ビルライブ!サンシャイン!!〜School idol War〜 作:ブルー人
先日やっとこさOver the rainbowを観てきました。
色々と語りたいこともありますが、とりあえず映画館で聴く爆音ライブが凄まじかったです。
そしてsaint snowが好きな僕には堪らない内容でした……。
『キリオくんには…………誰かの命を奪うようなことは、して欲しくない。みんなの正義のヒーローでいて欲しい……!』
1人の青年にそう伝えた少女の顔は、とても儚げに見えた。
少年————万丈リュウヤは2人のやりとりを思い出し、考える。
戦兎キリオという人物がこれまで築いてきたもの。彼にとって守りたいと願うものは、自分にとってのそれとは似ているようで全く違う。
自分は葛城ユイや氷室ミカ、2人の頑張りを踏みにじった奴らが許せなかった。だから自らの身体が傷ついたとしても、彼女達の無念を晴らそうとしていたんだ。
けど……キリオはその真逆。彼にとって守りたいものとは、あくまで“自分の一部”だけなんだ。
そのためなら例え国を巻き込んでもいい。そういう思考を持った人間だ。
けれどそれは大きな矛盾を生むことになる。
キリオがAqoursのメンバーを守るために人を殺めようとするならば……彼が人を傷つけることを嫌う千歌達のためにはならない。
他人の幸福が自分のためになると言った彼の目的は果たせなくなる。
(……あいつ、自分でもどうすればいいかわからないんだ)
東都の兵士達に囲まれた車内で、リュウヤは強く拳を握る。
まるで負担をかけすぎてバグが起きてしまった機械のようだ。このままいけばキリオはほぼ確実に崩壊してしまう。
……そんなのは嫌だ。ユイ達と同じように……これまで頑張ってきた奴らが、他人の悪意のせいでめちゃくちゃになってしまうなんて。
(俺が…………もっとしっかりしねえと)
「…………!あれは……!?」
「……?」
1人の兵士が窓から身を乗り出し驚愕する。
遠方から近づいてくる落下音。徐々に大きさを増していくそれに悪寒を感じたリュウヤは、すぐさまビルドドライバーを装着。
「警戒態勢!!」
「ぐっ……!変身ッッ!!」
直後、隊列の先頭にいた車両————リュウヤが搭乗していた軍用車めがけて何かが着弾。凄まじい爆発を引き起こした。
「がはっ……!」
間一髪クローズへの変身が間に合ったリュウヤは、炎上した車両の中から吹き飛ばされるかたちで外へ飛び出した。
「爆弾……いやミサイル……!?もう北都軍の射程内にいるってことか……!?」
「次弾くるぞ!!」
「————!」
隊の指揮をとっていた男がそう叫ぶ。
リュウヤは瞬時にドライバーのレバーを回し、地面を蹴った。
《ドラゴニックフィニッシュ!!》
「らああああああああッッ!!!!」
蒼炎をまとわせ振り上げた足が飛来した弾頭に炸裂。東都軍に到達する前に空中で爆発させた。
リュウヤは着地した後、次に備えて体勢を立て直しつつ…………数分前に見送った青年の後ろ姿を思い出す。
「……始まっちまったのか……」
◉◉◉
「なんの騒ぎだ……?」
猿渡タクミは部屋の外から感じる慌ただしい雰囲気に意識を傾けた。
首相へ連絡を入れようとした矢先、腕に巻いてあった小型の通信機が仄かに赤く発光する。どうやら向こうから先にかけてきたみたいだ。
「……さっきから一体なんだってんだ?」
『東都が攻めてきたのよ。どうやらそちらのお嬢さんがよっぽど大事みたいね』
「俺はどうすりゃいいんだ?」
『あなたはこの官邸を守りなさいグリス。……東都軍など、私達の敵じゃないわ』
「了解」
ふっと安心するようにため息をついたタクミが通信を切ろうとしたその直後、
『……?この反応————』
「……?どうかしたのか?」
『……!警戒なさいグリス!そっちにスマッシュの反応が……!!』
「なっ……スマッシュだぁ……!?」
警告を受けてすぐに周囲を確認するタクミだったが、この部屋にいるのは自分と拘束されたルビィのみ。
スマッシュなんてどこにも——————
『これは……まさか上空から——————!?』
「うっ……!?」
刹那、薄暗い部屋の壁に巨大な風穴が撃ち抜かれた。
「ぐおおおお…………っ!?」
「きゃあっ……!?」
空気の流れに思わず身を仰け反らせる。
反射的にルビィが縛り付けられている椅子の前に立ち、砂埃が舞う前方を睨んだ。
敵の襲撃であることはすぐに理解できたが…………まさか、空を移動して一気に官邸までやってきたっていうのか?
どうやってこの場所を突き止めたのか知らないが……目的は十中八九ルビィ。ならおそらくやってきた相手は————
「ビルドか……!?」
スクラッシュドライバーを装着し、スクラッシュゼリーを構える。
大丈夫だ。戦兎キリオと比べればこちらの方がハザードレベルは上。加えてベルトの性能もスクラッシュの方が強力だ。
こちらに負けの芽はない……!
「……あいつの言ってたことは、本当だったみたいね」
「え?」
先ほどの衝撃でできた砂埃の煙幕が薄れ、
予想もしていなかった人物。
「あ…………」
タクミは目の前に現れた人間を認識した途端、言葉を失ってしまった。
「理亞……それにダイヤさんも……どうして……」
左右で一つずつ結んだ髪が印象的な少女に、自分が慕っていた黒澤ルビィの姉————
鹿角理亞と、黒澤ダイヤの姿がそこにあった。
「“どうして”……だって?」
それはもはやかつての友人を見るような瞳ではなくなっていた。
ダイヤもタクミの腰に巻かれたベルトを見るなり絶句する。
「……それはこっちの台詞よ。……ねえ、教えてよ、いったいいつから私達を騙してたの?」
「だま……す?」
頭が漂白されて何も考えられない。
どうして2人がこんなところにいる?なぜ自分達は対峙しているんだ?
「私だけじゃない……姉様も、ダイヤも……!いったいどれだけの人を悲しませたと思ってるのよ!!」
もう自分が何者であるのか知られてしまっている。……そう気がつくまでにしばらくの時間が必要だった。
「私と姉様に取り入って……ルビィの情報を掴むためにマネージャーになんかなって……!」
「ち……っ……違う!!」
必死に弁解しようと試みる。
しかし最初に出てきた否定に続いたのは……あまりにも“足りなすぎる”言葉だった。
「俺は……!俺は……理亞や、聖良さん……北都のみんなのために————!」
「ふざけないでよッッ!!」
目に涙を溜めた理亞は、その憎悪に満ちた瞳でタクミを射抜いた。
「…………どいて」
「………………」
理亞がタクミを軽く突き飛ばしながら横を通り、先ほどの衝撃で気絶してしまったのか、意識のないルビィを縛っている拘束具に手をかける。
「————ッ!!」
到底ヒトの力とは思えない腕力でそれを断ち切った理亞は、ダイヤに彼女の身を預けた後で再びタクミと目を合わせた。
「理亞……!」
「………………」
今度は何も言わずに、彼女はおもむろに一本のボトルを取り出して自らの腕に突き刺した。
「なっ……!?」
続いてダイヤも同じようにフルボトルを取り出す。
みるみるその姿を変貌させていく2人を見たタクミの両手の力がだらりと抜けていく。
フクロウとクワガタを思わせる2体のスマッシュに……彼女達は変身したのだ。
「待ってくれ……!理亞!!」
伸ばした手が届く前に、ダイヤが変身したフクロウハードスマッシュが翼のような巨腕を振るった。
「…………友達だと、思ってたのに……!」
一言そう言い残した後、壁の穴から脱出し遠ざかっていく。
『————やっと繋がったわね。いったい何が起きたの!?』
通信機から聞こえてくる声など耳に入るわけがなかった。
(…………ああ)
もう、本当に取り返しのつかないことになってしまったんだ。
人を殺め、大切な友達をも裏切った。
……いや、もっと前から。仮面ライダーとしての運命を歩んだ時から……この結果は決まっていたんだ。
全てはこの北都のことを想ってのことだった。そうだ、だから仕方がない。
————仕方がないじゃないか。
『なに……今度は仮面ライダー……!?単騎で攻めてきたですって!?前線はなにをやってるの!!』
しばらく立ち尽くしていたタクミは、床に落ちていたロボットスクラッシュゼリーを再び拾い上げた。
『グリス!!そっちはもういいわ!!今すぐ下に降りてきなさい!!ビルドを血祭りにあげてやるのよ!!』
「く……ぅっ……!」
《ロボットゼリー!》
「うああああああああああああああああッッ!!!!」
————俺に残っているのはもう…………
《潰れる!流れる!溢れ出る!!》
《ロボットイングリス!ブラァ!!》
「心火を……燃やして……!!」
————
「ぶっ潰す……!!」
◉◉◉
《ゴリラ!》
《ロック!》
「はあああああああッ!!」
北都のガーディアンを鎖でまとめて縛り上げ、動きを封じた後でゴリラの腕で強烈な一撃を放つ。
(やっぱりな……北都の軍はグリスに頼りきりな状況)
ガーディアンに関してはビルドドライバーで問題なく対応できる。
それに他の兵力も予想を下回っている。軍事に関しては東都とさほど変わらないと踏んでいたが……どうやら、奴らの経済状況はこちらが思っていたよりも深刻らしい。
キリオは辺りを見渡し、敵が残っていないことを確認すると、ドライバーに装填されていたボトルを引き抜いた。
《ラビット!》
《タンク!》
《ベストマッチ!!》
「さて、とっとと黒澤妹を探して————」
《スクラップフィニッシュ!!》
《ボルテックブレイク!!》
上空から迫り来る黄金色の戦士を捉え、ギリギリのところで取り出したドリルクラッシャーへロックフルボトルを装填。
大量に生成した鎖で盾を作り、奴の蹴りを防御しようとするが————
「ぐっ…………!!」
受け止めきれずに後方へ吹き飛ばされてしまう。
受け身をとり、地面を転がりながらドリルクラッシャーを銃形態へと変形させ、牽制。
「……ッ!!」
それを意に介さず距離を一気に詰めてきたグリス。
一直線に飛んでくる拳を胸部に喰らい、今度は勢いを殺せずに地を這ってしまう。
(なんだこのパワー……!?)
以前戦った時よりも格段に強くなっている。ハザードレベルが上昇したのだろうか?
「はっ……ここで決着をつけるつもりか?」
「俺達は互いにそれを望んでる。…………そうだろ、東都の仮面ライダー……?」
異様な空気をまとうグリスは、確実にキリオを殺すつもりでかかっている。
何があったのかは知らないが、以前よりもスクラッシュドライバーを使いこなしているようだ。
————さあ、どうする?
確かにグリスに対抗する策は考えてきた。
……だがそれは、これまで手に入れてきたボトルを連続使用して、現在判明しているベストマッチ形態で奴を押し切るという手間のかかる小細工に過ぎない。
以前のグリスならいざ知らず、今の奴に通用するかどうか——————
————何を言っているんだ。より確実な方法があったじゃないか。
「………………」
頭の中に浮かんでくる、最適な答え。
(そうだ、俺は…………なんとしてでも、こいつを排除しないといけないんだ)
キリオの瞳が仮面の下で赤く光る。
「覚悟決めろオラァ……!!」
グリスがこちらへ向かってくる。
奴を倒す。…………倒して、千歌達を守らないと。
「俺がお前を倒す。……例え、この身をかけてもな」
——————さあ、
——————使え。
《ハザードオン!》
「…………!?」
うっすらとノイズがかった電子音が響く。
キリオはスタークから受け取ったアイテム…………“ハザードトリガー”をビルドドライバーへと突き刺した。
《ラビット!》
《タンク!》
《スーパーベストマッチ!!》
《ガタガタゴットン!ズッタンズタン!ガタガタゴットン!ズッタンズタン!》
《Are you ready!?》
「…………ビルドアップ」
鋳型のようなフレームがキリオの前後に形成され、彼の一言でその身体を一瞬で挟み込む。
やがて黒い煙と共に……“それ”は現れた。
《アンコントロールスイッチ!ブラックハザード!!》
《ヤベーイ!!》
ラビットとタンク……赤と青の複眼のみを残し、全身は汚染されたかのような黒一色。
刺々しい外見から不気味な雰囲気を漂わせているそれは……ビルドの新たな形態。
ラビットタンクハザードフォーム。
「「おおおおおおおおッッ!!!!」」
金色と黒。二つの拳が凄まじい衝撃と共に交わった。
映画の余韻に浸りながら書いたのが今回の話です。自分でも「これでいいのか……」と反省しています()
今後は結構執筆の時間がとれると思うので、以前報告した通りもう一つの作品と並行して進めたいと思います。
それでは次回もよーろしくー!ゝ
(新キャラのあの子も出したい……)
完結後に何かしらの続編はいりますか?いりませんか?
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後日談として日常もの
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シリアス調のもの
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両方
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別にいらない。