ビルドダイバーMMO【完結】   作:ノイラーテム

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トレード

●オファー

 拠点造りも形が整ってきたところで、思いもせぬ通信が入った。

 保有するプログラムやパーツの交換をしないかと言う御誘いだ。

 

「名指しで申し込んで来るのは珍しいな。バイヤーに並べて無い商品か?」

「それもあるけど……並べてるあつで扱いが微妙なのをワザワザ申し込んで来てる。……となると一回限りじゃないのか」

 オンラインゲームである以上は、当然の様にトレード機能がGBNには存在する。

 流石にスキルは無理だが、ドロップ品や設計図を始めとして、自作のプログラムにパーツも交換出来るのだ。

 それらを販売するバイヤーが存在するのだから当然とも言えるが、直接の取引は少々微妙な問題が存在した。

 

「冗談で並べてた複座式が継続で購入されてたよね? あれって同じところだったみたいだね」

「ということは試しで購入した後、有効だと判断したのか。どんな風に使う気やら……」

 郵便や簡易メールではなく、ネット上に管理するデータである以上は騙されることはない。

 だが重要な問題として、流通させる気の無い技術や大量の品を指定されることが殆どだ。

 要するに自分も得をするが、相手が劇的に強くなってしまう可能性も秘めて居た。

 

「向こうが提示して来た条件はなんだ? 先輩の自作だから直ぐには応じられんが、複座式は条件が緩くてもいいとか言ってたろ」

「聞かなきゃ良かったって想うよ? とても美味しいけど僕らには凄く微妙だからさ」

 欲しい品を名指ししてのトレードは、相手に取って欲しい品を直接釣り上げるチャンスである。

 逆に自分達から見れば、欲しくない物を並べられても困るだけだ。

 オンランゲームではありがちな事だが、GBNでも同様の葛藤が多くみられる。

 

「聞かなきゃ先輩に伝えられんだろ」

「……モビルトレース・システム。マルチロックも渡すならスーパーモードも付けるってさ」

 ストーリーに登場する機体制御OSの中で、トランザムやZERO-SYSTEMはパーツ由来なので比較的に手に入れ易い。

 だがモビルトレース・システムとスーパーモードは機体由来なので、手に入れ難い。

 三人が苦労して阿頼耶識の設定の仕方を発見した様に、それらも解放条件から見付けねばならないのだ。

 

 ゆえにこのトレードは非常に美味しいレーティングではある。

 もし現バージョンの阿頼耶識にビーム不可、モビルトーレース・システムにビーム前提という矛盾が無ければ飛び付いていたかもしれない。

 

「確かに微妙だな。だからこそ向こうも条件を下げて居るのか」

「だと思うよ。マルチロックの方を狙ってる可能性も無きしも非ずだけど……。これはこれでコツを見付けたら自作できるしねえ」

 副座式コックピットは自作して試してこそ見たが、それほど有効的な使い方を見付けて居ない。

 何のかんのといってモビルアーマーでもないのに、二人のプレイヤーが手を掛けるほどとは思えなかったのだ。

 

 だから放出しても良いと考えてNPCバイヤーに持たせていたが、相手が劇的に強くなるなら話は別かもしれない。

 場合によっては別に放り出しても良いのかもしれないが、代価が使うことを考慮して居ないモビルトーレース・システムでは判断に迷うところだ。

 

「これがボ-ドゲームだったら話を打ち切るか、将来を見越して思い切るか考え易いんだけどね」

「別に一回切りのゲームじゃないからな」

 限定された時間で一位のみを奪い合うボードゲームの場合は、勝たせない為に渡さないという選択と逆に大胆な譲歩が有効だ。

 しかしながらGBNはボードゲームではない。今は有効では無い技術であっても、他の形で役に立つ事もあるだろう。

 その意味では交換する事自体は悪いことではないし、コツが判れば自分達で解放条件を見付けることだってできるかもしれない。

 

 それでも躊躇ってしまうのは、そろそろランキングを上げに行こうという時期だからだ。

 別に勝ち続けるとか配点の高い試合で上位に食い込むつもりなどないが、技術を渡して強くなった相手と競合する可能性があるのは面白くはない。

 

「まあ判断に困るくらいなら、先輩にメールを投げて見てOK出たらで良いんじゃないの?」

「そうだな。俺らが五分五分で微妙と見て居るなら、余計な忠告無しで判断してもらうか」

 こうして今は居ない本来の持ち主に判断を託し、二人は互いにメールを送信しあった。

 

●交換でき得ぬもの

 何度か連絡文が行き帰りして、ようやく段取りが固まった。

 双方の基本的なラインは当初のままだが、間に別の人間を挟む事で三角協定としたのだ。

 

「今回はボクの我儘の為にごめんね」

「ううん、私達にも得があったから構わないわよ」

 交渉を持ちかけて来たのは、以前に戦ったヘルムヴィーゲとユニコーンのフォースだった。

 

「でも本当に阿頼耶識は良かったの?」

「アハハ。そっちも悩んだと思うけど、こっちも使い切れないんだよね」

 ユニコーンを操るショートカットの少女が、屈託の無い笑顔を浮かべて答えた。

 ヘルムヴィーゲとユニコーンは両機ともにモビルトレース・システムを使用し、スーパーモードを切り札にして居る。

 ゆえに現バージョンではビーム不可の阿頼耶識と相性が悪いのだ。

 

「ということはやっぱり、XのGファルコンやOOのオーライザーみたいにする気なんですか?」

「ええ。内蔵型とどっちにするか散々なやんだのですけれど……。相手の方が数が上の場合は、予備機にしかなりませんものね」

 自分も似たような事を考えていたのか、ミツオが導入するギミックに関して興味深々で質問を重ねた。

 RGアーマーを使っていたロングヘアーの少女は少しだけ悩んだものの、強引に取引を進めてしまった為か正直に答えてくれる。

 

「じゃあ武装の配置を変更するか、肩回りを改造した方がいいですね。FAユニコーンはそこが弱点ですから」

「そのつもりですわ。最初から合体して火器管制を行う事も考慮しますし、追加武装を使い切ってからばかりという訳にもいきませんから」

 そこまで話した段階で、ロングヘアーの少女は交渉がまとまってからの懸念材料を確認しておくことにした。

 

「改めて確認させていただきたいのですが、お渡ししたシステムの譲渡相手ですけれど」

「ええ、もちろん。こっちが渡すモノも無制限に渡されても困りますしね。お互いに渡すのは……」

 モビルトレース・システムとスーパーモードは阿頼耶識と矛盾する為、自分達では無く三角トレードで別の人物に渡す。

 それを承諾したものの無条件と言う訳にも行かない。

 もちろん三人とて判って居るし、無関係な相手に渡してそのフォースを強化する気はない。

 

「待て。それ以上はいい」

「「え……?」」

 だが、そこで待ったが掛る。

 今まで黙って居た番長風の……ヘルムヴィーゲを操っていた男がここに来て口を挟んだ。

 筋書きには無いことなので、一瞬驚いてしまう。

 

「俺と勝負しろ。勝った方が譲渡範囲を好きに決めればいい」

「その条件を呑もう。ついでにランキング戦に関しても同様で行こう」

 男の言葉にクリスが相乗りして、あれよあれよと野試合が決まってしまう。

 

「ちょっと、何勝手に話進めてんだよ。どうせ仲の良いフレンドにしか渡さないのに」

「そうだと判って居ても、なあなあで済ませない方が良い事もある」

 せっかくまとめたのに、勝負で決めたら荒れる元に成る。

 そう言って留めようとするミツオに、クリスは首を振って断った。

 

「どうせ判断に迷うことだったんだ。ああすれば良かった、こうすれば良かったと後で言うよりも勝負で決めた方がすっきりするさ」

「勝者が全て持って行く。元よりガンプラバトルはそういう場所だ」

 男たちはそう言って不敵に笑うと、背中を向いてゆっくりと歩き始めた。

 

「あーやだやだ。それだけ判り会えてるなら戦わなくても良いのに」

「あれじゃない? 河原で殴り合って笑わないと仲良くできない人種」

「全部の男がああいうのばっかりだと思わないで欲しいけどね」

 一同はガンプラを出現させる光景を呆れた目でみながら、離れて様子を見守ることにした。

 

『クリス・マモル。バエル・ザ・ブラックナイト、出る!』

『カワカミ・タケル。ヘルムヴィーゲ・タウルス、出陣するぞ!』

 黒いバエルと四足のヘルムビーゲが現れ、加速を付けながら正面から殴り合う。

 

『叩き潰せタウルス!』

『咆えろバエル!』

 四足のヘルムヴィーゲは前回のランスから、巨大なハルバードに持ち替えて居た。

 対するバエルは完成した震動する刀身により、斧槍を弾いて肩口に切りつける。

 

『覚えたな? では本気で行くぞ!』

『ぬっ、防御不可能技か。面白い! だがそちらばかりに良い恰好はさせられん!』

 バエルが飛びのいた所へ、ヘルムヴィーゲは四足部分を変形させる。

『黄道に星は満ちよ! 明・鏡・止・水!』

『そちらも技を進化させたか! 同じ死力を尽くすならば、こうでなくてはな!』

 前回は追加一体分の下半身を繋げただけであったが、今回は補強パーツにリニューアルされていた。

 上下に翼の様に展開し、ビームを用いて上のパーツは腕を下のパーツは脚力を強化しているようだ。

 放たれる光線よりも早く飛びのくことで、バエルは攻撃範囲から離脱して行く。

 

『あれはガンダム・ダンダリオンを参考にしたのか!』

『フルカウルほど素のパラメーターを強化しておりませんけどね。ですが……スーパーモード制御化ならば十分ですわ』

 あくまで稼働ラインは四足でありビームによる補強パーツであるので、手足の出力そのものを強化して居る訳ではない。

 だが闘気代わりのビーム砲を設置し、スラスターを追加するには十分な構造をしている。

 

『保てよバエル! 振り回すぞ!』

『防げぬならば受けねば良い、避けられぬならば回避せねば良い! 受けよグランド・カタストロフ!』

 戦場を翔けた後、斧槍が苦手な接近戦を挑むべく一気に踊り掛るバエル。

 対するは斧槍を捨て、範囲攻撃をもってカウンターを放つヘルムヴィーゲ。

 輝く掌圧がバエルの周囲を包み、逆進波となって動きを鈍らせたところへ掌底が迫る!

 

 もし勝敗を分けた要員があるとすれば、誘導した者と覚悟を決めて逆撃に出た者の差。

 あるいは前段階に置いて初撃を喰らったか、避けたかの差と言っても良い。

 

『俺の勝ちだ。だが……最後までは保もてなかったか』

『同時KOか。しかし数秒でも俺の負けだな』

 互いに防御を捨てたことで、真バエルソードがヘルムヴィーゲの胴へ深く潜りこんだ。

 だが接近されると当て難いハルバードではなく掌底で殴りつけたことで、バエルの胸元に大きな亀裂を造り出して居た。

 

 クリスの狙い通りであったものの、強化されたスーパーモードの性能を見誤り、結果としては相討ちと成った。

 僅かなタイムラグを生じさせた後、小さな爆発が二度。

 そしてダブルKOのアナウンスが流れたのである。

 

「……そちらのフォースに暫く下駄を預ける」

「それならランキングに関係しないから気にする事も無くなるか。増えた分の商品枠を使っていいぞ」

「こらこら! 何勝手に勝負して、勝手に話を進めてんだよ。みんなも何か言ってやってよ!」

 クリスとタケルは勝負の結果とあって納得している。

 納得できないのは交渉の流れを造って、上手くやったと自負して居たミツオの方だ。

 

「ホラ、やっぱりこうなったでしょ? 最近勉強してるのよ。ジャパニーズ・マンガ・アートで」

「釈然としない事もありますが、良い感じに収まったのではないでしょうか」

「そうそう。終わりよければ全て良しって言うじゃない」

「そんなあ……」

 女性陣の方は損得勘定が整ってしまったため、すっきりと収まってしまったようだ。

 そもそも分野がみんな違うと言う事もあり、自分のポジションを奪われないことなども影響しているのかもしれない。

 

「スーパーモードはあいつらに渡して、代わりに暫く同行するって話だったろ? これで8人。やろうと思えば10人の大会にも出られるじゃないか」

「そうなんだけどさ。……散々悩んだ挙句に決めたのに、最後の最後に脳筋展開ってのが納得いかないんだよ!」

 こうして憤懣やるかたない一名を除き、大団円でトレードにまつわる物語は終了したのである。




 と言う訳で、オンラインゲームならば交換を持ちかけられることもあるだろうとトレード会です。
次回は増えたメンバーを、お互いに技術を交換して強化していく。という回に成る予定です。

 カードゲームなどでトレードした事のある方は良く判るかもしれませんが、地方で迂闊なトレードすると相手の方が実は有利な取引もあるのですよね。
コレクターじゃないからレアだったり性能の良いカードをもらったつもりでも、相手はそれでコンボに必要なカードが揃ってしまうみたいな感じ。
その辺を再現する為に、今回は今までに登場したキャラの中から、主人公組が使わないスーパーモードを相手に選んでみました。

『阿頼耶識』
 割り込み行動が、複数回行える。
ただし現段階のパッチ・バージョンでは、ビーム兵器を搭載できず、味方にモビルアーマーが居てはいけない。

『モビルトレース・システム』
 動作でコントロールが可能になり、任意の地点にビームを打ち込んで闘気として使用出来る。
(データ的には動作環境の改善と、若干遅いものの思考操作でビームを撃ちこめる、特殊動作でも撃ち込める)

派生形:『スーパーモード』
 ビームを拳や足の先に放ち、火力や推力を一時的に向上させる。
全能力が大幅に上がるものの、本体エネルギーの消耗が激しくなる。

 と言う感じで主人公組はクリスが阿頼耶識を基本使用、ミツオと先輩は装備変更によって使用を考慮して居る(V2はスマートガンをダインスレフとか)。
だからスーパーモードをもらっても相性が悪い……と悩んで居た感じです。
一方でトレードを持ちかけて来た三人組みですが、FAユニコーンとRGアーマーが合体してwコントロールで火器管制UP・スーパーモード強化予定。
マルチロックももらったら、その火器管制は更にUP。スーパーモードはレート的に惜しいけど、複座式コックピットの方が遥かに有効。という差があります。

●機体OSに関する、隠し条件の発見と開放
 プログラムやマニューバーを打ち込み設定して行く中で、機体OSの条件を発見し、自分達でも作成できるように成ると設定して居ます。
阿頼耶識ならば割り込み行動をプラモとスキャナで画像を取り込んで、無数に条件設定して行くと、途中から可能になります。
モビルトレース・システムならば、コントロール用のポーズを視点ポインタで登録し続け、基本ポーズが崩れなくなるまで頑張る。コマンドも動作を無数に登録して行く。
などの、非常に手間な内容を登録すれば可能になります。
ただし、阿頼耶識ならば、動作設定した行動しか割り込みが出来ない。更に使いこなせるシチュエーションがあるかどうかは判らない。
モビルトレース・システムもまた、技コマンドを設定しないと任意の地点にビームが飛ばないし、できても当たるとは限らない……という欠点も存在します。
(スーパーモードは更に、どこのビーム砲がどこに対応するかを割り振らなければならない)

●追加登場人物
カワカミ・タケル(弟)
 ヘルムヴィーゲ・タウルスの使い手。北九州の方の人物で番長風のダイバールックをしている。
その服装は兄から譲られたもので、その兄もまた同じ格好でGBデュエルをしていたとか。
今回は四足からスーパーモードに変形するに際し、捨てて居た追加下半身を強化パーツに変更。
武装も移動攻撃用のランスから、重厚なハルバードに換えて居る。
なお、ガンダム・ダンダリオンを参考にしたとか言っているが、実際には聖闘士星矢・黄金魂における、タウルスのゴットクロスがモデルである。

リンダ・ヤマト
 ユニコーン使いの少女でボクっ子、体操服姿のダイバールックをしている。なおリンダは林田と書くのが本来は正しいと思われる。
その服装は本人が一番動き易いと思っている為。ダイブ中であっても一番意識し易いから。
現在の予定ではFAユニコーンの移動力と火器管制を強化する為、RGアーマーと合体するつもりである。

ヘイズ・ヘイゼル
 RGアーマーの使い手で、ロングヘアー。体操服のダイバールックをしている。
なお本名は霞で榛色の眼を持つハーフなので、ヘイズ(霞)・ヘイゼル(榛色)と名乗って居る。
服装は女子高の妹分であるヤマトが勧めたからという単純な理由であり、日常ではまず着ることが無いので意識の切り替えに使用して居る。
もちろん後付けの理由であり、二人の服装のモデルが単にトップを狙え!である為。
現在の予定では複座式を組み込んだ後、マニューバーによる合体モーションと火器管制変更を組み込み、できればマルチロックも導入する予定。
(マルチロックの開放条件は、視点ポインタによる対象設定と余分な動作排除の繰り返し、および友軍機のターゲット指定解除確認であり、やはり長時間の入力作業が必要になる)。
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