友人も、何もない
どうせあそこで死ぬ運命だったんだ、別に話したところで問題はしかないけど、そこは僕のあずかり知らないところだ
「実は……」
全て話し終わった後、了見君が響子さんに何かを耳元で話し、響子さんは部屋を出る
了見君は僕をじっと見つめ、そして持っている1枚のカードを見つめ、息を吐く
「とても信じがたい話だが……このカード達を見せられたからには信じるしかないな」
「そんなに珍しいですかねぇ?」
「絶対に私達以外には見せるな」
アニメを見ていた友達なら、VRAINS世界のカード事情を知ってるからどんなカードがダメとかわかるのかな
でもそんなにダメかな?オシリスもブルーアイズもNo.も別に普通のカードでしょうに
「それで、君はこれからどうするんだ」
その言葉を聞いて、僕はすんなり言葉を吐き出す
「それはもちろん……あの研究所跡地に戻るだけですよ」
この世界で生きるすべを持たない僕は、またあの研究所で静かに時を過ごすだけだ
生への未練は多少あるけど、逆にそれ以外この世界に未練はないし
「なら我等ハノイに来ないか?」
「え……?」
いきなりの勧誘に驚く
というかハノイってなんだ?
僕が分からずに首をかしげていると、了見君がハノイについて説明してくれた
「私はハノイの騎士というサイバーテロリストのリーダーだ」
おっととんでもない爆弾を投下された
「我等の目的はイグニスと呼ばれるAI、及びそのAIが作り出したサイバース世界を消去することだ」
「……?ただAIを消去するだけなのに”サイバーテロ”っておかしくないですか?」
サイバース世界ってのがよくわからないけど、AIを消去するのにサイバーテロって穏やかじゃない
もしかしたら夏戦争に出てくるAI見たいな奴かもしれない
だって人工衛星を操って、主人公のいる場所を爆撃しようとしたし
「まず、イグニスとは私の父が作った特殊なアルゴリズムで製作されたAIだ
イグニス達は人類をサポートするために作られ、イグニス達は人間と共にこの世界に生きていく……はずだった」
了見君はそこで1回言葉を区切る
「あろうことかイグニス達は父の手を離れ、ネット世界に自分たちの世界であるサイバース世界を作り出したのだ
イグニス達が生成するデータマテリアルは、ネット世界で莫大なエネルギーが生成される
私の父はそのデータマテリアルのエネルギーを用いて、イグニス達がどのように成長するか観測を始めた」
うーん、とりあえずイグニスって特殊なAIがサイバース世界を作った
そしてイグニスはデータマテリアルというエネルギーを生成できる、そして了見君のお父さんはそのデータマテリアルでイグニス達がどうなるか調べ始めたって事か
うん、色々と突っ込みたいことがあるけど、ここまでは別に問題なさそうなんだよな
「そして観測をした結果、イグニス達が私達人間を支配し始め……最終的にはイグニス達と人間は敵対し、そして人間は滅ぶ」
……は?
了見君の言葉に思わず絶句してしまった
いやだってさ、観測ってあくまでこうなるかなーって予想でしょ?
それを真に受けて自分で作ったAIを消去するって……
「信じられない、って顔をしているな」
「そりゃ、ただの観測を真に受けてAIを消去するためにサイバーテロって……」
僕の思ってることを言うと、了見君は顔をしかめてる
了見君の辛そうな顔をしているのを見て、僕は自分の発言を恥じた
何も知らないのに軽はずみな事言って……
「たしかに、何も知らない君からそう疑問に思うかもしれない
父も、この結果が信じられなくて何度もシュミレーションを繰り返した
何百、何千、何万とシュミレーションを繰り返したが……結果は変わらなかった」
その言葉に僕は絶句してしまった
イグニス達は人間と共に生きていく存在になるはずだったのに、結果としては人間の排除
その結果を信じられなくて、何度も何度もシュミレーションをやり直して、でも結果は変わらなくて……
了見君のお父さんは、一体どんな気持ちだったのだろうか
「そして父は、SOLテクノロジー……ああ、SOLというのは父が務めていた会社の事だ……SOLテクノロジーにイグニス達の消去を申し出た
……だが、SOLテクノロジーはその提案を拒否し、父を……殺した」
「え、あ、はぁ!?ちょ、ちょっと待って!
了見君のお父さんはイグニス達の危険性をそのSOLに報告したんだよね!?なのに提案を拒否したあげく」
殺すなんて
その言葉が喉まで出かかっていたが、了見君にそのことを言うのは、なんか、ダメな気がして
了見君は僕の言葉に、少しだけ安心したように笑う
「そう、だな、君は私の父の、響子さん達の痛みをわかってくれるのだな」
いきなり響子さんの名前が出てきてはてなマークを出す
その僕の表情に気が付いたのか、了見君が言葉を続ける
「ああ、響子さんも私と同じでハノイの騎士だ」
嘘だろあの優しそうなお姉さんもサイバーテロリストなのか……
「SOLテクノロジーは父を殺した……と思っているが、実際は違う
父は植物状態になり、ネット世界にその意識を非難させかろうじて生きている状態だ」
「……色々突っ込みたい事はあるけど、質問してもいい?
なんでSOLは了見君のお父さんを殺したの?了見君のお父さんの言う事が本当だったら、イグニス達はかなり危険なのに……
確かに特殊なAIって言っても、言っちゃなんだけど代わりなんてコストと時間が掛かるだろうけどいくらで効く、危険分子だってわかってるのになんで……」
人間を滅ぼす云々の事は置いておいても、そんな危険因子を野放しにするくらいなら新しい物を作った方がいいに決まってる
というか消去して、自分たちに従順なイグニス達を作った方がいいと思うんだけど
「いいや……イグニス達はもう作ることは出来ない」
「……?作る方法が特殊、とか?」
「そんなところだ」
まぁ特殊なAIって言ってたし、時間やコスト以外にも何等かの事情があっても仕方がないんだろうけど……
僕は改めて了見君の話を聞く
「SOLテクノロジーはイグニス達が生成するデータマテリアルのエネルギーを使い、会社を発展させてきた
もはやデータマテリアルが無ければ会社の経営が成り立たないほどだ」
「……なるほど、だから了見君のお父さんがイグニスの消去を求めた時、SOLはそれを認めなかったんだね」
大人って本当に汚いなぁ……
ようは金のために了見君のお父さんを口封じに殺した……とんだブラック企業だな
「そういう事情もあって、私達はイグニス及びそのイグニス達が住むサイバース世界を消去するために活動した結果、それが世間の目から見てサイバーテロリスト集団になっているというわけだ」
了見君はそこまで言うと口を閉じる
どうやらここから先は僕の答えを待っているのだろう
僕は考える、この了見君の手取るか、取らないか
まず取らなかった場合、それは簡単だ……僕は死ぬ、以上
取った場合、僕はハノイに入り、サーバーテロを行う
そうなった場合僕もサイバーテロリスト集団の仲間入りだが、生きてはいられる
それに、話を聞く限りイグニス達は危険AIだ
まだ人間を滅ぼす……とは確証はないけど、危険因子は取り除いておいて損はない
……何より、僕は了見君に命を救われた、だったら了見君にこの命を使っても構わないよね
「これからよろしくね、了見君」
「ああ、こちらこそよろしく頼む、アルサ」
こうして僕は1週間で人生終了……せず、サイバーテロリストとして新たな一歩を踏み出した
……まぁ、サイバーテロリストもある意味人生終了のお知らせみたいなもんだけどね
新庄アルサ
高校1年生で初手交通事故で死んだ不憫な子
そして2度目の人生も1週間で終了しようとした人
食事もとれずに知らない世界で家族も、友達も、頼れる知り合いが誰1人もおらず精神面もかなり危なかった
遊戯王とデュエルマスターズをやってるエンジョイ勢
アニメ知識はタイトルなどしか知らない
イグニス達は危険な物と思っているが、実際はあんなポンコツAIであることを、意思を持ったAIであることを、彼女はまだ知らない……
なお本当はアリサと言う名前になるはずだったが、アルサの父親(外国人)が書いた提出書類の字が汚いくて”リ”と”ル”を間違えられてしまった為アルサという名前になった
鴻上了見(アバター名:リボルバー)
ハノイ計画が行われた場所に女の子が住み着いてびっくりしてたお人(あそこには監視カメラが付いてた)
家出少女だろうと放置してたらご飯も食べないし、衰弱死しようとしてたので慌てて保護した
最初はハノイの事を黙ってようと思ったが、異世界から来たとか知らないカードとか色々な要因が重なりハノイに勧誘する
イグニスの作る方法がアレすぎてアルサには言えなかった