ビルドダイバーMMO【完結】   作:ノイラーテム

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策謀の宇宙へ

●PKエリア

 資源エリアでご当地資材を手に入れ、拠点に備蓄したり売り払ったり。

 順調にフォース拠点(ネスト)を飾り立て、あるいは機能を拡充させる為の準備が整っていく。

 

 だがあるラインでその動きは止まった。

 ランキングがタイトル(上位入賞)を手に入れなければ上げ難いように、フォース拠点(ネスト)も拡充し難くなっていくからだ。

 調度品はともかく特殊な機材を造るためにはレアな設計図に、レアな素材が必要になって来る。

 

「相談なんだけど、PKエリアにいかない?」

 ガンプラバトルは対戦ゲームであるのだから、みんなプレイヤー・キラーなのは大前提だ。

 だが誰もが『常に』戦闘を前提としたい訳でもない。基本的には御伺いを立てて戦いを挑むのが普通で、不意打ち上等で強襲するなどはハードなミッション中くらいだ。

 町中は基本的に戦闘禁止であり、一般のプレイヤーは気楽なPVPを行いたいときだけプレイヤーと戦闘する。

 

 これに対して原作準拠……いや、それ以上にフリーなPVPを前提にして居るのがPKエリアだ。

 明確な危険地帯であるが、それと引き換えにするだけのメリットも多く存在して居た。

 

「PKエリアって、あの危険地帯へ? なんでまた」

「さすがにレアモノが集まり難くてさ。購入しようにも使い過ぎると拠点《ネスト》の改修費用がね」

 まず危険エリアだからライバルが少ない。

 資材が取り尽くされていない場所が多いし、人気なミッションもここでは入り放題だ。

 

「確か……入手率が違うんだっけか」

「そっ。普通に効率は二倍弱、ライバル居ない事を考えれば三~四倍近いかな」

 そしてここからが重要なのだが……。

 危険エリアでの戦闘・冒険を成り立たせるために、PKエリアではリポップやレア素材の入手条件が緩和されているのである。

 だからこそPKエリアで一稼ぎしようと思う者も居るし、それを狙う者も出て来る。

 

「もちろん倒されて無いNPCどころか、海賊PCも普通に出るけど」

「それだけなら普通の対戦ミッションと変わらんから反対する理由は無いが……。まだ何かあるんだろ?」

 せっかく収集した資材を奪われるのは痛いが、それなら予め警戒した上で護衛ミッションだけを受ければいい。

 だがそういうPCまで少ない以上は、他にも何かあると見るべきだろう。

 

「言い難い事なんだけど勝者側のドロップ品がね……。パーツを奪われこそしないけど、コピーされちゃう可能性もあることかな」

「それは微妙だな。ムザと負ける気は無いが」

 原作でボロ負けしたら殺されなかったとしても、捕まって機体や装備を奪われる可能性もある。

 PKエリアではそれに準拠して、負けた側のパーツやプログラムがドロップ品として出ることもあるという話だ。

 かといって標準に近い装備と機体ではPK好きなプレイヤーに負ける可能性が高くなるので、勝利数を進呈してしまうことになる。

 

 他にも録画不可の条件にしていても対戦データを保存可能な条件もあるとか、資材もストレージ保存できないとか面倒なこと枚挙にいとまがないほどだ。

 しかしながら資材稼ぎなどの退屈なミッションが続く面倒さを短縮出来るのは魅力で、特に行った事も無いエリアで未知のミッションを受けるというのは面白そうだった。

 

「俺は内容の濃い戦いができそうだし賛成だな」

「私はちょっと怖いけど……。どのみち暫くINできないから構わないわよ。その時にカスタム掛けるしね」

「僕も大規模な改修をするつもりだからね。……じゃあ向こう行きのミッションを受けて見ようか」

 元もと三人は造る拠点イメージに合わせて、外見や設定を見直すつもりだった。

 また三人は大幅なランキングを稼ぐような公式大会を目指して居ないので、コピーされてもたかがしれるというのがポイントだったかもしれない。

 データが撮られて警戒されるとしても、公式大会に出る頃にはアップデートしている予定だ。

 

 こうして一同は策謀の宇宙へと進軍して行く。

 

●敵は海賊船!?

 前金は資材の一部、後金はインゴット化したレア素材。

 その条件で護衛任務を引き受けたものの、行きは順調で拍子抜けするほどだった。

 

「意外ね。ここに来るまで襲撃がなかったなんて」

「どんな手品を使ったんだ?」

 暗礁区域にある鉱山ブロックに上陸して報酬を受け取り、次のミッションから面白い物を見繕って受ける。

 これだけで通常エリアの採掘を地道にやってるくらいの価値はあるので、攻略法を知って居るかどうかというのはまさに手品のようだ。

 

「手品の種は積み荷だよ。アガリが少ない間に奪うよりも、タップリと蓄えてから来るつもりなんでしょ」

「豚は太らせてから食えってやつね。でも一体、何を運んで来たの? いい加減教えてよ」

 一同が運んだのは機材を詰めたコンテナで、輸送用にコロンブスやパプアをレンタルせずともゲタやクタン三型のようなSFSでもお釣りが来るほどのサイズだ。

 そのサイズの機材では、複数あるとはいえ儲けが出るとも……海賊を思いとどまらせるほどとも思えなかった。

 

「答えは鉱山を効率良く動かす為の機材。要するに採掘装置や各種探知機器一式だよ。運営が用意してる隠しゲートを見付ける為の、ゲートキャッチャーも一応あるけどね」

「なるほど。鉱山の採掘効率をアップデートするなら、その機材よりもアガリを奪った方が効率良いものな」

 当然ながらPKの危険性は襲撃側にもある。

 待ち構えた護衛と機材目的で戦うよりは、輸送船団を襲う方がメリットが多い。

 

 機材を奪って自分達が使う手もなくはないが、そんなことをするくらいならば地道に安全地帯でやった方が気楽なのだ。

 リスクを天秤に掛けて愉しむ以上は戦闘の方が面白いし、そこに至るまでの計画や偵察を繰り返す方がまだマシだろう。

 

「という訳で次は採掘中の護衛だけどこれもアンパイ。データを撮りに来る連中にだけ気を付けといて」

「本命はその後の輸送ミッションって訳ね。今から腕が鳴るってものよ!」

「それは良いんだがな。……味方の中に平然と裏切り者が居ると言うのもどうかと思うぞ」

 三人がドックで機体を用意しながら外を見渡すと、中に護衛と言うよりは偵察機と言った風情の機体が見受けられる。

 それも三人が使うEⅢ以上のモノに見え、海賊対策だけではないのが透けて見えるほどだ。

 

『まあまあ。敵の敵は味方さ。露骨に鉱石を奪おうとしないだけ良いと思わなくちゃ。ヘビーアームズver.33(トラントロワ)、出るよ』

『データ泥棒くらいはマシと思うしかないか。バエル・ザ・ブラックナイト、出撃する』

『探したらガーベラテトラやシナンジュみたいな取引もやってるかもね。V2プリマ『オデット』、今日も踊るわよ』

 こうして三人は採掘現場の護衛を行いつつ、自分達が担当するコロンブスへの搬入作業を見守ることにする。

 

『それがさ、失敗した奪還ミッションの機体を兼ね払って取り戻……』

 その間に軽口を叩きながらちゃんと予定の鉱石であることを確認し、近寄るステルス機が無いかだけをチェックしておいた。

 そして、いよいよ輸送船団が組まれたのだが……。

 

『至急! 全フォースに伝達いたします。暗礁区域の中にザンジバルらしき船を確認いたしました。以上』

 輸送船団が出発して暫く急な通信が通達される。資源衛星に戻れない辺りで不穏な影が見え始めて居たらしい。

 ザンジバルは輸送に使われることもあるが、レンタル料金も高く、フルスクラッチで自作するような連中に輸送屋は居ない筈だ。

 

『どう思う?』

『ミノフスキー粒子を戦闘散布してないってことは、護衛を排除する自信はある。でもダミーは掴みたくないってとこかな』

『最近はダミーバルーンも巧妙になって来たもんね』

 護衛船団の作戦と言うのはそれほどある訳でもない。

 依頼を受けた各フォースが団結して敵を押し返すか、全体の無事を諦めて大多数だけでも逃がすか……くらいだ。

 

『ここじゃあ四方八方へ逃げ出す手も使えないし、地道に迎撃するかしないよ。それを判って悠然と姿を見せてるんだと思う』

『その辺も含めて駆け引きを愉しんでそうだな。厄介な連中だ』

 そして位置的には微妙な場所で、まだ採掘地に近くゲートには程遠い。

 後者を選んで分散逃走するには向かないし、万が一にも他の海賊が居たらリスクが大き過ぎるだろう。

 

『全フォースに伝達いたします。艦影からザンジバル級リリー・マルレーンと推測されます。以上』

 強襲揚陸艦であるザンジバルにはバリエーションがあるが、カタパルトの有る無しや武装の位置で判別する事が出来る。

 初期型はカタパルトを持たず、追加したのが改という風にだ。

 

『リリー・マルレーンにゲルググか。NPCの可能性はあるけど……』

 その中でも最初からカタパルトを備え、武装の位置も調整されているのがザンジバルⅡ型である。

 有名なのは海兵隊のリリー・マルレーンであり、エース級と古参兵設定のシーマ艦隊という海賊NPCが存在した。

 

 まだ遠いのと傾斜した姿勢で進むので機影は判らないが、ゲルググのバリーエーションであるとは判別できる。

 その姿は盾のある左側に回転しながら、渦巻状のフォーメーションを保って居た。

 そこまでは良くある光景だが、速度を保っているのが恐ろしいところだ。

 

『いや、動きが良い。おそらくPCだな』

 宇宙空間という地形にカタパルトを使った高速移動モードは、条件次第で誰でもできるオープン・マニューバー。

 しかしながらこれを維持したまま曲がることが非常に難しく、迂闊に移動すると回避機動を取らなくても高速移動モードが解除されてしまう。

 それほど複雑な軌道ではないとはいえ、暗礁宙域を抜けて来る動きはNPCの物とも思えない。

 

『通信拾ったんだけど、あっちのフォースで何か言ってる。前に出るなって……』

『多分アレでしょ。宇宙カラーで簡易迷彩したメガバズーカ・ランチャーで狙ってるみたいだから』

 色だけの簡易迷彩にそれほどステルス性はないが、初撃を叩きこめるだけでも意味があるということだろう。

 他のフォースが用意したらしき、メガバズーカ・ランチャーが最低限のチャージで発射するようだ。

 

『忍に火の気は厳禁。ゆえにこれ一発限り!』

『エネルギーCAP連結! 火縄メガバズーカー・ランチャー撃てーい!』

 Gの影忍に登場した火縄銃を摸した砲塔が直接照準で狙いを付ける。

 そしてFCSなしで見定め、ギリギリのタイミングでエネルギーキャップを直接連結して膨大な熱光線を撒き散らした!

 

『やったか!?』

『駄目だ、避けられた! くそ、あの動きPCだ。絶対にNPCじゃねえ!』

 火線が延びてゲルググが組むフォーメーションの中央を穿つ。

 だがターゲットロックの警告も無いのに即座に散開して再集結して居る。

 

 その間も高速移動は途切れることはなかった。

 高速移動を継続するには予備スラスターが幾つも必要で、明らかにNPC機には設置されて無い数を用意して居るものと思われる。

 

『敵影は? 今の光で見えたんじゃないのか?』

『んっと一機を除いて全部同じゲルググに見えるわね。その一機はテスト中に見た奴と同じバリエーション』

『MS-14Fゲルググ・マリーネだね。海兵隊ッポイ場所に改造が施してある』

 モビルスーツによる海兵隊の任務は、重要地形への突入任務が主眼だ。

 危険地帯での運用が前提となるがゆえに、高い移動力を保持する様な仕様に成っている。

 元のプラモ以上にコックピット回りを中心に装甲が厚くなっており、増加スラスターと並行して強化されていた。

 

『この構成、これはもしかしたらもしかするかも』

『……防衛ミッションで無ければ借りを返す良い機会なんだがな』

 以前に戦った相手の中に、ここまでこだわって居る連中が存在した。

 長期戦を主眼とした改造を施した機体を並べ、一機だけ強力な改造機を上位ランカーのエースが操って居たのだ。

 前回はこちらが攻撃側で判定勝ちをもらったようなものだったので、クリスとしては勝負が付けたかったのだろう。

 

『ふ~ん。じゃあどうする?』

『コロンブスやパプアを守るのが優先だからな。遊撃に回れなかったら、来た奴を迎撃するしかないな』

 襲撃側にも作戦がある以上、こちらに都合の良い対応をしてくれるとは限らない。

 輸送船団の警備状況を把握して、密度の薄い部分を突破して来るだろう。

 

 そう言いながら、暗礁宙域の中を跳ねるようにやって来るゲルググの群へ視線を這わせた。

 ほどほどに接近したところで彼らはフォーメーションを変更し、三機編成の小隊を三つ、指揮官機がそれらを率いるモノにスライドさせている。

 こちらの陣営を見定めたところで襲い掛って来る算段だろう。

 

『……突入っ』

『GoGoGo!』

 そして、その時がやって来た!

 二つの編隊をそのままの体勢で攻撃用に投入し、残る一つが足を緩めてそこに至るラインを塞ぎに掛る。

 そして指揮官機は狙撃しながら全体を指導し続けて居た。

 

『このライン! 俺達を無視する気か!』

『違うよ! 輸送船のエンジン狙いで飛び抜けて行くつもりだ。迂闊に飛び出るとコロンブスが食われる!』

 襲撃側から見れば、数隻ある輸送船団のどれでも良い。

 足を留めてしまえばその船を襲い放題だし、他が牽引していくならば全体のペースが落ちる。

 高速移動を保ったまま、隙の出来た船に狙いを定めれば良いのだ。

 

『ビッチ先輩、狙撃で狙える? 一番怖いのはシーマ機の狙撃だからさ』

『早いけど……やってやれないことはないか……なっ!? こっちからもお返しよ!』

 ミツオが警告して間も無く、MS-14Fsから長距離狙撃が飛んでくる。

 少女は自身が持つビームスマートガンで応射した。

 

『どうせなら通常機の方を狙った方が良くないか? 悔しいがエースを相手にしている余裕はなさそうだ』

 クリスのバエルは白兵に限れば相当な強さを持つように成ったが、逆に射撃戦は不得意だ。

 今も予備の武器を借りて射撃しているが、牽制程度にしか役立って居なかった。

 

 ゆえに全体を見ることが出来たのだが、他のフォースの中にはミツオが言った様に迂闊な飛び出しをして、手痛い逆襲を喰らった者もいる。

 

『マズイな。こっちの方が数が多いのに分断されてる。このままじゃバラバラに潰されることになる』

『まあ最低限の取り決めしかしてない同レベルの集団だから、烏合の衆だもんねえ』

 護衛はNPCのジムやドラッツェを覗いたとしても、二十機近く揃っている。

 それが僅か十機のゲルググに翻弄されている訳で、いかに連携の取れた攻勢が厄介か判ろうと言う物だ。

 

『成果は山分けということで、被害無視で協力するというわけにはいかんのか?』

『最初からそういう契約結んでるならともかく、今からじゃ無理! よほどの作戦案が無きゃ』

『自分のフォースが一番なんだから聞いちゃくれないわよね。でも今すぐ思い付く様な名案があったら最初から思い付いてる筈だし……』

 輸送船団の間を通り抜けたゲルググが、一度下がって補給を受けに戻っている間に補給ついでの相談し始める。

 しかし都合の良い案が思い浮かぶ訳はなく、再度の出撃を見守ることに成るのだが……。

 

『なあ。なんであの連中は警戒行動からスタートしてるんだ? そのまま弱ってるフォースに襲い掛れば輸送艦を何艦かは食えるだろ?』

『知らないよっ。ロールプレイか何かじゃないの? 近藤一家だったらロマンでやってても不思議じゃないよ』

 本当にそうだろうか?

 猛烈な違和感をクリスは受け取った。

 

(ロマンなら最初だけでも良い筈だ。原作を意識するなら連邦の治安維持部隊を警戒して、さっさと強襲する方がらしく(・・・)ないか?)

 そして答に辿り着く。

 それはPKエリアに詳しく海賊に襲われるというシチュエーションに納得してしまっているミツオと、未知だからこそ色々模索して居るクリスの差だった。

 あるいは単純に、他のフォースと連絡を取り合って忙しいかどうかの差であったかもしれない。

 

『判った! 連中も警戒して居るんだ! 他の連中に伝えてくれ、良い案があるってな』

『警戒って何に!? ここには連邦軍NPCなんて来ないよ!』

 そう、連邦軍は来ない。

 少なくともNPCが自発的に来ることはありえず、自治会を気取るフォースがパトロールをするくらいだろう。

 襲撃側もパトロール時間を調べて避けるというプレイングくらいは掛けて居る筈だ。

 

『奴らも他のフォースにPKされることを警戒してるんだよ! こっちのフォース全員を倒してドロップ品を得るくらいの価値を、あいつはら抱えてる!』

『え?』

 盲点と言えば盲点と言えた。

 PKエリアなのだから、海賊を気取って居るプレイヤーも他のフォースに狙われる可能性があるのだ。

 一緒になって輸送船団を襲撃したり、漁夫の利を狙うよりも良い獲物を襲撃者達は所持していた。

 

『そんなに都合の良いアイテムってあったっけ?』

『大き過ぎて気が付いて無いだけさ。そこにあるじゃないか……』

 首を傾げながら回覧版のメールだけは用意するミツオに、クリスは不敵な笑みを浮かべた。

 受け身になって何もできない者が、我慢の果てに獲物を見付けて攻勢に出る時の表情だ。

 

『あるだろう? ザンジバルだ』

『そうか! あれがフルスクラッチのプラモなら、設計図をドロップさせられる!』

 結局は考え方というか、根底はPKエリアにリスクを抱えて戦闘すると言うのは皆同じ条件なのだ。

 仮に相手を倒して設計図をドロップする確率は、そう高くないとしよう。それでも人数はそのまま確率の上昇に成る。

 

 倒される側……三人が全て撃墜されたら、確率は低くともEⅢシステムが誰かから落ちる可能性は非常に高い。

 同じ様に攻撃する者が複数名居るなら相手が一艦であっても、ザンジバルを墜とせば人数分だけドロップする確率が増える。

 

『えっと今のネタだけど……。幾つかのフォースも興味があるみたい。もうちょっとリスクを軽減できるなら、みんな乗って来ると思うけど』

『そうだな。さっきの被害補償の話を派生させて、基本は皆で損失を頭割り。ドロップ品の優先権が欲しい場合は、保障レベルというのはどうだ?』

 ゲルググが迫り重苦しい雰囲気のはずなのだが、気分の面では既に持ち直して居た。

 このままでは倒されてミッション失敗、ドロップ品として改造パーツをコピーされるという状態だった。

 これが『もしかしたら、ザンジバルを自分達が所有できるかも』という美味しいネタをぶらさげられたのだから、現金な連中だとは言いきれまい。

 

『連中にリスクを思い付かせることが出来たらボーナス、直ぐにでもやってもらうとして……。足止めと襲撃は俺みたいな迎撃が苦手な連中と、人数に余裕のあるところでいいだろ』

『それだと抜け駆けされそうだけど……。まあいいや、今のアイデアで提案してみる』

 この際は案の整合性だとか、利益を得る得ないなどは後回しだ。

 今のまま襲撃されて何もかも奪われるか、それなりの作戦に従って、可能ならばメリットを追い掛けるか。

 ザンジバルを手に入れるのは夢物語にしろ、座して待つよりは確実性が高いだろう。

 

 こうして攻守逆転祭りが企画された。

 輸送艦が分散しつつ、とある行為を同時に実行する。

 

『なんだ? やつらこのタイミングで四方に分散する気か? まだ早や……』

『おい、どうした?』

 通信にザリザリとノイズが混じり、画像も段々とボヤけ始める。

 有視界距離まで近づけば、既存の機体や特定しているネームドのランカーは過去の画像で再現され、良く調べて居ない機体は大枠だけで表示される。

 

 その現象は輸送船団の周囲から少しずつ全体に広がり、それゆえに敵味方を巻き込んで居た。

 特定の者にではなく、全てを巻き込むがゆえに対抗する事は出来ない。

 だが意図した迎撃だけは、何が起きるのか、そのデメリットは何かを熟知して居た。

 

『通信が効かない? まさか……』

『こいつは、ミノフスキー粒子の重戦闘散布だ! ちくしょう!』

 襲撃補助の為に足を留めた遮断班のゲルググが、別のゲルググに触れて『御肌の接触回線』を開く。

 途端にクリアに聞こえることから、ミノフスキー粒子が重戦闘散布された現象だととようやく理解できる。

 

 劇中に置いてミノフスキー粒子の散布濃度は複数あり、散布すれば通常通信ができなくなる。

 この不便さを回避する為にブレードアンテナで指向性通信を送るのだが、それさえも遮断して、震動伝播やケーブルによる接触回線のみとするのが重戦闘散布だ。

 主に戦艦の脱出シーンや、援軍を分断する時に良くみられるアレである。

 

『奴ら狂ったのか? 重戦闘散布をしちまったら、統制射撃や観測射撃で飽和攻撃もできんぞ』

『こっちはレーダー使えないけど、視認しなくても撃ちまくれば良いからな』

 遮断担当の班は、最初の襲撃で見事な成果を挙げたので気が付かなかった。

 本来ならば彼らを突破するか、遠距離から削るために近づく機体が無い事を。

 

 そして……。一部の護衛が歯抜けになって引き抜かれている事を。

 かき集められた戦力が、何処に向かっているか……をだ。

 

『なんだ、信号弾!? それも撤退信号? 上手くやれてるのにか? どういう……』

『ちょっと待て発光信号だ。待機してる二番機が指揮を受け継いで……。急いで戻るぞ! 母船がヤバイ!』

 凝り性の彼らは、信号弾と発光信号を組み合わせてこんな時でも連絡が取り合えるようにしていた。

 だがそれでも伝えられるのは、母船であるザンジバルが襲撃を受けた事。

 

 そして……指揮を取るべきMS-14Fsが、足止めを受けて居ることだけだ。

 

『まさか……。君に……で足元をすくわれるとはな! 短い間に腕を上げた』

『この間の借りは……、……で晴らしたぞ!』

 シーマ機を改造した機体とクリスのバエルが掴み合い、蹴りや体当たりを掛けながら強引に切り結ぶ。

 他にも足止め機体は居たのだが、MS-14FsにはV2アサルトに使われているリアクティブ・ビームアーマーが張られていたのだ。

 地味な改造だがありえるレベルの改造だけに完成度が高く、他の能力に影響を与えない範囲の優れたモノだった。

 

 結果としてクリスのバエル以外が戦うことが難しく、援護に向かっているMS-14Fに二重の足止めを行っている。

 

『あの時に完成して居なかったワザを見せてやろう!』

『なんの! 全国に上がって来い、そのレベルならば私でも使える!』

 バエルがキリモミ回転を掛けながら脇に回り込むと、MS-14Fsは小さいS字を描いて最低限の軌道で斜め横に向き直った。

 歪な巴戦を繰り広げた後で、真・バエルソードとビームサーベルがぶつかり合う。

 

 先ほどまでの掴み合いから一転し、離れたことで既に会話は成立していない。

 しかしながらファイター同士の言いたいことは、何となく判るものだ。

 

『君ばかりに時間を食っている訳にもいかん。これで……』

『甘くみるなよ! あの時よりも成長して居ると言った!』

 ビームサーベルが十手状に成り、真バエルソードを挟もうとする。

 そして速射砲で強引に撃とうしたところで、振動装置が挟まれるよりも先にサーベルを跳ね除けたのだ。

 

 続く攻撃で切り落とそうとしたところを、MS-14Fsは盾を犠牲に強引なバックを掛ける。

 

『ブロックは効かんと……ちぃ!』

『隊長!』

『君ばかりに構っては居られんと言ったぞ。……いかんながらこのまま撤収する』

 盾の表面を滑る様に刃が腕や肩を斬るが、バック中ゆえに致命打にはならない。

 そこへMS-14Fが駆け付け、両脇から抱える様に守りながら立ち去って行った。

 

 ザンジバルは残って居た護衛がなんとか迎撃しており、損傷を受けながらも戦場から離脱。

 やはり彼らもまた、他のプレイヤーからのPKを警戒していたのである。

 

 こうして三人はレンタルしたコロンブスの補修費用を払ったものの、それ以外の被害を抑えて初めてのPKエリア戦を乗り越えた。




 と言う訳で戦闘回です。
今回はガンプラバトルにも、PKエリアがあるのではないか? という予想と捏造のもとに行っています。

 思い付いたのは完全な非戦闘エリアがあったり、平然と戦いを挑める場所が多いのに、それほどバトルが起きて居ない事。
もちろんミッションでは普通に戦闘して居ますし、優先権もあるのでしょうけれど……。
そこで疑問に思い、普通のMMOのように対人戦闘を前提として、奇襲や騙し討ち上等のエリアがあるのではないかと思った訳です。
PKエリアだとレア率が高いとか、報酬が良いだろうと言うのは、それを成立させる為の捏造になります(ウルティマ・オンラインを参考)。
レアアイテム以外にもドロップ品として、相手の設計図を強引に奪えるとか、記録不可設定でもデータ偵察が可能とか捏造して居ます。

●オープン・マニューバー
 誰もが使える、登録せずとも行える特殊な行動。
宇宙空間でカタパルトがあると使える高速移動(移動力二倍)や、とりあえず一緒に射撃して仲間の命中率を挙げるとか。
他にも遮蔽物に隠れて、その大きさを盾代わりにするなど。

●登場機体
・MS-14FS【対ビーム仕様】
 シールドにあるビームコートだけではなく、リアクティブ・ビームアーマーを張りつけてある。
当然ながらスラスターも増加させており、数回の回避までなら高速移動を継続する事が出来る。
(オープン・マニューバーの高速移動は、曲がるとか、回避すると予備スラスターがないと終了する)
 武装としては管制機でもあるので、EWSの付いたロングレンジ・ビームライフルを装備し、オマケでパイルバンカーや海蛇も装備して居る。

・ザンジバルⅡ級『リバーシブル』
 リリーマルレーンやケルゲレンのフリができる、外見を入れ換えられるザンジバル。
フルスクラッチだから可能な方法であり、仮に倒されて設計図がドロップされると、その辺の情報もバレてしまうとか。

・『火縄』メガバズーカ・ランチャー
 Gの影忍で登場した、宇宙迷彩カラーのメガバズーカ・ランチャー。
FCSを搭載せずに直接照準で狙う為、ロックオン表示が出ない。
また直前までエネルギーを直結して居ないので、エネルギー反応で見付ける事も難しいのだとか。
なおビームの光条は激しいし、ステルス機能は無いので、隠れる機能はオマケである。
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