ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜 作:ブルー人
今回やけに情報が隠されてるので色々と期待しちゃいます(笑)
「はあっ……はあっ……!」
————氷室ミカはわからなかった。
ナイトローグのマスクの下で、整った顔が悲痛に近い表情へ変わる。
今自分が対峙しているこの少年、万丈リュウヤが想定していたよりも遥かに高い戦闘能力を発揮しているのだ。
確かにドラゴンの成分は強力だ。しかしそれを差し引いてもこの力はおかしい。戦いのなかでハザードレベルまでも上昇している節が見られる。
「……どうして、仮面ライダーに……?」
「あ?」
「どうして……ここまで……必死になれる……!?」
肩で息をしながらリュウヤに対してそう尋ねる。
彼はゆっくりと腰を下ろし、拳を構えつつ迷わずに答えた。
「決まってんだろ……!お前らがめちゃくちゃにしたライブの……落とし前つけさせるためだ!!」
「…………!?」
余計に疑問が深まるばかりだ。
リュウヤはユイやミカと特別仲がいいわけではない。友達と呼べる人間、とはとてもじゃないが言える関係ではないはずなのに。
ただのクラスメイト……それなのに彼は、そんな人達のことを気にかけるというのか。
そこから湧き上がる感情が……彼を強くしていると?
「休んでる暇なんかねえぞ!!」
「……!この……っ……!!」
クローズの腕が縦方向に振るわれ、ビートクローザーの刃が眼前まで迫る。
それをスチームブレードで受け止めつつ、空いた片手のトランスチームで牽制。一時的に距離をとった。
彼はそう簡単に隙は与えてくれない。だからこの一瞬で——————
「目的を果たす」
「あぁ……!?」
「ハアッ!!」
大きく両腕を広げると同時に、ナイトローグの背中に巨大な黒翼が展開。
「なんだァ!?」
地を蹴り、クローズ目掛けて一直線に飛翔。
「あぶねっ……!」
身体を捻ってそれを回避するクローズ。しかし当然この程度の突進は避けられると予測済みだ。
————今回の目的は彼らと戦うことじゃない。
「……これ以上は不毛すぎる」
クローズの背後へ回り、パンドラボックスが厳重に保管されている透明なケースをトランスチームガンで射撃。素早く箱を抱える。
「あああああっ!?」
眼下で狼狽するクローズに背を向け、ローグはそのまま研究所を去ろうと高く飛び上がった。
「これで————!」
《ラビット!》
《ガトリング!》
「——————!?」
ふと耳に入った電子音声が聞こえた方向を見やる。
捉えることも難しい速度で地上から跳躍した人影が、その手に持つ武器の銃口をこちらに向けてきた。
「なっ………………!?」
彼は何も言わずに引き金を絞り、その銃弾を巨翼の付け根へと叩き込んだ。
「あっ……つ————!」
バランスを崩した瞬間、今度はパンドラボックスを抱えていた腕に連射を受け、思わず収めていたそれを手放してしまった。
すぐに取り返そうと旋回しかけるが、落下しながらも正確に照準を合わせてきた攻撃が追い打ちのように放たれる。
反撃しようと取り出していた1本のボトルまでも落としてしまい、加えて蓄積していたダメージが限界を迎えているとシステムが警告。スーツ内部に警報が響いた。
「……くそ……!!」
これ以上はナイトローグの姿を保てない。正体がバレることだけは防がなくてはならない。
歯を軋ませた後、定まらない翼のバランスで必死にその場から離れた。
「……間一髪だったな」
ナイトローグから取り返したパンドラボックスとフルボトルを回収し、戦兎キリオは変身を解除した。
が、やはり無理をしすぎたか、数秒保たずにその場に崩れ落ちてしまう。スタークとの戦闘でダメージを受けすぎたようだ。
「おおキリオ!たすかっ————て大丈夫かお前!?なんだそのケガ!?」
「俺のことはどうだっていい。……千歌達が危ない」
「高海達が?…………なんでさ?」
リュウヤも変身を解き、キリオに肩を貸しつつそう尋ねた。
「……グリスが、浦女に侵攻しているらしい」
◉◉◉
『こ、校内に不審者が侵入しました!校内にいる教員と生徒の方々は直ちに避難を————!』
放送室から発信されたその声は、ひどく取り乱した様子で学校全域にそう伝えた。
「“不審者”って……もっとマシな呼び方してもらいたいもんだ」
金色の装甲をまとった戦士が仮面の下で呟く。
それにしても、休日だというのに人が多い。ドタバタと騒がしく逃げ惑う足音があちこちから聞こえてくる。部活動をしていた生徒達だろう。
そうだ、さっさと逃げろ。今回の任務はフルボトルの奪還。他は全て邪魔者以外の何者でもない。
時折生徒に出くわすこともあるが、変身していればこの姿を目撃した瞬間一目散に去っていく。
「……どこにいる、ビルド……」
「………………ピギっ……!?」
けたたましいサイレン音に気がつき目を開けた。
「……避難訓練……?」
黒澤ルビィは現在進行形で鳴り響いている警報の意味を理解できないまま、重い瞼をこする。
今日も変わらず千歌と曜と共に部室に集まってネタ出しをしていたのだが、ユニット名を決めた辺りで自分を含め眠りこけてしまっていたのだ。
最近は精神がすり減るようなことばかり起きるので、みんな疲れ切っていたのだろう。
「千歌ちゃん、曜ちゃん」
机に突っ伏すようにして眠っていた2人の背中を軽く揺らす。
「ん…………」
「うぅ……あと5分……」
「ち、ちょっと起きて。なにか……校内の様子がおかしいの」
「…………?」
うとうとした瞳で身体を起こす2人だったが、スピーカーから流れるサイレンを聞いた途端に耳を塞いでは再びきゅっと目を閉じた。
「わっ!?なになに!?火事!?」
飛び出すような勢いで部室の扉を開けた曜が周囲を見渡し、自分達が眠るまでは体育館にいたはずのバレー部員達が消えていることに気がついた。
「なんだろう一体…………」
「休みの日に避難訓練なんておかしいよね……?」
「たぶんもうみんな外に……。私達も行こう!たぶん訓練なんかじゃないよこれ!!」
曜の一声で一気に表情を緊張感で一杯にする千歌とルビィ。
幸いここは一階。玄関まではそう遠くはない。
「急ごう!!」
「……んだよ。ビルドの野郎は留守か?」
しらみ潰しに教室を探し、職員室までたどり着いたグリスは気怠そうに肩を落としつつ、“戦兎キリオ”の名がないか、並べられた机を端から順に注意深く確認していく。
正直言ってフルボトルがこんな場所に隠されている確率は低い。ていうか普通ならこんなわかりやすい場所に持ってくるわけがない。それほど馬鹿な奴じゃないはずだ。
が、ボトルの他にも何か為になる情報が見つけられるかもしれない。
「……ここか」
“戦兎先生”と記されたシールが引き出しに貼ってある机が目に留まった。
他の机と比べてもロクに整理もされておらず、プリントが散乱。主を見ずともずぼらな雰囲気がひしひしと伝わってきた。
「チッ……探す前から嫌気がさしてきたぜ」
渋々膝を折り、引き出しを開けようとしたその時、
「よおタクミ、お疲れさん」
「…………変身している時は“グリス”だ。今度間違えたらぶっ殺す」
「おっと、これは失敬」
黒霧と共に現れた人物を睨む。
ブラッドスターク。この男はいつどこにいても現れる。
「何の用だ?今は任務中だぞ」
「いやなに、ビルドとクローズに苦戦してると思ってな。様子を見に来たんだよ」
「はっ……俺があんな雑魚共にやられるかよ。……それに、なぜか今はいないみたいだ」
「なんだそうだったか」
これは困ったとでも言わんばかりに、大袈裟に頭を抱えるスターク。
「せっかく
「……あ?」
——————「きゃあああああああッッ!!」
「……!?」
外から聞こえてきた悲鳴に反応し、タクミは無意識にその場を駆け出しては校庭へと飛び出した。
「……!!なっ…………!!」
飛び込んできた光景に目を疑った。
先ほど外へ追い出した浦の星女学院の生徒達が————次々に現れる無数のスマッシュ達に襲われかけていたのだ。
「なんだよ、これ……!?」
「あちゃあ。連れてきたスマッシュは全員旧型。目に映る者を手当たり次第に攻撃するタイプだからなあ。このままじゃ、あの生徒達の命はねぇな」
「馬鹿野郎が!!なに考えてんだテメェ!!頭おかしいのか!?」
スタークの胸ぐらを掴み、その憎たらしい面を引き寄せる。
「なぁに怒ってンだよ。敵国の市民がどうなろうがお前には関係ないことだろ?」
「……っ……!……この任務は極秘に行われるはずだったんだよ!!こんなことすればすぐに騒いを聞きつけた東都のガーディアンがすっ飛んでくるぞ!!余計なことしやがって!!」
「それはすまないことを————」
「キャアアアアアア!!!!」
プレススマッシュの剛腕が1人の生徒に振りかざされるのが見える。
「……ッッ……!クソが……!!」
考えるよりも先に、タクミはスタークを突き飛ばすと地面を蹴り、瞬く間に校庭に群がるスマッシュ達のもとへ突っ込んだ。
……これ以上自分のせいで……人が死ぬのは御免だ……!!
「お前ら走れ!!」
少女達を必死に守ろうと奮闘するグリスを離れた場所から眺めていたスタークは、くぐもった声音で笑いをにじませた。
「フッフッフ……用事が済むまでここで足止め喰らっててくれよ」
◉◉◉
「きゃあっ!!」
「ルビィちゃん!!」
横からやってきた凄まじい衝撃で身体が吹き飛び、廊下の壁に激突する。
ルビィは突然現れた怪物と、それに襲われようとしている2人のチームメンバーの姿を、はっきりとしない意識のまま視界に捉えていた。
「うっ……!」
頭を打ったのか。鋭い痛みが後頭部から眉間に走る。
「千歌ちゃん!ルビィちゃんを連れて逃げて!!」
「曜ちゃん……!?」
「私はコレの注意を引くから!早くッッ!!」
鬼気迫る様子でそう伝えた曜は、持ち前の運動神経が生み出す小回りを利かした動きでなんとかスマッシュを翻弄しているが、体力が切れるのは時間の問題だろう。
二択を迫られた千歌は、倒れるルビィと曜を交互に見ては混乱した顔で青ざめている。
このままじゃ全員————————
————あいつらを助ける力が欲しいか?
「……だれ……?」
消えそうな意識の最中、ルビィはすぐそばで聞こえる声にそう尋ねた。
————時間がない。今あいつらを救えるのはお前だけだ。
「ルビィ……だけ……?」
————ああ。オレならお前に力を与えることができる。この状況を打破できる力をな。
もはや選択技すら与えられてはいなかった。
千歌と曜……2人を助けるためには————それこそ奇跡のような力が必要だった。
「…………………………」
自分以外にはわからなそうなくらい小さく、それでいて決意に溢れる瞳で、ルビィは頷いた。
————いい子だ。
《デビルスチーム!!》
えらいこっちゃえらいこっちゃ……。安定のスタークパラダイス。もう誰もこいつを止められない()
研究所の襲撃も、全てはキリオ達の注意を逸らすための陽動……。
完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?
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後日談として日常もの
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シリアス調のもの
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両方
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別にいらない。