ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜   作:ブルー人

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お久しぶり(?)です。
リアルで色々とドタバタしてるうちにCSM Vバックルが予約開始されたり新たなパパライダーが出たりと新展開がありすぎて困惑しています。

いつもより間が空いてしまいましたがなんとか更新……!


第11話 メモリーがこぼれ始める

「おい!ちょっ……!!ちょっと待てよ!!なんで俺が容疑者になってんだよ!?」

 

ガーディアンに取り押さえられ、抵抗も虚しく独房へ放り込まれる少年が一人。

 

西都の首相を殺害しようとしたという容疑をかけられたリュウヤは、無罪を主張する暇もないままここへ連れて来られたのである。

 

なんでも首相が盛られた毒と同じ成分のものがリュウヤの制服から採取されたらしい。

 

「おいッ!!話を聞けよッ!!」

 

牢屋に押し込まれ蒼白するリュウヤは、会話の通じるわけがない機械兵士へと必死にそうせがんだ。

 

「……クソッ!!」

 

こんなの普通じゃない。あらゆる手順が飛ばされているように感じる。

 

まるで誰かが自分を————犯罪者に仕立て上げようとしているような。

 

「……いや、そうに決まってる」

 

自分を嵌めた人間がいるはずなんだ。

 

何者かが罪をなすりつけるために冤罪を………………。

 

 

「……なんのために?」

 

 

整理していた思考が途端にほつれてしまう。ここのところ許容範囲を超えた事件が多すぎるせいだ。

 

ライブに誘われて顔を出してみれば怪物に襲われ、今回は首相殺人未遂事件の犯人にされた。

 

間違いない、身の回りが————否、この国全体に変化が起きようとしている。それも悪い方向に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さすがのお前も、違和感に気付いたようだな」

 

「…………!?」

 

カツン、と足音が聞こえ、視界の端から赤い影が現れる。

 

リュウヤも見覚えのあるコブラを形取った容貌は、檻に寄りかかりながら彼へ顔を向けた。

 

「よお、また会ったな」

 

「蛇野郎……!」

 

「ブラッドスタークだ。————以後、お見知りおきを」

 

ふざけた口調で語るスタークにリュウヤの鋭利な視線が刺さるが、それを意に介してさえいないように奴は続ける。

 

「気になってるんだろ?なぜ首相を殺した犯人はお前に罪をなすりつけたのか。そもそもどうしてこんなことをしたのか」

 

「……!てめぇ!真犯人を知ってるのか!?」

 

「さあな……答えは自分の目で確かめてみるといい。——————フンッ!!」

 

直後、スタークはどこからともなく取り出した剣で牢獄の檻を切り裂いた。

 

「……あぁ……?なんのつもりだ……?」

 

火花が飛び散り、いつでも外へ脱出できる自由の身となったリュウヤが間の抜けた声を出す。

 

すると呆然とする彼に向けて再度奴が呼びかけた。

 

「オレがお前を助けてやるよ」

 

「いったいどういう風の吹き回しだ?」

 

自分を解放したスタークに向けて、リュウヤは今一度鋭い目を突きつける。

 

解放してくれたとはいえ、以前危険な目に遭わされた身としては奴を信用することはできない。

 

しかし——————

 

 

 

 

 

 

「ただし、条件がある」

 

「条件…………?」

 

人差し指を立てたスタークの言葉にリュウヤは首を傾けながらも、自らを無罪にするには従う他ないという諦めが頭のなかによぎっていた。

 

 

◉◉◉

 

 

「各地の学校に直接訪問したい?」

 

「うん!私達が三組に分かれて、それぞれの地域の学校を訪ねて回るの!……どうかな?」

 

キリオが職員室の一席で睡魔に襲われながら授業日程を組み立てている最中、ニコニコした顔で彼のもとを訪れた千歌。

 

全国のスクールアイドル達が一斉に集うライブイベント————その参加者を募るために各地域へ向かいたいと言うのだ。

 

「ダメだ」

 

答えはもちろんNOである。

 

「ええっ!?なんで!?」

 

「なんでじゃねえよ!今のこの国の状況がわかってんのか!?」

 

「わかってるよそのくらい!」

 

「わかってるなら普通そんな発想は出てこないんだよ!!」

 

兄妹喧嘩のように向かい合って眉を寄せる両者を見ていた周囲の職員達から仄かな笑い声が聞こえた。

 

ごほん、と咳払いをした後、今一度冷静さを取り戻して千歌の方を見る。

 

「だいたいお前、わざわざ現地に行かなくてもメールとかで連絡すればいい話だろ」

 

この情勢のなかで彼女が言う通りの行動をするなんて、解れかけた命綱を自ら断ち切ろうとするようなものだ。

 

これまでのことから考えてスタークがスクールアイドルを狙っていることは明白。東都内で外出規制がかかってもおかしくないレベルで千歌達Aqoursは危険な立ち位置に置かれているのだ。

 

「それがさ…………急にサイトが繋がらなくなっちゃって」

 

「なんだって?」

 

「ほら」

 

スマホを取り出し、慣れた手つきで検索をかけた千歌は、真っ白なまま停止してしまった画面をキリオへ見せた。

 

「……ほんとだ」

 

「でしょ?」

 

「いつからだ?」

 

「3日前……くらいかな」

 

全国のスクールアイドルには特設サイトが設けられており、そこにプロフィールや仕事の依頼を受けるための連絡先も記載が可能だ。

 

普段ならばこのサイトを使って他のスクールアイドル達とやりとりを行うはずなのだが……。

 

「これじゃあ、ライブに参加してくれる人達が集められないよ……」

 

「……それでさっきの話か」

 

「うん!!だからお願い、キリオくん!!」

 

前々から交流があったSaint SnowやBernageはともかく、それ以外のグループとの関わりはほぼ皆無。正直言って八方塞がりだ。

 

「そうは言ってもな……他の区域には保護者同伴が絶対条件だぞ?俺に分身でもしろってか?」

 

「それなら大丈夫!実はすでにアテがあるのだ!」

 

「ほう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“難波高校から職員が派遣される”って……そこって確か————」

 

「うん、Bernageの二人がいる学校」

 

部室に移動したキリオは、集まった9人の少女達から詳細を聞かされた。

 

以前の合同ライブの際に交換したアドレスを用いてBernageへイベントに参加してくれないかと頼んだところ、承諾してくれただけではなく保護者としての人材を寄越してくれるというのだ。

 

(……Bernageか)

 

葛城ユイに氷室ミカ。この二人に関して調べていると時折影が差す時がある。

 

安心して千歌達を任せられるかと言われれば首を横に振らざるをえないというのがキリオの本音だ。

 

「サイトがいつ復旧するかわからないしね」

 

「確かに危険なのはわかってるんだけど……だからこそ、できるだけ早く行動しなくちゃならないと思うの」

 

千歌の後ろに立っていた曜と梨子が揃って口を開き、それに続くように他のメンバーも加わる。

 

「今やらなきゃ、もっと危険な状況になっちゃうかもしれないんでしょ?」

 

「そうずら!怖がってる場合じゃないよ!」

 

「ルビィも……みんなの意見に賛成です」

 

「まずはわたくし達が行動を起こすべきですからね」

 

「このままだとモヤモヤしっ放しだもんね」

 

「だってさ、キリオ」

 

口々にそう言葉を浴びせてくる彼女達に細めた瞳を向けつつ、キリオは困ったように肩を落とした。

 

 

 

 

 

————きっとこうなったのは、自分のせいでもあるのだろう。

 

スカイウォールの惨劇以降、スクールアイドルという存在は日常を保つための象徴となってこれまでの日々を紡いできた。

 

キリオ自身それを千歌達に押し付けすぎてしまっていた。本来彼女達はこんな危険な役回りを引き受けるべきではないというのに。

 

「キリオくん…………お願い」

 

まっすぐな視線がキリオに突き刺さる。

 

以前のライブ襲撃事件を始め、彼女達のなかで膨れ上がった正義感を今更押し留めることはできない。

 

これはキリオ自身の責任でもあるのだ。

 

「……わかったよ。ただし何かあればすぐに引き返してくることが条件だ」

 

「……!うんっ!!」

 

顧問の許可が下り、パッと表情を明るくさせる千歌達。

 

争いとは無縁な少女達の無邪気な笑顔を途端、キリオのなかの決意がより一層強いものになるのがわかった。

 

 

 

「ちなみに、三組に分けるってのは……?」

 

「ああ、それね」

 

千歌はそれぞれを指で示しながら、誰がどこへ向かうのかを伝えた。

 

 

 

 

 

「果南ちゃん、ダイヤさん、花丸ちゃんは北都。鞠莉ちゃんに梨子ちゃん、善子ちゃんは西都に。私と曜ちゃん、ルビィちゃんが東都で呼びかけてみるよ」

 

 

◉◉◉

 

 

「きゃははー、あの子達も面白いこと考えるよねー」

 

下賤なものでも見下ろすように、葛城ユイはAqoursから送られてきたメールに改めて目を通していた。

 

「どうするのユイちゃん?」

 

「とりあえず引き受けておいたよ。人付き合いは大事にしないとねー!」

 

身体ごと豪快に回転椅子を回しながら語るユイが不意に静止。

 

メールを閉じ、画面の隅にあったファイルへとカーソルを動かす。

 

「それと————こっちも進めなきゃね」

 

それはとある“兵器”の研究資料だった。

 

無数に羅列された数式と設計図を見て、ミカがほんの少し目を剥いて驚くように顔を覗き込ませる。

 

「このドライバーは……?」

 

「会長に頼まれて造り始めた新しい兵器だよ。……すごいでしょ?最高でしょ?天才でしょ!?」

 

「う、うん、さすがユイちゃん。……でもこれ、ハザードレベル4以上って…………」

 

「そうなんだよねー……今のところ扱える人がまだいないのよぉ。くまったくまった」

 

わざとらしく眉を下げたユイだったが、すぐに(よこしま)な笑みを浮かべては冷めた声色で言った。

 

「でもまあ、候補はちゃんといるんだけどね、2人————いや3人ほど」

 

「そうなんだ…………」

 

「……………………」

 

「………………?」

 

しばらくお互いの顔を見つめ合い、やがてミカがきょとんとした表情で首を傾ける。

 

「だーっもう!!ほんとに鈍いなみーちゃんはぁ!!」

 

「えっ……?え?」

 

「だーかーらー!その内の一人はみーちゃんなんだってば!!」

 

「えっ……えぇ!?」

 

思わぬ事実が舞い込んだことでミカの瞳が困惑と戸惑いで満たされる。

 

それもそのはず、ハザードレベル4となれば並の人間とは比べものにならないほどの実力を備えた存在となる。しかし当のミカはその域に達してはいないのだから。

 

加えて————

 

「わたし……まだそんな……無理だよ……!」

 

「ん?どうして?」

 

「だって……今だってすごく必死で、いつやられちゃうかわからないのに……」

 

新型のドライバーを与えられるということは、自らが国の兵器として前線で戦うのと同義。

 

ミカは、それがたまらなく怖いのだ。

 

「いやだよ……なんで、わたしばっかり……!」

 

「ふーん……そっか」

 

「ユイちゃん……?」

 

おもむろに席を立ったユイが背を向け、表情を見せないままミカに問いかけた。

 

 

 

「またそうやって逃げるんだね」

 

「え————」

 

()()()もそうだったよね。……みーちゃん、あたしのことを見捨てて自分だけ逃げ出した」

 

「あ……っ……ユイちゃ……」

 

「あたし、痛かったのに……悲しかったのに……辛かったのに……みーちゃんは助けてくれなかったよね」

 

「ごっ……!ご、ごめんなさ…………!」

 

「あたしの味方だって言ってくれたのに…………また、口先だけの嘘つきなんだね」

 

「ごめんなさいッ!!」

 

ミカは震える足で何度も躓きながらユイのもとへ駆け寄り、制服の裾を掴んでは彼女へ泣きついた。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……!もう……嘘つかないから……だから……!そんなこと言わないで……!!」

 

心の底から笑いだしそうになるのを堪え、ユイは立て続けにミカへと問いを投げる。

 

「許してほしい?」

 

「うん……!うん……!!」

 

「これからも、あたしのために戦ってくれる?」

 

「…………うん」

 

「きゃはっ……!」

 

ついに抑えきれなくなった笑みがにじみ、ユイは顔を歪ませた。

 

 

 

 

 

 

「さて…………()()はどうするつもりかな……?」

 

 




Aqours達を三つの国に分断したのは、もうすぐ始まってしまうフラグということで……何がとは言いませんが。

そしてBernageの二人が秘めた過去とは……。
こちらも進行次第で書いていく予定です。

完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?

  • 後日談として日常もの
  • シリアス調のもの
  • 両方
  • 別にいらない。

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