●反省会は駄目出しにあらず
その日の対戦を終えて三人はミーティングを始めた。
場所はいつもの……小規模フォースに与えられる小さな整備区画だ。
大規模フォースで結果を出して居るチームともなれば、普通のMMOよろしく良い場所をキープすることも改造する事も出来るのだが……。
今はこれが精一杯というところである。
「今回の気付きと自分なりの改善点からね」
まずは自分のやった成功と失敗、そして自分の視点からの修正を報告し合う。
それらを聞いてから、最後に角が立たない程度の提案と、フォースとしての話し合いになるのが定番だった。
フォースの性質によってはチームとしての勝利を目指すことを重視したり、人への意見を言わない事が前提の場所もあるが……。
三人は補い合ってパーツや戦術を考案して行くこともあり、それなりに意見を尊重しあっていた。
「まずは俺からな。成功面としては四次元機動は上手くいった」
クリスがバエルで試したのは前後左右と上下の三次元に、タイミングを変化させた四つめを加えた物だ。
どこから襲い掛るかに加えて、いつ飛び掛かってくるかまでを予想するのは難しい。白兵機体とはいえ、牽制用の射撃に加えてスラスターの追加まであるのだ。
「背面飛行とか相手が真似してもあまり成功しないってのも大きいな」
「そりゃねえ。誰も試したことが無いって戦術は、有効とは限らないからやらないってエライ人も言ってるし」
次の攻撃に繋げるマニューバー、失敗しても立て直すマニューバーを登録し自分は練習して居る。だから相手が追随しても自分だけが成功する可能性は高いが……。
「反省点としては相手が無視した場合に意味が無い。そして、あくまで俺個人にしか役立てて無いことか」
「複雑な機動に付き合う必要はないもんね」
良くも悪くも大勢に影響を与えない。その一言に尽きた。
アクロバットな操縦をすると判っていれば追って行かないし、それで有利な位置に着かれると判っていても射撃戦用機が追う訳はない。
そしてフォースとしての勝利には、足止め以上の貢献が出来る訳でもない。
射撃機体が四方の敵を狙って牽制だけは出来るのに対し、攻撃力高めな相手の前衛相手に有利以上に意味が薄いのだ。
「クリスの問題は自分で判ってるみたいだから、最後に調整だけしましょ。次は私ね」
「ならビッチ先輩の所まで駒を進めますね」
話を蒸し返さない為にアイコンを、クリスの位置からビッチ先輩と呼ばれた少女の元まで移動させる。
クリスへのツッコミ所は自分で気が付いたため、スケジュール表を戻さないと判り易くしておくためだ。
「情報リンクとゼロ・システムによる空域管制自体は今のところ成功ね。ミノフスキー粒子も戦闘散布までなら指向性通信機があれば問題無いし」
EWSと各種カメラによって早期警戒システムを造り、自分達だけが相手の情報を把握。
それをゼロ・システムで動きを予想し、指向性通信機……いわゆる指揮官用のブレードアンテナで送信すれば安定した戦いが出来る。
流石に一切の通信を途絶させる重戦闘散布だと難しくなるが、そこまでやって来る機体は今のところミラージュコロイドやハイパージャマーを前提としたステルス・チーム以外に見た事が無い。
そういう戦術はフォース全体でやらないと意味が無いので滅多にお目に掛らないし、判って居れば戦術リンクに頼らないでいれば良いだけのことだ。
あるいはワイヤーケーブルを使った『お肌の触れ合い回線』によって、味方だけ狙撃用にリンクするのもアリだろう。
「遠距離戦前提に成るけど、狙撃と曲射を使い分けれるからビームスマートガンだけで問題無し。バスターライフルは魅力だけど後が続かないものね」
少女が操るV2は、高空から精度の高い攻撃で援護する仕様だ。
武装そのものものが両手持ちでレドーム付きのビームスマートガンであり、ゼロ・システムやリフレクターのサポートもあってかなりの命中精度を誇った。
高い攻撃力でも相手が避ける可能性が高いことを考えれば、避け難い狙撃仕様というのは現時点では成功と目された。
「後はゼロカスタムのウイングスラスターは余計だったかな? 空戦機体にまとわり付かれた時は装甲になるから便利だったけど、それだって光の翼があれば迂闊に近寄って来なかったと思うし」
ゼロカスタムのウイングスラスターは疑似装甲にもなるし、場合によってはビームコートを塗ることもできる。
優雅でもあるので地上戦に限り付けてはみたが、それほど有効では無かったようだ。
「Rジャジャのバインダーやバエルのウイングみたいに武器を……いや駄目か」
「空域管制で戦う時は俺達が近寄らせないのが基本だし、専念するという意味では光の翼の使い方を覚える方がいいかもな」
光の翼が格闘武器ならばスキルポイントの問題で違ったのかもしれないが、実際には左右後方に自動発生するダメージである。
ミツオが言う様に武器を仕込む事ができなくもないが、それでは戦術用途がまるで変わってしまう。
地上専用のウイングスラスターを防御の為に稼働させることを覚えるよりは、光の翼で戦う事も前提にしたもう一つのモードの為に絞った方が良いのかもしれない。
「それじゃあ最後は僕だね」
何か提案でもあるのか、ミツオは駒代わりのアイコンを進める様には言わなかった。
彼はギミックや装備担当であり、二人も武装の提案だろうと当たりを付けて特には口を開かない。
「判ってたことだけど
ミツオのヘビーアームズは改修案として、デザインとして後発機のバスターガンダムをモデルにしたサブアームを付け両手の大型火器を安定させた。
大量の武装を使い切って殲滅するというコンセプト上、継続戦闘や武装変更を前提としたバスターとも被らないので悪くない改修だったろう。
「キャノンザックを背負うパターンとどっちが有効かは微妙だけど、装備を使いきった後に機敏に動くならこっちかな」
では何故、いままでやらなかったのかというと、他にも改修プランがあったからだ。
バージョンを進めるごとにギミックや装備を試して居るので、サブアームを付けて完成というデザインにはして居なかったのである。
二十番台の改修ではスラスターザックを背負って高機動にしたり、三十番台でもキャノンザックを背負って砲戦仕様にしてみたこともあったものだ。
「課題だった継続戦闘は近藤一家の真似して、盾にEパック付けたから多少はできる様になったと思う。本当の事を言えば実弾のままベルト給弾の方が良いんだけど」
「あれは盾に付けると誘爆が怖いとか言ってたろう。サイズも考えると継続戦闘と機動戦闘を並行するなら今のまま正解だと思うぞ」
ツインビームガトリングに盾を付けそれをサブアームで保持を助ける様にしたのだが、盾にガトリング用のEパックを張りつけたのだ。
弾を使い切ったらこれを挿し替える仕様だが、使うごとに軽くなるので今までと同じ路線で戦い抜ける。
「最後に特殊マニューバーの『静止射撃』を加えての半変形は、良い面と悪い面がクッキリでたね。あれは使い方が難しいや」
「確かにな。物凄く命中するんだが……」
ヘビーアームズは基本的に大型武器を使っており、主武装のガトリング系以外も大型ミサイルや強力なマシンカノンを使っている。
その為に命中精度へ大幅なマイナス補正が掛っており、全身のカウンターウエイトやアイゼン(宇宙ならばノズルスラスター)はそれを軽減する為の装備である。
これら全てにサブアームも含めて使用しつつ、停止時のみ命中力を底上げする特殊マニューバーの『静止射撃』を使うことで恐るべき精度を誇ったのだ。
「止まってるって事は簡単に狙える。ワザワザ止まるって事は、それだけ必死って事だもんね」
反面それは完全に見動きを止める。更に言えば射撃した後には即座の移動が無理な事を示して居る。
カウンターウエイトは移動速度を妨げる程度だが、アイゼンで地面を掴みサブアームで武器を固定すれば解除まではおいそれと動けない。『静止射撃』の方も特殊マニューバと飛ばれるだけあって、移動制限が掛けられているのである。
「後はギミックを思い付かないと変えようがないから、僕の方からはこんなところかな」
「じゃあ最後に他へ提案するアイデアがあればと、フォースとしての話ね」
一通りの反省会が終わったところで、次回に向けての話になる。
●次回へ繋げる為に
「クリスの件は自覚あるから良いとして、まず私への提案があればお願い」
バエルに関しては白兵戦が少しずつ有利になって居ることもあり、今のまま進めようと決まっていた。
腕に滑空砲を付けても飛び込む時にはスラスターの管理に忙しいし、下がる時は仲間の誰を援護するか見極める必要があるので撃って居る暇は無いからだ。
よってクリスを飛ばして少女のV2への提案からに成る。
「まず装備案。今のままいくならだけど光の翼のダメージをカットしたまま、オデットパーツの宇宙用にHi-νのフィン・ファンネルは?」
ミツオの案は今回あまり有効では無かったゼロカスタムの翼を外して、フィン・ファンネルによって攻防一体の能力を付加するもの。
今は光の翼をカットしていることもあり、フィン・ファンネル用の接続パーツをそのままウイングバインダーに付け変えれば済む。
「なら俺は逆に翼を戻すが、リフレクタービットごとサイコミュを取り外して、予備武装を腰にという案かな。例えばバスターライフルやビームマグナム」
逆にクリスの提案は元のダメージ設置に戻し、NT-Dやエグザム相手には使い難いサイコミュを外すと言う案だ。
リフレクターウイングビットを造るまでは試したこともあり、以前の戦闘データと比較するだけで済む。
「Hi-νのアレは素敵だし全体的に能力も上がるけど……。多分、次に二人が提案する事が出来なくなるわよ?」
四枚の翼は美しく、ビットとファンネルを使った攻防一体の戦陣はなるほど強力に見える。
しかし問題が起きない訳でもない。全体を見渡す余裕が無くなり、狙撃だけでなく他にする余裕が無くなるのだ。
最初は二人が次に用意して居る提案に気が付かなかった少女も、まずは装備案と言われたことで何を言いたいか気が付いた。
よって悪くは無いアイデアだが、戦術面での提案を考慮すると採用は難しい。
「バスターライフルやビームマグナムの方はリフレクターが完成しなかったら採用したかもだけど、現時点では総対的な命中力に勝るものはないわ」
「まさに『当たらなければどうということはない!』だからねえ」
強力な砲を持つことは空域管制を行う機体には相性が良い。
しかしながら狙撃と曲射を使い分けた攻撃は、ビームを見て避けることが可能な相手……上級プレイヤーに対しても有効なのだ。
大火力を使っても避けたり防いでしまう相手には、判って居ても避け難い今の攻撃の方が良いことに成る(勿論NPC相手には別だが)。
リフレクタービットがある以上は外してまで予備火器を用意するほどでもないだろう。
どうしてもと言うならば、ドダイ・ゲタの類に乗って持ち運ぶ方が早いとも言える。
「と言う訳で戦術面での提案なんだけど……。二人の注文って位置情報の管理で合ってるのかしら?」
「ああ。俺が『足止めを果たした時』に、どこに行けば良いかを教えてくれると助かる」
クリスの方はヘルムヴィーゲ・タウルス戦のような、動きだけ止めれば十分な場合だ。
流石に倒す為に追い込んで居る時だと、今の敵を放置して援護に向かった方が良いかまでは判らない。攻めあぐねていれば突破口を探す為に見渡す事もあるが、競り合っている時では難しい。
「僕の方は静止射撃モードの禁止タイミングがあれば……かな。狙う相手や絶好のタイミングを管理するだけなら、自分で出来るんだけど」
「その辺は自分でやってほしい所だけど……。まあ射程や移動力までは難しいか」
ヘビーアームズが半変形して放つ静止射撃モードはそれまでとのギャップもあって強力だが、相手からも狙い易いという欠点がある。
今使えば確実に相手を潰せる時に使う訳だが、狙いどころは判っても遠距離から狙われて居るかどうかまでは判らないのだ。
「クリスの方は倒した時は自分で判断してもらうとして、足止め成功後だけなら良いわ」
「そうしてもらえると助かる。こればかりは自分では判断が付かんからな」
こちらは要望としては、それほど難しくは無い。
対戦相手の動きと全体を眺めて、分断に成功した時に声を掛けるだけだ。
少女は乱射するのではなく効率の良い相手を探す時が多いので、序盤に限れば忠告するのは難しくは無い。
「ミツオの方は変形する前に合図をちょうだい。余裕次第でなんとかしてみるから」
「こっちはハンドサイン……じゃなくてゼロ・システム上に表示するかな」
ガンプラバトルではゼロ・システムが完全に再現できないため、あくまで攻撃方向や移動可能ラインの表示機能になる。
そこで長射程武器の射程表示や、通常移動での接敵距離を考えて口に出す事で対応する事にした。
もっとも相手の判断やマニューバーもあるので、長距離ブースターを使ったり変形して突っ込んで来たり、RGアーマーがそうした様に体当たりなどは計算外になるのだが。
こればかりは対戦ゲームである以上は、どうしようもないと言ったところだろう。
「次はミツオへの提案ね」
「特になければフォースの方針で良いのか?」
「おいおい。一応は何か意見くれよ」
とはいえ、ここまでの話し合いで大方出てしまっている。
自覚症状があったり、他人への提案中に要望として出てしまうからだ。
「私の後に思いついたらで良いんじゃない? ええと……煙幕は別に気にしないんだけど、やっぱNT-Dやエグザム相手の武器が欲しいかなあ」
「なら援護にアッザム・リーダーでも使ってくれれば……」
「それはフォース全体での話でしょっ。……無ければ仕方無いけど、できれば動きや今回の装備に関して」
なんというかミツオのヘビーアームズ
「俺からは何も無い。というよりも確実に仕留められるアレは、むしろ羨ましいくらいだからな」
「そうねえ。私からも、むしろ戦術として組み入れるかどうかを提案するくらい」
「じゃあ今のまま使うことにして、使い方だけ習熟すれば良いって事でいいのかな? つか、フォースの方針でもありそうだけど」
繰り返すが熟練プレイヤーや若くして上位に入るような相手は、普通にビームの攻撃を避ける。
その意味では直撃しそうな状態で静止射撃モードを撃ち込めば、ほぼ確実に一機は倒せると言うのはメリットの方が大きいのだ。
あえて言うならばV2も一緒に多角的に攻撃したり、無理やり逃げ出したところをバエルが頭を押さえるなど、連携攻撃の方が重要だろう。
普通の相手ならばシールドごと粉砕する様な猛攻でも、チャンピオンシップに出場するフォースのエースならば、そのくらいやっても不思議ではない。
「まあその方向で良いんじゃないか?」
「じゃあ次は宇宙戦……はいいとして、オディ-ルパーツとの連携ね」
「僕の方は追加装備を考えてみるよ」
こうしてフォースの方針も決まり、次なる戦いに向けて走り続けるのだった。
やがて来るであろう、少人数フォース用の大会や、サバイバルマッチを目指して……。
と言う訳で反省会というか、改良案回です。
普通のシナリオ構成だと長い連戦中にパパっと済ませるのでしょうけど、早い段階で次々にストーリーを進める為に短めの専用回を入れてしませています。
このストーリーではあくまで全国出場がやっとレベルとして、一発で改良案・最終形態案が成功しない、連携もうまく取れないと言うことを前提にしているのもあります。
次回は戦闘回、その次にまたミーティングの予定ですが……。
もしかしたら機体やキャラを専門に書くページや、MMO風ネット小説用のデータ(メールや掲示板などでやるゲーム)のデータを時々書くかもしれません。
これは頻繁に更新した方が良さそうなのと、時々、いまどんな状態で、どんなメリット・デメリットがあるかを把握し難いからです。
●自分だけの技
使い手:クリス
『MSタイ捨流』:
スラスターをチグハグに動かすことを登録して、自分だけがバランスの壊れた軌道を行い、最低限の体勢を戻して次に繋げる技。
攻撃であれば唯一の技である袈裟斬りに繋ぎ、防御であれば電磁砲での牽制や別の回避軌道に移行する。
MMO風のデータ的には、相手の回避・受けや命中を下げる性質がある訳ではない。
あくまで『え、そんな無茶な移動して攻撃できるの?』という位置に移動して、弱点を晒して居る場所に攻撃するだけ。
前面に集中している状態で斜め上や後方から攻撃されれば避け難い訳で、最初から無視して移動し続ける相手などには意味は薄い。
使い手:ミツオ
『静止射撃モード』
完全に動きを停止し、カウンターウエイトやアイゼン・サブアームなどを全て使い半変形を行う。これと同時に数ターン止まる時にのみ使える特殊マニューバーを組み合わせ、劇的な命中率向上を図る。
MMO風のデータで言うと、大型武器のマイナス-命中値を可能な限り0まで近づけ、命中判定に補正する技の同時併用。
大型武器は元から命中にマイナス値が付いているほか、同時使用すると命中率が劇的に落ちて行く。熟練プレイヤーはこれを知って更に下げようと回避行動を取るのだが、逆手に取って『実は普通に当たる攻撃』に命中ボーナスを付けて居る訳である。
使い手:イワノフビッチ
『ゼロG機動制御』
相手のデータを計測する能力と、相手のデータを表示する機能のコンボ。
EWSや望遠カメラ・仲間からの通信を駆使して敵の情報を丸裸にして、予測移動・命中範囲を見ながら指示を出す。
それだけのシステムに過ぎないが、戦闘中は目の前の事で集中力が下がり、かつ把握し難い常態なので味方だけが可能だと有利に立ち易い。
MMO風のデータであれば敵データ収集スキルと、予測行動に添うとボーナスが入るシステムの組み合わせ。ファンタジーで言うとセージ(賢者)とフォーチュンテイラー(占い師)のコンボなので強力だが、相手にも意志があるので上手くいくとは限らないのが欠点。
判り易いデータを計測して居るだけなので隠し装備に気が付く訳でもなく、そのデータに過信すれば予測など覆るからである。