●逃げ切り型と、追い込み型
ラビアンローズを巡る戦いで、一同は追い詰められていた。
それでも保ち堪えて居るのは、一同が下がり続けて居ることと相手もまた本気ではないことだ。
サーキット・タケダは機雷とワイヤーの敷設を繰り返し、一同もまた自分達用に指定されたドックの周辺を時々薙ぎ払うのが精々だった。
『まずいよまずいよ。このままじゃ連中の良い様にされちゃう』
『どして? ボクらは別に困って無いし、他のフォースも来てるじゃん』
ユニコーンが合体して居る為に四機しかいない一同が健闘できた理由は、サーキット・タケダが歩機で無かったほかにもう一つある。
下位集団から同じ考えで先行して来た、二機のガブスレイが高速移動で遠距離攻撃を繰り返していた。タケダ側が三機をコロニーの足止めに置
き、ここでも一機ずつ交代で補給して居たこともあり戦力は一応互角だったのだ。
『本当ならもう一つの本命であるコアファイターズも来てるべきなんだよ。それが来て無いって事は……』
『私達を当て馬に使って居ると言う事ですわね。そう考えれば遅れているのでは無く、様子を見て居るだけ』
コアファイターズはGアーマーに搭載して全機が高速移動できる。
それなのに訪れて無いということは、まだ戦う気は無いということだ。
『ふ~ん。でも変なの。このままじゃあ距離とポイントが開き過ぎて勝負ついちゃうんじゃない?』
『それは……。多分、アレが答よ』
リンダの疑問はもっともだ。
到着時間にスコアを加味して計算される為、先行して居る上に全てのデータを抑えているタケダの有利は覆らない。最低移動力の高さに任せて追いついたとしても、追い抜いて一位の点を取らない限りがスコアが足りるかも判らない。
『え? さっき来たばかりのリゲルグ、損傷直さずにもう出てる?』
『まだ一機だけ。エネルギー補給だけして先行すれば十分にお釣りが来ますわ。おそらくは同じこと……あるいはそれ以上をコアファイターズも行うでしょうね』
足止めに残ったリゲルグとザク二機。
その中でも損傷していたリゲルグが、エネルギーの補給だけで既に出発状態なのだ。
仮修理すれば耐久値はともかく隠し腕は動く様になる筈だが、タケダは補給を打ち切ってもう出撃する気なのである。
『推進剤の補給を半分、その穴埋めに同時に大量に装備したプロペラントタンクの交換で補う。……そんなところじゃないかな』
『理屈は良い。問題はこの後どうするかを話し合っておけ』
コアファイターズの案を推測してみせるミツオに対し、タケルは興味なさそうにガブスレイの担当ドック周辺にあった機雷をダインスレイヴで撃ち抜いた。
『今の内に掃除しておけ。決着は後で付ける』
『……そうさせてもらうわ。お互い様だから御礼は言わないわよ』
『また勝手なことを……』
共闘のお返しとして邪魔はしない。
タケルの申し出をガブスレイ二機は受け入れて、自分達のフォースが補給する為のドック周囲の機雷を処分し始めた。
ミツオも苦笑を浮かべるがそれを止める気は無いようだ。力を借りたのも事実であるし、ここで争う方が無益だろう。
結局のところ一同も計画を練り直す必要があり、また残り三人が合流する前に補給が必要だったからである。
●
結果的に合流した三人も損傷を放置して、補給だけを整えると出発する事にした。
今ならばまだ間に合うレベルであるのと、エネルギーの消耗と引き換えにAEGSを使っていたことも大きい。
巨大な防御壁を造って居たので、クリスのバエルを除いて大きな損傷は無かったのだ。
『コースの情報を伝えて無いなら良いじゃないか。貸し借り無しってことで』
『相談もせずに独断ってのが問題だって言ってるんだよ』
受信したデータを精査しつつ、次のポイントである地球への突入地点を目指していた。
全てを受信し切れていないという不備があるゆえに、幾つかの候補地がある。だが0083の足跡を辿ると言う設定があるならば、目標は北米と南米の調整を出来るエリアで間違いは無いだろう。
『その辺はまた後で反省会をするとして、残りの情報は何だったんだ?』
『付随ミッションのデータ。邪魔なデブリをコースから除けろってさ』
『最終ポイントがソーラーシステムだとすると、レーザー照射に邪魔な物を排除せよと言う事ですわね』
なるほど。という声が相次いだ。
設定を通すと見えて来るモノがあるというか、一本筋が入っているように感じられる。
『おそらく次は激戦に成るね。ぼくらも修理はスルーしたし、コアファイターズも今頃は追い上げを開始してる筈だ。最後にノイエジールが居るかは別にして、ここで稼ぎつつ、可能な限り邪魔をしておかないと」
『でもさー、それって時間が過ぎるとレーザー来るんだよね? うええ』
そしてデブリの除去で点数が入るのだとすると、もう一つの問題が浮かび上がってきた。
気を取られ過ぎるとゴールした時の時間による点数が入らない。だが先を急ぎ過ぎると、後続のフォースがここで点数を稼いでしまうということだ。
相手に点数を渡さない程度に稼いでおく必要があるということである。
当然ながらソレは相手も考えると言うことであり、フラッグ機以外はここで激闘を繰り広げることに成る筈だ。
『先輩は受信してる間、リフレクターを駆使して狙撃。ジンはその援護と護衛ね。タケダもコアファイターズも遠距離タイプを残すと思うし、ここの主力はアキラかな』
『『了解!』』
ミツオは一同の軍師役がすっかり板について来たのか次々と指示を出す。
普段はぶつかることが多い面々も、その指示が妥当な限りは反発する事も無い。
『クリスは阻止臨界点から突入ポイントギリギリまでをカバー。代わりにタケルが護衛に入れ替わって』
『問題無い』
肩に損傷が残ったままのバエルは戦闘でのペナルティが大きく、逆にヘルムヴィーゲはそれほどやることが無い。
ここでは役を入れ換えて、重装甲のヘルムヴィーゲがフラッグ機であるV2の護衛に回り、移動力に優れるバエルが稼ぎ役である。
『ボク達はどうする?』
『悩ましいところですわね。最終ポイントでどれほどの戦闘が行われるのか次第ですけれども』
『それなんだよなあ。結局、壁役にノイエジールが居るか、他のフォースが仕掛けて来るか次第だからね』
ボスが居てそれをくぐり抜けてコントロール艦を目指すか、それとも他のフォースと戦闘に成るか。最終的に戦闘が起きる可能性があり、同時に無い可能性もある。
『まあ、その辺は受信して見ないと判んないでしょ。いくらなんでも運営が最後に戦闘有りか無しか、伝えない訳ないし』
『それもそ……っ!? もう来た! 早過ぎる!』
アレクサンドラがまとめたところで、レーダーの限度いっぱいに敵影が映った。
まだモニターで視認できる位置には居ないが、Gアーマーに合体し六機状態で進軍していた。
『幾らなんでも早過ぎだろ! やっぱり最初から狙ってたんだ』
『あちらも補給だけして居たのでしょうけれど、ひょっとしたら以前にも似たような妨害をされていたのかもしれませんわね』
『あー。そしたら対策入れてるよね』
ドックに入る前に他フォース同様周囲の機雷を掃討したのだろうが、おそらくは接近する前に一気に処分したのだろう。
レースには不用な装備にも思えるが、今回のような執拗な妨害を考えれば想定してもおかしくはない。それこそ補給時には分離せざるを得ないのだ、ガンキャノンがスプレーミサイルを、ガンダムが散弾を入れたバズーカでも撃てばよい。
『え~と。……ここは道を譲って突入コースの根元から行こう。そうすれば撃たれたとしてもガンタンクMAから一度だけ。何より掃除し易いからね』
『それっきゃないわね。そのコースなら途中から重力加速も使えるし、指定ポイントまでには無駄にした距離を取り戻せるわ』
ミツオはMAPを表示すると目的地をクリックしてルートを示す。
矢印は落下するように地球に向けて移動した後、指定ポイントで大きく曲がってソーラーシステムがあると思わしき太陽側に向かっていた。
そしてコース変更の甲斐もあり、コアファイターズとすれ違ったのはMAP上限に侵入する時だった。
『来ますわ。120mm無反動砲による長距離砲撃!』
『装甲が薄いメンツは、盾持ちと装甲が厚い機体に隠れてて。その後は散開! 適当にスコアを稼ぎながら指定ポイントに急降下するよ』
『『了解!』』
前面に『風神』やユニコーン、そしてヘルムヴィーゲ。後列に残りという陣形で突入。
直撃を防ぎながらMAPに侵入し、各機体はそれぞれに間隔を保ちつつ距離を開けて行った。
そしてデブリや小隕石をコースから排除しつつ指定ポイントに向かっていく。
『レーダーに感あり。下位集団が見えました。それと大きな隕石がかなりの速度で飛び込んできますわ」
『それだ! そいつを盾にしながら途中まで突っ込んで行こう』
暫くしてレーダーで周囲を監視して居るヘイゼルからアナウンスが入った。
一同は隕石の陰に入ってタケダやコアファイターズからの攻撃を遮りつつ、四方にあるデブリを射撃していく。
『ジンにぼくらの背中は任せた。アキラはスーパーモードでこいつをお願い』
『了解です! 任せてください』
『たかが石ころ一つ、ボクの雷神に掛れば問題無いですよ!』
やや間があって隕石を利用できる最大限の時間が過ぎた時、一同は飛び出しながら背中を『風神』のプラネイドディフェンダーに守られながら移動。
そして『雷神』は『風神』の脇に残りながら、光を帯び始めた。
『轟け雷鳴、落ちよ稲妻! 明鏡止水!!』
ヘッドバルカンやハンドグレネードから変更した小形ビーム砲など、各所に仕込んだ同様の仕掛けがマークⅡとしてのボディを輝かせる。
ここからが『雷神』としての真骨頂、メルクリウスをイメージしていた筈のビームスマートガンが別のモノに変貌して行った。
『神成る力を受けるが良い! 雷・神・剣!』
ビームスマートガンの光線が、スーパーモードにより位置固定される。
長大な射程を持つその火力を、物干し竿を越えるほどの超巨大ビームサーベルとして起動させたのだ。流石に一撃で真っ二つに成りはしないが、隕石はコースを外れて離れて行った。
『やったね! これで最大サイズはぼくらの物だ。数は何処のフォースが取るか判らないけど……』
『そんな事言ってる場合じゃないわ! ちょっとこれ見て、最終ステージかなり厄介よ!』
『え? あれ? ミノフスキー粒子が散布されてないの?』
作戦が上手く言った事をミツオが喜んだのも束の間、アレクサンドラから全員に指示書が配布された。
今までは途中でミノフスキー粒子が重戦闘散布されていたので、リンダが驚くのも無理は無い。
『最終関門は機動目標……ノイエジール(?)に一定数のダメージを当ててからゴールへだと?』
『うわぁ……。こいつはマズイよ……。仕方無い、ぼくとアキラに任せて皆は先に行って!』
『サーキット・タケダも同様の判断をして、妨害をする暇は無いと判断したのですね……』
移動し続ける機動目標にダメージを与えるのは難しいが、相手にI・フィールドが有ると成れば尚更厄介だ。
ビームのみに切り変えた『雷神』は役に立たないし、火力だけならヘビーアームズの火力は有意義だが……この中で一番足が遅いという欠点がある。
『ゴメン、本当は私も残るべき何だけどね』
『フラッグ機は居ないと困るから仕方ないよ。とりあえずタケダとコアファイターズにだけは、処理数のスコアを渡さないようにしとく』
V2は攻撃がビームスマートガンだけなので、超距離火力はあるのだがノイエジールには通用しない。一応は機動目標としか表示されていないが、ここまで来れば何が相手かは問うまでも無い(デンドロビウムにもI・フィールドは装備されているので差は無い)。
『肩がこのザマだが、I・フィールドくらいは何とかして見せるさ。後は任せたぞ』
『うん、任された。そっちこそ頼んだよ』
『我らに勝利を! お願いします、閣下!』
バエルは移動力があるのと、避けられない攻撃・受けられない攻撃を使い分けられる。
反面、両手でキープしての大振りしか火力を上げる手段が無いので、同ランクとの一騎打ち主体の機体だった。
だから両手が使えない以上はノイエジールは倒し難い相手なのだが、それでもI・フィールドを排除するくらいはなんとかなるだろう。
見ればコアファイターズも同様の決断を行ったのか、ビーム砲に改装したガンキャノンとノーマルのガンダムがMA状態で居残るようだ。
その判断を見ると彼らもコースの設定が0083であるという事をどこかで悟ったのだろう。
いずれにせよ閃光するサーキット・タケダを追って猛追を開始した。
●最終決戦
戦いは混迷を極めた。
戦場を所狭しと暴れ回る赤いゼロ・ジ・アジール。
先行した時間のボーナスを使って待ち受けるサーキット・タケダの主力部隊と、遅れてやって来た二つのフォース。それらが四つ巴となって激戦を繰り広げて居た。
『あんなモビルアーマーあったっけ?』
『判らん、一番詳しいのがミツオだからな。だがミサイルが無いんだ、助かったと思っておこう』
ゼロ・ジ・アジール設定上のモビルアーマーで、シャアの為に計画が用意されたが頓挫としたということに成っている。
その後に一部のコミックで流用されたらしいが、基本はメガ粒子砲によるビーム攻撃なのでリフレクターで防御が効いた。
とはいえそれで戦闘が楽になった訳ではなく、タケダは早々にスコアを稼いだ後でむしろゼロ・ジ・アジールを守る様にしながら自分達だけスコアを伸ばしている。
コアファイターズはその防御網へ長距離砲と移動力を活かして規定のスコアを狙いつつ、タケダとこちらを排除する事でその後を有利にする狙いのようだ。
『こうなると手に入れられなかった最後の情報の中に、制限時間を越えないとゴールが出現しないと言う情報があったのかもしれませんね』
『そういえばボクらって、全部の情報を集めたわけじゃないんだよね……』
『それを言っても仕方あるまい。何とかして規定のダメージを与えないとジリ貧になる』
一同は二つのフォースによる牽制を受ける立場なので、攻勢を阻まれて中々ダメージを与えられない。
一番上手く宛てられたのが、ダインスレイヴ一発きりなのでこのままではスコアによるペナルティを貸されてしまうかもしれない。
せっかくここまでのスピ-ドが二番手であり、デブリ除去でも良い点数を出して居るのが無駄になりかね無かった。
『こうしていてもラチがあかん。三機のスーパーモードを束ねて……』
『あっ、またミノフスキーの圏内に入ちゃった。でもどこかで突貫するしかないんだよね』
戦場が広域にまたがった為に、どこかで息継ぎする様な通信が行える。
話し合っている様な状況でも無いので数回喋れれば十分なのだが、それでも息苦しさを感じるのは仕方が無い。
結局のところ、危険を承知で大きなスコアを取りに行くのか、このまま最低源ラインをなんとか抑えて済ませるのか。
そのことを先送りにし続けた来たツケが響いていると言えた。
『どうしよっかお姉様?』
『機動目標はノイエジールに準じた性能の様ですし、ビームを弾きながら移動。接近戦を挑むのが王道ね。問題は残りのフォースがソレを許してくれないだろうということ』
ダメージを与える方法はそれほど難しくは無い。
接近して白兵戦を挑み、それまでの過程でバズーカやダインスレイヴを当てるだけだ。
しかしながら王道ゆえに判り易く、他のフォースから牽制され易いという欠点を持って居た。
『他のフォースが追いついて来るのを待つか、それとも勝負に出るか……だね』
『前者は安全策だけれどもダメージ上限が厳しくなるわ。二つのフォースで独占されてしまうから、相当に強烈な……場合によっては撃破ボーナスを狙わないと上位争いも難しいでしょうね』
コアファイターズよりは指定ポイントのスコアで上回っている筈だが、彼らが移動力に物を言わせて受信しきるまで待って居た場合は判らなくなる。
タケダにはデブリ除去以外で勝てる要素が無いので、安全策を取る場合は二位狙いですら怪しくなってくるだろう。
堂々巡りに陥りかけたところで、ヘルムヴィーゲが強引に進路へ割り込んで来た。
『これ以上の議論は無駄だ。他のフォースに期待するのは止せ』
『……大将。判り易いのがありがたいけど……またモメごと起こさないといいけどな』
『でもそれしか方法はありませんわ。でもどうやって他の方を説得……』
タケルは躊躇なく行動した。
これまであからさまな相談をするとこちらの行動が予想されてしまうので、中々『お肌の接触』通信で相談出来ずにいた。
ゆえに散布された地域を飛び出した時にだけ会話して居たのだが、そのタブーを押し切って通信の端渡しを行ったのだ。
最低限の事だけを伝えると、次はバエルの方に向かっていた。
いずれにせよこれだけは判る。
ここまで強引に相談を行った以上、他のフォースも警戒をして居ると言うことだ。
一同は警戒態勢を取った相手に対して、どれだけ危険であっても突破せざるを得ないということである。
だがそれでも、今の状況でジリジリと順位を下げるよりはマシだったろう。何より勝利をつかむ為にこのミッションを受けて居るのだから。
『博打に出るのは読まれている。だから『三つの矢』全てが囮で、全てが本命だ』
『『了解』』
ハンドサインで総攻撃の合図を出しながらクリスのバエルは第二列についた。
風神の防御壁を盾にして、ヘルムヴィーゲとフルアーマー・ユニコーンが突進。その隙をバエルが突くという簡単な作戦だ。
勿論予想されているだろうから、実際に狙うのはI・フィールドのジェネレータがある部分。壊すか大きな負荷を与えられればしめた物で、V2の曲射狙撃で片が付くだろう。
『先輩に援護は任せた。フラッグ機狙いを避けながらで言いから、適当に援護してくれ』
『了解。この程度で踊れなくなるほどじゃないわ』
流石に付き合いが長いだけあって、首を向けただけでアイコンタクトが出来る。
アレクサンドラはビームスマートガンを構え、ゼロ・ジ・アジールではなく近くに居るドムの改造機に向けて居た。
『行っけーリフレクター!』
『今だ、突撃する!』
ビームスマートガンを回避したドムに対し、再度の連射を行いながらリフレクタービットを射出。
それは一同を守りながら、徐々に相手サイドに近付いて行った。
『……行け、プラネイドディフェンサー! AEGSの盾となって皆を守れ!!』
普通は全周三器か四器で張り巡らされるプラネイドディフェンサー、これを十二器全てで一面だけを守る。
通常攻撃に対して一機を守る為には過剰なほどだが、今回の様な戦いで仲間を同時に数機守るには敵した防御法だろう。
前方のタケダのみならず、脇から襲ってくるコアファイターズの超距離砲をも防いでいる。
そしてAEGSの盾に隠れながら、タケダの懐に斜めに潜り込んで行く。
できればコアファイターズがタケダを潰してくれれば良いという位置取りだったが、読まれていたのかサっとタケダ陣営のフォーメーションが左右に分かれた。
『見え見えなんだよ!』
『さっきの戦いで見せてもらったしな!』
脇に回られて撃ち込まれる為、比断面積を下げる程度にしか役に立って居ない。
だがそれでもコアファイターズの弾幕を防ぐ手立てには成っているので、ゼロ・ジ・アジールに近寄るにはこれで満足する他は無い。
それでも接近できるのであれば十分、そして今から行う動作を覆い隠す効果もあるのだ。
『黄道は満ちよ、明鏡止水!』
『ヴォォル……テェェクッス!!』
ここでヘルムヴィーゲとユニコーンがスーパーモードを発動させた。
スーパーモードの本質はビームを闘気のように扱い、出力を様々な能力に振り分けることが可能な物だ。これが作戦における第二の矢!
後方に向けて放つビームをスラスターの補助に回しているので、先ほどよりも強力な加速で駆け抜ける!
『なんだこいつ! さっきよりも性能が……』
『落ち付け、ただのスーパーモードだ。所詮は長続きしやない!』
激しい戦闘に慣れて無いメンバーを、戦いも慣れて居る親衛隊が落ち付かせて行く。
やや上に立つ者が落ち付いてサインを出して居るのは大きいのだろう。一般メンバーも落ち着きを取り戻し、正確にフォーメーションを築き直した。
『保たんか……だが問題無し!』
スーパーモードで振り分けた能力は、別に移動力だけでは無い。
ビームシールドとしても機能するので、装甲も若干増えている。移動力の上昇により攻撃を喰らう回数が減って居る事を合わせれば、それなりの時間が稼げるだろう。
『ひゃあ!? あんまり保たないよー。なんとか当てないと!』
『武器管制はこちらでやります。貴女はできるだけ撃つことに専念しなさい』
ユニコーンは合体する事で、フルアーマー時よりも武器の扱いがやり易くなっている。
そしてRGアーマー側に居るヘイゼルが管制を行うことで、バズーカやガトリングの命中精度が上がって居るのだ。
今は弾幕を避けて居るので中々当たらないが、もう少し接近すれば普通に当たる様になるだろう。
『……すまんな、みんな。このチャンスは逃がさん!』
これまで風神のもとに居たバエルが、加速力を活かして一気に戦場を駆け抜ける。
第二の矢が集中砲火を喰らっている以上、比較的安全にゼロ・ジ・アジールへ接近する事が出来た。
そして阿頼耶識を発動させて、近距離レンジに辿りついた段階で一気に攻め立てたのだ。
『もらった!』
真・バエルソードによる袈裟斬りがゼロ・ジ・アジールの胴に決まり、再び振り上げrのではなく、体を回転させながら下胴を袈裟斬りを浴びせる。
回転するような斬撃の中で、クリスは『誰か』の声を聞いた様な気がした。
『……そう、この私がね』
『何!?』
強烈な衝撃が訪れた後、バエルの体をサーベルが貫いていた。
だが敵の体は近くには見えない。
いや……正確にはサーベルを持った腕だけが、長距離から貫いていたのだ。おそらくはこちらの行動を読んで狙っていたのだろう。
『こちらの手の内を読んで居たのだろう? ならばそちらの行動もお見通しさ』
『やれやれ、なら仕方無いな』
接触回線で聞こえると言うことは、視えない様でも何処かにコードが繋がって居るのだろう。
そういえばシュトッツアー仕様のゲルググやドムが居たわけだし、サイコミュ操作にはせずに簡易サイコミュのまま合えて使っているのかもしれない。
『フン。強がりは……』
『強がりじゃないさ。読まれているのも計算の上だ』
クリスはバエルに退避行動を取らせずに、そのまま剣を振りあげてゼロ・ジ・アジールに振り降ろした。
サーベルを抜き取られてよろめくが、まだそれだけで落ちる訳ではない。オールレンジ攻撃で遠距離から狙ったということならば、まだ攻撃するチャンスはあるだろう。
『馬鹿な。フラッグ機ならともかく……無駄死にする気か?』
『もはや何を言っているのか判らんが……。まあ言いたいことはなんとなく判る。接近できた奴が居る限り攻撃する。それ以外に方法が無いだけだ』
二度・三度と繰り返して剣を浴びせて、時折にタケダからの攻撃を受ける。
だが無理やりにゼロ・ジ・アジールに接敵し続けて居る為、今度は逆に迎撃はそちらに向かっていた。
無理な体勢ゆえに切りつけてもそれほどのダメージは入らないのだが……。
『前にも言った気がするが……。I・フィールドはもらっていく』
バエルが破壊される頃には、ビームがゼロ・ジ・アジールに届いていた。
同じ様にヘルムヴィーゲも破壊されたが、その影に入って砲撃したユニコーンの火力が届いたのも大きいだろう。
『あんたの犠牲は無駄にしないわよ! リフレクターを飛ばして! 連続でぶっ放すわよ!』
『リフレクターを? 判りました!』
曲射モードに入ったV2が、ゆっくりと移動しながら次々に砲撃を掛けて行く。
ユニコーンもリフレクタービットの後ろに移動しながら、可能な範囲で攻撃を掛けて居た。
少なくとも規定のダメージを与えたのは間違いないだろう。
『だが! こちらの攻撃もフルで通る用に成っただけだ! 先にスコアを稼げば問題無い!』
『撃って撃って、撃ちまくれ!』
だが現実は非情である。
タケダは作戦を牽制から攻撃に切り換えて、ゴールを目指すジオングと直衛以外は総攻撃を掛けた。戦場の戦力密度が下がったことでコアファイターズも大攻勢を掛けつつ、フラッグ機はタケダを高速で追い掛けるつもりだろう。
アクサンドラのV2も適度な所で移動するつもりだが……。
もしそのまま状況が推移すれば考えるまでも無く一同の不利は否めなかった。
だが、もう一つのキー・パーソンがその場に到着したことで戦線が膠着する。
『こちらシロッコ隊、参戦させてもらうぞ。貴軍を援護する訳ではないがな』
『俺達も忘れてくれるなよ? トランザム!』
下位集団の中で、一部の高速機体がようやく追いついて来たのだ。
ハンブラビ三機やキュリオスガンダムとユニオンフラッグ改が到着し、結果的に上位集団を牽制しながら規定のスコアを稼ぎに参加したのである。
もちろん一同も直線上に居れば狙われたのだろうが、そこまでの戦力が残って居なかったので結果的に無視された形となった。
『悪いわね。先に行かせてもらうわ』
『いってらっしゃい。ここはボクらでなんとかします』
V2も途中で削げ気を止め、単騎でゴールを目指した。
三位ではあったものの悪くないペースでゴールに到着したと言えるだろう。
そして……。
途中のポイントで稼いだ点数が影響し、二位に浮上。
スコアによって逆転したのであった。
と言う訳でレースを混ぜたストーリーは終了です。
当然ながら主人公たちは一位には成れず、他のフォースが作戦ミスしたことと、コース設定に気が付いたことの累積で二位に入って居ます。
とはいえスコアを稼いだ砲が上位入賞できるルールなので、純粋な速度勝負であれば三位だったでしょう。
最終戦ですが他のフォースは、特攻するとしたらゼロ・ジ・アジールではなくタケダの方に行くだろう。
まかり間違って二位狙いだとしても、コアファイターズを潰して二位狙いに行くよね……。という予想だったこともあって、読み間違えて居ます。
犠牲を出しながらフラッグ機を倒せば勝利だけど、NPCにダメージ与えてもそれだけでは勝てる訳でないので。
結果としてサーキット・タケダは二位以下が自爆したのでダントツの勝利。
コアファイターズは読み違えており戦力の温存をやり過ぎた。突入ポイント・アジールでの点数稼ぎしつつ一気に追い越すつもりが、下位集団に巻き込まれてスコア差で三位に。
(獲得ランキングポイントとしては、二位・三位と余り変わらず)
シロッコ隊とトラ・トラ・トラは下位集団であることを自覚したので、最終戦は上位の足引っ張りつつできるだけ点数を稼いだということになります。
●フォーミュラー0083アフター
チェックポイント
1:暗礁空域に漂うペール・ギュント
2:移送されたコロニーに新設されたミラー
3:ラビアンローズ。一応ドックでの補給そのものは不可侵(機雷や罠は問題無い)
4:地球突入ポイント
5:ソーラーシステム
スコア目標
1:デブリの排除(数・サイズ)
2:ゼロ・ジ・アジール(ダメージ比率)
このコースの最初がペール・ギュントなのは、判り易い損傷が有る為です。
0083を想起させる為であり、最初の目標の時点でヒントがもらえることになっていました。
流石にミノフスキーを散布できるモビルスーツは運営の想定外ですが、まあ使いこなせるならアリで。と言う感じでしょうか。
なお、ペール・ギュントではなくシーマ艦隊のムサイ(交渉中に破壊されたやつ)の場合は、宝探しでバニング大尉のジムカスタムを探す事になります。
以降は0083を思わせるコースが続き、序盤でコースの設定に気が付くと目標の詳細が判ります。
第二ポイント以降は邪魔な障害物が少ないので、コアファイターズの追い込み型戦術も間違いではありません。
と言う訳で彼らは序盤遅れてでも確実に点数を稼いでおり、ミノフスキーが晴れてから移動して居ました。
●オマケ
コアファイターズの構成
・Gアーマー-x4
・ガンタンクMAx2
・ガンキャノンx2(スプレーミサイル・無反動砲)
・ガンダムx2(ビーム主体のノーマル、星一合作戦時のバズーカ主体)
移動力の最低値が高く、同時に長距離砲を備えています。
サーキット・タケダの登場して居ない機体
・ドムx3。シュトッツアー仕様、シャア専用(小説版のビームバズーカ型で高速型)、リックドムⅡ(高速でマシンガン型)
・ゲルググx2。シュトッツアー仕様、ガトー機(ロングレンジライフル)